杉並からの情報発信です

政治、経済、金融、教育、社会問題、国際情勢など、日々変化する様々な問題を取り上げて発信したいと思います。

【YYNewsLiveNo2791】■New!【重要記事精読】日本の「人質司法」をどうするか――長期勾留や自白偏重に国際社会の批判

2019年06月04日 23時39分11秒 | 政治・社会
いつもお世話様です。                          

【YYNews】【YYNewsLive】【杉並からの情報発信です】【YYNewsネット世論調査】を主宰する市民革命派ネットジャーナリスト&社会政治運動家の山崎康彦です!

本日火曜日(2019年06月04日)午後9時15分から放送しました【YYNewsLiveNo2791】の放送台本です!

【放送録画】102分45秒

https://ssl.twitcasting.tv/chateaux1000/movie/548377720

【放送録画】

☆今日の最新のお知らせ

①昨日月曜日(2019.06.03)夜の放送メインテーマ『安倍晋三ら政治権力側は『2020年東京オリンピック』を『復興五輪』にして2011.03.11の『東電福島第一原発大事故』による『東日本住民3000万人被ばく』の事実を隠ぺいしようとしている! 』の『YouTube表紙』です。

20190604隠ぺい

現時点での視聴者数:

【TwitCasting】: 316名

【YouTube】: 193名

【FaceBookライブ】:44名
___________________________
計       553名

②明日水曜日(2019.06.05)は語学授業がお休みですので【仏日語放送】をお送りします!

☆今日の画像

①金正恩委員長が2日に観覧したと朝鮮中央通信が3日報道した軍人家族芸術公演に失脚説が出ていたキム・ヨンチョル労働党副委員長(白丸)が同席し健在が確認された。(ハンギョレ新聞記事)

20190604金副委員長健在

②欧米の主要国で被疑者はどう扱われるか (YahooNews特集記事)

20190604欧米での被疑者の扱い

③警察・検察による容疑者の拘留期間の国際比較 (ブログ記事 作成山崎康彦)

20190604拘留期間1

☆今日のひとこと

■昨日(2019.06.03)のブログ記事『安倍晋三ら支配勢力は『2020年東京オリンピック』を『復興五輪』にして『東電福島第一原発大事故(山崎注1)』による『東日本住民3000万人被ばく』の事実を隠ぺいしようとしている!』より!

(山崎注1):国際原子力事象評価尺度 (INES) において最悪のレベル7(深刻な事故)

【画像】国際原子力事象評価尺度 (INES:International Nuclear and Radiological Event Scale)

20190604原発事故基準

①もしも20XX年にモスクワで『夏季オリンピック』が開催されるとして、もしもロシア政府とオリンピック組織員会が『ロシア復興五輪』を掲げて『聖火リレー出発点』を1986年に原発大事故(山崎注2)を起こした『チェルノブイリ』に決定し『聖火リレールート』を『放射能汚染地域』にすることにしたら、猛烈な批判が沸き起こって実現は不可能だろう!(山崎康彦)

(山崎注2):国際原子力事象評価尺度 (INES) において最悪のレベル7(深刻な事故)

②もしも20XX年にニューヨークで『夏季オリンピック』が開催されるとして、もしも米国政府とオリンピック組織員会が『アメリカ復興五輪』を掲げて『聖火リレー出発点』を1979年に原発大事故(山崎注3)を起こした『スリーマイル島』にして『聖火リレールート』を『放射能汚染地域』にすることにしたら、猛烈な批判が沸き起こって実現は不可能だろう!(山崎康彦)

(山崎注3):国際原子力事象評価尺度 (INES) においてレベル5(事業所外へのイスクを伴う事故)

③それでは安倍自公政権とオリンピック組織員会が『2020年東京オリンピック』を『復興五輪』と位置づけ、『聖火リレー出発点』を『福島第一原発』から30kmしか離れていないサッカー場に決定し初日の『聖火リレールート』をすべて『放射能汚染地域』に決定したことに対して、何の批判も起こらずそのまま実現してしまうのはなぜなのか?(山崎康彦)
☆今日の座右の銘

New!①殺された石井紘基衆議院議員の言葉 (殺される半年前に友人に宛てた手紙より)

「これにより不都合のひとは多くさん居ますので身辺には注意しますが、 所詮、身を挺して闘わなければ努まらないのが、歴史的仕事ということでしょうから、覚悟はしていますが、それにしても、こんな国のために身を挺する必要なんてあるのかな、との自問、葛藤も無きにしも有らず、です」

☆今日の推薦図書(朗読+テキスト)

■推奨本朗読】衆議院議員石井紘基著『日本が自滅する日「官僚経済体制」が国民のお金を食い尽くす!』(PHP2002年1月23日発行)

第九十一回目朗読 (2019.06.04)

第三章 公共事業という名の収奪システム (P188-235)

http://www.asyura2.com/09/senkyo68/msg/1072.html

第三節 ダム建設という巨大なムダ (P217-235)

●プログラム三 高速道の建設を凍結する (P241-242)

以上の原則に基づいて特殊法人を具体的にどう改革するか。小泉内閣の特殊
法人改革で最大の問題になっている道路四公団の問題から始めよう。

この間題を考えるには、わが国の道路行政が完全に行き詰まっているという
認識を明確にする必要がある。わが国にはトータルな交通運輸政策がなく、狭
い島国で旧運輸省は空港、港湾、新幹線を、旧建設省は高速道路などを、それ
ぞれ局ごとに作れ作れでやってきた。その結果、港湾は一〇九三、空港は一〇
〇ヵ所、新幹線は現在工事中を含め総延長二四六五キロメートル、高速道路は
六六〇〇キロメートルとなったが、ごく少数の路線、施設を除いては、すべて
不採算の状態で、各省庁の利用予測は他の公共事業と同様、大きく狂ってい
る。

