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「最後っ屁、利上げ?」の後の個人のマネー行動

本日の朝日新聞・朝刊は、一面トップで、14日に日銀がゼロ金利政策を解除すると報じている。13日、14日に開かれる政策決定会合の前だから、なぜ今、確信を持って報じられるのか、という問題が少々あるが、たとえば委員の多数に取材して「解除適切」との判断を得たということだろうか。

私は、そもそも新しく作る「適切な内規」に反するような判断を行った男が日銀総裁の地位に留まるべきでないと思っているので、ゼロ金利を解除して、これを花道として、福井総裁が辞任するという、「最後っ屁、利上げ」を最もありそうなシナリオと考えている。まあ、「最後っ屁」になるかどうかは分からないが、天下の朝日新聞がゼロ金利解除と言うのだから、ゼロ金利解除後の、個人のマネー行動について簡単に整理しておこう。

まず、預貯金についてだが、実は、デフレ&ゼロ金利の時代は、普通預金が総合的・相対的に見て非常に得な運用だった。長期国債金利とのスプレッドをベースに考えると、インフレ率と共に金利全体が低下したときに、超流動的な短期の金利は、マイナスでも良かったはずだが、ゼロが下限となっていた。デフレが続くなら、ここで長期の債券がいいのだが、そうではなさそうだ、という昨年くらいまでの時期では、金利上昇リスクも負わず、物価を考えると、実質的にはプラスの運用が出来る普通預金は、実は、かなりお得な運用対象だった。

ゼロ金利が解除されても、たぶん政策金利は0.25%で、低水準の政策金利を続けるというメッセージが付加されるだろう。それでも、0.25%が0.5%に上昇するかもしれないという観測は、今年の後半にも絶えず浮上するだろうから、長期金利は上昇する可能性の方が大きいし、趨勢的に上昇方向だろう。現在の1.9%~2%の長期国債利回りは、市場解説風に言うと「ゼロ金利解除と0.25%の政策金利を相当に織り込んだ」状態だろうから、ゼロ金利解除で、長期金利が直ちに大幅に上昇するとは思えないが、金利の大勢的な方向は上昇だろうから、長期国債をはじめとする固定利付きの債券や解約にペナルティーが付くような定期預金は、得な運用対象ではない。個人向け国債の5年型も今ひとつだ。

また、住宅ローン金利は、中期・長期の金利に連動することが多いから、変動金利型の住宅ローンは将来の金利上昇リスクを抱え込むことになるので、止めておきたい。5年後、10年後というのは、予想の付きにくい世界だが、一つのケースとして、日本のインフレ率や金利がドルやユーロに徐々に近づいてゆくようなイメージを持つことが可能だ。そもそも、住宅ローンを背負って住宅を購入するという行為自体がオススメできないが、やむを得ず住宅ローンを持つ人は、なるべく固定金利にしておくべきだろう。

長期金利はやや上昇傾向・上昇リスクあり、という判断であれば、貯蓄用にベストに近い金融商品は個人向け国債の10年型になるだろう。半年おきの変動金利で、長期国債利回り-0.8%という利息の決まり方は、「民業圧迫で反則!」といいたいくらい好条件である。理論的には「証券市場線の上」にあるかも知れない、超有利な条件だ。リスクを取った投資ではなく、貯蓄を主体に考えるなら、何はともあれ、個人向け国債だ。

なお、個人向け国債をどこで買うかだが、私が勤める楽天証券(個人向け国債を扱っていない)ではないのが残念だが、ネット証券では、個人向け国債を取り扱っており、しかも、商品券で手数料の一部(国から購入額の0.5%が販売者に払われる)を顧客還元してくれる会社がある。

来週月曜日に配信予定のJMMの原稿にも書いたが、ここのところ、銀行の投資商品(いずれも手数料の高い、投資信託や個人年金保険)販売の強引さには、顧客の立場に立つと「危険」をすら感じるので、一案として、銀行に預けてあるお金の長期貯蓄部分は、ネット証券で個人向け国債にしてしまうことをオススメしたい。

リスクを取った投資としては、相対的には、最近株価が下がったことでもあり、国内株式が「まあまあ」なのだが、これから長期金利が上昇する公算が大きく、米国の金融引き締めが効いてきて景気がスローダウンするリスクもあり、「今こそ、株式投資だ!」と言うのは、株式投資が好きで、近年個人投資家に勧めてきた私でも、さすがに、筋が良くないというべきだろう。いつが良いタイミングだと自信を持って言える局面は少ないので、結局、長期にわたって投資して貰うよりないのだが、今は、「特に、積極的」にはなりにくいと理解しておくべきだろう。

また、外貨預金は、そもそも、金融商品として「最低」に近いダメ商品(為替の手数料が大きすぎる)だが、内外の金利差がこれから縮む可能性があるとすると、やはり止めておく方がいい。

さらに、これまで利回りが良かったREITは、もともと胡散臭いところのある商品だが(結局、不動産屋が、自分では持ちたくない程度の在庫整理用に立ち上げたのではないか・・)、金利の上昇は、REIT自身の借り入れコスト増大、不動産価格へのマイナス要因、他の金融商品(たとえば国債)とREITとの利回り格差が不利に動く、ということを通じて、「三重苦」に陥る商品なので、止めておく方がいい。

結局、金融が引き締め方向に動き、長期金利が上昇するような環境は、大まかにいえば、安全資産の相対的魅力度が高まり、また、投資に向かうマネーは縮小方向に変化するのだから、リスクを取った商品への投資にとって適した環境ではない。

まだミニバブル気分から抜け出ていない人は、要注意だ。
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