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猪熊隆之の観天望気講座160

2020-09-10 22:10:45 | 観天望気

立山で見られた雲の不思議を徹底解説!

~空の謎解きに挑戦~

アルパインツアーとヤマテンとのコラボ企画「立山連峰空見ハイキング」が8月28日(金)~30日(日)に行われました。そのときに、見られた気になる雲を解説します。あなたを雲の神秘の世界へご招待します。

写真1 タツノオトシゴ雲(命名Y・Sさん)

ツアー初日。登り龍のような、あるいはタツノオトシゴのような雲が見られました。この雲は、わた雲(積雲)と呼ばれます。通常は、その名の通り、青い空に綿のように浮かぶ雲ですが、上昇気流が狭い範囲で強まると、このような面白い形の雲になります。国見岳の裏側(立山カルデラ側)は南斜面となっており、日射で熱せられることで、上昇気流がこの場所で強まったと思われます。また、空気がもっと湿っていると、幅広い形の雲になりますが、周辺の空気が比較的乾いていたことも、このような雲を形作ったのでしょう。

写真2 立山川側で雲が発生

夏山では、朝のうちは晴れていても日中は次第に雲に覆われていくことが多くなります。これは、高気圧に覆われて風が弱い日には、山谷風(やまたにかぜ)と呼ばれる風が起きるためです。日中は谷風が次第に強まっていき、この風によって水蒸気が下流側から運ばれてきて山の斜面を上昇していきます。すると、水蒸気が冷やされて雲になっていきます。山谷風については、jROの「雲から山の天気を学ぼう」23回 

https://www.sangakujro.com/%E9%9B%B2%E3%81%8B%E3%82%89%E5%B1%B1%E3%81%AE%E5%A4%A9%E6%B0%97%E3%82%92%E5%AD%A6%E3%81%BC%E3%81%86%EF%BC%88%E7%AC%AC23%E5%9B%9E%EF%BC%89/ をご参照ください。

水蒸気は海上や平野部に多いので、谷風が吹くと、これらの場所から湿った空気が谷や川に沿って上流へ流れていきます。立山では、写真2のように、立山川側など早月川流域で雲が発生することが多くなります。一方、弥陀ヶ原~室堂、立山など称名川流域では、称名溪谷が非常に狭いV字谷のため、水蒸気が入りにくく、水蒸気が入り込むのに時間がかかります(図2)。したがって、午前中早い時間には、大日岳~奥大日岳北面など早月川流域や、立山カルデラなど常願寺川流域で雲が発生するのに対し、雷鳥沢周辺で雲が発生するのは午後に入ってからとなることが多いのです。

図1 湿った空気の入が入る経路(地図上の薄い青色の矢印)

写真3 山肌に張り付く雲

再び面白い雲が見られました。山にべったりと雲が張り付いているようです。これは、立山川側からの湿った空気が谷風で上昇して冷やされることで発生した雲です。

写真4 黒部側で霧、雷鳥沢側で晴れ

登山2日目。この日は、立山連峰の黒部側(東側)から湿った空気が入る気圧配置でした。そのため、黒部側からの湿った空気が上昇して稜線の東側で雲が発生し、それが山を越えると、下降気流となって次第に弱められていく、という山を挟んで黒部側で霧、雷鳥沢側(西側)で晴れ、という対照的な天気となりました。

ところが、午後になると、雷鳥沢側からの谷風(たにかぜ)も強まっていき、雷鳥沢からの谷風と黒部側から吹き降ろした風がぶつかり合って、上昇気流が強められて稜線の雷鳥沢側でも雲が発達し始めます。

その様子を撮影した動画はこちらからご覧いただけます。

https://youtu.be/4l1hrj6kEMo

実際、この後、雨が降り始めました。幸い、このときはそれ以上雲がやる気を出せずに、激しい雷雨にはなりませんでした。

写真5 硫黄が生み出したマッシュルーム雲

3日目の朝、面白い形の雲が見られました。この雲は、地獄谷から吹き出す硫黄酸化物が、凝結核(ぎょうけつかく)という水滴の核となってできた雲です。水滴は核がないと、すぐに蒸発してしまうため、凝結核が多い場所で雲ができやすくなります。この日は、早朝まで雨が降っていたこともあり、地面から蒸発した水蒸気が空気中に溜まっていたこともあり、このような雲ができました。

写真6 うろこ雲

猛暑が続き、なかなか秋の気配が見られなかった立山の空ですが、3日目になってようやく秋らしい雲が現れました。うろこ雲(巻積雲)です。うろこ雲ができる原理は、観天望気講座103回 https://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/bde8b7d9880a9c60757451375a388ef3 をご参照ください。

写真7 雷雨のリスクを知らせる危ない雲

立山方面で、雲が上方へモクモクと発達してきました。入道雲(にゅうどうぐも)と呼ばれる積乱雲(せきらんうん)です。雲底が暗くなり、また雲の情報も色が濃く、雲粒が密集していることを示しています。

このような雲が近くに出現するときは、落雷や大雨のリスクがある場所からはすぐに離れましょう。高い木のそばで雨宿りすることがもっとも危険です。必ず4メートル以上は離れましょう。

さて、雲の世界を満喫していただけましたでしょうか?

雲ができる原理を知ることで、雲がより愛おしく思えてくると思います。山では空が広く、間近で雲を観察することができるため、雲を見るのには適したフィールドです。安全登山のためにも、時々、空を愛でるようにしたいものです。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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