これを抜本的に改革するには、まず、国土全体の将来像を作り、その中で交
通機関全体の有機的、機能的組み合わせに自然環境、経済・社会のあり方を長
期的に考慮した「国土と交通のあり方」の基本構想を策定することが必要だ。
そして、建設は、原則として政府自らが指揮をとったり金を出したりするので
はなく、市場経済と社会が必要な限りにおいて建設、維持することにする。

こうした原則にたって高速道路建設計画を全面的に見直し、向こう二〇年間
の建設凍結(モラトリアム)を決定するのだ。なぜなら、今後大きな需要の増
加は見込めないし、これ以上、自然環境、生活環境を犠牲にすることはできな
いからだ。さらに高速道路を造り続ければ、社会資本としての経済性が失われ
るばかりか、マクロの社会・経済生活にコスト高というマイナス効果をもたら
す。とくに、日本道路公団、首都高速道路公団、阪神道路公団、本四連絡橋公
団、アクアラインなどは財政破綻を来している。このまま放置すれば悲劇的事
態に至るのは明白である。

(つづく)

(1)今日のメインテーマ

■New!【重要記事精読】日本の「人質司法」をどうするか――長期勾留や自白偏重に国際社会の批判

2019/01/31 Yahoo!ニュース 特集編集部

https://news.yahoo.co.jp/feature/1218

2018年11月19日の夕方、日産自動車会長(当時)のカルロス・ゴーン氏が逮捕された。それから約2カ月が過ぎた今も、ゴーン氏は東京拘置所に勾留されたままだ。刑事事件で逮捕された場合、日本では実質的に勾留期間の制限がない。その間、面会時間は極端に制限され、容疑を認めなければ密室での厳しい取り調べが延々と続く。否認すればするほど勾留が長くなる、いわゆる「人質司法」だ。冤罪(えんざい)を生む温床と言われる人質司法とは、どのようなものなのか。古くて新しいこの課題。この話はまず、鹿児島から始まる。(文・木野龍逸、写真・八尋伸/Yahoo!ニュース 特集編集部)
「警察の態度は、悪いっちゅうもんじゃない」

鹿児島県の志布志市志布志町(旧曽於郡志布志町)は大隅半島の東側に位置し、志布志湾と向き合っている。桜島は山を越えた西側だ。

鹿児島市内から志布志市まで車で約2時間。そこからさらに山道を1時間ほど走ると、民家が10軒にも満たない懐(ふところ)集落に着く。「人質司法」による冤罪で知られる「志布志事件」は2003年、この山深い小さな集落で起きた。鹿児島県議選で買収などの公職選挙法違反があったとして集落に住む11人を含む計15人を逮捕。13人が起訴され、のちに全員が無罪になった事件である。

「志布志事件」が起きた懐集落。今の住民は十数人ほど

「警察の態度は、悪いっちゅうもんじゃないですよ。(逮捕される前の)任意の取り調べの3日目くらいのとき、部屋に入ったらいきなり、『こら、藤山! 死刑にしてやる!』って言われました」

事件で逮捕された一人、藤山忠(すなお)さん(70)は自宅でそう話した。述懐は続く。
「調べの間、机は蹴とばすわ、壁はたたくわ。壁を自分でたたいた刑事から『手が痛いから(罪を認めて)話してください』って言われたこともあります。それから1カ月近く、朝から晩まで延々とそんなのが続くんです。暴力団よりひどいですよ」

藤山さんは候補者側から現金を受け取った容疑をかけられ、逮捕後の勾留日数は185日に及んだ。取り調べ時間は、任意の期間を含め計538時間になる。とくに志布志署での任意の取り調べは苛烈だったという。

藤山忠さん

「机の上に両手を置けって言われて、ずっと同じ姿勢でいさせられるんです。つらくて手を机から下ろすと、怒られる。刑事は『このままだと、いつまでたっても会社にはいけんぞ』とか、『おまえが認めてくれれば、オレが一生面倒見る』とも言っていました。同じことをずっと言われ続けると、頭がボーッとしてきて、考える力がなくなって、どうでもいいやって思えてくるんです」

強圧的な姿勢で自白させる捜査手法は「たたき割り」と呼ばれる。任意の取り調べが始まって数日後、つらくなった藤山さんは容疑を“自白”してしまう。“自白”すると、逮捕され、接見禁止によって会えるのは弁護士だけになった。逮捕後の取り調べは毎日、朝10時頃から夜8時頃まで。取り調べ時には腰縄でパイプ椅子にくくりつけられて身動きできなかったという。

「親を逮捕するって言われたことは3回ありました。でも、一番つらかったのは、取り調べ時間が長いことと、『やってない』と言っても同じことを何度も繰り返し聞かれることでした」

過酷な取り調べが行われていた鹿児島県警の志布志警察署

刑事訴訟法では逮捕後の身体拘束の期限は最長72時間。その時点までに起訴できなければ、検察官は最大10日間の勾留を裁判所に請求できる。それでも起訴できず、「やむを得ない事由がある」と認められるとき、さらに最大10日間の延長が認められる。勾留や勾留延長ができない場合、容疑者はすぐ保釈されなければならない。

