夢はハリウッド

将来書きたい小説の創作ノートです。僕の書いた作品が、映像化され、知英さんに出演して頂くのが夢です。

魔法

2020年08月01日 22時42分00秒 | 紅兎〜青鳥編



優子の胸が膨らみを帯びてきた。
まだ、掌に包まれるどころか、指先で摘める程度である。
それでも、ほんの微かながらも、確実に大人の女になろうとしているのだろう。
どんな大人の女になるのだろう…
久太郎は、三角形をした小さな乳房を優しく撫で回しながらふと思う。
結綿の髪に小袖姿の大人になった優子が、脳裏を過りながら無邪気に笑う。
身体は大きくなっても、笑顔の無邪気さは変わらない。
何処からとなく聞こえて来る祭囃子の声…
周りでは、母に手を引かれ、父に肩車をされた子供達が、はしゃぎながら村の氏神社に向かって歩いていた。
皆、つぎはぎだらけではあるけれど、銘々、艶やかな紅や朱に彩られ、桃や桜の模様や絵柄の着物に着飾ってた。
収穫を祝う祭りの日。
貧しくとも、この日を楽しみに皆精一杯働き、明るく暮してきたのだ。
いつもより、ほんの少しだけ粧し込んだ着物と化粧が嬉しくてたまらないのだろう。
優子はクスクス笑いながら駆け出し、久太郎の前でコマのようにくるくる回ったり、蝶のように袖をひらひらさせて燥ぎ出した。
そして…
不意に立ち止まると、結い上げられた髪に手を当て、久太郎に向ける。
そこには、この日の為に久太郎が買ってやった簪がさしてあった。
優子、綺麗だよ…
久太郎が、脳裏をかすめる大人の優子に言いかけた時…
『ピーヒャラ、ピーヒャラ、ピーヒャラドン。ピーヒャラ、ピーヒャラ、ピーヒャラドン。』
優子が無邪気に口ずさむ声に、現実に引き戻された。
そこには、小袖に着飾った大人の優子の姿はなく…
剥き出しにされた幼い乳房の小さな膨らみがあり、痩せ細った優子の一糸纏わぬ全裸の身体が、仰向けに横たわっていた。
『ピーヒャラ、ピーヒャラ、ピーヒャラドン。ピーヒャラ、ピーヒャラ、ピーヒャラドン。』
優子は、久太郎に膨らみかけた三角形の乳房を撫でられ、小さく尖った乳首を指先に摘んで転がされながら、無邪気な笑みを浮かべて口ずさみ続けていた。
『お祭りの歌。』
『歌と言うより、それは音色だよ。』
『音色?』
『そう、笛と太鼓が奏で織なす、陽気な音色。』
『笛と太鼓って、何ですか?』
『そうか…社に暮らしているのに、笛も太鼓も見た事がないんだね。見たい?』
『はい。』
『それじゃあ、見せてあげよう。』
久太郎は言うなり、床下に隠した袋から、九枚の木の葉を出し、空に舞いあげた。
『わあ!』
優子は、忽ち声をあげる。
そこには、一人の翁と嫗が銘々笛と鼓を持ち、祭囃子を奏でていた。
側では、その調べに合わせて、楽しそうに踊っている。
『久太郎様の魔法…とっても素敵…』
優子は、空に舞う木の葉のなかから幻出した光景に見惚れながら、うっとりして言った。
『これは、魔法ではないよ。大化流忍術(おばけりゅうしのびじゅつ)小葉九(おばきゅう)って、言うんだよ。』
『オバ…キュウ?』
『木の葉には、空気に反応する薬が仕込まれていて、空に投げ放つと…』
『良いなあ、私も踊りたい…』
久太郎は、すっかり幻影に夢中になり、彼の話など耳に入らぬ優子を見て、ニコッと笑った。
『踊れるよ。』
『えっ?本当ですか?』
『目を瞑ってご覧。』
『わあ!』
優子は言われた通り目を瞑ると、思わず声をあげた。
いつの間にか、久太郎の幻出させた光景の中に立っていたからである。
しかし…
『綺麗!何て綺麗なんだろう!』
いざ、そこに立ってみると、優子が夢中になったのは、祭囃子でもなければ踊りでもなく、自分が着ていた赤い小袖の着物であった。
『あったかーい…』
袖を持ち上げ、頬擦りすると…
『何て素敵なんでしょう…』
最早、祭囃子を奏でる翁と嫗も、踊りに夢中になる村人達も目に入らず、着ている着物の矢絣模様に見入ってしまった。
『気に入ったかい?』
久太郎は、三角形をした優子の小さな乳房を優しく揉みながら聞くと…
『はい、とても…』
優子は目を瞑ったまま大きく頷いた。
『さあ、踊っておいで…』
久太郎は言いながら、小山の頂上のような優子の乳首の先を撫でた後、そっと口に含んだ。
『アァッ…』
軽く顎を反らせ、小さな声を漏らす優子は…
『アンッ…アンッ…アンッ…』
久太郎の口腔内で、尖った乳首の先をチロチロ舐め回されると、次第に暖たかなものに全身を包まれ、中に浮くような感覚にとらわれ始めた。
そして…
『アーン…アン…アン…アーン…』
久太郎に優しく乳首を吸われ、甘えるような声を漏らす優子は、ふと、踊りの輪の中から、一組の男女が手招きする姿を見出した。
『お父…さん…お母…さん…』
男女は、優しく頷き微笑みかけながら、更に手招きをしていた。
『お父さん、お母さん…』
優子は、一度も両親の顔を見た記憶がない。
それどころか、そもそも両親の存在すら知らずに育っていた。
にも拘らず、その男女を一目見るなり両親だと感じた優子は、手招きしていた女が、両手を広げると満面の笑みを浮かべた。
久太郎は、更に三角形の乳房を揉み、尖った乳首を吸いながら、優子とはまた別の幻影を追いかけていた。
大人になった優子と、村人達の輪に入って踊る光景である。
牡丹模様の藍の絣を着た優子は、踊りながら、時折自分の方を見つめてくる。
久太郎も、踊りながら見つめ返す。
優子は、その度に、今日の日の為に買ってやった髪にさす簪に手を触れ、ニッコリ笑っていた。
『綺麗になったよ、優子…本当に綺麗になったよ。優子、優子、私と、私と…』
久太郎が幻影の中で言いかけた、その時…
『アァァーーーッ!!!』
優子が、突然悲痛な声をあげた。
『優子!』
久太郎が現実に返ると、優子は苦痛に顔を歪めて身を捩っていた。
長年の仕込みで、どんなに痛くても、ソコに手を当てる事はしない。
しかし、足を固く閉ざし、腰を激しく捩らせてる事から、苦痛の源はソコにある事は一目瞭然であった。
『優子、大丈夫か!』
久太郎は言うなり、優子の脚を開いてソコを覗き込み、思わず目を背けた。
まだ、発毛の兆しすらない。
孔もまだ小さく未熟だ。
にも拘らず、連日絶え間なく蹂躙されているソコは、まだ中におさまっている筈のヒダが、既に大きくはみ出している。
色も、まだ綺麗な桃色をしている筈なのに、すっかり黒ずんでいた。
本来なら桃色の筈のソコが、黒ずんでいると言えば、ヒダばかりでなく、ワレメ周辺もそうである。
それだけで十分目を覆わせるが、それ以上に…
『イィィーッ!イィィーッ!イィィーッ!』
久太郎が、薬を塗ろうと触れる度に、優子が苦痛に顔を歪ませ、歯を食いしばる。
股間先端の包皮を捲ると、隠された突起には、突かれたと言うより、はっきり突き刺された傷があり…
股間のソコを開き、はみ出たヒダの内側を見れば、引っ掻かれたと言うより、切り裂かれたと言った方が良い傷が無数にあった。
『こいつ!噛みやがったな!』
久太郎は、不意に、日中の光景が脳裏を過った。
『オォォー!こいつは本当によく締まるぜ!』
優子の乳房が膨らみかけ、鬼座麿達の楽しみが、また一つ増えた。
『最近、アソコが段々緩くなってきやがったからな。でも、これは…これはたまらん!おまえを初めて種付けてやった時より良いぜ!』
『イギィッ!イギィッ!イギィッ!』
鬼座麿は、優子の股間を一層激しく突き立てながら、膨らみかけた乳房のシコリを鷲掴み握りつけた。
『イィィーッ!イィィーッ!イィィーッ!』
優子は、乳房のシコリを握られる度に、呻きをあげながら、つま先を突っ張らせて腰を浮かす。
その時、股間のソコが強く締め付けられるのが、たまなく良いのだと言う。
『どうだあ、優子。おまえも良いだろう?凄く良いだろう?ええ?どうなんだあ?』
鬼座麿は更に腰の動きを加速させながら、優子の乳房を握る力も強めてゆく。
『イィィーッ!イィィーッ!イィィーッ!』
『そうかあ、そんなに良いのかあ。俺もどんどん良くなっていくぞ。よーしっよし、それじゃあ、これなんかどうだ!』
『イギィィィィーーーーー!!!!』
優子は、とどめだとばかりに、思い切り乳房のシコリを握り潰されると、息の詰まるような声を上げて、顎と身体を思い切り反らせ捩らせた。
普通の家庭にあって、子供の身体が少しずつ大人になる事は、大きな喜びとなる。
家族達にとっても…
本人にとっても…
特に、女の子は、特徴が現れると、何か恥じらいのようなものを感じつつ、新しい未来の訪れを予感してときめきを覚える。
しかし、優子にとっては…
『そらっ!もう一度いくぞ!』
『イギィィーッ!』
祝福の言葉と笑顔の代わりに、欲情した男達の嘲笑う顔に囲まれ…
『どうだ!どうだ!どうだ!』
『イギィーッ!イギィーッ!イギィーッ!』
新たな苦痛が、また一つ増えるだけである。
そして、事件が起きた。
『便所兎、そろそろ、前の孔だけじゃあ物足らねえな。』
鬼座麿は言うなり、優子と身体の上下を反対にし…
『おい、羅阿免。おまえも加われ。』
言いながら、弍古見鱶鰭(にこみふかひれ)家出身の、鱶鰭羅阿免(ふかひれらあめん)に向けて、優子の肛門を押し広げた。
羅阿免はニンマリ笑うと、既に袴から出していた、猛りたっているモノを、優子の肛門に突きつ立てた。
『ウグッ!』
優子が、鈍い声を上げる。
『羅阿免、おまえ、後ろから握ってみろ。』
鬼座麿が言い終わるのも待たず…
『アァァーーーッ!!!!!』
羅阿免が後ろから小さな乳房のシコリを鷲掴み、グリグリと握り回すと、優子は凄まじい絶叫をあげた。
『これはたまらん!』
二人で優子を嬲るのを、見物していた寮生の一人…翠鱶鰭(すいふかひれ)家出身の鱶鰭業座(ふかひれぎょうざ)が、我慢の限界とばかりに、袴の中のモノを取り出し、優子の口に突きつけた。
『便所兎、おまえも腹空かせたろう、食え!』
優子は、二人に前後の孔を抉られ、乳房のシコリを握り潰される苦痛を堪えながらも、言われるままに、業座のモノを咥えた。
『アァァー!』
『ウゥゥー!』
『アウッ!』
やがて、三人は絶頂を迎え、優子の口と前後の孔と同時に白濁したモノを放った。
すると…
『おまえ、噛んだな…』
優子の口から引き抜くなり、業座が言った。
優子は、一瞬何を言われたのかわからないと言うように、目を見開く。
すると…
『俺も見たぞ。』
羅阿免が続けて言い。
『みんなも見たよな。』
鬼座麿が周囲に向かって言うと、一斉ににやけた顔を頷かせた。
漸く事態を掴んだ優子は、忽ち蒼白になり、震えながら、首を振った。
『優子、素直に言え。素直に言えば、許してやらないでもないぞ。業座の事を噛んだな。』
優子は、尚も震えながら首を振る。目には既に涙をいっぱい溜めていた。
『もう一度聞くぞ、噛んだよな。』
意地悪く言う鬼座麿に、優子は後退りしながら、首を振り続けた。
最早、どうにもならない事はしっている。
皆、優子が噛んでない事を百も承知して言ってるのだ。
それでも…
『そうか…それじゃあ、おまえの友達に聞いてやろう。
おい、氏蟲。おまえも、こいつが噛んだのを見たよな。』
久太郎は、突然振られると、鬼座麿と優子の顔を見比べた。
優子は、どうにもならないと知りつつも、救いを求めるように、涙に濡れた目を向け、久太郎を見つめ返した。
『見たよな!』
再度言い放つ鬼座麿に、久太郎は俯いて首を振る。
『そうか、二人して…それならば、こっちにも考えがあるぞ。』
言うなり…
『キャーーーーーッ!!!!』
鬼座麿は、優子を押し倒すや、乳房のシコリを思い切り抓り捻り上げた。
『さあ、言えっ!この便所兎、業座の事を噛んだろう!言えっ!言うんだ!』
久太郎は、泣き叫ぶ優子から目を晒し俯きながら、尚も首を振り続けた。
『まだ、二人して嘘つく気か!』
鬼座麿は更に更に、優子の両乳房のシコリを交互に抓り捻り上げ続けた。
そして…
『そうか…おまえ達がそう言う気なら…』
鬼座麿が言うより早く、別の寮生…忠下鱶鰭(ちゅうかふかひれ)家出自の鱶鰭龍璃(ふかひれりょうり)が、やっとこを三つ持ってきた。
鬼座麿は、そのうちの一つをとるや、優子の乳房片方のシコリを思い切り挟み上げた。
『キャーーーーーッ!!!!』
鬼座麿は、満面にほくそ笑むと、業座と龍璃にも一つずつやっとこを渡し…
『龍璃、おまえはもう片方の乳房をやれ。それと、直接こいつに噛まれた業座、おまえは…』
言われるより早く、業座は優子の股間先端の包皮を捲り上げ、剥き出しの突起をやっとこで小突いて見せた。
『嫌っ!嫌っ!嫌っ!』
何が始まるのか察した優子は、押さえつける寮生達の腕の中で、必死にもがき暴れ出した。
『氏蟲、もう一度だけ聞いてやる。こいつが噛んだのを、見たよな。見たんだよな。』
久太郎は、固く目を瞑り、顔を背けて俯いたまま、大きく頷いて見せた。
『よーしよし、それで良い、それで良い…』
鬼座麿は満足げに何度も頷きながら、優子の方を振り向くと…
『おまえの友達も素直に認めたぞ。業座の事を、噛んだってな。』
喜悦仕切った笑みを満面に浮かべて言った。
『お許しください…お許しください…もうしません…もうしません…もう…もう…』
優子は震え泣き出しながら、思わず尿を漏らした。
『許す?』
鬼座麿は言いながら、優子の股間から、自分の足元に流れてくるものを横目に見つめた。
『こんな、粗相までしてか?許せるわけないだろう?』
鬼座麿が言うなり広げた手を横にだすと…
『寮長、これを…』
瓊玖鱶鰭(にくふかひれ)家出自の満刀(まんとう)が、布に包まれた数本の竹串を手渡した。
『さあ、二度と、こんな悪さをしない為に、お仕置きの時間だ。』
鬼座麿は言うと、優子の股間のソコを押し広げた。
『お許しください…お許しください…お願いします…どうか…どうか…』
『さあて…まず、バイキンが入らないように、よく消毒をして…』
優子の哀願など耳にも入らぬと言うように、鬼座麿は言いながら、既に絶え間ない蹂躙に赤剥けたソコに、粗塩を擦り付けた。
『ヒィッ!ヒィッ!ヒィーーーーッ!』
優子が、悲痛の呻きをあげる。
しかし、それは始まりの合図に過ぎない。
『さあ、始めるぞ。』
鬼座麿は言うなり、竹串を一本とり、優子の股間先端の包皮を捲りあげた。
そして…
『キャーーーーーッ!!!!キャーーーーーッ!!!!キャーーーーーッ!!!!』
優子の凄まじい絶叫に、久太郎は耳を押さえて蹲った。
股間先端の突起を突き刺しては粗塩を擦り付け、ヒダの内側を切りつけてはまた粗塩を擦り付ける…
その度にあげる優子の絶叫は、小半刻にわたって寮内に鳴り響き続けた。
やがて…
『さあて、痛い思いをした後は、気持ち良い事だ…』
鬼座麿は言うなり、隅で耳を押さえて蹲る久太郎の髪を掴んで、優子の方に顔を向けた。
優子は、血塗れの股間を抑える事も許されず、呻きをあげて悶えていた。
『氏蟲、便所兎に気持ち良い事をしてやれ。』
久太郎は、固く目を瞑ったまま、首を振った。
『何だ、気持ち良い事をできねえって事は…まだ、痛え事が足りてねえんだな。』
鬼座麿は言うなり…
『おい、蝋燭を持ってこい。』
言い終える前に、孟古鱶鰭(もうこふかひれ)家出自の鱶鰭旦端面(ふかひれたんたんめん)が、特大の蝋燭を持ってきた。
『さあて…こいつを、便所兎の此処に垂らしてやるかな…』
鬼座麿は、蝋燭に火をつけるなり、刺し傷だらけになった、優子の股間先端の突起に近づけた。
『嫌…嫌…嫌ーーーーっ!!!!』
泣き叫ぶ優子のソコに、更に蝋燭の滴が垂れ落ちる。
『熱い!痛い!熱い!痛い!』
押さえつける寮生達の腕の中で優子が暴れ、泣き叫ぶ中…
『次は、此処っと…』
鬼座麿が、切り傷だらけのヒダの内側肉壁に、蝋燭を近づける。
『やめろっ!』
久太郎は、堪えきれずに飛び出すや、鬼座麿を羽交い締めに押さえつけた。
『お願いです!もう…もう…もう、おやめください!御慈悲です!』
すると…
『そうか…なら、便所兎に気持ち良い事をしてやるんだな。』
鬼座麿は、意地悪く笑いながら、久太郎に言った。
『アン…アン…アン…』
優子は、漸く痛みがおさまったのか、また甘えるような声を漏らし始めた。
久太郎は、更に丹念に優子の股間を舐め回しながら、傷だらけのソコを貫いた時の感触を思いだす。
鬼座麿に突起を何度も突き刺され、肉壁を切り裂かれたソコを貫く時…
更に久太郎のモノに擦られ、肉壁の皮が捲れ流れ出す生暖かな血の感触…
そして…
苦痛に歪む優子の顔と呻き声…
股間の傷口を舐める舌先に、血の味が薄れ出してきた。
漸く、出血が止まったのだろう。
最も…
明日にはまた、血塗れにされるのだろうが…
『アーーーーン…アンアン…アーーーーン…』
久太郎が、股間先端の突起を舐めながら、肉壁の擦り傷と切り傷、付け根の避けた傷口に薬を塗ると、優子は一層、甘えるような声を漏らした。
やがて…
『ピーヒャラ、ピーヒャラ、ピーヒャラドン…ピーヒャラ、ピーヒャラ、ピーヒャラドン…』
優子は、ニコニコ笑いながら口ずさみ…
『お父さん…お母さん…』
と、呟きを漏らした。
天井を見つめる目線は、先に見た幻影の父と母の姿を探している。
久太郎は、再び床下の袋から九枚の木の葉を取り出し、空に舞いあげた。
『わあ!お父さん、お母さん!』
優子は、木の葉の間から、先の幻影で会った父と母を見出して、声をあげた。
『さあ、目を瞑って…』
『はい。』
久太郎に促されるままに、優子は目を瞑ると、先の幻影と同じ光景が広がっていた。
『お父さん、お母さん。』
優子が駆けて行くと、幻影の父と母が手を広げて抱き留めた。
『ねえ、この着物、似合う?私、綺麗?』
優子は、父と母の胸に交互に顔を埋めながら、聞いた。
『ああ、とっても綺麗だよ。似合ってるよ。』
久太郎は、木の葉の間から見える、大人になった優子に答えて言った。
『さあ、一緒に踊ろうか。』
久太郎が、幻影の中で大人になった優子の肩を抱いて言うと…
『うん!』
優子は、幻影の父に大きく頷き、もう一度、両親の懐に交互に顔を埋めた。
*画像は、韓国出身女優のハラさんです。記事のイメージとして載せました。

