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《注目記事》 がんと闘わない生き方―乳がん患者として(2)術前化学療法 渡辺容子氏

2009年04月07日 13時51分51秒 | 政治・社会
■ がんと闘わない生き方―乳がん患者として(2)術前化学療法 渡辺容子氏

2009/03/31 インターネット市民新聞「JanJan」

http://www.news.janjan.jp/living/0903/0903300491/1.php

1994年に発見した右胸のしこりは徐々に大きくなっていました。仕事を休んで病院に行くのが億劫で私は6年間放置した後、慶応病院の近藤医師に診てもらい、別の病院での術前化学療法を選択しました。ところが手術の前日、担当医師が触診したところ「触れなくなった。切らないことにしよう」と言いました。日本の病院では標準治療が行われることの方が稀なのです。

患者は医師任せにせず自分で勉強し、どんどん質問し、セカンドオピニオンを取り、納得のいく治療を選ぶことが大切です。

6年後の受診

1994年に発見した右胸の5ミリのしこりは徐々に大きくなっていました。大きくなっているのだから、これはがんかもしれないと思いましたが、私は受診しませんでした。のんきだと思われるかもしれませんが、がんがそれほど怖くなかったのです。その後読んだ近藤医師の本には「がん検診が寿命を延ばしたという証拠はない。早期発見早期治療で寿命が延びたという証拠はない」と医学論文の統計データをもとに書いてありました。それに乳がんはそれ自体では死に至ることはないとのことです(乳房が生命維持に必要な臓器でないため)。

転移が問題になりますが、早期発見早期治療に意味がないということは、がんを放置していると転移するという広く信じられている俗説は間違いということになるではありませんか。

(このことについては回を改めて、詳しく書きます)。

仕事を休んで1日がかりで病院に行くことが億劫ということもあり、私は6年間放置していました。

しかし最後の1年間は急速に大きくなっていると感じ(注:がんは細胞が2倍、2倍と分裂して大きくなるので、大きくなればなるほど、急速に大きくなっているように感じる)、2000年3月、仕事が一段落した年度末に受診しました。

慶応病院は特定機能病院なので紹介状なしで直接行くと「選定療養費」として5250円かかるため、前日に6年前に行った天野クリニックでエコーを撮ってもらい紹介状を書いてもらいました。

3月22日、近藤医師に診てもらったところ、やはりがんで4×4.5センチになっていました。

近藤医師は「前のことを覚えていますよ。ずいぶんゆっくり大きくなったなあ」とおっしゃいました。

腋の下のリンパ節にも転移が数個あり、すぐに治療することになって、当時、近藤医師とチームを組んでいた神奈川県にあるO病院の外科医A医師を紹介されました。電話すると「明日来なさい」ということで、予約を取ってくれ、翌日、O病院に行くことになりました。

(本で読んでいたので温存のためには遠くの病院に行かなければならないことは知っていました)。

O病院で術前化学療法を選択

O病院のA医師のところには、温存を求めて日本中から近藤医師を訪ねてきた患者が押し寄せ、ものすごい混み方でした。予約時間はあるものの、守られたことはなく、何時間も待たされることが常でした。患者が診察室を出入りする時間を節約するために、診察室は2つあって、患者はそこで待っており、A医師の方が行ったり来たりするのでした。

私のがんはかなり大きい方です。A医師はこのままでも温存はできると言いながら、手術の前に化学療法(術前化学療法)をすることを提案してきました。抗がん剤が効いてがんが小さくなれば、切る範囲が狭くなるし、抗がん剤が効くがんかどうかがわかるというのです。(注:当時、一般的には術後、化学療法をしていたので、がんを取ってしまった後であり、抗がん剤が効いたかどうかはわからない。化学療法は、この時点の検査では発見されないが、全身に転移しているかもしれない微細ながん細胞をたたくために行う)。

私はリンパ節転移のことが気になっていました。A医師はリンパ節を切除すればリンパ浮腫(リンパ液の流れが悪くなって腕が腫れる後遺症)が出る可能性が2割あると言いました。リンパ節を切除すれば、リンパ浮腫にならないように土いじりは禁止、蚊に刺されることにも気を使い、山登りの重いザックを背負うこともできなくなってしまいます。私は、土いじりとアウトドアが大好きなので、がんはともかく、リンパ節を切りたくない思いでいっぱいだったので、A医師にその話をしました。

A医師はそれなら抗がん剤が効くかもしれないから、術前化学療法にしようと言い、私も異存はなく、そうすることに決めました。

リンパ節は切らなくていいことに

あっという間に治療法が決まり、5日後の3月28日には抗がん剤治療が始まりました。

私の受けたのはCMF療法といって、3種類の抗がん剤(シクロフォスファミド、メトトレキセート、フルオロウラシル)を使う多剤併用療法でした。抗がん剤は強力で副作用が強いため、副作用の異なる多剤を組み合わせ、それぞれの薬を十分に使えるようにするものです。CMFは乳がんの古典的な標準治療です。