しかし、別容疑での再逮捕や追起訴があるたびに勾留期限はリセットされる。また、起訴後の勾留期限は2カ月だが、証拠隠滅の恐れがあるなどと裁判所が判断すれば1カ月ごとに更新が可能で、更新回数に制限はない。このため勾留が無制限に延びていく現実がある。
身柄を拘束したまま長期間、長時間の取り調べを続け、容疑を“自白”するまで決して社会に戻さない。それが「人質司法」である。

“自白”すれば外に出られる、と捜査当局

志布志事件の「中心人物」とされたのは、この県議選で当選した中山信一さん(73)である。中山さんも厳しい取り調べの末、懐集落内で現金などを配り、票の取りまとめの依頼などをしたとして、2003年6月に公選法違反容疑で逮捕された。

「『認めればすぐに出られる。罰金で済む。何も失うものはない』って、警察はずっと言ってましたね」

同じ日、妻のシゲ子さん(70)も逮捕された。

中山信一さん(左)、シゲ子さん夫妻。2人とも虚偽の自白を強要された

逮捕後は2人とも否認を続け、信一さんは2度の誕生日をはさんで395日、シゲ子さんは273日にわたって身柄を拘束された。

志布志事件では、「他の人が認めているからおまえも認めろ」という違法性の高い尋問もたびたび行われたことが判明している。信一さんはこれで、一度だけ容疑を認めたことがあった。

「家内が認めた、って警察に言われたんです。でも接見禁止で直接確認できず、言われるがまま(自分も)容疑を認めてしまった。ところがその日の午後、接見に来た弁護士に聞いたら、家内は否認を続けてる、って。そこまでウソついて認めさせようとしてるのか、って」

シゲ子さんへの取り調べも厳しかった。警察や検察から「(金品が提供されたとする)会合に行ったのを見た人がいる。(違うと言うなら)おまえは双子か!」「おまえは女優か!」「卑怯者!」などと怒鳴られたこともあったという。

弁護士への不信感も募った、とシゲ子さんは振り返る。

「保釈請求の却下が続いて、不安になっていたんです。弁護士に力がないのかなって。それに、警察が『この先生は民事に強いけど刑事は弱い。他に変えたほうがいい』と言って、数十人の弁護士のリストを見せて、この人がいいって薦めるんです。もう、誰を信じていいのか分からなくなりました」

自宅で取材に応じる中山さん夫妻

実際、弁護団の保釈請求はこの間、裁判所に却下され続けた。最終的にシゲ子さんは6回目、信一さんは9回目でようやく保釈が認められた。

孤独で厳しい取り調べに耐えられず、自殺を図った人もいた。藤山さんの隣に住む懐俊裕さん(70)。勾留は80日間、密室での取り調べ時間は計554時間にもなった。懐さんが自宅近くの滝つぼに飛び込んだのは、任意の取り調べが始まって4日目。たまたま近くにいた人に助けられた。

懐さんは、その滝つぼの前で取材に応じてくれた。

「飛び込んだときのことは、あまり覚えていません。でも取り調べは忘れたことがない。警察は悪い人を捕まえるものだと思っていたのに、なんで私や中山だったのか、なぜあんなことが起きたのか。今でも理由は分からない。警察も反省していません。警察がうちに来て謝るまで、私の中では何も終わりません」

厳しい取り調べを苦にして懐俊裕さんは自殺を試み、この滝つぼに飛び込んだ
「拷問のような感じで何日も」

志布志事件の取り調べでは、常軌を逸した「踏み字」も明らかになった。志布志港近くでホテルを経営する川畑幸夫さん(73)は取り調べの際、警部補に足をつかまれ、「お父さんはそういう息子に育てた覚えはない」などと書かれた3枚の紙を無理やり踏まされたのである。もちろん、父が書いた文字ではない。この警部補は、椅子に座った川畑さんの股の間から顔を出し、「なんでもするよ」と言ったこともあるという。

「やってないことを権力側がでっち上げる。拷問のような感じで何日もやる。あの取調室でやられたら(否認は)続かないですよ」

川畑幸夫さん

志布志事件はその後、警察による容疑のでっち上げだったことが判明している。11人もの逮捕者を出した懐集落は当時7世帯。小さな共同体は大混乱に陥り、人々の日常は崩壊した。11人の中には「全員無罪」の判決を聞くことなく、刑事裁判の途中で亡くなった人もいる。

被疑者の弁護に当たった鹿児島市の野平康博弁護士は「接見禁止で外部との連絡を遮断し、保釈せず身柄を人質にとって自白させるという人質司法の手法を露骨にやったのが、志布志事件でした」と話す。

「捕まった人たちの中には、勾留中に“自白”し、公判の冒頭でも容疑を認めた後、保釈後に否認に転じた人が数人います。勾留中、捜査機関は丸1日でも取り調べができるので、被疑者との間に支配と服従の関係ができやすくなる。保釈後に否認するケースがあるのは、それが崩れるからです」

人質司法の最大の問題は、どこにあるのか。野平弁護士は「被疑者が捜査機関のコントロール下に置かれ、最も重要な人権、自己決定権が奪われてしまうことです」と指摘する。そして、長期勾留を安易に認める裁判所の姿勢を批判した。

野平康博弁護士。鹿児島市内の事務所で

「裁判官は、人の自由を奪うことの意味を考えてほしい。自白を強要する『たたき割り』は、裁判所が保釈を認めないことにつけ込んだ捜査手法でもあります。長期勾留の末に無罪になっても、失った時間は戻ってこないんです」
以前から「人質司法」に国際社会の批判

