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2 国語の「読み物」授業での言語交流 ~主に小学校を想定して~
(1)読み物授業での言語交流とはなにか
A 先生と子供達による言語交流 ~前回ここまで~
B 教材(作者)と各読者(=先生、子供達)との個別の言語交流
○この形は、子供達が各自で音読したり黙読したりしている場合の形。各自が、一般的な《本と読者との言語交流》と同じ形になります。
つまり、 [表現者+動機+脳内作業] ⇒ 言葉(作品) ⇒[受容者+脳内作業] という一方通行の形です。
ただし、先生は一般的な読者と同じではなく、指導者としての思考が加わるのが普通でしょう。<下図参照>
・先生から子供達に特別な指示(例えば、「主人公がどんなことを思っているか、想像しながら読みなさい。」など…)が与えられている場合は、各子供の脳内作業には、指示に関して生じる思考や想像も加わるでしょう。
・各自の脳内作業の結果、各自の脳内宇宙に、《おおむねひとまとまりの、「個性的な脳内作品世界」》ができる、と想定できます。
<参考>
※「個性的な脳内作品世界」・・・各自の脳内宇宙がもともと個性的なので、作品の言葉についての各自の脳内宇宙による読み取り・解釈により想像(=創造)される「脳内作品世界も個性的になります。
例えば、ある作品内の「海」という言葉を読み取るという、もっとも単純な場合を考えてみます。
各自が読み取った「海」という言葉の意味は、《それまでの各自の経験のちがいに応じてちがう》のが普通です。
この場合の「各自が読み取った意味」とは、国語辞典に書いてある《「海」という言葉の意味を説明した言葉》ではありません。
その意味とは、《その作品の言葉を読む前までに、個性的に脳内にできていた{各自の{「海」}という言語概念につながるすべての概念(≒記憶など)のネットワーク}》 を使って解釈・想像された{脳内作品世界のなかの海}ということです。
かなり、理屈っぽくなってしまいましたが、《「海」の意味が個性的である》ということを確かめるのは簡単です。
いちばんわかりやすいのは、子供達に「作品のなかの海の絵」を描かせることです。《それぞれが読み取った(=想像・創造した)海》 を描くのですから、みんな違う絵になるはずです。
(※もちろん、「似通った部分」もあるでしょう。そもそも各自の脳内宇宙どうしに「似通った部分」がなければ、あらゆる共通理解やコミュニケーションが不可能になるのですから。)
それより難しいのは、「作品のなかの{海}のようす」を言葉で説明させることです。
《{海}の視覚イメージをそのように絵に描く》 こととはちがい、{海}についての脳内のすべてのイメージ(映像、音、味、触った感じなど…)を言葉で表現しなおすのはけっこう高度な知的作業だからです。
(※スムーズに書かせるためには、日頃から、例えば、《教室の風景を言葉でスケッチする(=表現しなおす)》などの「作文訓練」が必要です。)
~次回、言語交流:とても複雑なCの形~
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