コメント

友達

2020年07月31日 08時34分00秒 | 紅兎〜青鳥編



『何だ、今日も此処で寝るってか?』
『おまえも、好きになったもんだな。最初は、あんなに嫌がってたのによう。』
『いざ、便所兎の味を覚えたら、一晩中だもんな。』
『それにしても…幾ら、便所兎を独り占めしてえからって、よくこんな子種臭え場所で寝られるな。』
『まあ、汚え氏蟲(うじむし)の寝床には、お誂え向きって奴だろう。』
『おかげで、俺達も氏蟲臭えおめえと枕並べて寝ずに済ませられるってもんだぜ。』
同寮達が、口々に指差して揶揄して笑う中。
久太郎は、淡々と着物を脱ぎ捨て全裸になると、土間に繋がれる優子を懐に包むように抱きしめた。
『それじゃあ、ゆっくりな…』
鬼座麿は、ニィッと笑うと…
『おっと、こいつは朝まで預かってやるぜ。便所兎と寝るのに、必要ねえもんな。』
久太郎の脱ぎ捨てた着物を掴み取り、持ち去って行った。
『行ったようだね。』
『はい。』
鬼座麿達の後ろ姿が、寮内の部屋に消えると、久太郎と優子は満面の笑みを浮かべて頷きあった。
『それじゃあ、始めようか。』
『はい!』
久太郎は、優子を抱いて座る背中のあたりに隠していた風呂敷包みを取り出すと、優子は仰向けになって、目を瞑る。
風呂敷包みから最初にとりだされたのは、薬入れであり、久太郎は中から綺麗な抹茶色の塗り薬を掬いとった。
『私達、お友達…』
優子は、久太郎の顔が目の前に近づくと、嬉しそうに言った。
『そうだ、お友達だ。』
『ずっと、お友達…』
『ずっとずっと、友達だ。』
『一生?死ぬまで?』
『死んだその後も…永遠に…』
久太郎はそう言うと、優子と唇を重ねた。
互いの舌先を絡み合わせると、鼻をつく異様な悪臭が口の中に広がる。
日々、数え切れない程咥えさせられた男のモノと、口腔内に放たれ飲み込まされ続けた子種の臭いが染み付いているからだ。
最初は吐き気を催したが、今は何も感じない。
ただ、激しい痛みだけが胸を貫く。
『この子は、この臭いの中でずっと生かされている。これまでも…
これからも…
ずっと…』
同時に…
『この子は、幾つになるのだろう…』
出会ってもうすぐ一年になる事に気づき、ふと思う。
本土総社の養成所入りした鰐鮫一族の子女達は、六年の出仕見習い期間を経て、女子は正式に巫女として社に送られ、男子は尋常試験を受ける資格を得る。<br>
尋常試験を合格した者は、準神職者である主典となり、上級試験を受ける資格を得るべく、更に八年の見習い期間を過ごす事になる。
主典となった鰐鮫一族の子弟達は、十人一組で一軒の寮をあてがわれて共同生活をする事になるのだが…
各寮に、一人の寮畜と呼ばれる素兎があてがわれる。
この寮畜は、幼畜と呼ばれる、出仕達の実習用に囲われた素兎のうち、七歳に達した者の中から選ばれる事になっている。
選び方は、前の寮畜が役目を終えて去るか、死ぬか、あるいは新たな寮が建てられた時、寮生達が希望する幼畜に種付けを行って決める。
この際、寮生の一人が、希望する幼畜の口と膣と肛門と、全てを貫き中に放つ事のできた幼畜が、その寮の寮畜となる。
これを、寮畜選びと言う。
また、寮畜選びを成功させた寮生が、その寮畜がいなくなるまで、寮長を務めるしきたりになっている事から、寮長試験とも呼ばれる。
寮長経験のある養成所卒業生達にとって、これは人生最初の武勇伝となり、一生の自慢話にしてる事から、今は専ら後者で呼び習わされている。
出仕時代から、研修に使われていた優子を気に入り、見事寮長試験に成功を収め、寮長の座と共に射止めたのは、鬼座麿であった。
通常、受験資格を得て三年は掛かると言われる尋常試験に、十二歳にして、一度で首席合格させた年の事である。
『なあ、便所兎。そう言う意味では、お前の最初の男は俺なんだよな。』
事ある毎に自慢する鬼座麿の言葉を逆算すれば、優子の年齢は、もうすぐ九歳と言う事になる。
しかし…
物心ついた頃から、優子は素兎であった。
親の存在同様、本当の年齢もわからない。
久太郎は、重ねた唇を優子の首筋に移し、胸元に向けてゆっくり舌先をチロチロ這わせて行きながら、優子の股間に触れてみる。
発毛の兆しは全くないが…
小指を挿れるのもキツかったソコは、いつの間にか二本の指が易々と奥まで入るようになっていた。<br>
ワレメの奥に隠れていたヒダが、今は外にはみ出し、色も薄紅だったのが黒ずんでいる。
どれ程蹂躙されればそうなるのだろう…
ソコを撫で回しながら、薬を塗る指先の感触だけで言えば、とてもまだ九歳に満たぬ幼いソレとは思われなかった。
しかし…
『アンッ…アンッ…アァァンッ…』
甘えるような声を上げていた優子が、不意にクスクスと笑いだす。
『此処か?此処が良いのか?』
久太郎が言いながら、股間先端の突起を撫でるのと同時に、真っ平らな胸の小さな乳首を舐め回すと…
『イヤンッ!イヤンッ!くすぐったい!』
優子は、肩を窄めて一層クスクス笑い出した。
何とも邪気のない笑顔…
何ともあどけない笑顔…
やはり九歳に満たぬ幼い笑顔であった。
『アッ…ソコ、汚い…』
久太郎が、小さな乳首を舐め回していた舌先を、更に腹部、下腹部へと這わせ、最後に股間のソコへ運んで行くと、優子は慌てて腰を引いた。
『どうして?』
『どうしてって、ソコ…』
『オシッコをするところだから?』
『そうじゃなくて…ソコは…ソコは…』
便所…
鬼座麿はいつもそう言っている。
男達のモノが垂れ流す為の汚い便所だと…
だから、鬼座麿達は、面白半分に蹂躙するが、自分達のモノを舐めさせるように、彼らが優子のソコを舐める真似は決してしない。
『私のモノは汚いか?』
『えっ…あの…でも…それは…』
『君は、いつも私のを優しく舐めてくれる。だったら、君のココも汚くない。』
久太郎は、ニッコリ笑いかけて言うと、ワレメの線に沿って、ソコをチロチロ舐め出した。
『アァァーン…アンアン…アァァーン…』
優子は、うっとり目を瞑り、顎と腰とを同時に上下させながら、甘えるような声を上げ出した。
久太郎は、更にワレメの中、皮の被った先端の突起へと舌先を這わせ、チロチロ舐め出すと…
『アンッ!アンッ!アンッ!アンッ!』
優子は、一段と声を上げながら、顎と腰の上下運動を早めて行き…
最後…
『ハァァァーーーーンッ!』
一際高く声を上げると同時に大きく浮かせた腰を、そのまま制止させた。
『優子、お食べ。』
暫し全身の力が抜け、放心状態になっていた優子が起き上がると、久太郎は陶器の弁当箱を差し出した。
『わあ!拉麺!』
優子は、蓋を開けるなり満面の笑みで声を上げる。
『今日は、ナルトにシナチクが入ってる。』
『具の名前、覚えたんだね。』
『私、これ、大好きですから。』
もう、以前のように他の寮生達の目を憚る必要はない。
束の間の夜。
優子は自分と同じように全裸の久太郎に抱かれて、その肌の温もりを感じながら、ずっと一緒に過ごせるのが嬉しかった。
友達…
久太郎は、思いもかけず、そう言ってくれた。
そう…
半年前…
いつものように事を終え、久太郎が優子を羽織りに包んで胸に抱いた時…
『おまえ達、そこで何をしている。』
不意に、後ろから声がした。
『随分まえから、土間で何やら声がすると思っていたら、こう言う事か…』
振り向けば、そこには、酷薄な笑みを浮かべる鬼座麿達が立っていた。
『おい、便所兎おまえ、何羽織りなんかにくるまっている?』
鬼座麿が意地悪く言いながら顎をしゃくると…
『便所兎の分際で、こんなもん着やがって!』
取り巻きの同寮の一人が、肩にかけられた羽織を剥ぎ取り、優子を突き飛ばした。
『おまえは、便所なんだよ!俺達がもよおしたら、いつでも垂れ流すな!』
『子種臭え便所の分際で、人様の着るものを羽織るんじゃねえ!』
更に二人の同寮が、優子を踏みつけ蹴飛ばした。
『何をする!』
久太郎は、声を上げて同寮達に掴みかかろうとすると…
『そうか、これは、お前の仕業か。』
鬼座麿は言うなり、久太郎の胸ぐらを掴み上げた。
『だったら何だ!』
久太郎も、もはや負けずに鬼座麿の腕を掴み上げ返して言った。
『歯向かう気か?氏蟲の分際で、産土の俺に、逆らおうってのか?』
鬼座麿は言うなり、また酷薄な笑みを浮かべて、久太郎を見下ろすように言った。
『氏蟲、おまえ、俺の兄貴が応次郎の上官なのを忘れたわけじゃねえよな。』
『くっ…』
久太郎が思わず唸りをあげて手を離すと、鬼座麿は思い切り久太郎を殴り倒し…
『おいっ!』
と、同寮達に向かって、顎をしゃくり上げた。
優子に暴行を加えていた同寮達は、鬼座麿の合図を見て立ち上がると…
『貴様!寮長様に歯向かうとは不届きな奴!』
『このお方はな!鱶鰭連(ふかひれのむらじ)家の中でも、総本家…菅谷鱶鰭(すがたにふかひれ)家ご当主鱶鰭崇布(ふかひれすうぷ)様の甥御様にあらせられるんだぞ!』
『同じ鱶鰭家でも、おめえのように、女々しく仕立てや織物し腐る村宮司の氏蟲とは訳が違うんだ!』
と、口々に罵りにながら、久太郎を袋叩きにした。
『グググゥッ…』
久太郎は、殴打される痛みより、何も抵抗できない事への屈辱に地面に腕をついて歯軋りする。
『素兎に着物を着せたり、身体を覆ってやる事は、神領では一番の禁忌だって事は知ってるよな。』
鬼座麿は、久太郎が十分に打ち据えられたのを見届けると、再び胸ぐらを掴み上げて言った。
『しかも、こいつは親の大罪を禊ぐ為に着物を剥がれた、穢畜(えちく)の素兎だ。子を孕んでも、三諸島に送られても、死ぬまで着物を着る事も着せる事も許されん。それを、おまえは…』
今度は、歯軋りしながらも、久太郎は抗わずに俯く。
『最近、俺の言う事をよく聴いて、便所ウサギの事もよく仕込むようになったから、目をかけてやろうと思っていたけどな…
そう言う事なら、仕方がない。お前の事を、兄貴に報告してやろう。』
『何だと!』
久太郎は、忽ち顔色を変えた。
『そう言う事だよ…』
鬼座麿が、また意地悪く笑う。
『兄貴は、身内の不祥事を何よりも嫌うからな。傍系の氏蟲とは言え、鱶鰭家のおまえが、最大の禁忌を犯したなんて、絶対許すまいよ。』
『やっ…やめろっ!弟には手を出すな!』
『前にも話したな…一之末社領の社は、何かと曰く付きの社だ。
兄貴に目をつけられた奴に、どんな祟りがあるのかな?』
『頼む!やめてくれ!』
『この前の奴は、目を潰され、耳と鼻を削がれ、のたうちまわってるところを見つけられたとか言ってたな。
その前の奴は、手足の指を全て切り落とされ、筋を切られ…
脊髄を砕かれた奴もいたな…
まして、神領最大の禁忌を犯した奴の身内ともなれば…御祭神様のお怒りもさぞや…』
『お願いします!私はどうなっても良い!応次郎だけは…応次郎だけは…』
久太郎は、遂に膝と両手をつき、額を床に擦り合わせて哀願し始めた。
『それじゃあ、おまえ…』
鬼座麿は、思い切り久太郎の頭を踏みつけると…
『心を入れ替えるんだな。』
言いながら、側にいる取り巻きの寮生に向かって、手を出した。
寮生は、ニンマリ笑いながら、寮の奥に消えて行く。
『良いだろう…』
『それでは…』
久太郎は顔をあげると、また蒼白になった。
奥に消えた寮生が、真っ赤に焼けたヤケ火箸を持ってくるのに目を留めたからである。
『わかった…わかりました…』
『そうか、そうか、わかったか。それじゃあ、落とし前をつけるんだな。』
鬼座麿が顎を反らせ、酷薄な笑みを浮かべると、久太郎は答える代わりに、覚悟を決めたように両手を差し出した。
側では、散々に打ち据えられた優子が、顔色を変えた。
『や…や…やめて!』
飛び出て来ようとする優子を、側に立つ寮生が押さえつける。
『羽織りを着たのは私です!私が、お願いして着せて頂きました!だから…だから…久太郎様は…久太郎様を…』
鬼座麿は、優子の哀願する声など聞こえぬとでも言うように、寮生から焼け火箸を取り振り上げて…
『グッ!』
顔を背けて目を瞑り、食いしばる歯の隙間から声を漏らす、久太郎の手の横すれすれの地面に突き刺した。
『これで便所兎の足を突き刺せ。』
『えっ?!』
『聞こえなかったのか?こいつで、便所兎の足を突き刺せと言ってるんだよ!』
鬼座麿は、思わず見上げる久太郎の髪を鷲掴むと、焼け火箸の方に顔を突きつけて言った。
『お…お待ち下さい…』
『何だと?』
『優子に、羽織をかけてやったのは私です。』
『だから、何だ?』
『刺すと言うなら、私の手を…優子に羽織りを掛ける事が罪だと仰せでしたら、その罪を犯した私の手を…』
『何を言ってる。羽織りをかけたのはおまえでも、断りもせず、かけられたのは便所兎だ。
着物を着せてやると言われても断り、身体を隠されたら自分から晒す。それが、便所兎の分別ってもんだ。
その事を、しっかり躾けてやるのが、鰐鮫一族の役目だと習ってるだろう?』
『クッ…』
『ほら、やれよ!心を入れ替えて、鰐鮫一族としての本文を弁えるんだろう?
鰐鮫一族としての本文の基礎中の基礎は、兎共への体罰だよ。体罰こそが、兎を躾け、兎を鍛え、兎を強くする。
わかったら、やれ。さっさと、やるんだよ!』
久太郎は、目の前の地面に突き刺された焼け火箸を見つめると、唇を噛みしめて目を瞑った。
地面につけたままの手は、硬く拳を握りしめている。
『どうした?できないのか?』
久太郎は、答える代わりに首を振り立てた。
『何故できん。おまえは、神職者になりたいんだろ?神職者の一番の責務、何故果たせん。』
『友達…』
『友達だと?』
『友達だから…優子は…優子は…』
久太郎が、漸く思い口を開いて言うと…
『久太郎様…』
それまで、寮生達に押さえつけられていた優子が、思わず顔を上げて久太郎を見つめた。
『優子は…私の大切な友達だから…私にはできません!』
久太郎が、遂に思い切ったように言うと、見る間に優子の目から涙が溢れ出した。
『友…達…私、久太郎様の…友…達…』
止め処なく涙を溢れさせながら、優子は口の中で何度も同じ言葉を繰り返した。
そして…
『そうか…この便所兎は、おまえの友達なのか…それじゃあ、仕方ないな。
その子種臭え穢畜の為に、おまえは祟りに合う応次郎を、見殺しにするんだな。』
鬼座麿が追い討ちをかけるように言いかけたその時…
『着物を着てはいけません!』
優子は、押さえつけていた寮生達を振り払って飛び出し、声を張り上げ地面に刺さる焼け火箸を引き抜くや、自分の足に突き刺した。
『ギャーーーーーーーッ!!!!!』
『優子!!!』
優子の叫び声と、久太郎の声が交差する。
『優子…おまえ…』
優子は、肩呼吸をしながら足に刺した焼け火箸を引き抜くと…
『身体を隠してはいけません!』
再び声をあげながら、もう一度、焼け火箸を自分の足に突き刺し引き抜いて…
『種付け中、何をされても、させられても、いやがっはいけません!』
更に叫びながら、もう一度、焼け火箸を自分の足に突き刺した。
『お願いです…もう…もう…着物を着たり致しません…身体も隠したり致しません…どうか…どうか…』
優子は、三度目に焼け火箸を突き刺して言いながら、まっすぐ鬼座麿を見上げた。
『良い心掛けだ。』
鬼座麿が薄ら笑いを浮かべなごら、優子を見下ろして言うと、周囲を取り巻く同寮達もニヤニヤと笑い出した。
『便所兎は、いつだって…』
鬼座麿は言いながら側に寄ると、思い切り足を上げ…
『そうでなければな!』
優子の足に突き刺さる焼け火箸の頭を踏みつけた。
『ギャーーーーーーーッ!!!!!』
優子が凄まじい絶叫を上げると…
『その心掛けを…』
鬼座麿は言いながら、焼け火箸の頭を踏みつけた足を持ち上げ…
『忘れるんじゃ…ないぞ!』
槌で釘を槌付けるように、何度も何度も、焼け火箸の頭を踏みつけた続けた。
『優子…何故だ…何故、こんな真似を…』
鬼座麿達が去り、久太郎は急ぎ優子の側に駆け寄ると、焼け火箸を引き抜き足の手当てをしながら、同じ言葉を繰り返した。
『友達…』
『えっ?』
久太郎が思わず手を止め、優子の顔を見上げると…
『私、久太郎様の友達って、本当?』
優子は、小首を傾げて尋ねた。
『それは…』
友達…
追い詰められ、無意識に出た言葉…
しかし、改めて問われると、久太郎は言葉に詰まった。
優子に親切にしたのは、罪の意識からであった。
弟を守る事を理由に、目の前で凄惨な陵辱を受け続けている少女に何もできない事への…
弟を守る事を理由に、皆と一緒になって苦痛を訴え泣き叫ぶ事も許されない少女を陵辱し続ける事への…
それが、優子と毎日過ごすうちに、安らぎとなり、楽しみになっていた。
それでも…
その束の間の時が過ぎれば、また、皆のする事を見過ごし、共に同じ事を繰り返している。
そればかりか…
その束の間の時ですら、自分の汚いモノを優子に舐めさせ、口腔内に放つモノを呑み込ませている。
友達だなんて、名乗る資格があるのだろうか…
久太郎が答えに窮し、押し黙っていると…
『私…やっぱり、久太郎様のお友達ではないのですか?さっきのあれは、あれは…』
優子は、忽ち鼻を鳴らして、涙を溢れさせた。
『友達だよ…』
久太郎は、漸く口を開くと、優子の頬を濡らす涙を拭いながら言った。
『優子は、私の友達。大切な友達だよ。』
『本当…?本当…?本当…?』
久太郎が大きく頷くと、優子は満面の笑みを浮かべて、久太郎の胸に顔を埋めた。
『私、久太郎様の友達…久太郎様の友達…』
『そうだよ。優子は、この世で一番大切な友達だよ。』
優子が同じ言葉を繰り返しながら、いつしか久太郎の胸の中でシクシク泣き出すと、久太郎も優子を強くだきしめ、共に涙を溢れさせた。
次の夜…
『おまえ、此処でまた何をする気だ?』
鬼座麿が、優子の繋がれている土間に、また顔を出す久太郎を見つけて言うと…
『今夜から、私は此処で寝る。』
久太郎は言うなり、その場で着物を脱ぎ出し、全裸になって優子を抱きしめた。
『これなら、宜しいのでしょう?』
『なるほど、良いだろう。薄汚い氏蟲には、俺達と同じ寝室より、子種臭い便所兎の側がお似合いと言うもんだ。』
鬼座麿は、ニンマリと冷たく笑って言うと…
『こいつは、朝まで預かってやる。ゆっくり休めよ。』
久太郎の脱ぎ捨てた着物を持って、その場を去って行った。
『ハァ…ハァ…ハァ…』
久太郎の鼓動と呼吸が次第に早まってゆく。
『気持ち、良いですか?』
優子は、久太郎のモノ先端を、掌全体ですっぽり包むようにして優しく擽り撫で回しながら尋ねると、久太郎は満面の笑みで大きく頷いた。
絶頂の時が近づいている。
優子は、久太郎のモノに触れる掌全体に感じると…
『お友達…』
一言呟き、ニコニコッと笑うと、今や破裂寸前にまでなった久太郎のモノを小さな口いっぱいに頬張った。
小さな舌先が、久太郎のモノ先端裏側をチロチロと舐め摩る。
『アァァッ…』
久太郎が声を漏らし、腰を浮かせた刹那…
優子口の中いっぱいに、生暖かいモノが放たれた。
留まる事を知らぬ尿道の流れを舌全体に感じながら、優子は更に丹念に裏側を舐め吸い上げる。
優子の中で、久太郎のモノは尽きる事の知らぬ泉の如く、溢れ出し続けた。
『お友達…私、久太郎様のお友達…』
やがて…
漸く久太郎のモノが放ち尽くされると、優子はまた心の中で呟きながら、最後にもう一度思い切り吸い上げた。
『久太郎様…大好き…』
これが終わった後、久太郎の暖かい胸に抱かれて眠りにつく。
久太郎の鼓動を聞きながら…
久太郎の肌の温もりを感じながら…
何より…
自分はもう一人ではない…
身体を寄せ合い暖め合って眠る人がいる…
長い間、寂しかった分、友達と呼んでくれる人が存在する喜びを噛みしめながら、尿道を空っぽにしようと思い切り吸い上げた。
*画像は韓国出身女優のハラさんです。記事のイメージとして載せました。

