『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

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読書感想110  住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち

2014-01-17 09:55:59 | 時事・歴史書

 

読書感想110  住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち<o:p></o:p>

 

著者      川口マーン恵美<o:p></o:p>

 

生年      1956<o:p></o:p>

 

出身地     大阪府<o:p></o:p>

 

現在住地    ドイツ、シュトゥットガルト<o:p></o:p>

 

出版年     2013<o:p></o:p>

 

出版社     (株)講談社  講談社+α新書<o:p></o:p>

 

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感想<o:p></o:p>

 

 ドイツに30年暮らしている著者が、多面的にドイツと日本を比較して、日本人に日本の良さを再確認させようと意図して書いたのが本書である。著者が挙げる日本の長所は実用面だ。時間指定で届く宅配便や時刻表通りに走る電車、思いやりが行動や思考の基本にあること。欠点として挙げているのは論理性の欠如、広報活動の稚拙さ、日本をアピールする短期的作戦もなければ長期的作戦もないこと。著者が指摘するように、ドイツが抱える領土、軍事力、脱原発、EU、特に移民などの問題は日本の将来を考えるうえで参考になる。。<o:p></o:p>

 

 領土問題ではドイツは固有の領土だったシュレージエン地方や東プロイセンを失うが、1970年代に入ってから領土を取り返すことを諦めたという。ポーランド人やロシア人が入植し実効支配が進んでいたからだという。<o:p></o:p>

 

領土問題は実効支配した者が勝つということと、実効支配にはそれを裏付ける軍事力が必要なこと。その上で同じ敗戦国でもドイツは優秀な軍隊を保持し、その軍事力がドイツの政治力の裏付けになっており、軍事力がなければ世界での発言権がなくなることを承知していること。そこが日本と違うところであるという。<o:p></o:p>

 

 ドイツの脱原発政策も行き詰っている。再生可能エネルギーだけで電力がまかなえず、石炭や褐炭といった化石燃料に4割以上頼っている状態だという。<o:p></o:p>

 

 EUについては2011年に新しくEUに加盟した国々の国民すべてにEUの市場が開放された。この労働市場の解禁により、2020年にはドイツへの移住者は120万人に達すると試算されている。失業と賃金引下げが起こるのではないかと懸念している。そのモデルを過去と現在のドイツの中に見ることができる。戦後復興を果し経済大国にのしあがったドイツと日本。日本は日本人の労働力で成し遂げたのに対して、ドイツは外国人労働者を早い段階から導入した。そのときドイツに入って来たのは単純労働者で、彼らは不況になってもドイツに居続けて今や社会保障費を食いつぶ

す存在になっているという。<o:p></o:p>

 

 そしてEUにおけるドイツの役回りがTPPに加盟した場合の日本の役回りになるだろうと著者は警鐘を鳴らしている。財政破綻国のドイツに対する憎悪、「借金の後始末は全体責任としてドイツが負担、財政管理や予算の主権は各国が保持」とドイツを悪役に仕立てていく。経済力やメンタリティーの違う国々が統合するとどうなるかを反面教師として日本は注視するべきだと言う。<o:p></o:p>

 

 教育では、ドイツでは小学校5年で進路が決定する。格差の固定化と進学課程から外れた子供達の学力の低下は凄まじい。大学入試もチャンスは2回である。給食は小学校でもなく、部活もなく、勉強だけする場である。しかしドイツの良いところは論文記述と討論の訓練をするところ。<o:p></o:p>

 

 その外にも電車の故障がしょっちゅうで、電車が停止していても乗客になんの情報もつたえないドイツ。日曜日に商店が一斉に休業するドイツ。<o:p></o:p>

 

 あまり伝えられないドイツの姿、特に移民の導入という問題は日本にとっても喫緊の課題でもある。多民族多文化共生といっても、少数者が入ってくるのと、巨大なコミュニティを日本の社会の中に抱え込むというのは、全く別の問題である。しかも言葉の理解や文化への理解も難しい、教育程度の低い単純労働者の受け入れは大きい政治的な葛藤を引き起こす恐れはある。TPPの議論では労働力の解禁についてあまり話されていない。もっと議論するべき課題になるだろう。

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