「人質司法」に象徴される日本の刑事手続きは、国際社会では以前から批判の的だった。
国連の自由権規約委員会は2008年、取り調べに弁護人が立ち会う権利を確保するよう日本政府に勧告している。同じく拷問禁止委員会は2013年、自白偏重の捜査や弁護人の立ち会いが義務化されていないことに懸念を表明。その審査会では委員から、日本の刑事司法は中世のようだという批判も出た。

沖縄で再三問題になる米兵犯罪に関しても、2009年のひき逃げ事件の際、弁護人が立ち会わない取り調べを米兵側が拒否するという出来事があった。日米地位協定の改定論議では、「被疑者の権利が守られない日本の刑事司法の後進性」が障壁の一つとされている。

警察だけでなく、検事による取り調べでも同様の問題は起きている。

「人質司法」の下では、長期間の勾留が続く。100日を超えることも珍しくない

1993年にはゼネコン汚職を捜査中の静岡地検の検事が参考人に暴行を加えて全治3週間のけがを負わせ、特別公務員暴行陵虐致傷罪で有罪判決を受けた。またリクルートの創業者で、のちに「リクルート事件」で有罪となった江副浩正氏(故人)は自著の中で、東京地検特捜部の検事から拷問に近い取り調べを受けたことを明らかにしている。

カルロス・ゴーン氏の長期勾留は、長く指摘され続けてきたこの問題を改めて浮上させた。ゴーン氏の処遇に対し、海外からは「人権問題だ」との批判も出ているが、主要メディアの報道によると、捜査を指揮する東京地検の久木元伸・次席検事は昨年11月の定例会見で、「それぞれの国の歴史と文化があって制度がある。他国の制度が違うからといってすぐに批判するのはいかがなものか」と述べている。

これに関連し、法務省刑事局法制管理官室の担当者は今回、電話取材でこう答えた。

「国ごとの制度はさまざまで、一部だけを捉えて問題があるという批判は当たらないと考えています。わが国では、勾留や接見禁止の要件、勾留期間などについては法律で厳格に定められている。いずれも裁判官の審査を得た場合に限り許されるうえ、不服申し立てもできます。取り調べへの弁護人の立ち会いについては、法制審議会の『新時代の刑事司法制度特別部会』で議論されましたが、取り調べの機能が損なわれるおそれがある、弁護人が来なければ取り調べができなくなるなどの意見があり、導入しないとされました」

東京地検特捜部に逮捕、勾留されているカルロス・ゴーン氏=2018年11月8日、仏の自動車メーカー「ルノー」の工場で、マクロン仏大統領を迎えたときのもの(写真:AP/アフロ)
「被疑者にも自己決定権がある」と専門家

被疑者の権利確保について、欧米諸国はどうなっているのだろうか。この問題に詳しい一橋大学法学研究科の葛野尋之教授を訪ねると、「欧州では2013年に大きな動きがありました」と説明してくれた。

この年に採択された欧州連合(EU)指令は「取り調べに弁護人の立ち会いを求めることができる」「弁護人が取り調べの時に質問できるようにする」などの義務化を加盟各国に求めた。現在までに加盟国で国内法が整備され、立法措置が講じられているのだという。

葛野教授は言う。

一橋大学法学研究科の葛野尋之教授

「弁護人の立ち会いや取り調べ前の弁護人との相談などが立法化されています。供述の自己決定権を確保するため、弁護人の事前の相談と立ち会いが必要なんです。日本国憲法も保障する黙秘権は、単に黙っている権利ではありません。どの事柄について、いつ、どのように答えるか、答えないかを被疑者自身が決める権利、自己決定権なんです」

「これを確保するには、供述を強要する心理的圧迫や誘導を排除することが必要ですし、どう供述するか、しないかを決めるに当たり法律専門家の助言も必要です。だからこそ、録音録画で取り調べの状況がチェックできるようになっても、取り調べ前の相談とともに、弁護人の立ち会いが要求されているのです」

フランスの刑事司法制度に詳しい神奈川大学法科大学院の白取祐司教授は、ゴーン氏の問題に関する批判には誤解に基づくものもあるとし、「フランスにも冤罪事件はある。それぞれの国に司法文化があり、どれがいいか悪いかは一概には言えません」と言う。

白取教授が続ける。

神奈川大学法科大学院の白取祐司教授

「フランスでも自白は重要視していますが、日本のように自白を導くことは制度的にできません。予審段階で勾留が長期になることはあっても、取り調べは数時間程度。弁護人も立ち会えます。勾留中の環境も日本とは全く違う。いったん逮捕されると刑務所に準ずるような環境に置かれる日本は、人権的には発展途上国並みだと思います」

「日本でもすべての被疑者に国選弁護人がつくようになるなど、少しずつ良くなってはいます。でも、勾留によって社会から隔離し、弁護人の立ち会いを認めないまま自白を迫るようなやり方や、否認への制裁のような保釈請求の却下などは、やはり問題です」
保釈認めぬ裁判所、一方で勾留請求の96%はOKに

「人質司法」が成り立つのは、裁判所の対応に負うところが大きい。

検察庁がまとめた統計によると、勾留請求に対する裁判所の判断は2017年、許可が9万7357人。これに対し、却下は3901人に過ぎず、却下率は4%に満たない。勾留期間の延長状況を見ると、6万2584人の延長が許可されたのに対し、却下はたった137人。勾留期間が上限近い16~20日だった人数は、全勾留者の半数を超える5万7700人にもなる。

数多くの刑事弁護を手がけ、無罪判決も勝ち取ってきた趙誠峰弁護士(東京)は「勾留期間が約20日間と長いうえ、実務上、取り調べの受忍義務がある。そのため、黙秘権を行使するのに困難が伴い、忍耐力がいる」と話す。