2週続けて点滴し、2週空ける、これが1クールです。昔は12クールやっていたのですが、当時は6クールでも同じ成績であることが証明されており、近藤医師たちはもっと少なくてもいいと考え、回数を減らそうとしていました。A医師も術前化学療法は3クールまでしかやらないと言っていましたが、私の都合で入院する日程を延ばしたかったので4クール行いました。もちろん、抗がん剤が効いてがんは
小さくなり続けていたことが前提です。(効かなければその時点で化学療法は中止)

3クールまでにかなり小さくなり、腋の下の転移も小さくなっていましたが、その時点ではA医師はまだリンパ節を切ると言っていました。しかしごね得のプラス1クールで、リンパ節転移は触診で触れなくなったのです。手術の前日、A医師はもう一度触って、「手には触れなくなった。エコーには映っているけど、切らないことにしよう。5クール(術後に行う抗がん剤1クール)で消えるかもしれないし」と言いました。ラッキー! 私は大喜びしました。

抗がん剤の副作用

さて、気になる抗がん剤の副作用ですが、強力な吐き気止めが出ていたため、数日間むかむかした食欲がなくなる程度ですみ、吐いたりはしませんでした。髪の毛も抜けたら抜けたで一生に一度くらいスキンヘッドもいいかもと思っていましたが、ちょっと薄くなったという程度で終わりました。

一番大事な白血球の減少ですが、点滴後1週目には2000位に減った時があったものの、次の点滴の時には7000位に戻り、優秀でした。(3000以下だと点滴は中止になる)。

副作用は人によって全く違い、1回の点滴で髪の毛が全部抜けてしまった人もおり、吐き気に苦しんで死ぬ思いをして1クールで拒否した人、白血球が戻らず、点滴できない人などさまざまでした。

副作用を抑える薬はどんどん強力になり、抗がん剤治療は患者にとって楽なものになっていますが、近藤医師はそれが逆にこわいと言っています。なぜならば副作用が出れば医師は注意するが、副作用が抑えられれば大丈夫と思って点滴し、突然重篤な副作用が出る可能性があるからだそうです。

特に白血球を増やす薬は疑問だとのことです。

標準治療が行われているのはわずか5%

ところで、この間の生活ですが、治療に入ってから仕事を休んでおり、点滴のたびの副作用も数日で消えたため、合い間にはのんきに旅行し、乳がん関係の本を読みあさっていました。

近藤医師の本は読破、それに他の医師の本も図書館にある本はほとんど借りて、比較しました。

名前を挙げることはしませんが、他の医師の本にはひどい記述が多く、中には科学的根拠(論文や統計データ)を示さずに「がんをさわると転移を助長する」「病院のはしごは危険」「治療が遅れると転移するのでなるべく早く治療を」「(ハルステッド手術を)治療成績の良好な定型手術」「生検でがんが飛び散危険がある」「無理な温存手術の結果、再発して亡くなる患者さんも増加している」「術後補助療法は経口抗がん剤(注:効かない)」などなど、医学的に誤ったことが堂々と書かれていて驚きました。

有名な病院の外科部長さんの本などでこれです。中には現在でも発売されている本もあるので要注意です。

最近読んだ本によると、国立がんセンター東病院の南博信医師(現神戸大学病院腫瘍内科教授)らが、他の病院から紹介されてきた進行乳がん患者78人について、それまでにどのような治療が行われてきたかを調べたところ、標準的でエヴィデンスに則った治療はわずか5%、標準として許容範囲の治療は38%で、標準からかなり外れた治療が22%、害をもたらす可能性のある治療が23%で、合わせて45%もが「不合格」になったそうです。(「評価不能」が12%))。

標準からはずれた治療とは、標準治療の抗がん剤を用いず、効果が認められていない経口の抗がん剤を使用している場合(日本で多く使われているので要注意)、害をもたらす治療とはホルモン剤が効かないタイプのがんなのに、ホルモン剤を使っている場合(効果が期待できない上、ホルモン剤の副作用の恐れがある)、がんが小さくならないのに抗がん剤を続けている場合などです。分析にあたった南医師は
「標準治療についての情報が一線の医師に伝わっていない。特に乳がんを専門としていない

外科医にその傾向があるようだ」とし、医師への教育制度の充実や、学会の治療ガイドラインの普及が急務だと話しているそうです。(『がん治療の常識・非常識』田中秀一著・講談社2008)このように日本の病院では標準治療が行われることの方が稀なのですから、患者は医師任せにせず、自分で勉強し、疑問はどんどん質問し、セカンドオピニオンを取り、自分で納得のいく治療を選ぶことが大切です。

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(終わり)

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