goo

Gyaoというアプローチ

今月から、月に数回、Gyaoというインターネット放送のニュース番組にコメンテーターとして出演することになった。番組は(まだ名前も知らないが)月~金の午後10時~10時20分の生番組で、キャスターは中井亜紀さんだ。私が出演するといっても、現在、プロデューサーとの口約束の段階で、出演頻度やスケジュールが先まで確定している訳ではない。

取り敢えず、今週の2月8日、その翌週の13,14,15,16の各日に出演する予定になっている。生番組のストレートニュースと聞いているが、録画配信されるのかどうかも含めて詳細を聞いていないので、8日に出演した時に話を聞いて、またご報告する。

GyaoはUSENが運営しているインターネット放送だ。現在、爆発的に会員数が伸びているので、ご覧になった方も多いだろうと思う。年齢などごく基本的な情報を登録する必要があるが(個人が特定できる情報は含まない)、無料で視聴できるので、お暇な時に見てみて欲しい。(http://www.gyao.jp/)

以下は個人的な意見だが、今は「容疑者」が肩書きとなった堀江前ライブドア社長が仕掛けたニッポン放送、ひいてはフジテレビへの買収や、楽天が仕掛けたTBS株の大量取得から提携への動きについて、私は、ビジネス・プランとして疑問を感じていた(現在も感じている)。上場株を買い占めることや、株式を通じて企業を支配することについては何ら悪いことだとは思わないのだが(悪いとすれば、のんびり上場している被買収企業の経営者が悪い)、地上派のテレビが、時価総額が示すほどの買収価値を本当にもっているのか、という点に疑問があるからだ。

既存のコンテンツは権利関係の処理が難しく、放送局だけ買っても、なかなか収益化しずらい。それに、多くのコンテンツは時間と共に鮮度が劣化するから、結局、必要なのはコンテンツの制作力である。買うなら、放送局ではなくて、厳選して制作者を買うべきではないか。

また、現在、地上波民放は到達力の点で圧倒的なメディアとしてのパワーを持っているが、これと、BS・CS・インターネット放送などとの差は、特に地上波デジタル(TVの買い替え等一手間掛かる)今後、縮小するのではないか。

そう考えると、「ネットと放送の融合」のためには、ともかくネットで放送を配信するインフラを持つことと、番組を制作する能力を蓄積することが重要になる。もちろん、買収の価格次第だが、地上波を無理矢理(相手が嫌がるのに、高いお金を出してまで)手に入れる必要はない。正攻法は、Gyaoのように、ともかく番組のネット配信を始めつつ、自分でも番組を作るアプローチではないだろうか。

堀江容疑者は何ヶ月か前に、楽天・TBS問題を評して、放送局を買うタイミングは、2005年の初頭までで、もう遅い、と宣ったが(何とも自己正当化の強い人物だ!私は、2005年初頭のタイミングでも遅かったと思っている)、この意見自体は正しいように思える。

私がGyaoとはじめて関わったのは、2005年秋の選挙特番だったが、なかなか真面目に番組を作ろうとしていて、立派な出来映えだと思った。それ以来、パソコンで時々Gyaoを視ている。ブロードバンド回線が入っていれば、十分視聴に耐えるし、ある時間に何かを視ようと思ったときの選択肢は、通常のTV放送局よりも遙かに多い。

パソコンは前のめりで見るもので、テレビは後ろにひっくり返りながら見るものだ、と言うご老人もいらっしゃるが(たとえば元有名コンサルタントの某氏)、そんなものは直ぐに変わるし、ハード・ソフト両面で、TVがPCの機能を取り込むのも、PCがもっと簡単に扱えるようになるのも、難しいことではない筈だ。

Gyaoというアプローチは「買える!」と思っている。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ホリエモン論(部分)

勤務先の楽天証券のホームページ向けに「ホリエモン論・序説」というタイトルで、堀江容疑者について論じる小文を書いてみた。書き始めてみると、40字×300行を超える分量になった。どこかの雑誌に売り込もうかとも思ったが、一番UPが早いということもあり、会社のホームページも大切にしなければならないとも考え、会社のホームページに載せることにした。

目下問題の企業に関わる問題だし、投資の参考にもなるという体裁をとっているものの、内容は、私の自由作文なので、コンプライアンスのチェックを通るかどうか心配したのだが、案外簡単に通ったので、明日3日にUPされる(http://www.rakuten-sec.co.jp/ITS/PRNT_V_TOP_Yamazaki_01.html)。