コメント

約束

2020年07月29日 13時59分00秒 | 紅兎〜青鳥編



『それは?』
不意に顔を上げた優子は、久太郎が手に持ち眺めている物に目を留めて首を傾げた。
それは、刃渡り二尺、鋭利な鐺の艶消しされた鞘に納められ、菱形の大きな鍔を嵌め込んだ直刀であった。
『毛三本(けさんぼん)。我が大化家(おばけ)に伝わる忍刀だよ。』
『しのび…かたな?』
『そう…元々、我が家は忍の家系…』
振り向き答えて言いかけ…
『アァッ…』
久太郎は、喘ぎ声を漏らした。
『気持ち、良いですか?』
優子が、久太郎の股間のモノを揉む指先を、一層丹念に動かしながら尋ねると…
『アッ…アッ…アッ…』
久太郎は更に喘ぎながら頷いた。
優子は、久太郎の股間のモノも一緒に、大きく上下させるのを見て、クスクス笑う。
久太郎は、これが好き…
竿を激しく扱かれるより、先端を優しく撫で回されるのを悦ぶ。
特に…
『ハァ…ハァ…ハァ…』
猫の顎を撫でるように、先端の裏側を撫でてやると、久太郎は肩呼吸を早めながら、うっとりした顔になる。
それは、優子が見つけた、自分だけの発見であり、小さな秘密であった。
優子は、他の寮生達とする時のようにコトを急がない。
久太郎のモノの先端が仄かに滑り出し、絶頂が迫っている事を指先に感じると、敢えて揉む力を緩める。
少しでも長く…
少しでも沢山…
久太郎に悦んで欲しかったからだ。
久太郎に喜んで貰えるなら、何でもしてあげたい。
優子は、いつもそう思っていた。
しかし、他に出来る事は何もなかった。
物心ついた頃から、絶えず身体を弄ばれていた。
股間のソコには、男のモノを捻り込まれ、指や異物で掻き回されるばかりの日々を過ごしていた。
徹底的に仕込まれた事と言えば、男の欲情を駆り立て、悦ばせる事ばかりであった。
だから、自分にできるたった一つの事で、精一杯、久太郎を悦ばせてやりたいと思っていた。
それに…
『しのびって、何ですか?』
『童(わらべ)衆って…知ってるかい?』
『はい。神領の境を守り、神領を抜け出そうとする領民や、逆に入ろうとする領外者が現れると、その人達がやってきて殺されると聞いています。』
『我が…大化家(おばけ)は…その童に連なる家系と言われてる…』
股間のモノを手や舌先で悦ばせている間、久太郎はいろんな話をして聞かせてくれた。
『元々は、草と呼ばれていてね…
その土地に根付いて潜み…謀反を企む人が現れないか見張り…もし現れたら…その人を殺して自分も死ぬのが役割だったと言われている…』
『まあ、怖い!』
優子が顔色を変えて声をあげると…
『まあ…今となっては、古くから伝わる御伽話でね…本当にそんな事があったのか…そもそも、童何てのが存在するのかどうかもわからない…私達が、領外に出るのを防ぐ為の威のような…アァァッ…』
また少し、股間のモノに加えられる優子の指先の刺激が強まり、思わず喘ぎを漏らす久太郎は…
『そんな作り話…しなくたって、神領を出ようとする者何て、いやしないのに…ね…』
優子の頬を優しく撫でて、ニッコリ笑って見せた。
すると…
『私、出てゆきたい…』
優子は、ポツリ呟くように言った。
『優子…』
『私、もう嫌だ…毎日、毎日、もう嫌だ…出て行きたい…』
見れば、目にいっぱい涙を溜めている。
『そうだね…こんな所…私も、出て行きたいよ…』
久太郎はそう言うと、更に優子の頬を撫でた後…
『そうだ…この忍刀を鍛えた人は、波桁阿珠丹(はげたあたまに)と言うそうだ。』
思い出したように、話題を変えて言った。
『はげた…あたまに…』
『そう。刀鍛冶であると同時に、忍術の使い手でね…その腕を見せるよう、頭領に命じられたところ、十人の使い手に真剣で向かってくるように言った。そして、十人全ての攻撃を難なく交わしながら、この忍刀で全員の髪を三本だけ残して全て切り落とすと言う事をやってのけた。
以来、この忍刀を毛三本と呼ぶようになったそうな。』
『へえ…凄い…』
と、その時…
『アッ!」
『アァッ!』
二人は同時に声をあげた。
話に夢中になっている間、優子よ指先の中で極限まで膨張したモノが、いよいよ絶頂の時を迎えようとしてる事に気づいたからである。
『アウッ!』
『ワァッ!』
優子が慌てて頬張ろうとした時はもう遅く、久太郎の猛り勃ったモノは、その顔目掛けて思い切り白濁したモノを放った。
『あーあっ…』
久太郎が大量に放ったモノでべとつかせた手を見つめながら、優子が残念そうに声を出すと。
『優子、おまえ、その顔…』
久太郎は、思わず声を上げて笑い出した。
『えっ?』
優子は、久太郎の差し出す手鏡を見るなり…
『まあ!』
一瞬、目を見開いた後、やはり、声を上げて笑い出した。
久太郎が思い切り放ったモノが、鼻の頭の上にひっかかっているのが、何とも戯けていたからである。
笑っている…
物心ついてから、笑った事などなかった優子は、自分が笑っている事に最初は驚いたが、今は心底楽しいと思う。
『待って、まだしまわないで。』
久太郎が股間のモノを袴に戻そうとすると、優子が慌てて止めて、口に入れる。
『おい、何をする?』
『何をするって、やり直しです。次は、ちゃんと口の中に出さないと…』
『もう何も出ないよ。』
『これ、私のご飯。まだ、お腹いっぱいになってません。』
優子は、久太郎が必死に止めようとするのも構わず、久太郎のモノの先端を、口の中でチロチロ舐め出した。
『優子!おいっ、優子って…ば…アァッ…アァッ』
必死に止めようとするのも束の間…
久太郎は、優子の小さな舌先の心地よい刺激に、また声を漏らしだした。
優子は、次第にまた口腔内で膨張するモノを丹念に舐め回しながら、また、クスクスと笑い出した。
久太郎と、こうして笑って話せる時間が好きだった。
優子は、久太郎の話す事は、何でも喜んで耳を傾けた。
『私の故郷、大化村(おばけむら)は、何処を見渡しても田んぼと畑ばかりで、何もなかった。』
『でも、周りには、山や林があって、川があったのでしょう?川には、いろんな魚が泳いでいたって…』
『まあ、確かに…』
『村外れには桑畑が広がっていて…
柚瓊部屋(ゆにへや)と呼ばれる蚕部屋を中心に、理衣符(りいぷ)二十一と呼ばれる工房が並んでいたとか…
私、どれも見た事ありません。一度で良いから見てみたい…』
『そうか…』
『ねえ、聞かせて下さらない?蚕と言う虫が産み出す綺麗な糸の事…』
『絹糸だね。』
『その糸で織られる綺麗な生地、その生地で仕立てる綺麗な着物…』
優子は、同じ話を、何度もせがんだ。
『ねえ、久太郎のお父様って、恵久助(えくすけ)様って仰るのよね。お母様は、是杜子(ぜとこ)様。)』
『そうだよ、よく覚えてるね。』
『お父様って、とっても無口でらしたのよね。』
『無口も何も…生前、父が話すのを聞いた記憶が全くない。だから、父がどんな声をしていたのか、覚えてないんだ。』
『でも、とっても立派な方でらしたのよね。村人に課せられた玉串や初穂を減らして暮らしを守ろうとされたり…貧しくてお医者様にかかれない村人達の為に、治療代や薬代を安くしたり…』
『あ…厳密には違うよ。日頃からみんなで積み立てたお金を、必要とする病人の治療費や薬代にあてるんだ。領外では、ホケンと呼んでるそうな。』
『へぇ…それと、村の兎神家から、一人の兎も出そうとなさらなかったし、村の氏神社にも兎をおこうとなさらなかった。特に、素兎を絶対出されなかった。』
『父も、氏神宮司とは言え神職者だ。神領にとって、兎幣の伝統や兎神子の存在が重要な事はご存知でらっしゃる。本来なら、父こそ積極的に兎神子をお社様や産土様にお捧げするお立場にあられたし、その事を誰よりも自覚しておられた。』
『でも、兎を一人も出されなかった…』
『本来、神聖な存在として敬い、丁重に扱われるべき兎神子達が、神職者達や崇敬顔役達の利権の道具や歪んだ嗜好の吐口にされ、卑しめられていた。
父は、誰よりも兎幣の伝統を重んじ、兎神子達を敬っておられただけに、それが許せなかったのだ。
本来、二十歳を過ぎて任を解かれた後、行き場のない旧兎神子(ふるとみこ)達の受け皿であった筈の道祖社は遊女宿と化し…
何より、父が生涯かけてなくしたかったのは、意に沿わぬ領民への報復と見せしめでしかない素兎の制度だった。』
『立派な方でらしたと思います。』
『立派な父…実際、どんな方でらしたのか…
日々、村長として村政に奔走し、村宮司として祭祀に明け暮れ…
殆ど家にいた事がなく、家にいても全く口を開かず…
漸く十二を目前に、父の役職を本格的に学ぶ為、父と共に氏神(うじがみやしろ)に出仕する矢先に父が亡くなった。』
『そうでらしたの…』
『叶うものなら、父と話したかった。父にも、少しで良いから、何か話をして頂きたかった。』
『でも、お父様が無口でらした分、お母様はよくお話される方でしたのよね。』
『まあね…父が話すのを見た事ないのとは逆に、母が口を閉じているのを見た事がない。
よくもまあ…あんなに話す事があると思える程、日がな一日喋ってらした。
そう、優子みたいにね。』
『まあ、酷い!』
思い切りむくれる優子を見て、思わず吹き出す久太郎も、優子と話す時間が楽しみになっていた。
話題など…
何でもよかった。
他愛無い話…
何気ない話…
『ねえ、応次郎様って、とても走るのが早いのですよね。』
『早いも何も…
あいつが、一度本気出して駆け回り出したら…
余りの速さに姿が見えなくなるか、逆に何十人にも数が増えたように見えてしまう。』
『本当ですか!』
『しかも、応次郎の奴…やたらと変装が上手い上に素早くて…駆け回りながら、変装を繰り返すなんてのをやってのけるから、本当に人が何十人も出現したように見えてしまうんだよ。』
『凄いのですね。』
とにかく、何を話しても無邪気に喜ぶ小さな女の子と言葉を交わしているだけで、久太郎は、何か心安らぐものを感じた。<br>
&nbsp;『夢?』
上目を向けて問ひ返す優子は、一瞬舌先を離した久太郎の股間のモノの先端を、また丹念に舐め始めた。
『夢と言うより、誓いと言った方が良いかな…
応次郎と交わした、大切な誓いだ。』
久太郎が頭を撫でてやりながら言うと、優子は久太郎の股間のモノを舐め続けながら、ニコニコ笑って耳を傾けた。
『本土総社を遠く離れた鱶鰭社領…特に末社領では、常に不正が蔓延っている。』<br>
久太郎は、股間のモノ先端の裏側を優しく舐められる心地良さにうっとりしながら、話し続けた。
『良い思いをするのは、お社様や領主様、産土様の一族と、彼等に多額の賂を贈る、一部の大商工座衆の連中だけだ。殆どの領民達は、不当な初穂や玉串の簒奪に苦しんでる。』
優子に股間のモノを舐められても、もう、荒い肩呼吸をしなくなった。
ソコを刺激されて興奮するより、今は亡き母に頭を撫でられた時のような安らぎを感じるようになったからだ。
優子も、久太郎は激しく刺激するより、優しく撫で回すようにされる事を好む事を知り、舌先をチロチロ動かして、股間のモノの先端を舐め回す。
『歯向かう者は、即刻兎神家に加えられ、娘を素兎にされる。
懲罰として兎神家に落とされた者の娘が素兎にされる時には、親の手で因果を含められる時も、仕込みを受ける時も与えられはしない。皮剥の儀式すらない。
沙汰が下されたその場で、娘は着物を剥ぎ取られ、親の目の前で嬲り物にされた上で、全裸で領内を引き回される。行く先々で、好き物達の玩具にされながらね。』
優子は、十分に舐め回した久太郎のモノを、そっと口に含んで聞き入りながら、ふと思う。
自分はどう言う家に生まれ、どう言う成り行きで素兎にされたのだろう…
やはり、両親が重大な罪を犯した償いとして、素兎にされたと聞かされている。
親が人に有るまじき罪を犯した。
その禊として、人の証である着るものを剥奪された。
ケダモノと同じように、一糸纏わぬ全裸を晒し、求められるままに身体を差し出して生きねばならない。
何をされても、何をするよう要求されても、拒むどころから、苦痛を言葉にする事も許されぬ。
それが、拭いようのない親の罪の購い…
事ある毎に、そう叩き込まれてきた。
『宮司や領主に逆らった親に対する報復で素兎にさせられた子の運命は、地獄そのものだ。
来る日も来る日も、嬲り弄ばれるだけではない。何かと理由や言いがかりをつけられては、凄惨な仕置きを受ける。
仕置きと言うより拷問だ。
それも、大概、社の一画に押し込められた親の前でそれをされる。
幼い娘を目の前で嬲り、痛めつけるのを見せつけて、苦しめる為にね。
殆どの親は、娘の無残な姿を見せつけられた末、発狂死する。』
自分が素兎にされ、目の前で着物を剥ぎ取られて弄ばれた時、両親はやはり泣いたのだろうか?
優子は、聞き入りながら、想像して見た事もない両親に思いを馳せた。
来る日も来る日も、目の前で全裸で弄ばれ、責め苛まれる自分の姿に苦しむ父と母…
どんな人だったのだろう…
どんな人だったのだろう…
『一人残され、もはや親を苦しめると言う使い道を失った娘は、生かしておく理由もなくなり…
ただ、社の神職者や神漏、崇敬会顔役衆達の娯楽の為だけに嬲り弄ばれ、十二歳を迎える事も、子を成す事もなく、虐め殺される子が殆どだよ。』
久太郎がそこまで話すと、優子はもはや堪えきれず、涙を溢れさせた。
『ごめん…こんな話、嫌だったね。』
久太郎が慌てて優子の涙を拭ってやりながら言うと…
『ううん…』
優子は、咥えていた久太郎の股間のモノを口から離すと、大きく首を振った。
『もっと聞かせて下さい。私、久太郎様が応次郎様とどんな夢を見てらっしゃるのかお聞きしたいですもの…』
『そうか…』
久太郎は、大きく頷くと…
『父が治める大化(おおばけ)村は、特に過酷な初穂や玉串の取り立てを受けた。
お社(やしろ)様…
つまり、末社宮司に父が背き、長年に渡って村から兎神子を差し出さなかった事への報復だった。』
優子の頬を優しく撫でながら、また話始めた。
『元々…ただでさえ、冷害による飢饉に苦しめられていると言うのに、収穫の殆どを、初穂や玉串として簒奪され続けてきた。
それで、新しい産業を見出し、村民の生きる糧を得ようとした。
たまさか、大化村は桑栽培に適していた。
前に話した、毛三本を鍛えた刀鍛冶師、波桁阿珠丹の妻、波桁碓華尼(はげたうすげ)は蚕の飼育に長けていた事から、桑栽培と養蚕が始まった。
波桁阿珠丹の三人の息子達がいて…
父の跡は長男の迹寧茶(あとねいちゃ)が継ぎ、次男の郁孟斎(いくもうさい)と三男の陽申斎(ようもうさい)は、母の跡を受け継いだ。
郁孟斎と陽申斎は、母が始めた桑畑と養蚕を軸に、製糸工房、織物工房、織物工房、仕立て工房を建てた。
更に、郁孟斎の息子の艶蘭洲(あでらんす)と妻の柚瓊(ゆに)は桑畑を広げ、蚕部屋を大きくし…
陽申斎の息子理衣符(りいぷ)は工房を少しずつ増やしていった。<br>
祖父の久助(きゅうすけ)は、この理衣符二十一と柚瓊部屋の開発を全面的に後押しし、父が軌道にのせ始めた。
その矢先…
