燃えるフィジカルアセスメント

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乳がん(乳癌)検診 受診開始の年齢は?

2015-06-07 | 徳田語録

 今回も前回の続きです

では、患者が健康で幸せに生きることができるようになるには、どのように賢く医療の内容を選択すればよいのでしょうか。

■40歳代女性が受診しました。乳がん検診をうけるように友人に勧められたとのことです。親族には乳がんのひとはいませんでした。受けた方がいいですか?

 人はみなそれぞれ背景因子が違います。病気になりやすい因子を持っている方、たとえばがんでしたら遺伝的な素因を持つかが重要です。乳がんの家族歴(肉親に乳がんの方がいらっしゃる場合)のある場合は、そうでない場合と比べると異なります。

 しかしながら、家族性乳がんの割合は、日本における乳がん全体の約2%であると報告されていますので、乳がん患者の大部分は家族性以外の発症ということになります。そのような因子も考慮しながら、できるだけ医療者側から十分な情報を与えて、賢く選択するとよいと思います。

 40歳代女性が乳がん検診を受けるべきかについては、各国のガイドラインで内容が異なっています。米国の政府委員会推奨ではルーチンでは推奨されず、あくまで個別の判断を勧める、という立場をとっています。その理由には、閉経前乳がんの罹患率は低くまた不利益としての検診偽陽性が40歳代に多い傾向があること。NNI(Number Need to Invite =乳がん死1人を回避するために必要なマンモグラフィ検診必要対象者数)が39~49歳が50~69歳に比して高い(約1900人・対・約1300人)という2点が挙がります。

 これに対しわが国では、厚生労働省がん検診の適正化に関する調査研究「新たながん検診手法の有効性評価」報告書において、視触診とマンモグラフィの併用(40歳代)による乳がん検診には死亡率低減効果があるとする相応の根拠ありとしている。しかしながら、日本ではこれまで検診を評価するためのRCTが施行されたことはありません。このように、RCTの実施が今後の課題であるが、わが国では、40歳代についても引き続きスクリーニングを検診を推奨する、という立場をとっています。

 たとえば、「メタボ健診」(厚生労働省が、2008年度からメタボリック・シンドロームの予防・改善を目的とする新しい健診制度を導入する計画を打ち出し、健康保険組合にメタボ対策を義務付けた)も、この健診の有効性がRCTで証明されることが無いままに全国的に施行されることになりました。

 結論として、冒頭の40歳代女性に対しては、「NNIが1900人であり、偽陽性の割合も多いです」ということをきちんと伝えてから、賢く選択することを助けることが重要ですね。

 今回は以上です、話変わって、沖縄では梅雨入りはしたものの、あまり雨が降らないそうです、二、三日降ったかと思えば二日間晴れの繰り返しみたいです、本島北部の水がめ(ダム)は少なめになっているそうで、このままだと夏の暑い時期に夜間断水かも?らしいです、降るときに降らないとだめですね、では次回に。

「マンガ臨床推論~めざせスーパージェネラリスト~」こちらも宜しくお願いします。

こんなとき、フィジカル: 超実践的! 身体診察のアプローチ
徳田安春
金原出版

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