予定通り、「容疑者ホリエモン」「社長ホリエモン」「経営者ホリエモン」「タレント・ホリエモン」「人間ホリエモン」の構成で書いた。

この中で中核になる「経営者ホリエモン」のパートを以下に抜粋してコピペします。全文をご覧になりたい方は、楽天証券のホームページをご覧下さい(無料で読めるのでご安心を)。

●<「ホリエモン論・序説」から、「3.経営者ホリエモン」>
=============================
3.経営者ホリエモン
 会社のオペレーション関するビジネスそのものの話と、主に株式に関わる諸々の問題に対するホリエモンの行動を分けて論じる目的で、前者を「社長ホリエモン」、後者を「経営者ホリエモン」として論ずることにした。
 以下は、筆者の推測だが、経営者ホリエモンの原点は、オン・ザ・エッジの株式上場に遡るのではないだろうか。彼本人の著書なり発言なりに該当する言葉があった訳ではないが、「まだそれほど儲かっていないこんなビジネスに対して、こんなに大きなお金が転がり込むものなのか」とホリエモンは思ったにちがいない。株価=時価総額を、単に目標としてだけではなく、手段としても認識した瞬間が、きっとあったのだろうと思う。
 「稼ぐが勝ち」には、「経済は先取りする」というフレーズがあり、儲かった利益を配当するのではなく、儲かると予想される分をあらかじめ使ってしまうのだ、といった説明がある。やや単純化していえば、上場会社を持つことで、社員を搾取することによりその時その時に儲けるというヨコの方向の(空間的な)ピンハネと同時に、何十年分かの利益を現在価値にして前借りして使えるというタテの方向の(時間的な)ピンハネと両方を使うことが出来る。株式のこうした性質によってホリエモンは短期間に富を作ったし、さらに株式と株式の交換を行うことによって、富の拡大を加速する。
 その手順は、まず自社の株価を上げることに注力し、これを使って事業を買収して事業規模を拡大し、さらに報道の通りであるとすれば、買収の際に自社株ないし子会社株を投資事業組合を通じて売却して、これをライブドアの売り上げ、さらに利益として計上して、事業展開が順調であるように見せかけて、さらに自社の株価を上げる、といった拡大プロセスを辿ることになる。
 資本取引の一部を利益に計上出来るのだから、PERが数十倍あるとすると、株を使って出した利益が、使った株式の価値以上の時価総額の時価総額になって帰ってくるので、適当なサイズの買収を繰り返すことによって、時価総額を際限なく膨らませることが出来る理屈だ。ライブドアの「錬金術」といえるものがあるとすれば、その本質はこういうことだと思う。
 そして、このプロセスの中に、株式百分割といった株価を上げる仕掛けを組み入れたという構図が見える。筆者の記憶では、ホリエモン本人が、株式百分割は株価を上げる手段だという認識を口にしたことはない(そう言ってしまうと、株価操縦が立件されるのかも知れない)。しかし、状況から見て(株式市場関係者の評判は非常に悪かった)、株式百分割は株価を上げる手段として意識的に使われていた可能性が高いと思う。この点について、地検がどの程度立証できるのかは、大きな問題であり、今後の解明を待ちたい。
 加えて、最後の百分割によって、ライブドア株は数百円単位で買える株になった。その結果、ライブドアは二十万人を超える個人株主を持つに至った。この段階では、ホリエモンは、自社の株式を資金調達や株式交換のツールとしてだけでなく、宣伝にも使おうとしたのだろうと思われる。
 株式というものをとことん使ったことが、ホリエモンの経営者としての一大特色だ。通常、短期間で成り上がる経営者は、経済界の有力者に取り入るなど人間関係をフルに使うタイプが多いのだが、ホリエモンの場合は、早い時期に株式上場に至り、株式を通じた価値の拡大に手を染めたこともあって、株式の利用に特化した。昨年秋の衆議院議員選挙までは、彼が、有力者との人間関係を積極的に使おうとして大きく動いた形跡は無い。
 ところで、株価はイメージに対して形成される。企業の利益を中心に見るとしても、現在の利益もさることながら、これからの利益に関するイメージが決定的に重要だ。そして、株価を通じてイメージとイメージを交換するときに、株式に伴って、企業の実体も同時に交換される。ホリエモンは、この性質に対しても敏感だった。ライブドアの株価を上げられるように、何とか下げないように、可能なことは何でもしたように思われる。
 敢えていえば、本業の時間を削ってまで、ホリエモンがメディアに登場したのも、少なくとも彼の表向きの理解としては、ライブドアの知名度を稼ぎイメージを改善するためであった。
 当然のことながら、利益の下方修正は成長イメージを大きく毀損して、株価を下げる。この事態を避けるための努力の延長線上に、現在問題になっているような各種の利益操作があった、ということなのだろう。
 ところで、一つの重要な興味は、ホリエモンが自社の株価についてどのように認識していたのかということだ。株価の高い企業の場合、IRの席で、経営者は、ある意味では職業的な大風呂敷を広げなければならない。つまり、高い株価が正当であるかのように振る舞わなければならないし、経営計画もその影響を受ける。従って、表面の意識の上では、ライブドアの株価は適正であり、これからもっともっと上がるのだと自らが信じ込んでいなければならない。
