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三度目の殺人

2017-09-16 21:56:11 | 映画




凄い映画を観たと思う。

けっきょく事件の真相はわからないまま終わる映画。
誰が殺したのかも、殺した理由もはっきりとわからない。
藪の中。

どういうふうにもとれるのです。

でも、難解な短編小説読んだ時みたいに、え。終わり?ちょっと待っておいてかないで、わかんねー。的な置いてかれ感(私はそういうことが著しく多い)は無い。
わからないのはワタクシがバカだからだけではなく、あえてそういう作りになっているから。と、そう思えるのです。
余白と奥深さがハンパなくある。

観る人によって、どんなふうにも解釈できる。納得いくストーリーを作る、と行かないまでもイメージを勝手に膨らますことができる。
そうするしかないというか。そういったことが大好きな人間にはたまらない映画だと思えます。


人って、真相がわからなくても、わかりたいと思うと勝手にストーリーを作り出す、そうせずにはいられない生き物なんだ。

主人公の弁護士重盛(福山雅治)が、どんどんそうなっていったように。
それがこの映画のテーマの一つであるのでしょう。

私達は福山雅治と一緒になって、迷宮の十字路で「本当のことを教えてくれよ」と懊悩の叫び声をあげればいいのかもしれません。

・・・・うんそうしよう。とひそかに思う。

「本当のこと」とは事件の真相というより、もう私はあなたのことがわからない、人間のことがわからない、これからの自分の行く道がわからない。神さまがいない。どうするのが正しいのかわからない。それを教えて欲しい。そういうことだ、と思えます。


そもそも真相なんてわからないのに、裁判は人を裁かなければならない。
そこで「真相」は見て見ぬふりとすっとばして、法廷戦術、訴訟経済などという言葉が裁判のウラ側で飛び交う。
映画はこれでもかというほどそんなシーンを観せます。
マジかよと思うセリフがいっぱい。

重盛はまだ「青くさい」後輩弁護士に、
「法廷戦術以外に俺たちが考えることがあるのか?」
と言い放つような、自信家でいけすかない男です。クリクリ・キッチリのパーマ髪。

およそそのクリクリ短髪が乱れることは生涯無いように見えた彼が、被疑者三隅(役所広司)にじわじわと翻弄され、あれほど興味のなかった「真相」を知ろうとするようになる。
しかし報われることは無く、三隅にハメられたのかも知れず、そうじゃないのかも知れず。
ただ、答えのない迷宮を答えの無いままに描いた映画の中で、唯一確かなこととして救われた気がするのが重盛のこの心の動きでした。
髪振り乱し、口角泡を飛ばし、というような表面上の乱れ方は無いにせよ、じわじわと情に崩れて行く感に共感を覚えるのでした。

そしてなんといっても三隅役の役所広司!
もう、こわい。
存在感、底なし沼。
3D映画じゃなくてほんとに良かった。
立体で彼がアップで直視してきたら、絶対のけぞるでしょう。
こわくて。
善も悪も内包したような底無しのあのスケール感。観る人が想像するストーリーのふり幅はどこまでも大きくなれる。

三隅は「君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる(by中島みゆき)」と咲江(広瀬すず)を守るために、自らを消したのかもしれないし。重盛を利用して。それが三度目の殺人だと。

いやそうではなく、今も昔も情など無い「からっぽの器」=サイコパスなのかもしれないし。
サイコパスだったけど、奇跡的に会心できたのかもしれないし。
半分悪魔、半分善人=つまり普通の人なのかもしれないし。
わかりません。
人間は底なし沼。
やはり福山雅治と一緒に十字路で途方にくれるしかないのでしょうか。



咲江(広瀬すず)も、とても良かった。
まっすぐな美しい瞳。
そりゃこの少女を疑うなんて、と思いますが「もしや」と思わせるところがこの映画の凄いところで。
重盛の、嘘泣き上手で真意のよく掴めない娘とオーバーラップさせたところが面白いです。

ひとりよがりの私感でアレですが、足の悪い謎めいた少女といってどうしても思い浮かぶのは、ドストエフスキーの小説に登場するリーザ。
美しく賢く、小悪魔的といったらこの人。14歳。きっとまっすぐな瞳。
「悪霊」にもリーザという名の女性が登場して悪魔のような主人公スタヴローギンとからんだりする。

となると咲江と三隅が小悪魔と悪魔に見えてきもする。そういえば咲江の母親(斉藤由貴)もあのあざとさ・したたかさがロシア文学女性っぽくないだろうか。。いえわかりませんが。
よくわからないながらドストエフスキー的文学的深淵が垣間見えてきたりして、素晴らしい。あれ以降広瀬すずを見るとリーザだ、と思ってしまう。忘れられない映画になりました。



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