いもあらい。

プログラミングや哲学などについてのメモ。

愛人[AI-REN]。

2006-04-22 01:07:00 |  Review...
愛人[AI-REN]を読んで。

以前、心に少年少女の輝きをレビューで気になって、今日やっと5巻を入手して読んだのですが・・・

いや、素晴らしい!
ここまで活き活きとした生が、そして死が描かれているとは!

死への恐怖、それは同時に生への渇望でもある。
死ぬことを恐がって何も出来なくなってしまっては元も子もないですが・・・しかし、安易な「救い」に手を伸ばしてしまった瞬間に、その人の「生」は終わりを迎えてしまう──苦しみもがいていた「その人」はいなくなってしまう。

強く印象に残っているシーンから。

男 「なんて言いわけすればいい・・・
   明日もこの夜の中で
   新しい生命は何も知らされずに
   生まれてくるだろう・・・
   なんて言いわけすればいい
   生まれる前から
   きみは呪われていると
   世界は闇だと言わなければならない
   ゆるして・・・」
ナギ「ゆるさない!
   ゆるされないぞ!
   生きてなさい!
   まだだめです!
   朝がくるまで生きてなさい!
   呪われたまま!
   許されないまま!
   生きてなさい!
   呪われ病んで
   闇の中に生まれてくる子供たちを
   ようこそと手を広げて迎えましょう!
   わたしたちが歓迎しなければ
   どうするのです!」
(#38 夜 より)



そして、最後。
多くの人々の祝福のもとに生まれる新しい生命。

寒い・・・
まぶしい・・・
こわい・・・
こわいよ・・・
大丈夫 こわくないよ
この世界は 君を
応援しているよ
待ち望んでいるよ
歓迎しているよ
よく聞いてごらん
君の扉をたたく手は 何て言ってる?
みんなは君に 何て言ってる?
勇気を出して 目をあけてごらん
君を迎える たくさんの人たちと
うつくしい世界が 必ず見えるから
これから先
自分のことが 小さく醜く
汚いものにしか感じられない時も
くるでしょう
世界のすべてが よそよそしくて
冷たい石のようにしか感じられない時も
くるでしょう
苦しくて 苦しくて
泣き声さえ出せない時も くるでしょう
でも
おそれないで
それはとてもまっとうなことです
こわがる必要はありません
忘れないで
いま この瞬間
世界のすべては 全身全霊で
君を祝福している!
忘れないで
君はかけがえなく
愛されて生まれてきたんだ!
(#43 春の日に、君と帰る より)



祝福された生・・・
素敵すぎる・・・



それにしても、今改めてkagamiさんのレビューを見ると・・・
てっきり生への意志への称賛が書かれているだと思っていたら、そうではないんですよねぇ
むしろ、教会的な救いに価値を見出しているような、ニーチェの言っていることとはまるで正反対のことを書いてますしねぇ。
(ニーチェの引用(怪物うんぬん)も、まるっきり意味が違うような・・・あれは限りない懐疑、否定が可能なのかという自己への戒め、獅子の姿への批判ですよね?)
イクルも全然聖人君子なんかじゃなくて、ただの一個の人間──最後の最後まで生き抜いた一人の「人間」にすぎません。
もちろん、それが出来るかどうかは別の話になりますが(そして、自分には難しいとも思いますが)、どういった生が活き活きとした生なのか、人の心を動かすのかということが描かれていることは、十分に意味を持つと思います。