放浪日記

刮目せよ、我等が愚行を。

北京、しんたろーの優雅な1日(前編)

2004年11月22日 | 半死的中国旅行
モンホーターレーの過剰な接待を受けたあと、我々は張さんの家に戻った。
そこでは、昼頃にのっそりと起きたあと、たいして大きくもない赤峰の町をブラブラし、夜は張さんの奥さんの手作り料理を頬張るという、自堕落な生活を送っていた。
いつまでもここに残りたい気分ではあったが、仙人に会って長寿の秘訣を会得するという、この旅の本来の目的を思い出し、我々は北京へと戻ることにした。

北京から内蒙古にくるときの列車は結局途中までしか進まなかったということもあり、我々は中国の列車に不安感を隠し切れなかった。
それを察した張さんは、部下(めちゃくちゃかわいい女性!)の出張時期が重なっていたということもあり、その女性に北京まで我々を案内するように命じてくれた。

かなりお世話になったばかりでなく、列車の切符まで用意してくれた張さん。我々がほんのわずかばかりだったが、お金を置いていこうとすると、頑として受け取ってくれなかった。「君たちハ学生だからネ」とやさしい言葉まで。最後の食卓は賑やかなものになり、にいやはそのもてなしぶりに感激し、涙を落としそうになっている横で、しんたろーはこれからまたはじまる地獄行脚のことを考えると鬱に入ってしまい、コーラをグビグビ飲むことしかできなかった。

今度の列車は、しんたろーも驚くほど、いたってスムーズに北京に着いた。
北京北駅に着いたとき、張さん部下の女性は、「ホテルに案内します」と流暢な日本語で言ってくれた。北京に着いたあと、またホテル探しをしないといけないと思っていた我々にとって、願ってもない申し出だった。我々にお金がないのは彼女も知っているので、安くてこぎれいな宿に案内してくれると思っていたら、彼女は地下鉄に乗り込み、「北京北駅のあたりは不便なので、便利な場所に行きましょう」と言った。勝手の分からない我々はうなずくしかなかった。
地下鉄の環状を半周くらいしたあと、建国門という駅で降りた。駅の周りは見覚えのある地域だった。そう、ここは天津からバスで連れてこられ、突然降ろされた場所だった。中国元を手にするために数時間さまよったため、場所を覚えていたのだった。
「ここ、懐かしいな、しんたろー」とにいやがしんたろーに振ると、「こんなところ来てねーよ」とぬかした。にいやはイラッときたが、とりあえず部下女の手前、喧嘩するのはやめておいた。

しばらく歩いたあと、「ここですよ」と彼女が指したのは、近代的超高層ビルと中国風宮殿を足して2で割ったようなイカツイ建物。派手派手しい門には、守衛が立っている。どうみても政府系の建物としか思えない、このホテルにさっさと入って行く、どこから見てもキャリアウーマン風な部下女。汚いバックパック、薄汚れたTシャツにサンダルであとを付いていくバカ日本人2人。
きらびやかすぎて雪目になるんじゃないかと思うようなレセプションで、部下女はホテルスタッフを呼び付け交渉している。
「ここ、泊まるのか…?」しんたろーは喜びに目を輝かせてそう言った。「こういうところに泊まらなきゃ、旅行なんだし、な、にいや」そんなしんたろーの言葉をスルーしながら、にいやはこのホテルの値段が気になって仕方がなかった。

部下女がロビーの隅で恐縮している我々のもとに颯爽と笑顔で戻ってきた。「部屋は空いていました。ここに泊まってください」。
「はい、喜んで!」と白木屋ばりの勢いのよさで返事をしそうになったしんたろーの口を、にいやは間一髪防いだ。
「ちなみに、このホテルのお値段は……」にいやは宿泊代が気になっていた。この豪華さから推測して、日本のホテルと同じくらいだろうと思っていた。そんな値段のところに泊まるのは、どちらかが病気になったときなど、ハプニングが起こったときだけにしたかった。予算があまりにも厳しかった。
「お金は、800元です。安いですね」
「は、は、800元!!」にいやは鼻血が出そうになった。日本円で1万2000円ほどだが、この旅の最初の計画では、1人1泊100元までを目安にしていた。いくら張さんの家にお世話になって、余裕があるからといって、簡単に泊まれる値段ではない。
「すいません、これは僕たちには高す……」
「はい、800元」
にいやが断ろうとしていたその横で、しんたろーは部下女に800元を渡していた。
呆然とするにいやをよそ目に、こんなときだけテキパキとチェックインを済ますしんたろー。
文句を言う間もなく、にいやの手には、1泊800元の部屋のカードキーが手渡されていた。

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2 コメント

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あれ? (しんたろー)
2004-11-23 21:31:30
「こんなことあったっけ?」



イラッとしないで(笑)

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真実は (にいや)
2004-11-25 13:26:11
すべて記憶されていないところにあるのだよ、しんたろー君。

ふふふ…。

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