趙誠峰弁護士

「長時間の取り調べで、人によっては『警察の方が(弁護士などより)自分のことを考えてくれている』と思うようになる。そうなると、黙秘権があるというアドバイスも聞いてもらえないことすらある。弁護士は限られた接見時間の中で必死に綱をたぐり寄せ、なんとか信頼を保つようにしているのが実情です」

趙弁護士は続ける。

「保釈とは、裁判を待つまでの間、社会生活を送りながら弁護士と打ち合わせるなど裁判の準備をするのに必要な制度です。でも、勾留が続くと裁判の準備が困難になり、仕事を失ったり家庭が壊れたりして、裁判が始まる頃には生活がグチャグチャになっていることもあるんです」

志布志事件で警察から“事件の中心人物”とされた中山信一さんは、1年以上に及ぶ勾留中、「半年以上も接見禁止だったことが一番つらかった」と振り返る。

「接見禁止の間は毎日、弁護士が来てくれました。接見禁止が解除されてからは息子や支援者が来てくれた。それが大きかったんです。でも、今は歳もとったし体力も落ちています。もう一度あんなことがあったら、今はもう、頑張れないです。あんな調べをしていたら、冤罪は増えます」

中山信一さん。「もう一度あんなことがあったら、今はもう頑張れない」

木野龍逸(きの・りゅういち)
フリーランスライター。自動車にまつわる環境、エネルギー問題に加え、原発事故発生後はオンサイト/オフサイト両面から事故の影響を追い続ける。著作に『検証 福島原発事故・記者会見1?3』(岩波書店)ほか。

(おわり)

(2)今日のトッピックス

①社会主義vs資本主義が前面に 2020年米大統領選巡る争点

2019年6月1日 長周新聞

https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/11864

2020年の米大統領選をめぐって、「社会主義vs資本主義」が前面に登場していることがメディアを賑わせている。オカシオ・コルテスがニューヨーク州で民主党の重鎮を破って当選した昨年の中間選挙からの趨勢だが、2016年の大統領選挙で旋風を起こしたサンダース上院議員が、民主党の大統領候補の指名獲得をめざして出馬したことを契機に論議が発展している。

『日経新聞』(5月25日付)は、サンダースが「国民皆雇用」「国民皆保険」を掲げ、「ホワイトハウスを奪取すれば『連邦雇用保障』政策を実現する」と、北欧を上回る「福祉大国論」を目指すと主張していることを伝えている。その根底には、とくに若い世代の「経済格差への不満がある」としている。「米国は上位1%が全所得の20%を得ており、格差は第二次世界大戦時並みに広がった」。大学授業料の高騰で、低所得層は高等教育を受けられず、大卒者の7割が学生ローンを抱えている。

サンダースは最低賃金の引き上げや公立大学の授業料無償化を提唱、財源は大企業や富裕層の大増税で賄うとして、「これ以上、アマゾン・ドット・コムなど大企業の税逃れは許さない」と訴えている。また、「国民再雇用」の財源を米国債の増発に求めるという。「インフレにならない限りは財政赤字は問題にならない」という「現代貨幣理論(MMT)」の主導者であるステファニー・ケルトン米ニューヨーク州立大教授が「サンダース陣営に加わる」と表明したことも論議を呼んでいる。

安井明彦・みずほ総合研究所欧米調査部長は、アメリカで「社会主義という言葉」がにわかに注目を集めるようになった背景には、「若い世代を中心とした、経済システム変革への期待がある。いよいよ熱を帯びてきた2020年の大統領選挙でも、大きな論点になりそうだ」(『東洋経済オンライン』2月25日付)と指摘している。

サンダースは集会の最後に「99%のわれわれが一つになって、富や権力を握っている1%と対決するんだ!」と訴える。それが、ソ連や中国などの「社会主義」のイメージとは無縁な、2000年代に成長したミレニアル世代の心をとらえているといわれる。

こうした事態に、トランプが一般教書演説(2月5日)で、「アメリカに社会主義を導入しようという要求を警戒している。アメリカは決して社会主義国にならない」と異例の宣言をするにいたった。共和党陣営が来秋に向けて、自動車に張る「#社会主義者絶対反対」のバンパーステッカーを発売したこともニュースになっている。

米ギャラップの調査では、「資本主義が良い」と感じる者の割合は2010年には61%だったのが、2018年には56%へと低下した。とくに18~29歳の若年層では68%から45%へと大きく低下し、51%が「社会主義が良い」と回答し、資本主義を支持する45%を上回った。

来年の大統領選挙に関するAXIOSの調査では、18~24歳の回答者の8割以上が「アメリカの経済システムの変革を約束する候補者」を歓迎すると答えている。

西山隆行・成蹊大学法学部教授は、「今日のアメリカでは、……社会主義という言葉は、政府による管理や統制よりも、平等と結びつけて理解されるようになっている」(『ウェッジ・インフィニティ』2月28日付)と指摘している。

「近年の民主党左派の中には、高所得者に高い税率を課すよう提唱する人が増えている」。オカシオ・コルテスは年収1000万㌦をこえる課税所得のある者には70%の限界税率を適用するよう提唱している。

柴山佳太・京都大学大学院准教授は、『京都新聞』(5月18日付)で「若者、平等な社会に関心」と題して、「最近身近な学生たちと話していると、格差・不平等問題への関心が高まっていると感じる。授業で意見を聞くと、“もっと平等な社会を実現するべきだ”と答える者が少なくない」と発言。アメリカの若い世代の意識の変化と、勤務する大学の学生の意識の共通性を明らかにしている。さらに、「時代の空気は明らかに変わってきたと感じる」「社会全体が責任を持って人々の暮らしを支えるべきだ、という考え方への揺り戻しが進んでいる」と評価している。そのうえで、先のギャラップ社の世論調査とかかわって、次のようにのべている。

