紘一郎雑記帳

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ロボット技術とからくり人形・細井清司氏講演録・紘一郎雑記帳

2010-03-14 18:38:46 | Weblog
ロボット技術のルーツ・からくり人形
~江戸時代の復元からその神髄を学ぶ~

細井清司氏「日本からくり研究会員」講演録より

皆さんこんにちわ、細井と申します。
歴史ある清話会様にお呼び戴き緊張しております。

私が「からくり」の勉強を始めましたのは「秋祭り」の際
子供達に何か面白いものを見せてあげたいと思ったからです。

ここにお持ちした「からくり」は「江戸3大からくり」と
いわれている物ですが「江戸時代」のお金持ちが
色々と揃えて楽しんでいたようです。

「からくり」は「仕掛け」があって「自分で動く」事が原則ですので
夏祭りでみる「山車」は「山車からくり」といわれ、自分では動けず
人間が中に入って動かしているので、「今日のテーマ」の
「ロボット技術のルーツからくり人形」ではありません。
あやつり人形も遠隔操作で人間が動かすので「山車からくり」と同じ分類です。

今日お話するのは自分で動く「座敷からくり人形」です。


日本の製造業の歴史は「マニュアル」が少なく
「親方」の「技術」を「弟子」が「学び取る」ことで
伝統を受け継いできたのですが「からくり」もその代表的なものですね


からくり人形の日本での誕生は諸説があり、
定かではありませんが、文献に記載されている最古のものは
「今昔物語」に出てくる「自動水汲み人形」のようです。

この人形は水車に少しの工夫を加えた簡単な仕組みでした。

からくりの技術が飛躍的に向上したのはしたのは江戸時代です。
その元になったのは「1551年」に「フランシスコ・ザビエル」が
持ち込んだ「機械時計」だといわれています。

この「自動時計」に用いられた「ゼンマイ」「歯車」「カム」「調速機」などを
活用し、「茶運び人形」など世界でもトップクラスの「からくり人形」が
作られていきました。

しかし凄いことは江戸時代のからくりには金属は使われていないのです
多くは「木が基礎」となっており「ゼンマイ」は「くじらのひげ」
特にひげの長い「せみくじら」のひげが使われておりました。

そして「1796年」の土佐藩士「細川」という人が書いた
「からくり隋」が元になっており、今、現在でもそうなんです。

「からくり」の代表的な製作者の一人が「東洋のエジソン」と呼ばれた
発明家「田中久重(後の”東芝”の創業者)」です。

彼が「生き人形」といった「からくり人形」「蘭学・医学・天文学・測量学」など
様々な多くの「学問」をベースにした「総合的な技術の集大成」に
よって生まれたとされています。

「動く人形」といわれた「自動仕掛け」の「からくり人形」の
動力源は「ゼンマイ(バネの力)や水銀で巻いた「ゼンマイ」が
元に戻ろうとする「力」があり、水銀には重くてゆっくり動く液体の
金属の性質があり、それを利用して動かします。

江戸時代の【三大座敷からくり】は「茶運び人形」「弓曳童子」「段帰り人形」です
それぞれをお話しますと

【茶運び人形】は「茶碗」をお盆に置くと動き出し「茶碗」を
         受け取るとくるりと回って元の場所に戻ってくる
  ●ゼンマイの動力をカムに伝え、それが歯車と連動して動く仕組みです。
      
【弓曳き童子】は「1、8m」先の直径6cmの的に向かって
       「4本の矢」を連射する童子です。後ほど実演を見て頂きます
  ●「ギァ」と「カム」によって糸を引いて動作。

「段返り人形」は人形が「とんぼ返り」をしながら、
       ゆっくりと階段を下りていく「からくり人形」です

  ●人形の中に入っている「水銀」の移動によって「重心移動」し
   回転して行く仕組みです。

こうした原理や仕組みについて実演を交えながら解説しましょう
因みに、製作には「材料力学」「物理学」「機械工学」などの
「知識」と「精密」な技量が必要です。
その意味では「からくり人形」は「科学」なのです。

「からくり人形」「近代技術・材料」を使わず「人形であって・人形らしくない」
動きを追求する事によって、製作者の「創造性」「探究心」が折り込まれ
「ロボット」より「一味も二味」も違ったものが生まれるのです。  

それでは「弓曳き童子」を動かしてみますので、実際に前にきて見てください
《実演》
【細井氏がゼンマイを巻いた。すると
「1」ジーと音を立てて動き始める、「2」そして童子は右手の親指で矢をつかみ
「3」その手を引き上げ 「4」弓へつがえて顔を的へ向け 
「5」あごを上げ 「6」射る・・・1回24秒の動作を「4回」演じた

如何ですか「会場内・大拍手」

こうした「江戸時代」の”ハイテク”は、その後のわが国の
「工業技術」の基礎をなし「ものづくり技術」のルーツとなり、
現代のロボット技術の原点ともいわれている。

それは、最近の産業界には「からくり人形」の動力源である
「ゼンマイ」を生産ラインに応用する動きが出ています。

愛知県の自動車部品工場では、「茶運び人形」の「ゼンマイ」に着目し
動作原理を応用した「部品搬送機」を開発、生産ラインに取り入れています。
「モーター」を使わないこの「輸送機」は”究極の省力マシーン”として
注目を集めています。

江戸時代のテクノロジーが最先端の工場で活かされている一例でしょう。

私は「同志社大学」の電気工学科を1963年に卒業し「三洋電機」に
入社し「テレビ一筋」に過ごし「白黒からカラー、液晶プロジェクター」の
設計に携わって参りました、自分で言うのも変ですが大変な「凝り性」です。

「72年」のミュンヘン五輪で見た「アーチェリー」に魅せられ没頭しました。
能面や仏像彫刻にも玄人はだしです。
そして勉強した技などが「弓曳童子」作りに役立ちました

「現代のロボットは動いて当り前ですが、
「からくり人形」の製作の「味」は格別なのです。

国際コンテストに出そうと「農機具倉庫」を改造した「工房」で
現在、取り組んでいるのが「手裏剣投げ人形」です。

「棒手裏剣」を投げて「壁に刺す」人間でも難しい動きを
「からくり人形」に「自動運転」させるのです。

人形が投げる事になる長さ「4,5cm」の「手裏剣」を
「工房の壁」に何度も投げてみてうまく刺さった時は
どこで手をどの様にして離しているかを研究し
その時の手裏剣の角度の研究は楽しい物です。
「もうすぐお見せできると思います」


安田紘一郎雑記帳

細井先生は三洋電機で「カラーテレビやプロジェクター」で
活躍して退職後、子供達に「物づくり」の
楽しさや素晴らしさを知って貰いたいと
自宅の離れに工房をつくり「からくり人形」制作を開始され
「5年」かけて「江戸三大座敷からくり人形」を
復元されたお話は大変「夢」があり、
先生の少年の様な目の輝きは羨ましく思いました。

「手裏剣投げ人形」を是非拝見したいものです。







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