 しかし、たとえば、昨年のニッポン放送株の大量買い付けを見ると、資金調達の際にMSCBを使って実質的に大きな手数料を払っている。時間差はあるとしても、ライブドアの大株主でもあるホリエモンが、あのディールで目指したものは、ライブドアの資産の中身を相当部分ニッポン放送の資産に入れ替えることではなかったか。大株主ホリエモンの頭の中には、ライブドアの企業価値が少なくとも頼りないものであることが感覚として忍び込んでいて、これを実体のある資産なりビジネスなりに入れ替えたいという気持ちがあったのではなかろうか。
 あのディールの結末は、ニッポン放送株の購入代金がほぼそのままキャッシュで戻り、フジテレビがライブドアに440億出資した、ということだった。440億円の出資は、ライブドアの株が見合いであるから、ファイナンス理論的に見ると、これは少なくともライブドアの既存株主の得とは言えない。そう考えると、ライブドアの株主としては、リーマンブラザーズ証券がMSCBで儲けた分だけのコストを払った、という損得計算になる。しかし、たとえば自社の株式の価値が希薄であるとの認識があれば、時価総額の一部をキャッシュの形に変えることが出来て、ホリエモンは満足だったのかも知れない。
 高い株価(特に「高すぎる株価」)を持った経営者は、自らが株主である場合に、売り上げや利益の嵩上げや、ビジネスプランの宣伝のためだけではなく、自らの保有する株式(又はストックオプション)の価値を守るためにも、M&Aを行いたくなるインセンティブを持つにちがいない。もちろん、これを効果的に実行するためにも、自社の株価をその時だけでも上げることが大事なのは論を待たない。
 ライブドアのこれまでをこのように見ると、第一義的な目標として時価総額(つまり株価)を掲げるものとしての「時価総額経営」は、適切に機能し得ないことが分かると思う。詳しくは別の機会に論じたいと思うが、経営者と投資家の間には、あまりに大きな情報のギャップがあり、経営者の側では、上記のようなインセンティブが働くとすると、経営者が自社の株価を上げようとして、情報を操作することに対する抑止を働かせるのはきわめて難しいことが分かる。
 たとえば、長期的には不適切な情報であるとしても、短期的に株価を上げられる情報を出すことが出来るとすれば、たまたまその時の株主には、歓迎すべき情報提供と言える。つまり、時価総額経営を標榜する上場企業にあって、株主は、経営者に対する有効なチェック役として十分に機能するとは期待できない。
 ホリエモンのブログを読むと、たとえば、株主からのものとおぼしき書き込みに、ホリエモンのIRミーティングが、株価上昇に寄与することを期待する内容のものが見られたことがある。たとえば、IRが株価の上昇に寄与するとした時、儲かるのは今の株主であり、損をするのは後から株を買う新しい株主だが、古い株主と新しい株主の両方に対して(付け加えると株主にならない投資家に対しても)フェアでなければならないのが、上場企業経営者の義務である。経営者が、先に定義したような意味での「時価総額経営」に走ると、企業はこの義務からの逸脱する危険が大きい。
 2000年春に崩壊したネットバブルの際にも、一部の企業で、時価総額を経営目標とする時価総額経営が標榜され、結局上手く行かなかった、という経験があったが、今回のライブドア事件も、時価総額経営が欠点を露呈したケースの一つに加えていいだろう。ホリエモンは、株価を利用しつくして成り上がった男だが、株価の重圧とこれを操作する誘惑に負けたと言えるだろう。
 こうした構造を踏まえた上で、投資家は、経営者の行動に注目することが有益だと思う。 全ての企業においてそうだとは限らないが、控えめに見ても、①過大な投資と収益計画を発表する「大風呂敷経営」、②派手なM&A、③株式の換金や株式交換によるM&A、といった行動を経営者が取る場合には、経営者は、自社の実力よりも株価の方が高いことを、なにがしか認識している可能性が大きい、ということだろうと解釈できる。
 実は、今年の楽天証券新春講演会で、私は、投資のヒントの最後に、経営者の行動を見よう、というようなことを申し上げた。もちろん、私は、あの時点でライブドアに関してこんな問題があると分かっていたわけではない。無理に見えるM&Aなどは、株価が高すぎるという意味で要注意の会社のサインとして解釈できる、というような理由で、経営者の行動に注目しようと申し上げた。米国の投資のアプローチの一つとしても、インサイダー(経営者、大株主など、企業の内部者)の株の動きと行動に着目するやり方がある。経営者をはじめとする企業の内部者が、株価に対してどのような見解なり気持ちなりを持っているのか、という視点で企業を評価するアプローチは、有効だと思う。
 尚、ライブドアのような会社を評価する場合には、事業部門毎の利益を見るべきであり、特にM&Aで嵩上げされた売り上げや利益をそのまま成長率と見るべきではない。
===========================
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ホリエモン論の構成案

