伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

不思議の30%

2021年06月28日 | エッセー

 今月25日TBS系『炎の体育会TV』に、現役通算打率.303だったマスクドスラッガーが登場した。取り立てて野球のファンではないが、打率3割には俄然興味をそそられた。芸能人との勝負はさすがにマスクマンの勝利となり、仮面を外すと元横浜ベイスターズ・鈴木 尚典(タカノリ)が顔を出した。
 どうも『.303』、3割3厘、30%が気に掛かる。調べてみると、3割打者は希少種であることが判った。2020年セ・パプロ野球平均打率が.250。長嶋さんが歴代4位で.305。イチローが日米通算.322。やはり3割打者はレアケースだ。
 想を飛ばして政界を見てみる。歴史社会学者 小熊英二氏は、「3割が与党の固定票、2割が野党の固定票、残り5割が棄権を含む無党派だ」という。ゲリマンダーにもよるが、「3割」で政権を担い、「5割」が微動すれば勢力図は大きく変化する。そういう構図だ。3割がカギで、かつ雌雄を決する。
 昨年3月国税庁が発表したところによると、全国の赤字法人は66.1%。逆にいうと、儲かっているのは3割台。なのに残り7割はなぜ倒れないのかは手厚い保護政策があるからだろうが、凡愚には雲を掴む話である。ともあれ、ここでも3割台にボーダーラインがあると見ていいい。
 哀しい3割がある。沖縄には日本全体にある米軍専用施設のうち70%がある。つまり、本土の負担は3割ということだ。日米共同利用を含めると沖縄単独では22.5%だが、それにしたって、決して低い値ではない。同じ日本でありながら、本土は3割しか背負っていない。言い訳が立つ数字ではなかろう。
 例示すればあと幾つもあるだろう。だが、牽強付会、当てはめのピットホール(仮説に反する事例はネグって適合するものだけを専一的にチョイスする)は避けたいし、なによりこのぼんくら頭にはこれぐらいしか浮かばない。
 TBSに提案したい。『炎の国会TV』はいかがであろう? 現職閣僚がマスクドポリティシャンとして登場し、市民代表の質問に応える。判定はオーディエンスの3割が納得するかどうか。達しなければマスクマンの負け。ペナルティーで顔を晒す。なぜ3割か? 先述の3:2:5の3、30%なら国民の太っ腹が飲み下してくれるだろうと期待するからだ。言っておく、それにしても相当キツい。『不思議の30%』は龍門の激流だ。 □