お社様と領主様は、蚕の飼育にも一匹毎に、桑畑にも収穫高と一反の広さに応じて、多額の玉串と初穂を課してきた。
養蚕玉串と桑畑初穂は、真綿で首を絞めるように年々吊り上げられた。
でも、それは始まりに過ぎなかった。』
久太郎は、此処まで話し終えると、大きく息を吐いた。
優子は、久太郎の股間のモノの竿を扱き、玉袋を舐め回しながら、ジッと久太郎の顔を見つめていた。
こんな難しい話…
男を悦ばせる事しか教わってない、まだ八歳の女の子にわかるだろうか…
久太郎は、話を続けようか、話題を変えようか迷いだすと、優子はニコッと笑って見せた。
その笑顔は、続きを話して…と、言っている。
『お社様は…養蚕玉串と桑畑初穂を釣り上げる一方で、染物業と仕立て業にも玉串と初穂を課してきた。
それも、産業そのものに課すだけでなくて、染物業の染粉や河川の使用、仕立て業の裁縫具の一つ一つに課してきた。
それだけじゃない…
村のありとあらゆる物に、法外な玉串と初穂を課し、もはや、何も課する物がなくなると、最後には、各家庭の頭数に初穂や玉串が課せられた。
新たに子が生まれると、その誕生を祝してと称して初穂料…
その子が一つ歳を重ねたと言っては、その恵みへの感謝と称して玉串と言う具合にね。
一定の歳を過ぎた老人には、長寿への感謝と称して、一年歳を重ねる毎に、玉串が課せられ、孫が生まれれば、親とは別途に、初穂が課せられる。
父は、何とか村民の負担を和らげようと、社への初穂も玉串も、個別ではなく、村の一括と言う事で、話をつけた。
村民の暮らしを守ろうと、一括奉納と言う形をとり、半分以上を身銭を切って納め続けた。
本宮の産土様からは、絶えず、素直に兎神子を差し出せ…差し出した兎神子の数だけ、玉串と初穂を減額してやる。減額するどころか、差し出す数と器量に応じては、納めた玉串と初穂の何割かを、父の懐に入れてやるとも囁かれながらね。
父は、頑なに拒み続けた。
特に素兎を差し出せと言う要求は…』
久太郎の玉袋から竿の付け根に舌先を移し、先端に向けて裏側を丹念に舐め始める優子は、次第に真剣な眼差しになった。
『父は…
我が家族は、次第に困窮していった。
村民に課せられた重税を肩代わりするにも限界がきた。
父を慕っていた村民達は、自ら父が肩代わりし続けた玉串や初穂を納め始めた。
すると、それまで父に玉串や初穂の減額と引き換えに兎神子を差し出せと迫り続けてきた本宮の産土様が、やり方を変えてきた。
村民達に、村が重い玉串や初穂を課せられるのは、兎神子を差し出さないからだと吹聴し始めた。
村民達の不満を煽り立て、兎神子を差し出すよう…父や兎神家の者達を責めさせようとしてね。
でも、村民達は、誰も父を責めなかった…
兎神子は、本来は神聖な神子…兎神家は、神子の家系だ。
その事で、村民達は皆、兎神子も兎神家の者達も敬っていた。何より、神子の家系であり、様々な知識と技術を持つ兎神家の者達が、貧困に喘ぐ村人達に、染物技術や仕立て技術、織物技術も教えた。
村民達が、曲がりなりにも命を繋いでこれたのは、波桁家と兎神家の者達がいたからだった。
むしろ…
兎神家の者達が、自ら娘達を兎神子として差し出してきた。村民達の窮状救う為に…
最初、父は兎神家の者達の申し出も断ったのだが…
兎神家の者達の…何より、差し出されようと言う幼い娘達の、村を救おうと言う意思が固かった。
父は、泣く泣く…それでも、娘達は素兎ではなく、あくまでも白兎として差し出す事を強く念押しして、領主様に申し出た。
本宮の産土様は快諾し、念書まで出して了承した。
だか…
いざ、差し出す日が訪れるや、迎えにやってきた産土様の御使は、娘達を全て素兎とする旨を告げた。
それも、お社付きの素兎ではなく、在家…つまり、神職者達や顔役達の私宅付き素兎にされるとの事だった。
話が違うと父が強く抗議するのも虚しく、娘達はその場で着物を剥ぎ取られ、全裸にされ、引き立てられるように、連れて行かれ…』
と…
優子は、不意に久太郎と目線が合わせて慌て出した。
すっかり話に聞き入るうちに、久太郎の股間のモノを扱く手と舌先を止めていた事に気づいたからだ。
『アッ…申し訳ありません…私…』
『良いんだよ…』
『でも…』
『良いんだ…今夜は、もうね…』
久太郎は、再び股間のモノを扱こうとする優子の手を止めると、いつの間にか涙に濡らしていた優子の頬を指先で拭ってやった。
『それで…
連れて行かれた子達は?』
『数年と経たず、皆、死んでしまったよ。虐め殺されたと言う方が正しいかも知れない…』
『そんな…』
『父は、自分の村の貧困にも関わらず、長年培ってきた事業が軌道にのり、少しでも豊かになり始めると、その富を他の村にも分かち合おうとした。
周囲の村長や村民達も、父を敬慕するようになった。
気づけば、父は、勧請を受けた本宮の産土様であられる、暗掛(あんかけ)町町長以上に支持されるようになっていた。
そんな父に対する暗掛鱶鰭(あんかけふかひれ)家の嫉妬…
兎神子達の処遇改善と素兎の廃止、過酷な玉串と初穂の大減額を求める父への、お社様と領主様の危機感…
全ては、お社様と領主様、産土様による、悪意に満ちた報復と、父を支持する者達への見せしめだった。
その後も過酷な玉串や初穂の取り立ては続き…
遂に破綻して納めきれなくなると、父は村統治の不行届きを理由に、村長職と氏社宮司職を解かれ、失意のうちに病死…
母も長年の心労過労が祟って、父の後を追うように亡くなった…』
久太郎が此処まで話すと、優子は眉を寄せ、唇を引き結んで俯いた。
『おまえは罪の子だ!人にあるまじき大罪人の子だ!人ではない!ケダモノだ!』
物心ついたばかりの頃…
絶えず、そう言われながら、数多の教導司達に仕込みと称して弄ばれ続けてきた。
厳寒の最中…
雪降る境内で執り行われる祭祀に引き出されては…
『良いかな、此奴は親の犯した罪で、身体を覆うものを全て剥ぎ取られ、ケダモノになった者だ。決して、人として扱わぬよう。』
参列する神職者の子女達の前で言い渡されては、親の穢れを払う儀式と称して、何十回も冷水を浴びせられ、得体の知れない祈祷と共に鞭打たれた。
『さあ、良く見ておけよ。これが、女の身体だ。神領で奉職に与る者は必ず知っておかなければならない事だぞ。』
穢れを払う儀式が終われば、祭場の中奥にしつらえた寝台に、大の字で寝かされる。
『特に、此処がどうなっているのかを見知る事は、一番重要だ。』
神職者が言いながら、大股開かせた股間のソコを押し開くと…
『わぁっ!』
と言う声が、辺りから巻き起こる。
『教導様、触っても宜しいでしょうか?』
子女の一人が手を挙げながら言えば…
『良いとも、良いとも。此奴は人の姿をしていても、穢れきった罪の子、ケダモノだ。何をしたって良いんだぞ。』
神職者はニヤけて言いながら…
『さあ、まずは指を中に入れてみろ。』
少年の手を取り、ソコに指を挿入させた。
『うわっ!暖けぇー!』
少年が思わず声をあげれば…
『そのまま、中で掻き回してみろ。』
神職者は、一層ほくそ笑みながら言う。
言われるままに少年が、小さなその中を掻き回し出すと…
『わあ!わあ!見て見て!あんなに腰を浮かせてる!』
『本当!顎を反らせて凄い声も出してるわ!』
『面白い!もっと掻き回して!もっと掻き回してよ!』
生唾呑み込んみながら見つめていた、神職者の娘達である少女達が、口々に声を上げ出した。
『俺にもやらせろ!俺にもやらせろ!』
『俺は尻の孔に挿れて見るぞ!』
『おいっ!浣腸かよ!糞されたらどうすんだ!』
『そしたら、コイツに食わせるさ。コイツは人間じゃねえ、ケダモノなんだ。糞くらい平気で食うだろう。』
『言えてらあ!』
次々に寄ってくる少年達に、小さなソコを掻き回され、まだ六歳にもならぬ小さな身体を捩って泣き叫ぶ優子の周りで、笑い声が巻き上がった。
『ねえ、この先っぽの皮が被ってるの何かしら?』
五人目の少年が、優子のソコに指を差し込んで掻き回し出した時。
見ていた少女の一人が、ソコの先端の小さな突起をジッと見て、首を傾げて言う。
『これか?』
神職者は、益々ニヤけながら、包皮を捲り上げて中の突起を剥き出すと…
『抓り上げてみろ。』
少女が、言われるままに抓りあげると…
『うわっ!凄ーい!何て声出すのかしら!』
『腰の上げ方も、さっきまでの比ではないわー!』
『よし!もっと強く抓り上げてみるわね!』
今度は、少女達が殺到するように寄ってきて、少年達がソコを掻き回すのに合わせ、交代で先端の突起を抓り出した。
『アーッ!アァーーッ!アァァァーーーッ!!!』
いつ終わるとも知れぬ激痛に、手足を突っ張らせて泣き叫ぶ優子の顔を、喜悦仕切った顔で、神職者が見下ろす。
すると…
『おいおい、さっきから同じ事ばかりしてもつまらねえだろう。』
言いながら、皆より少し年上の少年が、親指大の小枝を持って来て、優子に群がる神職者の子女達を押し除けた。
『こいつを、この便所兎の中に突っ込んでやろうぜ。』
楽しみを中断され、押しのけられて不満顔にしていた神職者の子女達の間から、忽ち、歓声がまきおこった。
あの日…
優子のソコに小枝を差し込み、散々に掻き回した少年が、鬼座麿であった。
親の顔も知らぬ優子には、親が何をしたのか知る術はない。
それでも…
親が悪い事をしたから…
親の罪を償わなくてはならないから…
だから、ずっと寒くて痛くて空腹な日々を過ごさなくてはならないのだ…
親が悪い事をしなければ…
親が罪を犯さなければ…
優子は、ずっとそう思い、親を憎んでいた。
しかし…
親の犯した罪とは、久太郎の親のように、苦しむ者達の為に、理不尽を通す者達に立ち向かった事なのだろうか…
それとも…
そんな久太郎の父を支持した村人達のように、苦しむ者達の為に戦い続けた者を支えようとした事なのだろうか…
だとしたら…
だとしたら…
今までずっと憎み続けてきた分、愛しさと恋しさが込み上げるのを感じた。
お父さん…
お母さん…
どんな人なのだろう…
会いたい…
会いたい…
『どう言うわけか…』
久太郎は、話を続けた。
『父の罷免にも関わらず、大化鱶鰭家は廃絶されなかった。
本宮の産土家…
暗掛鱶鰭家は、強く大化鱶鰭家の廃絶を求めた。
特に、暗掛鱶鰭家(あんかけふかひれけ)御当主様であられ、暗掛町長にして大化村氏神社の本宮…暗掛町産土社の宮司様であらせられる鱶鰭茶亜盤(ふかひれちゃあはん)様は、兎神子家に落とせと息巻いておられた。
でも、何処かからの力が働き、大化鱶鰭家は廃絶を免れた。
何処から、どのような力が働いたのかはわからない。
でも、大化鱶鰭家は廃絶を免れたばかりか、大化村も安堵された。
それだけでなく、私は本土総社の養成所入りが決まり、応次郎は神漏衆の入隊が決まった。
つまり…
産土家からは、氏蟲(うじむし)と蔑まれる氏神家の私達兄弟に、社領中枢に進む道が開かれたと言う事だ。
私と応次郎は、誓い合ったよ…』
久太郎は、そこまで話すと硬く目を瞑り、しばしムッツリと黙り込んだ。
優子は、再び顔を上げると、真剣な眼差しを向けて、久太郎をジッと見つめた。
『何処からどのような力が働いたのかはわからない…
誰のどんな思惑で、そうなったのかはわからない…
幼い子供達の身体を玩具にさせ、それを口実に利権を貪り、領民達を搾取する…
そんな神領で働く力も思惑など知りたくもない。』
久太郎は、再び目を見開くと、重い口を開き、一言一言噛み締めるように話し出した。
『ただ…
氏神家に生まれた者に、決して訪れる筈のない機会を、活かさぬ手はないと思う。
私は、お社の宮司となり、応次郎は神漏衆の総頭となる。
最初は、出自である鱶鰭一之末社から始まり…
次に摂社の…
最後には、本社宮司まで登り詰めて、鱶鰭社領全土のお社となり、応次郎は本社神漏衆の総頭まで登り詰める。
そして、私の手で、応次郎を本社の…更には、全鱶鰭の総領主にさせ、二人で鱶鰭社領全土を改革し、不正と圧政を一掃する。』
それまで、暗い顔、深刻な顔して聞き入っていた優子は、再び目を輝かせ始めた。
『私の父は、自分の村だけでなくて、末社領全ての町民村民が、豊かに、幸福に暮らせる事を夢見ておられた。
何処かの村が豊かになれば、その豊かさを隣の村にも分かちあいながら、皆で幸福に暮らせる社領にしたがっておられた。
一村長…一村の氏神社の宮司にできる事など殆どなかった。
それでも、息子と話す暇も無い程、その夢の為に一生を捧げられた。
私は、鱶鰭社領全土のお社となり、応次郎は総領主となって、父の夢を実現させる。
誰も搾取されない社領…
誰もが生まれ生きてきた事を喜べる社領を築く。
それが、私と応次郎の誓いだよ。』
優子は、熱く語る久太郎の言葉に一言一言に大きく頷ながら、噛み締めるように聞き入った。<br>
特に…
『兎達も…?』
不意に、優子が首を傾げて呟くように尋ねると…
『無論だ。兎達も、本来あるべき神聖な存在として尊重させる。神職者や崇敬顔役衆共の歪んだ欲望の吐口にするなど、決して許しはしない。』
『素兎も?』
『素兎は…
私と応次郎が築く社領に、そもそも素兎は存在しない。
祭祀にかこつけ、気に入らぬ領民の幼い娘を全裸に剥いて、よってたかって嬲りものにするなど、断じて許さん!』
『本当ですか!』
『本当だ!その時には、素兎達は普通の女の子に戻れる!今までずっと全裸で寒い思い、恥ずかしい思い、痛い思いをさせられ続けてきた分、暖かい着物をたくさん着せて、旨いものをたくさん食わせて、大事にしてやるんだ!』
そう話して聞かせた時…
優子は、まるで自分がそこにいて、可愛い着物に身を包み、山のようなご馳走を食べている気がして、胸をときめかせた。
しかし…
『でも、その時には私…』
言いかけ、優子は急にまた、口を噤んで俯いた。
きっと、もう、生きてはいないだろう。
この狭い寮の中で、よってたかって嬲り弄ばれ、ボロボロにされて死んでるに違いない。
仮に生きていたとしても…
十二歳までに子を産めば三諸島に送られ、そこで死ぬまで子供を産む道具として、やはり男達の玩具にされて生きる事になる、
子を産まなければ、役立たずの石女として、異国に遊女として売られてゆく。
いずれにしても、久太郎の築く社領で、幸福に暮らせる事などあり得はしない。
すると…
『約束するよ。』
久太郎は、急に真剣な眼差しを向けて、優子に言った。
『優子、君を迎えに行く。』
『えっ?』
『君がその時、何処にいても、どんな風になっていても、必ず迎えに行く。
私の社領で、君は綺麗な着物を沢山着て、美味い物を山程食って、幸福に生きるんだ。普通の女の子としてね。』
『久太郎様…』
『だから…その時まで、僕を信じて待っていて欲しい。待っていてくれるね。』
大きく頷く優子は、久太郎の胸深く顔を埋めると、ハラハラと涙を溢れさせた。
*画像は韓国出身女優のハラさんです。記事のイメージとして載せました。
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宝物

