伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

2月6日の事ども

2013年02月08日 | エッセー

 2月6日に起きた気象関連の話題を二つ。
 一つは津波。ソロモン諸島沖に発生したマグニチュード8.0の地震で、気象庁は北海道から九州にかけての太平洋側と沖縄に津波注意報を発表した。直後から、NHKの画面右下に小さな地図が表示された。日本列島が描かれ、太平洋岸を黄色い線が覆い点滅する。解除されるまで続いた(のはずだ。確かめてはないが)。
 で、ふと気づいた。あれ、地図に北方4島はあるのに、尖閣諸島がない。おかしくはないか? 
 北は択捉島までしっかり入っているのに、南は八重山諸島・与那国島までだ。全島でわずか6㎢ほどであるとはいえ、わが領土だと主張するなら当然入れるべきではないか。石垣島から150㎞離れてるとはいえ、別枠で入れる手がある。東京から1000㎞も遠方の小笠原でさえ、ちゃんとそうしてある。確かに尖閣に人は住んでいない。しかし、北方4島にも日本人はいない。漁はどちらでも行われている。尖閣が実行支配下にあるのに描き込まれず、北方4島は他国の支配下にあるのに記入されている。これはおかしい。
 NHKの放送であろうとも、ネタは気象庁であろう。気象庁は国土交通省の外局、立派な国の機関だ。本邦は総身に知恵が回りかねるほどの大男ではあるまい。重箱の隅をつつかれぬよう気配りが必要ではあるまいか。

 二つ目は大雪予報の大外れ。「浅い川も深く渡れ」とはいうが、「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」でもある。
 1月14日には予測に反して大雪となった。気象庁は羹に懲りて膾を吹いた。10センチの積雪予測に首都圏は厳戒態勢を取った。JR東日本は始発から東海道線や山手線など首都圏23路線で「間引き運転」を実施した。午後3時までに全線で通常運転に戻したものの、新宿などターミナル駅は通勤・通学の乗客で溢れた。
 大雪に備えて数時間も前に出勤した人も多かった。タイヤチェーン、長靴、スコップ、融雪剤などの「雪対策グッズ」が飛ぶように売れ、品薄や売り切れ、メーカーでの在庫不足も起きた。猪瀬都知事も切れた。再び予想が外れた場合は、気象庁の「責任を追及します。狼少年は許さない」とツイッターに書き込んだ。
 去年あったイタリアでの地震裁判のようだ。09年に大地震を予測して小規模地震が起き、これ以上は来ないと安全宣言した数日後に大地震が起こった。ために、過失致死罪で科学者など7人が4年の禁錮刑に処せられた裁判だ。ガリレオをはじめ、イタリアは科学者に特に冷たいお国柄らしい。
 平成になってからか、NHKは「天気予報」とは言わなくなった。「気象情報」と言う。確かに他局よりは説明が懇切丁寧だ。しかし勘ぐれば、情報を提供しているのであって予報はしていません、との逃げを打っているのかも知れない。
 ともあれ、予報ひとつでソルドアウトが起こるほどモノが売れる。ヒトが動き、カネが回る。なんだかアベノミクスの小規模実験を見ているようで、落ち着かない一日であった。 □