京都大学から、学生運動の歴史的大爆発へ巨大な突破口が切り開かれた! 闘う学生が情勢の主導権を握り、打倒寸前の安倍政権に対し怒りの火柱を上げた。「全国大学に戦争反対の学生自治会建設を!」の闘いは、ついに時代の最前線に公然と姿を見せた。
焦りに駆られた安倍政権と警視庁公安部は11月13日に京大熊野寮を襲撃し不当家宅捜索を行った。だがそれに京大生は猛然と怒り、抗議をたたきつけた。11・2に不当逮捕された3学生に対し、東京地方裁判所は13日付で勾留延長を決定した。絶対に許さない。
11月12日正午から「京都府警は謝罪しろ! 3学生を今すぐ釈放しろ! 全学緊急抗議行動」が京大時計台クスノキ前で300人が結集し打ち抜かれた。この行動は「戦争と民営化の安倍政権を倒せ」を掲げ闘われた11・2集会のデモでの学生3人への警視庁公安部のデッチあげ逮捕と、それに続く4日の「京大公安摘発事件」(公安刑事が京大構内に潜入し、全学自治会同学会中央執行委員会の宣伝活動を監視していた。公安刑事は学生に取り押さえられ、大衆的な弾劾をたたきつけられ、追放された)を徹底弾劾するものだ。このような大学自治破壊、全学生への思想弾圧を許さないという怒りで団結し、闘いの全学的陣形をつくるために同学会中執を中心とする実行委員会が呼びかけた。
同学会副委員長の纐纈(こうけつ)貴文君が元気良く集会開始を宣言した。同学会副委員長の作部羊平君が基調報告に立ち、「一連の事件は、戦争を推し進める安倍政権下で起きた大学自治の侵害であり、学生弾圧事件だ」「同学会中執は大学の自治の解体、学生自治活動への弾圧を許さない」と提起した。
続いて、農学部生が農学部自治会常任委員会で採択した、京都府警弾劾の声明文を読み上げた。さらに、熊野寮生が寮自治会常任委員会で採択した声明を読み上げ「〝公安警察のスパイ活動は看過できない〟との声が多くの寮生から上がっている」と報告した。
全学連の斎藤郁真委員長がマイクを握り、日比谷公園で男性が安倍政権に抗議し焼身した事件にも触れ「大学、社会のあり方がこれでいいのか、同学会中執とともに議論してほしい」と訴えた。
■公安警察を次つぎと弾劾
いよいよリレートークだ。集会の盛り上がりは最高潮となった。「警察が突然、デモ参加者にタックルしてきて『公妨』など絶対許せない!」「原発再稼働、増税など安倍政権の政策は1%の資本家が利益を得るだけだ。戦争だって同じだ!」など京大生が次々と怒りをほとばしらせた。
高槻市から駆けつけた全国水平同盟高槻支部、植木団地労働組合の委員長と組合員から激励の差し入れとメッセージ、カンパが届けられた。
最後に、大森靖之同学会委員長が行動方針を提起した。大森君は「委員長になって以降、今、学生自治会への確信を一番深めている」と明るく提起した。
昼の大高揚を引き継ぎ、午後6時半から文学部新館第3講義室で討論集会が行われた。集会には150人の学生・労働者が結集した。
連帯あいさつを全国金属機械労働組合港合同の木下浩平執行委員と全学連の斎藤委員長が行った。木下さんは、11・2集会があらゆる怒りを結びつけ、労働運動をよみがえらせる展望を示したことが安倍政権を根本からひっくり返す力となっていると提起した。斎藤委員長は、8年半でのべ126人の逮捕、13人の処分を出しながら闘われてきた法大闘争と、同学会再建以降の京大の闘いの最高到達地平が今回の大勝利だと提起した。
昼にも増して熱のこもった基調の提起を同学会副委員長の作部羊平君が行い、全参加者が拍手で応えた。
■大学を戦争反対の砦に!