2020年07月28日 07時09分00秒 | 紅兎〜青鳥編



久太郎(きゅうたろう)は、皆が寝静まるのを待っては、毎晩のように素兎の繋がれる土間に足を運んだ。 
それは素兎への同情と言うより、自身の痛みから逃れる為と言うのが正しかった。 
あの日以来。 
久太郎は、連日のように素兎とする事を強いられ続けた。 
それも、久太郎が心底嫌がってる事を知ると、わざと散々責め苛み、傷だらけになった素兎を、何度もさせられた。 
『嫌だ!こんな幼い子を、もう嫌だ!』 久太郎が拒めば…
『何だ?おめえ、氏蟲(うじむし)の分際で、産土(うぶすな)の俺に逆らおうってのか?』
鬼座麿が胸ぐらを掴み、凄んで言う。 
久太郎は、大化村(おばけむら)村長の家系である。 
村長は、村社の氏神宮司を兼ねるところから、家系を氏宮(うじみや)家と言う。 
対し、鬼座麿は、木佐町(きざまち)町長の家系である。
町長は、町の産土社の宮司を兼ねるところから、家系を産土(うぶすな)家と言う。 
同じ鰐鮫一族でも、産土家と氏神家の格の違いは歴然としていた。 
通常、社と呼ばれる、本社・摂社・末社の神職者や、社領の崇敬顔役衆をはじめとする諸々の要職は、全て産土家が占めていた。 
当然、総社の養成所に預けられる子弟も全て産土家の者である筈であった。 
『氏蟲、さっさと袴を脱げよ!さっきから、便所兎が股座開いてお待ちかねだぞ!
氏蟲(うじむし)…
養成所で唯一人の氏神家であるところから、そう呼ばれ卑下されている久太郎に、逆らう術はなかった。
それに…
『応次郎が警護する鱶鰭一之末社はな、何かと曰く付きで、不慮の事故が絶えないそうだぞ。』 
鬼座麿(きざまろ)は、なかなか素兎に手を出せない久太郎を見ては、耳元近く囁いてきた。 『可愛い弟の為だ、此処は一つ兄貴が厄落とししてやろうじゃねえか。なあ。鱶鰭一之末社で、祟りを免れるかどうかは、お前の厄落とし一つ、俺の兄貴の匙加減一つで決まるんだぞ。』 
久太郎は、弟の名を出されれば、従うしかなかった。 
神領において、家柄による身分格差も厳しかったが、それにも増して、階級の上下関係は絶対である。 
特に、社領の軍事を司る神漏衆において、上位に立つ者は、配下の生殺与奪の力すら握っている。 
応次郎(おうじろう)の上官である鬼座王(きざお)を兄に持つ鬼座麿に逆らう事は、即、応次郎の死を意味すると言っても過言ではなかった。 
久太郎は、言われるままに、素兎の股間のソレに自分のモノを貫き抉った。 
苦悶に満ちた呻き声… 
首を振り立て歯を食いしばる、涙に濡れた幼い顔… 
手足を突っ張らせ、身を捩る小さな身体… 何より、中に放った時の焼けるような感触が、脳裏を離れない。 
その度に… 
これは自分の意思ではない。 
強いられてやった事なのだ。 
そうしなければ、応次郎が生きて行けないのだ。 
応次郎の為に… 
応次郎を守る為に… 
久太郎は、必死に自分に言い聞かせようとした。 
しかし… 
『さあ、今日もコイツをしっかり舐めて、勃たせてやるんだぞ。』 
鬼座麿に命じられるままに、素兎が舌先でチロチロ舐め始めると、自然と股間のモノが反応する。 
『何だ、嫌がる割には、凄え勃ち方するじゃねえか。先っぽを、糸なんか垂らしてヒクヒクさせてよ。 そんなに気持ち良いのか?えぇ?気持ち良いんだろう?』 
追い討ちをかけるように、ニヤニヤ笑いながら囁きかけてくる鬼座麿の声が、耳の奥底から響いてくる。 
『さあ、そろそろ、厄落としの時間だぞ。応次郎が祟りに合わぬよう、しっかりコイツの中に落としてやれ。』 言われるままに、素兎のソレを貫き抉れば、更に股間のモノが勃ち… やがて、あの白濁したモノが、小さいソコに収まらぬ程放たれる。 
汚い… 
汚い… 
汚い… 
自分の全てが穢れきっている。 
特に、幼い身体に反応して、小さなソレの中に白濁したモノを大量に放つ股間のモノは… 久太郎は、何度も腰の忍刀…
大化鱶鰭(おおばけふかひれ)家に伝わる毛三本(けさんぼん)に手をかけては、股間の汚いモノを切り落とす衝動に駆られた。 
何度も毛三本を抜き、股間のモノに切っ先を当て… 
結局は、手が震えて出来ぬ自分に悶え苦しんだ。 
大化鱶鰭家は、童(わらべ)衆に連なる忍の家系とも聞かされている。
草… 
鰐鮫一族の中に、草の如く紛れ込み、根拠地である三諸島に謀反を企てる者がないか監視する事… 
謀反人を見出し始末した暁には、謀反の事実も、謀反人の存在も、何より草が潜む事実を消す為、人知れず自害する事… 
それが、家に課され使命だと言う。 
にも関わらず… 
自分には、自分の汚れきった身体の一部を切り落とす事もできないのだ… 
そう自問自答しながら、気づけば、土間の素兎の前にいた。 
『ようこそ、ご参拝を…』 素兎は、久太郎の顔を見るなり、脚を広げ股間のソレを指先で押し拡げて見せた。 
ソコは、今日も酷い状態になっていた。 
ワレメの付け根の薄皮が裂け、小さなヒダの内側一面が、真っ赤に剥離してるだけではない。 『どうした?痛いのか?痛かったら、痛いって良いんだぞ?素直に痛いって言ったら、辞めてやるぞ。』 
鬼座麿は、素兎の股間を激しく抉りながら、いつも耳元近く囁くように言う。 
嘘である事は、とっくに承知している。 
わざとその一言を言わせ、仕置きするのを楽しみにされてる事をなどわかり切っている。 
それでも、絶え間なく続く激痛に耐えきれなくなり… 
『痛い!痛い!痛い!もう…もう…もう、やめて!もう、やめて下さい!痛い!痛い!』 遂に、素兎が泣き叫んで言う。 
すると… 
『痛いだと?おめえ、まさか素兎の掟を忘れたんじゃねえだろうな?』 
鬼座麿は、待っていたとばかりに残忍な笑みを満面に浮かべ… 
『おい、この便所兎の手足をしっかり押さえろ。それと、竹串と粗塩を持ってこい。』 『も…も…申し訳ありません…お許しを…お許しを…』
『許すわけにはいかねえな。こう言う事は、しっかり厳しく躾ろって叩き込まれてるからな。
おまえ、痛いって言葉の意味が分からねえようだから、じっくり教えてやるぞ。』
素兎の下腹部を膝で踏みつけ、股間のワレメ先端の包皮を捲り、剥き出しにされた突起を抓りあげると、竹串で突きだす。『キャーーーーッ!!!!』
『どうだ?痛いか?痛いだろう?』
素兎が凄まじい絶叫をあげ、必死に身を捩って抗うと、鬼座麿は更に下腹部を強く踏みつけ押さえつけ…
『よく覚えておけよ。痛いってのは、こう言う事を言うんだからな。』
と、ワレメ付根の裂傷箇所を突き、剥離塗れの肉壁を引っ掻きだす。
そして…
『おうおう、可哀想に…こんな傷だらけになって。俺だって、好きでこんな事してるんじゃねえぞ。これは躾だ、調教だ。おまえの為を思ってしてるんだからな。』
鬼座麿は、血塗れになったソコを見て、満足そうに笑いながら言うと…
『さあて、ここにばい菌が入ったら大変だ。しっかり消毒しておかねえとな。』
『嫌っ…嫌っ…もう…もう…』力なく首を振り立てる素兎に見せつけるように、袋の粗塩を一握り取り出すと、竹串で突き引っ掻いた箇所に擦り込み出した。
『ヒィッ!ヒィッ!ヒィィーーーーーーッ!!!』
いつまでも、脳裏から消える事のない、素兎の悲痛な絶叫と悲鳴、呻き声…
久太郎は、思わず傷だらけの小さな陰部から目を背けた。
すると…
『参道は開かれております。どうぞ、お通り下さい。』 
素兎は、言いながら、戯けた笑みを浮かべて見せた。 
最初の内こそ怯えていたが、今はもう、少しも恐れている様子はない。 
久太郎は、痛い事をしない。 
昼間、皆と一緒に痛い事をするのも、無理やりやらされている事がわかったからだ。
 何より… 
『さあ、小池三(こいけさん)の薬を塗ってやるぞ。』 
久太郎も気を取り直すと、にこやかに笑みを返して、懐から貝殻の薬入を出した。 
『さあ、横になって。』 
素兎は、言われた通り仰向けに寝る。 
『始めるよ。』 
久太郎は、耳元近く囁きかけながら言うと、耳たぶにそっと息を吹きかけ、小さな唇に口づけをした。 
『良いかい?』 
『はい。』 
素兎は、目をうっとりさせながら、大きく頷いて見せた。 
久太郎は、優しく頬を撫でてやると、唇を首筋、胸元へと移しながら、舌先を少しだして舐め回す。 
やがて… 
『アッ…アッ…アンッ…アンッ…アンッ…』
真っ平な胸を優しく撫でまわされ、乳首を舐めたり吸われたりしながら、股間のワレメに薬を塗られると、甘えるような声を上げだした。 
折しも… 
本土総社の養成所では、種付けの時、互いの何処をどうすれば心地良くなるかを教え始めていた。 
久太郎は、前にも増して、熱心に講義に耳を傾けた。 
毎日、痛い思いばかりさせられている素兎に、少しでもその苦痛を和らげてやりたいと思ったからだ。 
久太郎は、片方の手の指先で、豆粒のような素兎の乳首を転がすように撫で、優しく摘みながら、もう片方の手の指先で、股間のワレメに薬を塗る。 
薬を塗る時も、ただ塗り回すのではなく、優しく撫で回すように塗った。 
最初は、股間全体を… 徐々に、撫でさする範囲を狭めてゆき… 
やがて、ワレメの狭間を集中して、丹念に優しく撫で回す。 
『くすぐったい。』 久太郎の中指が、ワレメの中の小さなヒダに挟むようにして撫で始めると、素兎はクスクスと笑い出した。 
『そうか?』 
久太郎も、一緒に笑って見せながら、一層優しく乳首を揉み、ワレメの狭間を撫でてやる。 
その間、クスクス笑う素兎の笑顔は、絶えず苦悶の呻きをあげる昼間と打って変わって、八歳の少女らしい、幼さと無邪気さを取り戻していた。 
『可愛いな…』 
心の中で呟く久太郎は、素兎の笑顔を見ていると、自分も何か癒されるようなものを感じた。
『ハァ…ハァ…ハァ…』 
不意に、素兎は肩で呼吸を始めながら、驚くような目を久太郎に向けた。 
『身体を楽にして。』 
久太郎は言うと、大きく頷く素兎は、肩呼吸を更に早めた。 
ワレメの中の小さなヒダの狭間を撫で回していた指先が、局部の包皮を優しく捲り、小さな突起に触れる。 
『アッ…アッ…アッ…』 
素兎がうっとり目を瞑り、軽く顎を反らせると、また声をあげ出した。 
久太郎は、触れた突起を指先で優しく転がすように撫で回しながら、それまでもう片方の手の指先で撫でたり摘んだりしていた乳首を、再び舐め始めた。 
『アンッ…アンッ…アンッ…』 
素兎は、乳首を吸われるのと同時に、突起を撫で回していた指先が、滑り込むように中に挿れられると、更に声を上げて、腰を上下し始めた。 
一日中、痛痒かった分、薬を塗られながら撫で摩られるのがとても気持ち良い… 
『アンッ…アンッ…アンッ…』 
久太郎が、乳首を転がす舌先と、ワレメの中で出し入れする指先の動きを早めるのに合わせ、素兎の跳ねるように上下させる腰の動きも早くなった。 
次の刹那… 
『アーーーーーンッ!!!!』 
一際大きく声をあげ、腰を浮かせた素兎は、思わず顔を蒼白にした。 
何かが中で溢れかえるのを感じたからである。
『申し訳ありません!私…私…』 
『これ、オシッコじゃないよ。』 
『えっ…』 
『出てきた時、気持ち良かった?』
 『は…はい…』
 『そうか。女の子も、男と同じだと言うのは本当だったんだ。』 
『あの…』 
『お腹、すいたろう。』 
久太郎は言うと、また、持ってきたた包みを広げた。 
素兎は、忽ち目を輝かせて、喉と腹を鳴らした。 
相変わらず空腹な素兎が、一番楽しみにしてるものだ。 
と… 
今日は、包みの中は曲げわっぱではなく、陶器の容器であった。 
そして、蓋を開けると、油の浮いた茶色い汁に、細長い物が無数に入っていた。 
『支那蕎麦って、言うだよ。小池三は拉麺って呼んでた。』 
『ラー…メン? 久太郎が言うと、素兎は不思議そうに首を傾げた。 
『小池三に教わったのを思い出しながら作ってみたんだけど…食べてみて。』 
言われるまでもなく、空腹も限界に達していた素兎は、一口口につけると、次の瞬間には瞬く間に平らげていた。 
『美味かったか?』 
汁まで飲み干した素兎は、満面の笑みで大きく頷いた。 
『良かった。実は、それだけじゃ足りないだろうと思って、もう一杯持ってきたよ。』 
久太郎が言いながら、もう一つ、陶器の箱を取り出すと… 
『わあっ!』 
素兎は声をあげながら、顔を輝かせて飛びついてきた。 
『君も、拉麺大好きなんだね。』 
素兎が、都合五杯の拉麺を平らげ息を吐くのを見ると、久太郎は満面の笑みを浮かべて言った。 
『小池三は、これが大好物でね、毎日三十杯も五十杯も平らげるんだよ。』 
『まあ!そんなに!』 
『だのに、糸杉みたいに痩せているから面白い。これ、食べ過ぎると肥ると言われてるのにね。』 
久太郎が笑いがら言うと、素兎もクスクスと笑い出した。 
すると… 
『おいっ!何をする!』 
久太郎が制止するよりも早く、素兎は袴の中に手を潜り込ませるなり、股間のモノを引き出した。 
『私、また、お腹空いてきた。』 
『えっ?』
 『これ、私のご飯。』 
素兎がニコッと笑って言うなり、出したモノを咥え出すと、久太郎はまた、胸の痛みを覚えた。 
素兎は、殆ど食べる物を与えられない。
 代わりに… 
『ほら、喰えっ!』 
鬼座麿達が、股間の猛り勃ったモノを突きつける。 
そうして、夢中でしゃぶりつき、口腔内に放たれた子種が餌だと… 
物心ついた頃から、哺乳瓶代わりに咥えさせられなが、仕込まれてきたのである。 
そうして夜… 
土間に繋がれる素兎に見せつけるように夕食をとった同寮達が… 
『ほら、おまえにも恵んでやる。喰いな!』 
ゲラゲラ笑いながら投げつける残飯に飛びついて喰らうのが、素兎に唯一与えられるまともな食い物であった。 
素兎は、久太郎の激しい胸の痛みも、複雑に見つめる眼差しも知らず、丹念に出したモノを咥え、チロチロと舐め続けた。 
空腹が満たされない為ではなかった。 
素兎には、いつも薬を塗り、食べ物をくれ、何より唯一人優しくしてくれる彼に、感謝を伝える術を、他に知らなかったのである。 
『ハァ…ハァ…ハァ…』 
久太郎は、次第に肩で息を始めた。 
素兎は、絶頂が近づいている事を舌先に感じると、一番感じる先端の裏側を集中して舐めながら、しゃぶる口の動きを早めた。 
『ハァ…ハァ…ハァ…』 
久太郎は、更に激しく肩呼吸しながら、夢中になって膨張するモノをしゃぶる素兎の頭を撫でた。 
双眸からは、涙を溢れさせている。 
これが、この小さな子に与えられる唯一の食事と教え込まれてる何て… 
激しい胸の痛みとは裏腹に、素兎の口腔内では、股間のモノが極限まで膨張し、いよいよ解き放たれようとしていた。 
そして… 
『アウッ!』 
久太郎が顎を逸らせて声をあげた刹那… 
素兎の口腔内で、白濁したモノが大量に放たれた。 
素兎は、放たれたモノを飲み干しながら、未だ残留感のある尿道を夢中で吸い込んだ。 『アァァッ…アァァッ…アァァ…』 
放たれて尚、チロチロ舐めまわされる先端が、身悶えする程くすぐったい。 
『ご馳走様。』 
漸く久太郎の股間から顔を上げた素兎は、口の周りを舐め回しながら、ニコッと笑って見せた。 
『気持ち…良かったですか?』 
一瞬、声をつまらせた久太郎は、しかし思い直したように笑みを浮かべて大きく頷いて見せた。 
『良かった。私も、美味しかったです。』 
素兎が、また嬉しそうな笑みを満面に浮かべて言うと… 
『えっ?』 
久太郎は、もはや堪えきれぬと言うように羽織を脱ぎ、素兎を抱きしめながら、肩に掛けてやった。 
『あの…あの…あの…』 
『暖かい?』 
戸惑う素兎に、久太郎がたずねると… 
『はい、とても…』 
素兎は答えながら、甘えるように久太郎の胸に顔を埋めた。 
『今夜は、一緒に寝よう。おやすみ…』 
『おやすみなさい…』 
その日から、久太郎は毎晩、明け方近くまで素兎を懐に抱いて暖めてやった。 
本当なら、ずっとそうしてやりたかった。 
全裸で凍える素兎を、懐から離したくなかった。 
しかし、そんな姿を鬼座麿達に見つかれば、素兎がどんな目に合わされるか分からず、それはできなかった。 
それでも… 
束の間、股間の傷に薬を塗り、まともな物を食べさせ、束の間抱き合う時間… 
何故か、久太郎にとって心安らかの時となった。 
『気持ち良い?』 
『うん、とても気持ち良い。』 
素兎に、感謝の気持ちで股間のモノを舐められる事にも、次第に胸の痛みを感じなくなった。
むしろ、小さな舌先でチロチロ舐められる感触に、単なる快楽とは別に、不思議な安らぎを覚えるようになった。 
『アッ…アッ…アッ…アウッ…』 
口腔内に放つモノを、素兎に飲み干される時… 尿道が空になるまで吸い込まれる時… 
激しい胸の痛みや悲しみの全てが取り除かれるような気持ちにもなった。 
厄落とし… 
素兎への種付けを、鬼座麿は戯に言うが… 
久太郎は本当にあらゆる厄を取り除かれている気がした。 
そうして、束の間、懐に抱きしめると、なかなか眠らぬ素兎は、少しずつ久太郎と話をするようになった。 
『そうか…君の名は、ユウコと言うのか。』 『はい。』 
素兎にも名前があった事を知ったのも、この時であった。 
『ユウコって、どんな字で書くのかな?』 『字?』 
『そう、名前の字だよ。私の名は久太郎…こう書くんだよ。』 
久太郎は、言いながら、自分の名を地面の土に書いて見せた。 
『久しく生きられるように…末長く幸福に生きられるようにと言う願いを込めて、親がつけてくれた。つけてくれたのは、母上だと聞く。 君の名はどんな字で、どんな意味があるのかな?』 
すると、素兎は悲しげに俯き、黙り込んでしまった。 
素兎は物心ついてすぐ社に引き取られ、素兎として育てられた。 
親がいるのかどうかすら分からず、無論、自分の名がどんな字で、どんな意味が込められているかなど知らなかった。 
そもそも… 
今日と言うその日まで、文字なるものの存在すら知らなかった。 
『そうか…なら、私がユウコに字を当ててやろう。』 
言うなり、久太郎は、地面に大きく『優子』と書いて見せた。 
『君は、とてと優しい子だ。君といるといつも幸せな気持ちになる。だから、今日から君は優子だよ。』 
久太郎は、地面に書かれた『優子』と言う字に、何度も大きく○をつけながら言うと、素兎…優子は、満面の笑みを浮かべた。 
それから、優子は、暇さえ有れば、地面に優子と言う自分の字を書いて嬉しそうに眺めた。 
着物一枚与えられていない優子にとって、久太郎が名前に当ててくれた、『優子』と言う二文字は、大切な宝物となった。 
ある日… 
『ゆう…こ…』 
いつものように口ずさみながら、自分の名を地面に書くと… 
『きゅう…た…ろう…』 
その隣に、久太郎の名を書き、クスクスと笑い出した。 
すると… 
いつの間に現れたのか、久太郎が隣に蹲み込み、『優子』と『久太郎』の文字を、大きな○で囲って見せた。 
優子は振り向くと、満面の笑みを浮かべて見せた。 
久太郎も大きく頷いて優しげな笑みを浮かべると、優子の頭をくしゃくしゃっと撫でた。 
画像は、韓国出身女優のハラさんです。記事のイメージとして載せました。
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改訂しました

