松永 浩介 石ころと砂と

　何の　変てつもない　石ころ　だというのか

　にぎれば　　指のあいだから　落ちる

　たよりない　砂　だというのか

　そいつに　セメントを　ぶちこんでみろ

　一、二、四の　正確な　比率で

　水は　多からず　　すくなからず

　そいつを　ミキサーで　六十回転　こねまわし

　組まれた　仮枠の中に　流しこんでみろ

　かわけば、　もう　石ころでは　ない

　砂は　砂で　なくなる

　がつちり固まつた　コンクリートだ

　打てば　はねつかえす　コンクリートだ

　ますます　固まつてゆく　コンクリートだ

　コンクリートは　とけない

　コンクリートは　崩れない

　コンクリートは　燃えない

　コンクリートは　くさらない

　タガネや　　鉄砲で　少々　こずいた位では

　おどろかない

　おれらは　知つている

　鉄筋コンクリートの建物が

　世界の　あらゆるところで　出来つつあることを

　コンクリートの比率は　同じであることを

　その比率を　ごまかそうとするものの　あることも

　そうだ

　おれらは　石ころだ

　おれらは　砂だ

　おれらは　セメントで　ねられて

　固まつてゆく　コンクリートだ