法大暴処法弾圧裁判弁護団長の鈴木達夫弁護士が「大学自治と戦争」と題して記念講演を行った。鈴木弁護士は、冒頭、「安倍をついに倒す時だ!」と闘争宣言を発した。鈴木弁護士は「国家権力が全体重をかけてきた、青年・学生から政治を奪う攻撃を打ち破る巨大な一歩が始まった」と一連の闘いの意義をつきだした。さらに戦前の京都学連事件や滝川事件、52年の東大ポポロ事件など歴史を振り返り、「このポポロ事件での大学自治の考え方も今は違う」として、それを超える大学自治論を豊かに提起した。
「戦争の時代だからこそ大学をめぐる取り合いが激しくなっている」「一握りの資本のための大学から、労働者人民のための大学に!」「大学を戦争反対の砦に! そのための大学自治をうち立てよう」
熱のこもった講演を受け、全参加者は法大闘争8年半を軸とした全学連の闘いが戦前・戦後の学生運動をのりこえる地平を形づくりつつあること、現在の京大攻防が歴史的意義を持っていること、戦争反対の学生自治会を全国大学に建設する闘いの正義性と展望を深く確信した。
法政大学文化連盟の武田雄飛丸委員長、広島大学学生自治会、東北大学学生自治会の澤田光司副委員長、沖縄大学学生自治会の赤嶺知晃委員長が闘いの報告と決意表明を行い、広大と東北大から激布が手渡された。
最後に、集会宣言を拍手で採択した。宣言の内容は、①京都府警は謝罪せよ、②3学生を釈放せよ、③京大当局は山極寿一総長の責任で声明を出せの3点を要求していくというものだ。大森君が団結ガンバロー三唱で集会をしめくくった。
前進速報へ
鈴木弁護士の京都大学での講演「戦争と大学自治」については、鈴木たつおと共に歩む会のホームページに動画が掲載されています。ぜひ目を通してください。
付録
裁判所は銀座の敵を京で討つような捜索令状を許して良いのか
渡辺輝人 | 弁護士(京都弁護士会所属)(2014年11月14日)
昨日、警視庁(警視庁というのは国の組織ではなく、県警の東京都バージョンですよ)が、京都大学の熊野寮に家宅捜索に入った、という話がニュースになっています。
京大・熊野寮を捜索 警視庁公安部、公務執行妨害の疑い
東京・銀座でデモ行進の警備に当たっていた警察官に暴行したとして、京都大生ら3人が公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕される事件があり、警視庁公安部は13日午後、京都市の京都大学生寮「熊野寮」の家宅捜索を始めた。捜査関係者への取材でわかった。
出典:朝日新聞
筆者は「警視庁!?京都府警じゃないのか」という点でびっくりし、名神高速を警察の青いバスが列を作って上洛してくる様を想像したら「えらい遠いところからお越しになられましたな~」などと思い、滑稽さに笑いすらこみ上げてくるわけですが、傍目に見ても、この事態はちょっと尋常じゃないですよね。
捜索・差押えには要件がある
そもそも、警察は好き勝手に他人の家に上がり込めるわけではありません。日本国憲法では以下のように定め、住居の不可侵は国民の基本的人権です。若干解説するとここでいう「第三十三条の場合」とは現行犯逮捕の場合で、令状を発する「司法官憲」は裁判所のことを言います。要するに家宅捜索という重大な人権侵害をするためには、裁判所が正当に発する令状が必要なのです。
第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
○2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
これを受けた刑事訴訟法でも捜索・差押えに関するルール(刑訴法218条、219条、刑事訴訟規則155条以下)が定められていますが、この点について筆者が司法試験時代に読んだ刑事訴訟法の教科書には以下のような記載が見られます。
差押え・捜索の要件としては「犯罪の捜査をするについて必要がある」ときに許されるのであるから、具体的な被疑事実があり、その捜査に関して、すでに述べたような差押え・捜索の対象が特定しているのでなければならない。これを差押え・捜索の「理由」と呼ぶことができよう。さらに--明文規定は無いが--捜索・差押えの「必要」の有無も考慮しなければならない。犯罪の態様や軽重、対象物の重要性の程度、差押え・捜索を受ける者の利益の大小など諸般の事情に照らして、明らかに差押え・捜索の「必要」がないと認められるときは、差押え・捜索は許されない。裁判官は、令状の発付に際し、この点も判断しなければならない(最決昭44・3・18)
出典:弘文堂『刑事訴訟法 上 新版』松尾浩也 1999年
裁判所はこんな令状発付をしていていいのか
11月2日に東京で行われたデモにおいて、京大の学生らが警視庁の機動隊員に体当たりしたり、殴ったりの公務執行妨害をしたのか、それは筆者の知るところではありません。しかし、仮にそのような事実があったとして、東京・銀座で行われたデモの現場で現行犯逮捕された公務執行妨害罪の証拠が10日以上経ってから京都で発見される可能性というのは、いろんな意味でなさそうな話です。そもそも対象物をどうやって特定するのでしょうか。殴られた警察官とその同僚が証言できるので、(本当にそのような暴行行為があったのなら)公判維持のための証拠が不足しているとも思えない。「組織性の有無を捜査するため」というもっともらしい理由が聞こえてきそうですが、そんな分かりやすい証拠をわざわざ京都の“アジト”に残すんですかね。こんな案件のためにエッチラオッチラ東京からやってくるのは、この間の一連の動き(京都府警の警察官が京大構内で“逮捕”されたりしていますね)に対する報復・見せしめとしての要素を感じざるを得ません。
熊野寮の学生たちの肩を持つつもりはありませんが、裁判所が捜査機関のチェック機能を果たさず、ザルになっている状況にはもっと目を向けるべきだし、日本の司法が中世レベルだと揶揄される原因を裁判所が作り出していることを、裁判所はもっと自覚すべきだと思います。