2020年06月06日 13時20分00秒 | 夢はハリウッド!



これまでの記事、全て改訂しました。


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素兎

2020年06月06日 13時17分00秒 | 紅兎〜青鳥編


養生所と保育所の間に、養命舎と呼ばれる棟がある。
此処には、成人に達しても一人で生活するのが困難な病人や障害者が暮らしている。
彼らは、里人達が栽培や採集してきた薬草を調合して暮らしている事から、この棟は、薬堂とも薬堂養命舎とも呼ばれていた。
その日も、作業場では棟の住人達が熱心に薬草を振り分け、摺鉢で擦り、混ぜ合わせて様々な薬を調合していた。
「お帰りなさいませ、兄上。」
擦り潰された薬草を秤に乗せ、眉を顰めて調合していた応次郎(おうじろう)は、薬草の束を担いだ男が庭先に姿を現すと、静かに手をつき平伏した。
「お帰りなさいませ、久太郎(きゅうたろう)様。」
周囲で働く住人達も応次郎に続き、一斉に手をつき平伏した。
久太郎は大きく頷くと…
「そのまま、そのまま…」
軽く手をかざし、楽にして仕事を続けるよう皆に促した。
再び、各々の作業が始められた。
久太郎が縁側に腰掛け荷を下ろそうとすると…
「貴方…」
一人の女が側に寄り手伝った。
「優子、身体は大丈夫か?」
「おかげ様で…」
和かに答えかける側から、優子は激しく咳き込み出した。
「これ、無理をするなといつも言ってるだろう。」
久太郎は慌てて優子の背中をさすりながら、少し咎めるように言った。
「申し訳ありません…」
咳き込み続けながら、優子が恐縮して言うと…
「兄上の言う通りだ。向こうで少しめ。」
再び薬草の調合に取り掛かる応次郎が、振り向きもせずボソッと言った。
「でも…」
言いかける優子に…
「ここは、あたいらがやっておくから、向こうで休んどいで。久太郎様と一緒にね。」
棟の最年長であり、住人達の姉気分でもある鹿目(かのめ)が、片目を瞑って言った。
作業場に居合わせた他の住人達も続いて、笑顔で頷く。
尚も恐縮する優子を…
「さあ、行こうか…」
久太郎は肩を抱いて、作業場から連れ出した。
「ユウちゃんは良いねえ、あんな優しい旦那様がいて…」
生まれつき足の動かぬ鹿目が、少し躄りながら二人の去った方を見やると…
「何言ってるのよ。姉さんにだって、尾夜地(おやじ)様と言う立派な人がいるじゃない。」
側で薬草を振り分けていた美菜が揶揄うように言い、忽ち作業場は笑いの渦に包まれた。
「へん!あんな神鳴(かみなり)の爺さん!」
鹿目は顰めつらしてそっぽを向くと、また二人が去って行った方を見つめて溜息をついた。
結婚…
成人の祝いと同時に養命舎に移され、一生の殆どを棟から出る事なく過ごす住人達にとって、それは殆ど叶う事のない夢であり憧れであった。
玖玻璃は、どんな重い障害や病を持つ者達にも結婚や出産を認めている。いや、勧めてると言った方が良いかも知れない。
産まれて来た事を否定され、赤子のうちに殺される筈だった者達を引き取り育て続けてきた玖玻璃にとって、彼らの結婚と出産は一番の願いであった。
この世に誕生と存在を否定されるべき命などない…
その信念を貫き示す一番の手段は、彼らが結婚して出産し、幸福な家庭を作る事にこそあると思っていたからである。
しかし…
どんなに強く願っても、誰からも支持され後押しされても、身体がそれを認めてくれないと言う事もある。
最重度の障害と持病を抱えた棟の住人達の殆どにとって、結婚も出産も命の代償を伴うものであった。
そんな中…
例え一人でも二人でも、その夢を叶えられた者がいれば、それは皆の生きる希望にも支えにもなった。
優子の結婚…
しかも、一度は出産までしたのだ。
赤子は、母親の血を受け継いでしまったのか、生を受けて僅か三日で逝きはしたが…
「ゾフィ、エイティ、タロ、セブン、エース、ジャック、マン、レオ、アストラ、おいで…」
別室に行くと、庭先で遊んでいた犬達が、ヨチヨチと側に寄ってきた。
治療と新薬の実験用に飼われ、その役割を終えた犬達である。
度重なる実験で、皆ボロボロの身体であり、いつ死んでもおかしくない程弱っている。
しかし…
『生きている…それだけで誰かの支えとなる命もあるのだ…』
久太郎は、余命幾ばくもない犬達を交代で抱きしめる妻の姿を見てしみじみ感じた。
「ねえ、あなた。ゾフィって、とってもお利口なのよ。最近、保育所の子供達の面倒をよく見るのよ。」
「そうか…もともと、優しい子だったからな。」
「赤ちゃんの世話する子供達の面倒もよく見てあげてね…いつも威張り散らしてる辰三さんより、よっぽどお兄さんらしくて良いって、春ちゃんも言ってたわ。」
「それは、おまえの躾が良いからだろう。」
「そんな…私なんて…」
「いいや、おまえは本当に良い母親だよ。どの子にも分け隔てなく可愛がってな…」
「ううん…私なんて、この子達に支えて貰いっ放し…むしろ、サナちゃんとミカちゃんがよく来てくれて、この子達を優しく躾けてくれるの。」
「ああ、サナちゃんとミカちゃんね…あの子達は本当に良い子達だ。いつか、おまえに負けない良い母親となるだろう。」
久太郎は言いながら…
『どんな命も、ただ生きる事に大きな意味がある。』
また、犬達と戯れる優子を見ながら心の中で呟いた。
殺される筈だった優子を、本土総社から連れ出したのは久太郎であった。
母親に対する罪の意識からそうしたのかも知れない。
優子の母親は、素兎であった。
本土総社には、他の社より桁外れに大勢の兎神子が囲われている。
種付け参拝の相手をさせるのとは別に、神職者を目指す鰐鮫一族の子弟達に、兎神子の扱いを仕込む為であった。
神領において、神職者達の主な務めは三つ。兎神子達に種付けを仕込む事と、種付けをさせて多額の玉串料を得る事、そして、権力層や経済層に送り込む赤子を産ませる事であった。
この務めを果たすのに一番重視されたのが、年端のゆかぬ兎神子達との種付けであった。
本土総社は、神職者の養成所の役割を果たしていたのである。
通常、一社に一人とされていた素兎も、本土総社には随時二十人は囲われていた。
神職者候補として預けられていた鰐鮫一族の子弟達は、十人一組の寮に寝泊まりしていた。
その各寮に一人ずつ素兎があてがわれ、好きなようにして良いとされていた。
鱶鰭(ふかりひれ)末社領大化鱶鰭(おばけふかひれ)家の久太郎の寮にも素兎がいた。
『おらおら、もっと脚を開け!脚を!』
寮に戻れば飽きもせず、同寮の鰐鮫家の子弟達が素兎を弄んでいた。
『どうだ、気持ち良いか?気持ち良いだろう?』
その日も、既にどれ程股間を抉られたのだろう。
既に子種と血に塗れた小さなソコに、猛り勃つモノを激しく貫きながら言うのは、同郷出自である、木佐鱶鰭(きざふかひれ)家の鬼座麿(きざまろ)であった。
『イギッ!イギッ!イギギギィーッ!』
『そうか、そうか、そんなに気持ち良いのか。』
素兎が答える代わりに顔を逸らせ、身を捩らせて呻き声を上げると、鬼座麿は更に鼻息を荒げ、腰の動きを早めた。
『まだ八つのクセに、こんなに中を子種塗れにされやがって、淫乱な奴。』
五度目の絶頂を迎えた鬼座麿に放たれ、納まりきらぬソコから子種が溢れ出すのを見て、文福(ぶんぷく)が疼く股間を揉みながら言った。
周囲では、他の取り巻く同僚達が、生唾を呑みながら順番を待ち続けている。
皆、股間の疼きが限界まで達しているのは、絞り切れぬ残尿を湿らせたようになっている袴を見れば一目瞭然であった。
しかし、鬼座麿は構う事なく六度目に挑み、素兎の股間を貫くモノをまた膨張させていた。
『俺のも欲しいのか?欲しいんだろう?欲しいよな?』
文福は、もう我慢ならんと言うように、猛り勃つ股間のモノを引っ張り出した。
でっぷり太った身体同様、大根のような先端からは、糸を垂らしている。
鬼座麿は、激しく腰を動かしながら、横目に文福のモノを見てニヤけると…
『前の孔だけじゃあ、物足りねえよな。今から、後の孔にも挿れてやるからな。』
言うなり、腰の動きを止める事なく、素兎の尻を文福の方に向け、肛門を両手で押し拡げた。
『イッ…イッ…イィィッ…』
素兎は、文福が舌舐めずりしながら、限界まで疼いたモノを握り、近づいてくのを見ると、弱々しく首を振りながら、声を漏らした。
『よーしよし、俺のもたーっぷり味合わせてやるぞ。』
文福は、怯えた目を向け涙を溜める素兎の頭を撫で、その頬を舐め回すと、糸を垂らすモノの先端を、小さな肛門の入り口に押し当てた。
刹那…
『キャーーーーッ!!!!』
素兎の凄まじい絶叫が、寮内に響き渡った。
『どうした?前と後、同時に挿れられて気持ち良いだろう?嬉しいだろう?黙ってないで、何とか言え、言ってみろよ。』
『ヒッ!ヒッ!ヒーーーーーッ!!!!』
何をされても、拒んだり苦痛を訴える事の許されない素兎が、悲痛な悲鳴を上げるのを聞かぬ日はなかった。
『何だ?痛いのか?痛いんなら痛いって言っても良いんだぞ。』
『ほれ、痛いって言ってみろよ。痛いってよ。素直に言ったら、やめてやっても良いんだぞ。』
『痛い!痛い!痛い!お願いします!もう…もう…もう、やめて下さい!お願いします!お願いします!』
『何だと?痛いだと?おまえ、素兎の掟、忘れたわけじゃないよな。』
『お…お許しください…お許しください…』
『いいや、こう言う事はしっかり躾けてやらないとな。』
『今から、本当に痛いってのはどう言う事か、たっぷり教えてやるぞ。』
『キャーーーーッ!!!!!』
久太郎は、いつも部屋の隅で耳を押さえて蹲っていた。
同寮達が素兎を嬲る姿を見るのにも、素兎の呻きや泣き叫ぶ声を聞くのにも耐えられなかったからである。
すると…
『おい、久太郎。おまえ、そこでなにやってるんだ?』
漸く事を終えて満足しきった鬼座麿が、久太郎の側に来るなり、無理やり顔を上げさせて言った。
『おまえもこっちに来て加われよ。』
鬼座麿と二人がかりで素兎を責め立てていた文福も、久太郎の襟首を掴むなり言った。
『さあ、やれ!』
ひたすら首を振って嫌がる久太郎を、無理やり素兎の所に引き摺って来るなり、鬼座麿が命令口調で言った。
見れば、その日も一日中弄ばれていた素兎が、息も絶え絶えになっていた。
『どうした?早くこいつをヤレよ。』
鬼座麿は、久太郎が尚も首を振り立て続けるのを見ると、同寮達に向かって顎をしゃくり上げた。
同寮達は、ニンマリ笑って頷くと…
『何やってんだよ!』
『さっさとやるんだよ!』
『気持ち良いぞ!』
口々に言いながら、久太郎を押さえ付けて袴と褌を脱がせた。
『何だ、コイツの萎びてやがるぜ。』
『こんな小せえのぶら下げて、本当に男か?』
『情けねえ。』
同寮達は、久太郎の剥き出しにされたモノを見るなり、ゲラゲラ笑いだした。
『おいっ!コイツのを大きくしてやれ!』
鬼座麿は、素兎の髪を掴み上げ、顔を久太郎の股間に押し付けた。
『グズグズすんじゃねえ!早くしろ!』
『アァァッ!』
素兎は、子種と血に塗れた股間を思い切り蹴飛ばされて怒鳴られると、呻きを漏らしながら顔を上げ、久太郎のモノをチロチロと舐め出した。
『何だ、ちゃんと勃つじゃねえか。』
久太郎のモノが十分膨張したのを見ると、ニンマリ笑って頷く鬼座麿は…
『さあ、そろそろ始めようか。』
また、同寮達に顎をしゃくり上げた。
同寮の男達は、ニヤニヤ笑い出すと…
『さあ、このお兄ちゃんに、筆下ろしさせてやんないとなあ。』
『ほらほら、お兄ちゃんの方に向けて、大きくあんよを広げて見せるんだよ。』
『そうそう、ソコがよーっく見えるようにな。』
口々に言いながら、素兎を久太郎の方に向けて座らせると、大股に脚を広げさせ、小さなソコを指先で押し拡げさせた。
『どうした?準備ができたぞ、早くしろ。』
久太郎は、身を固くして無言のまま、ひたすら首を振り続けた。
『何だ?できねえのか?俺の言う事が聞けねえのか?』
鬼座麿は些か苛立つように眉を顰めると…
『確か、おまえの弟、応次郎って言ったな。今年、神漏衆桜井組木佐隊に入隊してたな。』
久太郎の耳元に口を寄せて言った。
『俺の兄貴は、組木佐隊隊長鬼座王(きざお)だ。言う事を聞けないと言うなら…おまえの弟、どうなるかわかっているな。』
久太郎は、応次郎の名を出されると蒼白になり、観念したように素兎に手を伸ばした。
素兎は小さな肩を震わせていた。
久太郎を真っ直ぐ見つめる目に涙を溜めている。
『おいっ、もっと中をよく見えるようにしてやれ!』
鬼座麿が怒鳴りつけると、素兎は陰部に当てた指先を、更に広く押し拡げた。
まだ八歳のソコは、種付けどころか、指先を入れるのも痛々しい程に幼く小さかった。
にも関わらず、連日絶え間なく荒らされ、子種と血に塗れたソコは腫れ上がり、付け根は裂け、中の肉壁は一面剥離して真っ赤であった。
久太郎は、思わず目を逸らし、拳を握りしめた。
しかし…
『良いんだな、応次郎がどうなっても…』
鬼座麿がもう一度耳元に囁き、ニィッと笑って見せると、観念したように息を吐き、素兎の足を持って押し倒し、股間のソコに、自分のモノを押し込んだ。
『イッ!イッ!イーッ!』
素兎が、顔を逸らせて食い縛る歯の隙間から、呻き声を漏らし出した。
そして、久太郎が小さなソコの奥まで挿れたモノを、中で動かし出すと…
『アァァァァーーーッ!!!!』
泣き声とも絶叫ともつかぬ声を上げながら、久太郎の下で素兎が悶え出した。
そこから先は、頭の中が真っ白になり、久太郎は何も覚えていない。
ただ、されている間中、悶え続ける小さな身体の感触と呻き叫ぶ声…
中に放った時の焼けただれるような股間の感触だけが、久太郎の心と身体に刻み込まれた。
夜更…
皆が寝静まると、久太郎は、素兎が寝かされている土間に行った。
素兎は、股間を押さえて蹲り、嗚咽の声を漏らしていた。
『君…』
久太郎が声を掛けると…
『ヒッ!申し訳ありません!』
素兎は、久太郎の顔を見るなり蒼白になって震え出し…
『着物を着ては行けません!身体を隠してはいけません!種付けを嫌がってはいけませ!種付け中、何をされても、するように言われても、拒んではいけません!』
連日、拷問じみた仕置きを受けながら、叩き込まれた掟を口にすると、股間から手を離し、脚を広げて陰部を剥き出しにして見せた。
『ようこそ、ご参拝を…参道は…開かれて…おります…どうぞ、お通り…』
久太郎は、何も言わず懐から薬入を取り出すと、中の薬を掬い上げ、素兎の股間に指先を運んだ。
『ヒィッ!』
素兎は、思わず顔を背けて小さな声を上げた。
また、痛い事が始まると思ったのである。
しかし…
薬を掬い上げた久太郎の指先が、陰部の上を這い出すと、素兎は急に全身の力を抜いて大人しくなった。
あの、絶えず股間を走り続けていたズキズキとした痛みが綺麗に消えていったからである。
特に、陰部の中に指先が滑り込み、肉壁に薬が刷り込まれてゆくと…
『アッ…アッ…アッ…』
素兎の目はうっとりし、小さく声を漏らし始めた。
ソコの内側は、肉壁一面剥離して痛むだけではなかった。
連日絶え間なく流し込まれる子種に塗れたソコは、いつも激しい痒みにも襲われていた。
しかし、剥離した肉壁は触れるだけで激痛が走り、とても掻けたものではなかった。
その痒みが、剥離した肉壁の痛みが消えるのに併せて擦られてゆく。
何とも言えない心地よさだったのである。
『どうだ?少しは、痛みが引いたか?』
『うん。』
『そうか、良かった。これは、小池三(こいけさん)と言う者が調合した薬だ。よく効くんだぞ。』
久太郎は、小さく頷く素兎の頭を撫でてやると、懐から曲げわっぱを取り出した。
『これは、夜の残り…大した物は入って無いけど、お食べ。』
曲げわっぱの中身を見るなり、素兎は目を爛々とさせて、勢いよく飛びついた。
素兎は、殆どまともに食べる物を与えられていなかった。
『さあ、餌の時間だぞ。』
そう言うと、猛り立った股間のモノを突き出す寮生達は、口腔内に放つ子種が素兎の餌だと思っていた。
後は、縄に繋がれ涎を垂らす素兎に、見せつけるように贅沢な食事を楽しんだ後…
与えると言うより、貪りつく素兎を見て楽しむ為に、残飯を投げつけるくらいのものであった。
その残飯すらも…
『今日は、あんまし楽しませてくれなかったな…』
その日の種付け相手が、十分勤められなかったと判断されば、目の前に投げつけた後、踏みつけ蹴飛ばして、与えられない事も少なくなかった。
真ん中に仕切りが敷かれ、半分は炊き込みご飯、半分は煮魚と漬物少々…
久太郎が、皆の目を盗んで精一杯掻き集めた残り物を、出来る限り弁当らしく盛り付けただけのものである。
それでも、物心ついて初めて口にしたまともな食事を、素兎は瞬く間に平らげると、思わず胸を詰まらせてムセ込んだ。
『はい、お水。』
久太郎が水筒を差し出すと、素兎はそれを手にして、どうして良いものかと首を傾げる。
『そうだったね。』
久太郎は、慌てて思い出したように、水筒の呑み方を教えた。
素兎は、水を与えられる時は、大きな碗の水を、犬のように首を突っ込んで飲まされていたのである。
『さあ、お休み。明日も…』
久太郎は、股間の痛みも癒え、腹ごしらえも済ませた素兎の頭を撫でて言いかけると、口を噤んだ。
明日も…
素兎に、新しい明日も、明るい未来もない。
夜が明ければ、また、絶え間なく嬲り弄ばれるだけの変わらぬ一日が始まるのだ。
すると…
『ありがとう。』
素兎は久太郎の顔を見上げて、ニッコリ笑って見せた。
*画像は、韓国出身女優のハラさんです。記事のイメージとして載せました。
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辛味