「資本主義が今のような形で続く限り、対抗軸としての社会主義の人気が高まるのは避けられないだろう」「日本では、まだ若者が熱心に応援する政党も政治家も出てきていない。だが、世代交代が進めば、状況は変わってくるだろう」と。

②アリ・バーマン記者 市民権を尋ねる質問を国勢調査に追加するのは白人の政治権力温存のため

2019/6/3 DemocracyNow日本語版

http://democracynow.jp/
 
2020年の国勢調査に市民権条項を追加しようとするトランプ政権の計画に、ゲリマンダリング(不正な選挙区分け)を専門としていた今は亡き共和党の上級ストラテジストが密かに関わっていたことが最近発見された文書から明らかになりました。ニューヨーク・タイムズ紙は先週掲載した記事の中で、この上級ストラテジスト、トーマス・ホフェラーを「ゲリマンダリングのミケランジェロ」と呼びました。ホフェラーは昨年8月に亡くなったとき、彼のメモや文書で埋まったコンピューターのハードディスクを残しました。別居していた娘が、(市民権条項の追加は)「共和党とヒスパニック以外の白人に有利となる。民主党にとって不利に働くのは明らかだ」と記した2015年の分析を発見しました。国勢調査の担当者は、市民権条項が追加されれば650万人が調査に回答しないだろうと推計しています。これによって生じる過小評価は、議会の選挙区割から連邦予算の配分などあらゆるものに影響します。マザー・ジョーンズ誌の上級記者であるアリ・バーマンから続報を聞きます。彼の最新記事は、“Architect of GOP Gerrymandering Was Behind Trump’s Census Citizenship Question”(「トランプ大統領が企てる市民権条項追加の裏に共和党のゲリマンダリング戦略家がいた」)です。

③アリ・バーマン記者 投票の抑圧やゲリマンダリング(山崎注)が前例のない中絶禁止に道を開いた

(山崎注)ゲリマンダリングとは選挙において特定の政党や候補者に有利なように選挙区を区割りすることをいい、本来的にはその選挙区割りが地理的レイアウトとして異様な場合を指していう。(Wikipedia)

2019/6/3 DemocracyNow日本語版

http://democracynow.jp/

米国では、ルイジアナ、ミシシッピ、ケンタッキー、オハイオ、ジョージア各州が妊娠6週以降の人工中絶禁止に動き、ミズーリ州議会は妊娠8週以降の中絶禁止を承認、アラバマ州は人工中絶をほぼ全面的に禁止する法案を採択しました。全米各地での広範な中絶の権利に対する攻撃は投票権の抑圧とどのような直接的つながりがあるのかについて、アリ・バーマン記者に聞きます。

バーマン記者は最近、マザー・ジョーンズ誌の記事で「これらの州には共通点があります。投票の抑圧やゲリマンダリングによって民主的なプロセスを歪めようとする組織的な努力です。こうした手法が、ほぼ全面的な中絶禁止や極端な右翼的政策を容易にしました」と書きました。

④米最高裁判事がアダム・コーエンの著書を引用して人工中絶と優生学を関連付け コーエンは反論

2019/6/3 DemocracyNow日本語版

http://democracynow.jp/

クラレンス・トーマス最高裁判事は先週、中絶する権利は20世紀の優生運動にさかのぼることができると主張して、厳しい批判を受けています。トーマス判事は、胎児の性別、人種、障害の有無を根拠にした中絶を禁止する条項の復活を求めるインディアナ州の法案について最高裁が支持を示さなかったことをうけて、20ページに及ぶ意見書を出し、その中でこの見解を示したものです。

この判断は、選択的中絶を禁じることはできないとした下級裁判所の判断を支持しています。しかし、トーマス判事は、法律への支持を示しつつも意見書においては次のように述べました。「米国家族計画連盟(Planned Parenthood)の賛同者のように胎児の性別や人種、障害のみに基づく中絶を憲法上の権利として法制化することは、20世紀の優生運動の見解を憲法化することになるであろう」。トーマス判事は自身の見解の正しさを証明するために、アダム・コーエン著の>Imbeciles: The Supreme Court, American Eugenics, and the Sterilization of Carrie Buck

⑤[社説]朝鮮日報は「間違っても責任はない」式の北朝鮮報道は止めよ

2019/06/4 ハンギョレ新聞

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190604-00033587-hankyoreh-kr

金正恩委員長が2日に観覧したと朝鮮中央通信が3日報道した軍人家族芸術公演に、失脚説が出ていたキム・ヨンチョル労働党副委員長(白丸)が同席し、健在が確認された

朝鮮日報が「粛清された」として特ダネ報道した北朝鮮のキム・ヨンチョル労働党副委員長が健在と確認された。北朝鮮のメディアは3日、キム副委員長が前日に金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に随行して公演を観覧したというニュースと共に写真を載せた。朝鮮日報の報道ははっきりと誤報となったのだ。いつまでこのような無責任な報道が続けられるのか問わざるをえない。

朝鮮日報は先月31日付の1面で「朝米首脳会談を総括したキム・ヨンチョル労働党統一戦線部長が解任され強制労働中」と報道した。朝米非核化実務交渉を担当した国務委員会のキム・ヒョクチョル対米特別代表は処刑されたことが分かったと書いた。事実ならば大きな波紋を呼ぶ内容だった。しかし、朝鮮日報が根拠に提示したのは匿名の「対北朝鮮消息筋」が全てだった。

