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【ダイヤモンドオンライン】高齢者の資産運用心得七箇条

 ダイヤモンド・オンラインの「山崎元のマルチスコープ」に「 高齢者の資産運用心得七箇条 」と題する記事を書きました。(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)

 現在60歳以上の世代は、平均像では若年層に較べて圧倒的にお金を持っていますが、お金の運用に無頓着に過ごしてきた方が少なくありません。
 そんな人が退職金などのまとまったお金を持って、不用意に金融マンやFPに相談に行くのは「はっきり危険」です。
 そこで今回の記事では、気をつけるべき点について簡単にまとめました。

1・高齢者向けの運用などない。運用にまで歳を取らせる必要はない。

 お金の運用には、「お金を、なるべく安全に、できるだけ増やす」という以外の目的などありません。運用商品は、誰が買っても、同じ期間に保有していれば同じリターンになります。

2.毎月の取り崩し可能額でリスクを考えよう。

 仮に65歳でリタイアし、その後95歳まで生きるとした場合、残りの人生は30年間=360カ月です。
 例えば、3600万円の運用額があり、そのうち1割を運用で損したとします。この場合、リタイア後の「毎月10万円」の取り崩し可能額が「毎月9万円」に減ると考えると、リスクを具体的な実感をもって考えることが出来ます。
 現在75歳なら「240」で考えます。いずれの場合も、「残りの月数」を使って資産額(ストック)を毎月の取り崩し消費額(フロー)に換算してリスクを考えられるようにするとよいでしょう。

3.相談相手から運用商品を買うな。特に、銀行には注意。

 高齢者のマネー運用で一番心配なリスクは、株価のリスクでも為替リスクでもなく、「人間のリスク」です。
 金融機関の人間は、あなたから儲けようという意図を当然持っています。特に、退職金が振り込まれる銀行の銀行員は、自分の金銭事情を詳しく知りすぎているので要注意です。
 運用を相談する相手から、運用商品を買ってはいけないのが鉄則です。

4.リスクは商品ではなく投資金額で調整せよ。

 リスクの大きさは、資金を丸ごとどの運用商品で運用するかと考えるのではなく、リスクのある運用商品を「幾ら」買うか、金額で調整するのがよいでしょう
 しかし、金融業者は目の前の顧客から最大限の手数料を稼ぐことを考えるので、運用資金を全額使わせるように誘導しますし、その際に、過大なリスクを取ることになる場合がしばしばあります。

5.「毎月分配型投信」から徹底的に離れよ。

 これについては、本ブログや他のコラムで何度も書いていますが、(1)毎年一回の分配よりも課税が早まる分毎月分配型という仕組み自体が不利であること、(2)分配金を高く出すために大きなリスクを取っていること、(3)あきれるほど手数料が高いこと、の三つの欠点があり、高齢者に限らず誰に対しても、お勧め出来るような商品は「一本も無い」と自信を持って断言出来ます。

6.インフレヘッジにこだわるな。

 運用商品を販売する側から見て「インフレへの備え」は大きな商材であり、不安を煽り、リスクの高い(ということは同時に手数料の高い)商品を売り込むのが基本的なマーケティング・テクニックです。
 インフレへの備えが重要でないとは言いませんが、現状では、将来のインフレ・リスクに強くこだわることの弊害の方が大きいのではないでしょうか。
 将来もニーズのある仕事を提供出来、稼ぐ手段がある、ということが、原理上はもっとも柔軟で頼りになる「インフレヘッジ」なのです。

7.手数料には徹底的にこだわれ。

 業者と顧客の間にあって、顧客の側にとって確実にマイナスのリターンとなるのが、運用商品の手数料です。
 販売手数料については「ノーロード」と呼ばれるゼロの商品以外に投資すべきではなく、信託報酬も、長期金利が0.5%にも成らない時に年率1%以上払うのは払い過ぎだと考えましょう。

 以上、「高齢者の資産運用心得七箇条」について簡単にまとめました。
 高齢者に特別な運用方法などありません。尚、ダイヤモンドの記事では、普通の人のための運用の簡便法として、拙著「全面改定 超簡単お金の運用術」の内容を紹介しています。
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【楽天証券】お金の運用心得四箇条

 楽天証券ホームページでの連載「山崎元のホンネの投資教室」に「お金の運用心得四箇条 」と題する記事を書きました。(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)

 獨協大学で「金融資産運用論」と題する講義を担当しています。今回の記事では、本年秋学期バージョンとして、運用の初心者である学生諸君に伝える「是非これだけは覚えて欲しい心得」をご紹介しています。

<お金の運用心得四箇条>
① 他人を信用しない
② リスクの見当をつけろ
③ 手数料を重視せよ
④ 買値にこだわるな

① 他人を信用しない
 最も重要な心得は、「他人」に対して「健全な警戒心」を持ち続けることです。

 「経済合理的な人間は、特に有利な利益機会があれば、それを他人に教えるのではなく、自分で使うはずだ」。この身も蓋もない経済常識をまずは頭に叩き込むべきでしょう。
 最も警戒すべき相手である取引銀行の行員に加えて、証券会社のセールスマンやFPなども、顧客に手数料の高い商品や非合理的な商品を売りつけることが巧みです。
 また、エコノミスト、ストラテジスト、アナリスト、あるいはFPも(もちろん経済評論家も)、将来の金融商品のリターンなど正確に分かる筈も無いし、しばしばビジネス上の都合に左右された情報を発信します。

 人間は、意図や感情をもって、情報を歪めて伝えます。「市場のリスクよりも、真に恐ろしいのは人間の方だ」というのが、ざっと30年ほど金融関連の業界で働いてみた私の実感です。

② リスクの見当をつけろ
 リスク資産を運用しようと思う時に、損した状態を始めに想定する人は多くありませんが、「意識的に努力して」、リスクと正面から向き合うことが決定的に重要です。
 初心者であっても、最悪の場合に投資額のどれくらいを失うことになるだろうかといったことを、具体的に考えられるようでなければなりません。

③ 手数料を重視せよ
 販売会社と運用会社を合わせた「売り手」が得る実質的な手数料は、投資家にとって「リスク・ゼロで実現する確実にマイナスの期待リターン」です。
 これは、同時に、実質的な手数料の分からない商品は、自分にとって期待リターンが分からない商品なのだから、投資してはいけない商品だ、ということをも意味します。

 「手数料は高くても、運用が上手いアクティブ・ファンド」などというものは本来選ぶことが出来るものではありませんし、勧める人がいたとすれば、その人は自信過剰か商売のために嘘をついている人だということです。

④ 買値にこだわるな
 投資家は、自分が買った株式や投資信託の「買値」に、自分の意思決定が左右されないように意識的な努力を払うべきです。
 例えば、「買値に戻るまで売れない」と株を塩漬けにする、買値より下がった株価で買い増しして平均コストを下げて売り逃げを試みるなど、自分の買値にこだわるあまり、非合理的な行動に出てしまう投資家は少なくありません。
 既に生じた損は「埋没費用」であり、過去は変えられないのだから、現在の株価でその持ち株をどうするかということ「だけ」で投資の意思決定をすべきです。
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