2020年06月06日 13時13分00秒 | 紅兎〜青鳥編


塩辛い…
英五郎はこねりを一齧りすると頬を引きつらせた。
玖玻璃がせっかく持ち込んでくれた差し入れ、せめて一口でもと思って頬張ってみたが…
やはり、何を口にしても同じ味しかしない。
『お兄ちゃん、アレして、アレして…』
可愛いべべを着た女の子を象るこねりをもう一齧りしようとした時、耳の奥底にまた同じ声が聞こえてきた。
『よし…それじゃあ、そこに座って。』
目を瞑ると、こねりの女の子と同じべべを着て、古びた赤い下駄を履く桃割を結い上げた少女が、兄に言われるままに岩石に腰掛け脚を広げた。
まだ少年だった英五郎は、少女が着るべべの足裾に伸ばしかけた手を引っ込めた。
ふと振り向くと、少し離れた所から、初老間近に控えた男が一人、意味ありげにこちらを見つめている。
当時…
鱶見一之末社を預かっていた眞吾宮司である。
英五郎が、救いを求めるように目で訴えかけるのも構わず、眞吾宮司は顎をしゃくり上げて何かを促していた。
『ねえ、どうしたの?』
九歳の清美は、小首を傾げて兄の顔を見上げた。
『いや、何でもない。』
英五郎が微かに口元を綻ばせて言うと、清美は満面の笑みを浮かべ、自らべべの脚裾を広げて見せた。
裾除けも腰布も着けていないソコが、遽に剥き出しとなったが、恥ずかしがる様子は全くない。
むしろ、これから始まる事への期待に目を輝かせ、ジッと兄の顔を見上げている。
英五郎は、大きく溜息をついて暫し妹の顔から目を背けるように瞑った目を見開くと…
『清美、挨拶は?』
また、優しげな笑みを浮かべて清美の頬を撫でてやった。
『えっと…』
清美は、人差し指を唇に当てて何か考え込んだ後…
『ようこそ…御参拝下さいました。えっと…えっと…』
『それから?』
英五郎が、ジッと妹の目を見つめて再度促すと…
『清美のココ、いっぱい見てね。』
清美は指先で陰部の縦一本線を大きく開いて見せ、ごまかすように笑って見せた。
『どうぞ、参道をお通り下さい…だろ?』
『えへへ、そうだった。どうぞ、ご参道をお通り下さい。』
英五郎は、清美が更にごまかし笑いして見せると、また優しげな笑みを浮かべて頬を撫でてやった。
そして…
もう一度、最後の望みをかけるような眼差しを眞吾宮司に向ける。
しかし…
眞吾宮司は、急き立てるような眼差しをむけて、顎をしゃくり続けていた。
『ねえ、お兄ちゃん、早く早く。』
何も知らない清美もまた、何かを急き立てるように言うと、口を尖らせて見せた。
もう待ちきれないと、目で訴えている。
『それじゃあ、もっと脚を広げて…』
清美は兄に言われるまま、更に脚を大きく広げた。
英五郎を見つめる目は、いよいよ始まる事に、益々目を輝かせいた。
英五郎は、観念したように妹の股間に顔を埋めると、まだ発毛の兆しも見られぬ小さなソコに舌先を伸ばしていった。
『アン…アン…アーン…』
清美は、小指も入りそうにない小さな孔の入り口に、舌先のざらつきを感じると、甘えるような声を上げ始めた。
やがて…
『アッ…アッ…アッ…』
清美は英五郎の頭を抱き抱えるようにしながら、腰をひくつかせ…
『アーンッ!』
一際大きな声を上げると、全身の力を抜いて、英五郎の背中にうつ伏せた。
ソコは、唾液と愛液に塗れ、漏らしたようになっている。
『さあ、今度は清美がお兄ちゃんにする番だぞ。』
英五郎が袴と褌を脱ぎ、それまで清美が腰掛けていた岩石に腰掛けて言うと…
『うん。』
ニッコリ笑って、剥き出しにされた英五郎のイチモツに手を伸ばした。
『今日は、ちゃんと呑みこむんだぞ。昨日みたいに吐き出すんじゃないぞ。』
英五郎が頭を撫でながら言うと…
『はーい。』
清美はクスクス笑いながら、軽く扱いていたソレをゆっくり口に含み始めた。
『最初は先端を満面なく舐め回し…それから、先端の裏側をチロチロと…そう、そう、そう…うまいぞ、上手だぞ…』
英五郎は、言われるまま丹念にそれを舐め回す清美を撫でながら、また、眞吾宮司の方に目をやった。
眞吾宮司は薄気味悪い笑みを満面に浮かべ、実の妹にイチモツをしゃぶらせる英五郎を、興に入ったように見つめていた。
『塩辛い…』
英五郎が思わず顔を顰めた時…
「アー、アー、アー…」
何者かが袖を引っ張りながらあげる声に振り向いた。
「静ちゃんか…」
英五郎が物静かな笑みを浮かべて言うと、静と呼ばれた少女はニィッと笑って見せた。
口元からは、涎の糸を垂らしている。
「欲しいのか?」
英五郎が、手に持つこねりを見せて言うと、静はまたニィッと笑う。
確か、今年で十四になるはずだが…
四年前、素兎だった静は、社に駐留していた二百人もの神漏兵達に連日に亘る凌辱と暴行を受け、精神を破壊され幼児化していた。
「お食べ。」
英五郎がこねりを渡すと、静は満面の笑みを溢して、頬張り始めた。
「あらあら、静ちゃん、良いの貰ったわね。」
新たな声に振り向くと、娘の箱車を押す妹の清美が、お日様のような笑みを浮かべていた。
「かーいー…かーいー…」
寝台状の箱車からは、首を逸らせて視点の定まらぬ娘の裕美が、殆ど動かぬ手を伸ばして静を撫でようとしていた。
こちらも、今年でもう十八になるはずだが、中身は五歳児以下であった。
「そうね、静ちゃん可愛いね。」
そう言って愛しそうに娘の肩を抱いて頬擦りする清美は、まだ三十にも満たない筈なのだが…
此処に来るまで、どんな人生を歩んできたのであろう…
髪に白いものが多く混じったその顔は、四十過ぎと言われてもおかしくない程老け込んでいた。
それでも、念願かなって娘と暮らせるようになって早八年…
その顔は幸福に満ちて輝いていた。
塩辛い…
英五郎は舌先にこびりついて離れぬ妹のソコの味に渇きを覚え、竹筒の水を喉に流し込んだ。
「さあ、ヒロちゃんも美味しい美味しいしましょうね。」
清美はそう言うと、懐から小さな壺を出し、小匙で中身を掬って裕美の口に運んでやった。
裕美は満面の笑みで口をモゴモゴさせると…
「あげる…あげる…しずあんにあげる…」
しきりと静の方を指差して言った。
見れば、こねりを平らげた静は、指を加えて裕美の頬張ったものを見つめていた。
「まあまあ、静ちゃんも欲しいの?」
清美が小さな壺を差し出して言うと、静はニィと笑って涎の糸を垂らした。
「ヒロちゃん、あげても良い?」
「あげる…あげる…しずあんにあげる…」
裕美は、母に問われると満面の笑みを浮かべて、静の方に手を伸ばし続けた。
『優しい子だ…
俺の娘は…』
英五郎は心の中で呟きながら、胸に暖かな温もりと突き刺すような痛みを同時に感じた。
『こんな優しい子が…不憫な…』
そしてまた…
塩辛い…
英五郎は、喉の渇きを覚えて、竹筒に口をつけた。
『ねえ、見て見て!指、二本入ったよ!』
瞼を閉じれば、全裸になった十歳間近の清美が、股間のソコに人差し指と中指を出し入れさせてはしゃいでいた。
『そうか、凄いじゃないか。それじゃあ、お兄ちゃんの指も入れてみようか。』
『うん!』
清美は、英五郎に促されるままに、またお気に入りの岩石に腰掛け脚を広げた。
社に引き取られた頃…
小指を少し入れただけで痛がり泣き叫んだ小さなソコは、だいぶ広がっていた。
膜はとっくに破けてなくなっている。
最初は舐めて気持ち良い事を教えてやり…
指先で表面を優しく撫でたり弄ったりしながら、少しずつ指先を入れていった。
暇さえあれば、自分でもソコを弄らせた。
最初は怖がっていた清美も、次第に心地よい事を知ると、自分から遊び感覚で弄るようになっていった。
そうして、少しずつ指を中に出し入れするようになり、ここまでソコの穴が広がったのである。
『イッ…イッ…イッ…痛い!』
英五郎が、ソコに人差し指と中指をゆっくり挿入させると、清美は忽ち顔を背けて呻き出した。
『痛い!痛い!痛い!』
妹の泣き叫ぶ声に、英五郎は一瞬指を引き抜こうと思う。
しかし…
遠くから睨みつける眞吾宮司の眼差しは、それを厳しく禁じていた。
もし、此処で引き抜けば…
『おまえの手で、妹を仕込んでやれ…』
清美が白兎として引き取られた日…
眞吾宮司は、英五郎の小さなイチモツをしゃぶりながら命じた。
『どうした?嫌なのか?』
英五郎が腰を逸らせて呻きながら嫌々をすると、眞吾宮司は嬲るような視線を向けて言った。
『嫌なら良いんだぞ。今夜早々にでも、神漏達に力づくで女にさせてやろう。』
忽ち蒼白になる英五郎の肛門を、眞吾宮司は指先で抉りだす。
『ウゥゥッ!』
眞吾宮司は、身を捩って呻く英五郎に舌舐めずりしてニンマリ笑った。
『まだ痛いのか?そうか、そうか、まだまだ痛いか。そうだろうな、穴はこんなに小さいんだもんな。
だが、十四になったおまえがこんなに痛いんだ。九つの清美…どんなに痛いんだろうな。』
『やめて…下さい…お願い…します…清美は…清美は…』
更に肛門を抉られ英五郎が腰を浮かせると…
『それは、おまえ次第だな。』
眞吾宮司は、益々嬲るような笑みを浮かべて言った。
『清美が十歳になるまで、猶予を与えてやろう。それまでに、おまえの手で仕込み、女にしてやれ。できなければ…わかるな。』
あと三月…
清美は、その十歳を迎える事になる。
その時までに仕込み終え、女にしてやらなければ…
英五郎は、心を鬼にして指先を清美のソコの奥深くに捻り込んだ。
『キャーーーーッ!!!』
清美は思わず腰を跳ね上げ岩石から滑ちると、地べたに仰向け身を捩っ泣き叫んだ。
『清美、頑張れ!頑張るんだ!』
英五郎は、暴れる清美を押さえつけると、捻りこんだ指先で延々と中を掻き回し続けた。
『よく頑張ったな、偉かったぞ。』
英五郎が漸く指を引き抜いた時…
清美はまだ地べたに仰向けたまま啜り泣いていた。
『お兄ちゃん…痛い…痛い…痛いよー…』
出血はしていなかった。
中を傷つけないよう、十分気をつけたつもりであった。
それでも、ソコは真っ赤に腫れ上がって痛々しかった。
『ごめんな、清美…』
英五郎も涙目ぐみながら言うと…
『今、痛い痛いを治してやるならな。』
清美の股間に顔を近づけ、そっとソコに舌を這わせてやった。
『アン…アン…アーンッ…』
それまで泣いていた清美は、忽ち甘えるような声をあげ、腰を浮かせ出した。
『清美、気持ち良いか?』
『うん。気持ち…良い…アァァ…アン…アン…アン…』
英五郎は、清美の喘ぎながらうっとりする顔を見て、また胸の疼きを覚えながら、一層丹念に舌を這わせた。
『イッ…イッ…イッ…イタッ…イタッ…痛い!』
清美のソコに、指を入れて掻き回す訓練は、連日繰り返された。
『さあ、力を入れて。お兄ちゃんの指をしっかり挟み込むんだぞ。』
清美は激痛に咽び泣きながらもソコに力を入れ、言われるままに挿入された兄の指を挟み込んだ。
『今から十数えるからな。一つ数える毎に思い切り力をいれて指を挟み込むんだ。始めるぞ。
はい、ひとーーーーーつ!!!』
英五郎は、ゆっくり数を数えるのに合わせて、清美の中を思いきり掻き回し始めた。
『痛ーい!痛い!痛い!痛ーい!!!』
『ほらっ!しっかり力を入れて!指を挟んで!』
『イッ!イッ!イッ!痛ーい!!!』
『ちゃんとやれ!やらないと終わらないぞ!』
英五郎は涙声で怒鳴りつけると、清美は再びソコに力を入れて挿入された指を挟み込んだ。
『はい、ふたーーーーーつ!!!』
英五郎は、更に力を込めて中を掻き回した。
『痛いよーー!!!痛い痛い!!!痛いよーーー!!!痛いよーーー!!!』
『はい、みーーーーーつ!!!!』
身を捩って泣き叫び、暴れて逃れようとする清美を、英五郎は押さえつけて中を掻き回し続けながら、清美が社に引き取られた日の事を思い出す。
『今日から、お兄ちゃんと毎日一緒に暮らせるんだね。』
『一緒に寝て、起きて、ご飯食べて、お風呂に入って、明日も明後日も、ずっとずっと一緒に遊べるんだよね。』
『嬉しいなー、嬉しいなー、ずっとずっとずーっと、お兄ちゃんといつも一緒にいられるんだよね。』
何も知らずに社に引き取られた日。
清美は、長い間離れて暮らしていた英五郎とまた一緒に暮らせる事を、ただ無邪気に喜んでいた。
一日中、英五郎の腕に絡みついてはしゃぎながら、満面の笑顔を向け続けていた。
『はい、よーーーーっつ!!!』
泣き叫ぶ清美のソコを掻き回す英五郎の数を数える声は、いつしか涙に擦れ、自分でも幾つ目を数えているのか分からなくなっていた。
『塩辛い…』
英五郎は、尚も渇きの癒ぬ喉を潤そうと竹筒に口をつけると、既に中身は空になっていた。
「お兄ちゃん。」
不意に声をかけられ振り向くと、清美が新しい竹筒を差し出していた。
「すまん…」
英五郎は一言言って竹筒を受け取ると、延々と塩辛さがこびりつく喉に、水を流し込んだ。
清美は、そんな兄の顔を複雑な眼差しで見つめた。
「何だ?」
「ううん…何でも…」
訝しげに振り向く英五郎に、清美は首を振った。
「ねえ、良い子でしょう。」
「そうだな。」
裕美は、淀の糸を垂らしながら箱車を覗き込む静の頬に、満面の笑みで手を伸ばし続けていた。
「あー…あー…あー」
始終、首が反り返り、視点は全く別な方を向いている。
傍目には、どう見ても静を見ているようには映らなかった。
それでも、裕美は静を見つめていた。
可愛くて堪らず、一生懸命笑顔を傾けていた。
静も、それがよくわかっていて、裕美が大好きであった。
「へへ…へへ…へへへ…」
「あー、あー、あー」
何を話しているのだろう。
互いに言葉にならぬ声を発し合うと、二人とも嬉しそうに笑っていた。
「ヒロちゃんはね、本当、誰にでも優しいの。」
「そうか…」
素っ気ない返事を妹に返す英五郎は、全く娘の顔を見ようとしない。
見ればまた、思い出してしまうからだ。
『良いか、指を入れた時と同じようにやるんだぞ。お兄ちゃんのが入る時は力を抜いて、出す時は思い切り力を入れるんだ。』
清美が十歳を迎えた日…
英五郎は、全裸で仰向け震える清美の脚を広げると、小さな股間に向けて腰を落とした。
『イッ…イッ…イッ…』
イチモツが中に捻り込まれてゆくと、清美は顔を背けて呻きながら、腰を捩らせた。
『ほら、入れる時は力を抜いて…そうそう、出す時は力を入れる。そうだ、上手いぞ、上手いぞ…』
『アーッ!アーッ!アーッ!』
英五郎がゆっくり腰を動かしてゆくと、清美は大きく首を振りながら一層声をあげた。
『何をしとるんじゃ、英五郎!』
不意に、初めて種付けをする兄妹を、側で見続けていた眞吾宮司が、痺れを切らしたように声をあげた。
『ほれ、もっと腰を動かせ!腰を!』
『でも宮司様、コイツ今日が初めて何です!』
『それがどうした?』
『最初は優しくしてやって良い。そう仰られ…』
『口答えするんじゃない!』
眞吾宮司はみなまで言わせず、思い切り英五郎の頭を殴りつけた。
『さあ、腰を動かせ腰を!早くせんか!』
眞吾宮司に急かされるまま、英五郎は激しく腰を動かし始めた。
『そうじゃ!そうじゃ!もっと動かせ!激しく動かせ!』
英五郎の下で、清美は泣き叫んだ。
『痛い!痛い!痛い!もう…もう…もうやめてよ!痛い!痛い!痛い!』
指を入れられる事にはすっかり慣れた。
中で指を掻き回しても泣かなくなった。
それでも、まともに男を受け入れるには、まだまだソコは小さかった。
真っ赤に腫れ上がっていた。
赤剥けに擦り剥けていた。
裂けて血も流れ出していた。
英五郎は、更に激しく腰を上下させながら、一緒に泣いていた。
『どうした?まだ、イカんのか?早うイケ、早うイケ、おまえのイチモツは飾りじゃーないんじゃろう?』
側では、兄妹で交わる姿を見るのが楽しくてたまらないと言うように、眞吾宮司が涎を垂らして見つめ続けていた。
他の神職者達や、神漏兵達も指を咥え、股間を膨らませて見物していた。
やがて…
『アッ…アッ…アッ…アァァァァーッ!!!』
腰を浮かせ、顔を仰け反らせて声を上げる清美の中に、英五郎は溢れんばかりの子種を撒き散らした。
それは、何日も何日も繰り返された。
『清美の初子は、おまえの種であげさせてやるぞ。』
眞吾宮司はそう言って、清美が最初の子を孕む時まで、実の兄である英五郎だけに種付けをさせ続けた。
何日も何日も…
何ヶ月も…
絶え間なく英五郎に実の妹を種付けをさせ続けた。
そうして遂に…
『でかしたぞ!見事、的当てたな。』
実の兄との行為中、清美は悪阻を起こした。
英五郎は胸を嘔吐物に塗れさせながら、実の妹を孕ませた事を知った。
「私ね、この子が産まれてきてくれて、本当に幸せだったわ。」
清美の目には、ただ唸るような声を交わし合っているだけの裕美と静の姿が、巷の子供達が元気よく遊び回るのと同じ姿に映っていた。
二人がいつも仲良く遊んでいるのを….
裕美が静を可愛がっているのを…
こうしてジッと見つめているのが嬉しくて堪らなかった。
「私、この子がいたから生きて来れたの…お兄ちゃんがこの子を授けてくれたから…産まれてきたこの子を命がけで連れ出し守り抜いてくれたから生きて来れたの。」
相変わらず娘から目を背け続ける英五郎の脳裏には、連日股間を血と子種に塗れさせて泣き噦る清美の姿が過り続けていた。
『痛いよー…痛いよー…お兄ちゃん、痛い痛い…』
何刻にも及ぶ種付けの後…
漸く解放された清美は、生身の身体に五寸釘でも打ち付けられたような激痛に眠る事も出来ず泣き続けていた。
『よしよし…今、痛いの痛いのをしてやるからな…』
英五郎はそう言って清美の頬を撫でてやると…
『うん。』
清美は漸く目を擦って涙を拭いながら、脚を広げた。
妹の股間に顔を埋める英五郎の舌先が、血と子種塗れのソコをゆっくり這って行く。
『アン…アン…アーン…』
清美は、兄の舌先の動きに合わせて腰を浮かせると、いつものようにまた、うっとりと甘えるような声をあげた。
『気持ち良いか?』
『うん。お兄ちゃん、もっと…もっと…アーン…アーン…アーン…』
英五郎は、また竹筒に手を伸ばす。
塩辛い…
あの時…
連日、妹のソコを舐め続け、こびりついてしまった舌先の塩辛さは、英五郎に一生まともな味覚を思い出させる事はないのであろう。
「お兄ちゃん、ありがとう。」
兄妹の間にできたが故に、重い障害を負って産まれてしまった子…
不憫な子…
しかし、清美の目には世界一愛しく可愛く映る娘を見つめながら、清美はまた満面の笑みを浮かべた。
「あの子を産ませてくれてありがとう。あの子を守り続けてくれてありがとう。」
英五郎は、何度も礼の言葉を口にする清美の傍で、死ぬまで癒る事のない渇きにひりつく喉に、また竹筒の水を流し込んだ。
*画像は韓国出身女優のハラさんです。記事のイメージとして載せました。
コメント