キム副委員長の健在が確認された以上、キム・ヒョクチョル特別代表の処刑説も事実ではない可能性が高い。対米交渉を総括するキム副委員長が何の異常もないのに、その部下の実務責任者を処刑するというのはつじつまが合わない。韓国と米国の情報当局も「粛清説は確認されていない」として言及を避けている。3月に処刑されたというキム特別代表の姿が4月13日に目撃されたという主張も出ている。

朝鮮日報は過去にも何度も北朝鮮関連の誤報をしたことがある。2013年には三池淵管弦楽団のヒョン・ソンウォル団長が「わいせつ物作成」疑惑で逮捕されて銃殺されたと報道したが、誤報と分かった。また1980年代には「金日成(キム・イルソン)殺害説」をまき散らすこともした。このような根拠ない北朝鮮関連の報道は、事実の有無を直ちに確認できず、誤報と確認されても責任を問わないという点のために絶えず出てくる。北朝鮮についての否定的報道に飛びつく国内の保守層に好まれるという点も誤報の量産を煽っている。
しかし、このような無責任な誤報は「北朝鮮は信じられない国」という先入観を強化することによって対北朝鮮交渉を難しくさせる結果を生む。「交渉の代表を処刑する国なのに、このような国と交渉する必要があるのか」という懐疑論を増幅させる可能性が大きい。保守系マスコミの「間違っていようと責任はない」式の報道が、このような政治的策略の上にあるではないのかと疑いを持つ。保守マスコミは今からでも「とりあえず出してみる」といった誤った報道の慣行と決別すべきだ。さもなければ、結局は信頼喪失につながり国民と読者に無視されるほかない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

⑥アサンジ被告の拘束請求を却下 スウェーデン裁判所

2019年6月4日 AFP日本語版

https://www.afpbb.com/articles/-/3228236?cx_part=latest

英ロンドンの裁判所を去る際、車内からジェスチャーをして見せるジュリアン・アサンジ被告(2019年5月1日撮影、資料写真)

【6月4日 AFP】スウェーデンの裁判所は3日、2010年の性的暴行容疑をめぐり、内部告発サイト「ウィキリークス(Wikileaks)」創設者のジュリアン・アサンジ(Julian Assange)被告の身柄拘束を求めた検察当局の請求を却下した。これにより英国からスウェーデンへの身柄引き渡しの要請は困難となった。

裁判所は、アサンジ被告には性的暴行容疑があり、「出頭しないなどの方法で捜査への参加を回避する可能性がある」との検察当局の見解に同意しつつも、被告が英国で収監されているため、捜査は別の方法で進めることが可能性だとの理由で、拘束命令は「相応しくない」と説明。被告の弁護人による主張を支持した。

請求が認められれば、英国からスウェーデンへのアサンジ被告の身柄引き渡しのための欧州逮捕状発付に向けた第一歩となるはずだった。

オーストラリア国籍のアサンジ被告は、英国によるスウェーデンへの身柄引き渡し命令を避けるため、英ロンドンのエクアドル大使館に7年間にわたって籠城したが、今年4月11日、エクアドルが身柄の引き渡しを決め、英警察に逮捕された。

アサンジ被告の2010年の性的暴行疑惑をめぐる捜査は2017年、被告の取り調べが不可能との理由で打ち切りとなっていたが、4月の逮捕を受け、スウェーデン検察当局は捜査を再開していた。

アサンジ被告に対しては、米国から計18件の容疑に基づく身柄引き渡し要請が出されている。これら容疑の大半は、ウィキリークスでの軍事文書や外交電文の公開をめぐる機密情報の入手・拡散に関するもの。(c)AFP/Johannes

(3)今日の重要情報

①安倍首相と省庁幹部の面談記録が一切作成されなくなった! 森友・加計後に宣言した「公文書管理見直し」の正体

2019.06.03 Litera

https://lite-ra.com/2019/06/post-4751.html

面談記録が一切なし!(首相官邸HPより)

安倍首相の強権政治によって、国が国として体を成さないレベルにまで壊されている──はっきりとそうわかる事実が判明した。安倍官邸が、安倍首相と官庁幹部との面談の際、議事概要などといった打ち合わせ記録を、一切、作成していないことを毎日新聞が本日朝刊トップで伝えたからだ。

政府は昨年4月、森友・加計学園問題などを受けて行政文書の管理に関するガイドラインを改正したが、毎日新聞は今年4月、ガイドライン改正後に安倍首相が省庁の幹部らと面談した際の議事録や説明資料などの記録を官邸に情報公開請求したところ、すべてが「不存在」という回答が返ってきたと伝えた。ガイドライン改正から今年1月末までのあいだに首相動静で記録されている安倍首相の面談は、約1000件だ。しかし、官邸の文書を管理する内閣総務官は〈いずれの記録も「存在しない」と回答〉。首相の議事録などの記録がつくられているのかどうか、それさえ不明の状態だった。

だが今回、官邸への取材によって新たにわかったのは、そもそも面談の記録を官邸では作成していない、という事実だったのだ。

取材に対し、官邸は「(記録は)官庁側の責任で作るべきものだ」と主張したというが、しかし、一方の相手官庁側がきちんと作成して情報開示しているというわけではない。それどころか、毎日新聞の情報開示請求では驚きの回答が寄せられた。

