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自民党に再生の可能性はあるか

 総選挙翌日、先週月曜日配信の「JMM」で、編集長の村上龍さんは「わたしは、自民党は崩壊するしか道がないような気がします」と書かれていた。小泉路線の総括をせぬまま、意見の分裂を抱えて大敗したので、責任の所在が不明であり、対立の解消方法がなく、立て直しようがない、という見立てだった。
 私、山崎元は、物心ついた時から反自民党だった。いかなる選挙でも自民党所属ないし自民党推薦の候補者に投票したことはない。北海道に住んでいた、小学生の頃には社会党の候補者(横路節雄氏)に何となく好感を持って、近所のオバサンに投票を進めていたし、中学生の頃には、団地の向かいの家のオバサンが、確か知事選の時に、「北海道にたくさんお金を持ってきてくれるのは自民党の方なのだから、自民党(の候補者)に投票しなければ損だ」と言うのを聞いて、こいつは人間以下の下等動物だ、と心から怒った感覚をまだ覚えている。
 それから、ざっと40年が経ち、あの憎いまでに強かった自民党はすっかり弱った。「首脳」という言葉があるくらいだから、党首が「脳」なら、運だけは強かった小泉さんの後に、頭の弱い安倍さん、気の弱い福田さん、頭も性格も悪い麻生さんと続いた自民党は、殆ど脳死の判定が出てもおかしくないし、今回の総選挙の結果はそれに近い。

 自民党が、次に政権の肩代わりを出来る勢力として再生することはあるのだろうか?

 その前に、もう一つ考えなければならない。自民党が再生する必要はあるのだろうか?

 政権交代にいたるまでの民主党の多くの政治家が主張してきたのは「政権交代可能な、二大政党(制)が日本には必要なのです」ということであった。確かに、政策に関して、実質的に政権を担える二党がないと、国民は選択権を行使することができない。
 そして、かつて小沢一郎氏がこれを目指し、そのために、得票率以上の議席勢力差が付くように「レバレッジ」をかけるべく作った仕組みが、今回も威力を発揮した小選挙区制だ。だが、この制度で、与党に対抗しうる野党がない場合はどうなるのかというと、甚だ心許ない感じは否めない。
 そこで、現時点で、民主党に対抗して政権を担うことが出来るかも知れない勢力は自民党だから、「自民党が、現実的に望ましい政治を行う勢力として復活するなら」、彼らが党勢を復活することは、いいことかも知れないと思う。かなりの厳しい条件付きだが、私としては、生まれてはじめて、自民党の勢力が(ある程度)増えても「いいかも知れない」という可能性について考える。

 しかし、自民党への期待も同情も、村上龍さんが仰るように、自民党が「崩壊するしか道がない」のなら、意味がない。

 たとえば、誰が党首で、どんな路線を取るなら、自民党が政権交代可能な野党として生き残ることができるだろうか。幸か不幸か、自民党の諸氏は、限度はあるとしても、目的(生き残り)のためには、目指す理念で妥協の出来る人たちだ。

 相対的な比較でだが、総選挙の期間中、舛添要一さんは人気があったようで、一部に、総裁候補として期待する向きもあるという。しかし、報道によると、彼は、森元首相、青木自民党参議院会長と会った後で、次の総裁選には立候補しないことを表明した。
 これは、常識的には賢明な判断だろうと思うが、今後も舛添氏にチャンスがあるとは考えにくい。彼には末期のダメな自民党政権のイメージが付きすぎている。選挙後の大物二人との会談も、まるで、妖怪「ネズミ男」(舛添氏)が、「ぬりかべ」(森氏)や「子泣き爺」(青木氏)と相談しているかのごとくで、古色蒼然たる墓場の話し合いだ(小池百合子さんも入っていれば、「猫娘」も一緒だったのに・・)。
 他方、このように、自分を頼る集団が最も困っているときに回りの様子を見てリーダーを断るような男には(たぶん女にも)、二度とチャンスは回ってこないのも世の常だ。この点に関しては、かつての「社会党のプリンス」、横路孝弘氏(我がふるさとが彼の選挙区だ。中学校時代に同じ先生に勉強を教わったことがある)が分かりやすい反面教師だ。
 中川秀直氏や小池百合子氏のような人が、小泉路線を再び掲げて、自民党を代表するのは、政策の選択肢としては一つの可能性だが、ご両人とも薄氷を踏む当選だったし、時期も手段も中途半端だった「麻生降ろし」の印象が良くない。
 塩崎恭久氏は小選挙区で勝ったが、報道から推測する限り、党内での人望があまりにもないようだ。尚、全くの余談だが、かつて資産公開データで見た塩崎氏の株式ポートフォリオは、銘柄の分散がよくできていて、なかなか本格的な老後の備えだった。福井前日銀総裁と同様国の経済政策よりもファイナンシャル・プランナーの仕事が似合う。
 谷垣禎一はまだ総裁をやっていないが、既に古い感じがするし、加藤の乱の際の涙の印象がどうにも冴えない。もちろん、加藤紘一氏は、一度茹でてから長らく放って置いたカニのように、どう見ても古いし、毒ではないのかも知れないが、臭い。「YKK」は政治的には「消費期限切れ」だ。
 安倍氏の再チャレンジは勘弁して欲しいし、福田さんも「あなただけは、ちがう」。上から目線とひねくれ癖がついに直らなかった麻生さんは、早く政治家など辞めて、大好きなバーのオーナーにでもなった方がいい(土地柄が下品になると困るから、できれば銀座と神楽坂には出店しないで欲しい)。

 小選挙区当選の衆議院議員で一人だけ良さそうなのは、河野太郎氏だろうか。彼のブログを時々読むことがあるが、政策に熱心で、読み応えがある。参議院議員を放り出した竹中平蔵氏に「ふざねんじゃねぇ!」と怒ったアツさもいい。wikiによると、「小さな政府と大きな年金」が持論とのことで、税方式の公的年金を主張しているところも好ましい。この際、彼のようなフレッシュな人物が自民党のトップになって、民主党の官僚機構に対する改革具合をチェックしてくれるなら、自民党は、「健全野党」として大いに存在意義を発揮するだろうし、民主党にもたつきがあれば、自民党の党勢が回復することがあるかも知れない。
 しかし、考えてみるに、河野太郎氏は、この際、民主党の方がいいのかも知れない。プロ野球のトレードのように民主党には危険で不要な○○○○さんとでも交換しようか!

 やっぱり、村上龍さんの言うように、自民党は崩壊するしか道がないのかも知れない。

 仮に自民党が崩壊した場合、国民の選択肢はどうなるのだろうか。今や、経済は、所得の再分配を効率よく行いながら、自由を尊重する(民主党はまだまだ不十分だが)経済運営以外にあり得ないので、程度の問題(たとえば所得税の累進税率の)以外で、対立軸が出来ないかも知れない。
 そうなると、護憲(≒武力をあまり持たず)か、改憲(≒武力を強化する)か、くらいを対立軸として、次の政界再編成があるのかも知れない。
 当面は、自民党の存在感が縮小し、同党の復活が見えないことは悪いことではないと思うが、日本の政治としては、これで将来も安心できるというものではなさそうだ。

(自民党は再生できるのか?、また、自民党は再生する必要があるのか? 結局私にはよく分からないので、読者の皆さんのご意見をお待ちしています)
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