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労働組合の勉強会で何を伝えたらいいか?

 講演で珍しい依頼が舞い込んだ。ある労働組合系の地方組織が春闘に備えた勉強会の講師として来て欲しいという。時間は90分で、テーマは講師に任せるという。

 私は大筋として労働組合という仕組みに賛成ではないし、「春闘」も現在の延長で順調に死語になればいいと思う。しかし、個々の労働者のためには役立ちたいと思うし、組合が弱体化しつつあること、あるいは弱体化した方がいいことを前提とするとしても、現在、一定の影響力を持っている訳だから、この適切な行使に資する情報を伝えたい。
 ただ単に組合批判だけを述べに行くのは社会的なバカのすることだろう。

 とはいえ、何を伝えたらいいのかが、なかなか思い浮かばない。しかし、日程が迫ってくるとテーマを決めて準備しなければならないので、以下のような項目を考えた。

<A.現在の経済状況と経済の見方について>

(1)金融危機後の世界経済と日本経済の現状
1-1.新興国のミニバブルと日本の低迷
1-2.アメリカの金融緩和と「出口政策」
1-3.金融業の現状

(2)危機発生の仕組みとバブルの循環パターン
2-1.バブル発生の条件(金融緩和&リスクの誤認)
2-2.ビジネスモデル化した「バブル」
2-3.バブル対策と回復のパターン
2-3-1かつての「バブル崩壊後」との比較

(3)2010年の株価・為替レート
3-1.日本と世界の株価予想
3-1-1株価を見る上での注目点
3-1-2個人として投資するならどうするか
3-2.為替レートの予想と主な注目要因

(4)デフレと経済政策
4-1.デフレの原因(ユニクロデフレ元凶説の誤りなど)
4-2.日銀・政府がやるべきこと
4-3.財政赤字に対する考え方
4-4.今年度予算の注目点
4-4-1事業仕分けの功罪

(5)「コンクリートから人へ」の評価
5-1.分配政策と景気対策の峻別
5-2.分配政策と政・官・業による「中抜き」
5-3.産業政策は成長戦略ではない
5-4.政策評価視点としての「ベーシックインカム的」

<B.民主党政権のこれまでと新しい権力構造>

(1)ここまでの鳩山政権
1-1.鳩山首相の何がいけないか?
1-1-1政策選択の評価
1-1-2政治家としての問題点
1-2.亀井静香大臣の功罪
1-2-1政策論の危険とバランス
1-2-2政治的な面白さ
1-3.藤井財務大臣の問題点
1-3-1為替政策
1-3-2予算とその策定プロセス
1-4.前原大臣とJAL問題
1-4-1前原大臣の長所・短所
1-4-2JAL問題の何がまずかったか
1-4-3JAL問題の今後の展望
1-5.鳩山政権劣化の今後と二大政党制
1-5-1鳩山由紀夫氏の消費期限
1-5-2二大政党制のゲーム構造

(2)小沢一郎氏の権力構造
2-1.「権力の構造」だけを見る視点
2-1-1実質的な人事権のあり方
2-1-2お金の流れへの影響力
2-1-3小沢型の権力モデルとその将来像(推測)
2-2.小沢一郎氏の政策を推測する
2-3.政治家としての小沢一郎氏の評価
2-4.小沢氏・民主党と連合
2-4-1参議院選挙を前に組合は小沢氏に何を要求すべきか

<C.「提言」:労働者は何をめざすべきか?>

(1)フェアで自由な労働契約
1-1.派遣は完全自由化が正しい
1-1-1弱者苛めとしての派遣禁止
1-1-2経営者の行動
1-2.正社員既得権の適切な緩和の必要性

(2)ルール化された労働条件
2-1.解雇のルールと補償条件の明確化
2-2.派遣・請負の管理責任の明確化

(3)副業・起業の自由
3-1.副業の自由の明確な確立
3-2.小さな起業の条件整備

(4)現実的・効率的な年金
4-1.企業年金の現状(=惨状)
4-1-1事例としての「JAL年金」
4-2.「年金」が問題になった時何を要求すべきか
4-2-1DC化の際の年金実質ディスカウントについて
4-2-2現実的な企業年金再構築
4-2-2-1加入者のためになるDCの条件とは
4-2-3企業年金を巡る世代間対立
4-3.公的年金に対して何を求めるべきか
4-3-1現状の年金の問題点
4-3-2民主党の年金改革案の長所・短所

(5)組合単位から個人単位へ
5-1.組合を「仕分け」せよ!
5-1-1組合の存在で誰が潤うか
5-1-2非正規労働者と労働組合
5-1-3グローバルな競争と労働組合
5-2.組織率低下とコスト・ベネフィット
5-3.フェアな労働契約ルールへの橋渡し
5-4.政治的影響力の残し方・使い方
5-5.「個人単位」の爽やかさ!

 ●

 「勉強会」ということで網羅的に項目を並べてみると以上のようになった。
 網羅的であるつもりだが、何かが抜け落ちているような気がするし、全ての項目に対して自信のある内容が伴うわけでもない。
 一方、項目を並べてみると、90分の講演時間に対していかにも多い。私は滑舌が悪くない方だと思うが、さすがに、これだけの項目を一気に話すのは大変そうだ。聴衆も真面目に聴くと疲れるだろうし、普通に聴くと眠るだろう。特に、パワーポイント付きだと絶対に終わりそうにない。薄めてのばすと、新書一冊分くらいの内容になるのかも知れない。

 現実的には、話題を絞り込みつつ、公演日までに起きたニュースや思いついたことを追加して、手元資料はA4の紙2、3枚くらい(箇条書きの項目とグラフかデータが数点)で話す準備をすることになるだろう。
 何れにせよ、上記のリストをじっくり眺めていただけると私が何を言いたいか、たぶん、講演そのものを聴くよりも良く分かっていただけるのではないだろうか。珍しい講演依頼だったので、内容案をご紹介してみた。

 読者の皆様には、現代の真面目な労働者に是非伝えたい内容があれば、ご教示いただけると幸いです。
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