たとえば、安倍首相のもとで重要政策や災害・テロ対策などを担っている内閣官房は、情報開示請求に対し、「外国人材の受け入れ」「西日本豪雨」「台風21号」などにかんする安倍首相と内閣官房幹部の面談時の説明資料計47件を開示したが、打ち合わせ記録は〈47件中1件もない〉と回答したのである。

官邸は「官庁側の責任でつくるべき」と言うのに、一方の官庁側にも打ち合わせ記録は存在しない──。改正ガイドラインでは〈政策立案や事務及び事業の実施の方針等に影響を及ぼす打合せ等の記録については、文書を作成するものとする〉と定められ、ガイドライン解説集でも「事案の決定権者への説明は記録を作成する」とされているが、そうしたことがまるで何も守られていないのだ。

しかも、こうした公文書管理の杜撰さが露呈したというのに、菅義偉官房長官はこの期に及んで「安倍総理大臣の打ち合わせ等の記録については、説明・報告を行う各行政機関において、公文書管理法等の規定に基づき、必要に応じて作成・保存している」などと本日おこなわれた定例記者会見で主張。政策決定過程を記録できているかという問いに対しても「できていると思っている」と言い張ったのだ。

どこが「できている」だ。官邸も内閣官房も打ち合わせ記録を作成していないいまの状態では、初動が遅れに遅れた西日本豪雨の際、安倍首相が内閣官房幹部に対して一体どのような指示をおこなったのかも不明で、その判断や意思決定が適切なものだったのかを検証することさえできないではないか。

だが、これこそが公文書管理徹底のためのガイドラインを改正した、安倍首相の「狙い」だったのだ。

省庁幹部が証言「首相の目の前でメモを取ったら、面談に入れてもらえない」

現に、これまでの毎日新聞の取材では、複数の省の幹部職員がこんな証言をおこなっている。

「官邸は情報漏えいを警戒して面談に記録要員を入れさせない」
「首相の目の前ではメモは取れない。見つかれば、次の面談から入れてもらえなくなる」
「面談後に記録を作っても、あえて公文書扱いにはしていない」
「幹部は面談後、記憶した首相とのやり取りを部下に口頭で伝えてメモを作らせている」
そもそも面談記録をつくらせない、つくっても公文書にはしない──。いや、この「公文書の危機」は、すでに昨年の段階から不安視されてきた。ガイドライン改正にあわせ、経産省では政治家をはじめ省内外の人物との打ち合わせの記録を「個別の発言まで記録する必要はない」などと指示するなど、“議事録は不要”とする内部文書を作成していたことを、やはり毎日新聞がスクープ。

また、西日本新聞でも、都市圏総局次長の植田祐一氏がこんな話を明かしていた。植田氏の〈旧知のキャリア官僚〉の弁によると、ガイドラインが改正される直前の昨年3月末、上司から公文書管理にかんしてこんな指示がなされたというのだ。

〈「機微に触れるものは記録に残さず、頭の中にメモせよ。報告する際は口頭で」。首相官邸で首相秘書官らと打ち合わせる際は「メモ厳禁。録音不可」の徹底が言い渡されたという。〉(西日本新聞2018年7月13日)

つまり、こういうことだ。森友・加計学園問題や自衛隊日報隠蔽問題などが発覚したことを受け、安倍首相は「私のリーダーシップの下、公文書管理の在り方について政府を挙げて抜本的な見直しをおこなう」などと述べたが、その見直しの結果、公文書を改ざんしたり隠蔽する必要がないよう、そもそも記録を残さないようになってしまった。ようするに、安倍首相が「徹底的に実施する」と言っていたのは、「正確な面談記録をこの世からなくしてしまう」ことの徹底だったのである。

首相との面談で使用した説明資料も、面談後に即、廃棄

しかも、これは打ち合わせ記録だけにとどまらない。面談時に使用された説明資料についても、官邸の文書を管理する内閣総務官室は〈保存期間を国立公文書館の審査を経ずいつでも廃棄できる1年未満に設定し、面談後に廃棄している〉と説明(毎日新聞4月13日付)。「1年未満でいつでも廃棄できる」ということは、面談翌日でも廃棄できるということだ。

事実、各大臣の面会記録をめぐっても、「作成当日」あるいは「極めて短い期間」で破棄されていることが、今年4月末、NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の情報公開請求を通じて判明したばかり。また、塚田一郎国交副大臣(当時)が「私が忖度した」と安倍首相と麻生太郎財務相の地元への利益誘導を認めた件の問題追及でも、道路建設に向けて動いていた自民党の大家敏志参院議員が自身のFacebookで、昨年12月19日に自民党の北村経夫参院議員と財務省を訪問し麻生太郎財務相に陳情をおこない、麻生財務相からも「しっかりやってほしい」と言葉をもらったことを写真付きで報告していたが、財務省はこのときの面談記録は「ない」とし、麻生財務相も「陳情を受けた記憶はない」と言い張った。福岡県選出で麻生派の子飼い議員である大家議員が写真まで公開しているのに、「記録がない」ことをいいことに「記憶がない」で逃げたのだ。

記録は取らない、残さない。資料は破棄する……これは国民主権を踏みにじる行為だ。このままでは森友・加計や自衛隊日報隠蔽といった問題はなくなるどころか悪化し、政権に不都合な記録はまったく表に出ず、後世になって重要政策の決定過程なども検証することも不可能になってしまう。安倍首相がこうしてこの国を、近代国家として機能しない状態に陥らせているということに、一体どれだけの人が危機感をもっているのだろうか。

(編集部)

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情報発信者 山崎康彦
メール:yampr7@mx3.alpha-web.ne.jp
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