ライブドアの堀江貴文容疑者について、あるホームページに小文を書いてみることにした。私が知っているのは、本人を、直接に、ということではないから、彼の対外的な通称である「ホリエモン」を論じる、ということにしたい。

大まかな構成と簡単な要旨は以下のような感じ。

<まえがき> 
なぜ、私は、ホリエモンについて書くか。今や「堀江容疑者」だが、それでも、「ホリエモン」に対する支持は皆無ではない(少なくとも森内閣の末期よりも支持率が高い)。彼は、有能だったのか? 或いは、何が魅力だったのか? 彼の経営に特別な何かがあったのか? 等について考えてみたい。但し、私は、彼を直接に知っているわけではない、ということは、私は、堀江貴文本人そのもの、ではなくて、外から理解可能な「ホリエモン」について論じていると自覚すべきだ。

<1.容疑者・ホリエモン>
個人的には、子会社でも本体でも「粉飾の指示」と報じられてからは、ホリエモンは多分無罪にならないだろうと思った。実質的には、資本取引を売り上げや利益にすり替える「粉飾」と、株価操縦やインサイダー取引の有無が重要なのだろう。子会社の「偽計」や「風説の流布」は容疑の立証に関しては手堅いのだろうが、市場から見た印象としては本件ではない。とはいえ、最近報じられるように、本人の隠し口座がスイスのPBにあるとなると、確信犯的であると共に、かなりの悪人だともいえる。但し、ホリエモンの話を離れて、メールが簡単に証拠採用されるようだと、これからがちょっと怖い。

<2.社長・ホリエモン>
ビジネスと組織を動かす社長としてのホリエモンは、ドライな合理主義者だが、考え方と経営方針は、平凡で、且つ堅実でさえある。成果主義的であり、かつケチだ。会社は人を使う仕組みだ、という彼の理解は正しいし。加えて、営業の重視など、案外シンプルな経営をしている。「稼ぐが勝ち」のメッセージはそれ自体として正しいのだろうと思われる。

<3.経営者・ホリエモン>
彼は株価を徹底的に利用した人だったが、株価を作り/維持するためには、結局、「高い株価が当たり前!」のような顔をせねばらならなかった。もちろん、堀江容疑者本人は株価をさんざん利用しているが、そのうちに、株価に合わせてライブドア・グループを経営しなければ行けなくなった。粉飾に至った理由はエンロンとよく似ている。株価を利用しつつも、最後には株価(操作)の誘惑に負けた。

<4.タレントホリエモン>
彼は、自らが広告塔であることを弁えていた。マスコミへの登場は商売のためだった。容姿に恵まれなかったことも幸いであり、かえって「ホリエモン」人気につながっていた。若者には自己投影しやすかった。また、歯切れの良さと表現の分かりやすさは、歩くビジネス書のようだった。「年寄りの説教は無駄」というのもその通りだし、「東大は入るところに(入試を通ったという事実に)意義があり、卒業は不要だ」というのもその通りだった。

<5.人間・ホリエモン>
資質的には普通の人レベルなのだろう。だが、集中力と論理性には一定の評価ができる。大学入試で頑張った成功体験がベースにあるようだ。しかし、(たぶん)幼少時代に辛い育ち方をしたためか、金を稼いで世間を見返したい、というような風情があった。彼の自己正当化は強烈なので、取り調べではなかなか簡単には落ちないだろうと思う。

一言で言うと、なんだか、寂しい奴だね。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
   次ページ »