愛娘

2020年05月05日 03時46分00秒 | 紅兎〜青鳥編




「どうした?会いたくないのか?意識が戻るまでの間、君はいつも和幸の名を口にしていたぞ。」
智子は、尚も無言で着物の裾を握り続けた。伊織も大きく溜息をついて口を閉ざした。
死の境を彷徨っていた智子は、あの過酷な手術に耐え抜いた。
呑舟と共に施した手術の奇跡を、伊織自身がまだ信じられていなかった。
奇跡の手術を目の当たりにしたのは、これが初めてではない。
五年前、鱶見本社に忍び込んでいた、主水配下である大化けの久太郎(おおばけのきゅうたろう)と応次郎(おうじろう)兄弟に連れてこられた美香。
四年前、主水率いる中村組と平蔵率いる火盗組が大量に連れ込んだ、目明組の少年達と弍十手組の男達。
三年前、主水の配下である神鳴の尾夜地(かみなりのおやじ)と土論波(どろんぱ)親子に連れ込まれた早苗。
いずれも、絶対助からないと思われた命であった。
しかし、それらと比較しても、智子を死地から連れ戻したのは、奇跡と言うより神の領域に思われた。
生きた人間の腑分け…
智子の手術をする時、伊織はそんな風にしか思っていなかった。
あれだけ全身を悪性腫瘍に蝕まれた人間を、本当に治せるなどと全く思っていなかった。
それを成し遂げてしまった…
奇跡と言うより、最早神の領域に達しているだろう。
師匠はやはり生ける神…
医の神なのだ…
伊織は、智子の手術を成功させた時程、師匠である呑舟を尊敬した事はなかった。
最も…
この手術を成功させるにあたって、伊織の全身麻酔術の力が大きかったと誰もが認めてると言う自覚はまるでない。
しかし…
尊敬を通り越して崇敬の念を抱く師匠が、医術を超えた神術の力を持って救い上げた命は、何故か生きる望みを失っている。
理由はわかる。
子袋を失ったからだ。
女にとって、それは命を失ったと言われるのに等しい事なのだろう。
それでも何とか生かしたい。
目の当たりにした神術の結晶…
終生独身を貫こうとする呑舟に子供はいない。
ならば、生ける神がその術を尽くして救い上げた命は、生ける神の子供と同じであった。
崇敬してやまぬ師匠の子供を、何としてでも生かさねば…
伊織は、どうすれば智子に生きる望みを持たせる事ができるのか、そればかり考えていた。
呑舟は既にその場を離れていた。
吽の呑舟…
誰とも一言も言葉を交わさない彼は、為すべきことを為せば長居はせず早々に去ってゆく。
患者に伝えるべき事を伝えるのは、言葉を交わさずとも彼の意を全て汲み取る伊織の役目である。
暫しの間、無言で智子の顔を見つめ続けていた伊織は…
「そうだ…」
はたと何か思い出したように沈黙を破った。
「希美ちゃんと言う名もよく口にしていたな…」
「希美ちゃん…」
その名を耳にした途端、ずっと俯いていた智子は顔を上げて伊織の顔を見返した。
「そうだ、希美ちゃんだ。何でも、君の娘なのだと聞いているが…
きっと、希美ちゃんも母親の帰りを心待ちにしているだろう。」
伊織が言うと、智子は答える代わりに、ハラハラと涙を溢れさせた。
『美香ちゃんに、もう一度お祭りを見せてあげたい…可愛い法被を着せて…盆踊りを踊るの…』
『ああ、見せてあげよう。トモちゃんの縫う法被着て、三人で踊ろう。美香ちゃん、とっても可愛いだろうね。』
あの時、もう殆ど起き上がる事も出来ず、死が目と鼻の先に近づいていた智子の肩を抱いて言う、和幸の優しい笑顔が脳裏を過ぎる…
『うん…』
智子は、満面の笑顔を和幸に返して頷くと、そのまま意識を遠のかせた。
それから、どれだけ長い間眠り続けたのであろう。
目が覚めた時…
自分が何者なのかもよくわからなくなっていた。
頭の中がボーッとしていて、何もかもがわからなくなっていたのだ。
ただ、死んだ筈の早苗と美香が、目覚めた自分の顔を覗き込み、泣き噦って見つめているのが、何とも奇妙な印象を与えた。
やがて、何もかもを思い出して、最初に脳裏を過ぎったのは、和幸と拾里で過ごした日々…
『希美ちゃん!』
智子の発した第一声は、それであった。
あの時…
全身を蝕む悪性腫瘍と、美香を死なせてしまった事への悔は、智子の感覚を完全に狂わせていた。
少女を美香だと信じて疑っていなかった。
和幸も、智子の前では最後まで少女を美香と呼び続けていた。
少女の名を、智子は最後まで知らなかった筈であった。
だのに、何故か目覚めると、少女の本当の名は希美だと知っていた。
更に不思議な事に、早苗と美香も当たり前に希美の事を知っていた。
希美と同じ社にいたと言う辰三にでも聞いたのだろうと思った。
しかし、聞けば二人とも目覚めた時から希美の事を知っていて、むしろ、二人から希美の事を細かく屋敷の者達に話したのだと言う。
何故、二人とも希美を知っているのか、早苗はわかっていない。目覚めたら、当たり前に希美の事を知っていて、別にそれを不思議とも何とも思っていなかった。元々、早苗とはそう言う子であった。
美香は何か知っているようである。しかし、尋ねても口を濁して何も答えようとはしなかった。
『おまえはな、もう子供を産む事はできないんだそうだ…』
不意にまた、診察台に寝かされた智子の顔を覗き込み、残忍に笑う眞吾宮司の顔が脳裏を過り出した。
眞吾宮司の面前で和幸に告白して以来…
智子に対する虐めは凄惨を極めた。
よくもこんな事を思いつくと思われるような暴行と凌辱が、連日に亘って繰り返された。
智子は耐え抜いた。
耐えて耐えて耐え抜き続けた。
苦痛ではなかった。
喜びですらあった。
凄惨な虐めを受ければ受ける程、心は和幸と強く結ばれる事を感じたから…
それに…
嬉しい事が一つあった。
何か社の祭事が行われる度に、和幸と智子が皮贄の儀式に引っ張り出され、大衆の面前で種付けをさせられた。
眞吾宮司からすれば智子を、榮太郎からすれは和幸を、晒し者にしているつもりであったのだろう。
二人が濃厚に絡み合う姿を眺め、居並ぶ者達と卑猥な声で笑い続けていた。
しかし、智子は知らないなと思った。
どう言う形であっても、和幸と肌を重ね一つに交わる事さえできれば幸せだったのだ。
産まれたままの姿で和幸と抱き合う時…
そこに見物人の姿もなければ猥雑な笑い声も存在しなかった…
いや、そこに時間すら存在しなかった。
あるのは二人だけの世界であった。
和幸の子種が智子の中いっぱいに放たれる…
和幸の愛の結晶が智子の中いっぱいに広がってゆく…
幸せであった…
最高に幸せであった…
それが終われば、眞吾宮司に弄ばれる和幸の目の前で、居並ぶ見物人達が一斉に智子の身体に殺到する事がわかっていても…
『赤ちゃん…できないかな…』
智子は、和幸に抱かれながら思い続けた。
『私の赤ちゃん、この人達の子じゃない…』
和幸に抱かれた後、それまで見物していた男達に絶え間なく弄ばれながら智子は思い続けた。
『私の赤ちゃん、誰が何と言ってもカズちゃんの子供…』
『カズちゃんの赤ちゃんを産みたい。』
『一月でお別れで良い。一月の間、思い切りカズちゃんと可愛がってあげて、その泣き声も笑い顔も一生忘れない。カズちゃんとの一生の思い出にする。』
『もし不具や病持ちで殺されそうになったら、カズちゃんと命がけで守ってあげる…』
『どうしても赤ちゃんを守りきれなかったら、赤ちゃんと一緒に私も死のう…カズちゃんの腕の中で…』
眞吾宮司に弄ばれる和幸の前で、数多の男達に弄ばれる最中…
心の中で、智子はひたすら和幸との赤子が産まれた時の事を思い続けて笑顔さえ浮かべていた。
しかし…
智子の細やかな夢は無残にも打ち砕かれた…
ある祭儀の日。
いつものように和幸との種付けを見世物にされた後、見物人達に弄ばれる最中に、智子のソコは出血が止まらなくなった。
それは、裂けたり擦れたりする事による出血ではなく、子袋が破けての出血であった。
最早、子を産む事は不可能…
そう診断が下された。
四歳から弄ばれ続けた智子は、既に子袋は傷だらけであった。
栄養不足に加えて、子袋が痛めつけられる事で、発育も背丈も七歳で止まっていた。
生理もなければ、乳房も殆ど膨らまず、発毛は全くなかった。
要するに、女としての機能は既に無きに等しかった。
それが、今回の傷で致命傷となり、完全に子袋は使いものにならなくなったと言う。
『知ってるか?女はな、子を産む道具にすぎんのだよ。子を産めない女は、卵を生み、乳を出し、労働力になる家畜以下なんじゃよ。特に、子を産む為だけに飼われてる白兎は、子を産めなくなったら何の価値もない。』
『子を産めぬ白兎はな、山に捨てるか異国に売られる事になっとるのじゃよ。でもな、わしはおまえをそんな可哀想な事はせんぞ。和幸の大切な玩具…死ぬまで、社で飼ってやるわ。』
眞吾宮司の嘲笑うような言葉など、智子の耳には何も入らなかった。
ただ…
和幸の子供を産む事ができない…
その事実が、智子に重くのしかかるだけであった。
和幸の子供を産む夢はとっくに失われていた。
もう諦めていた。
そんな彼女の前に、思いもかけず現れたのが希美であった。
素兎だったと言う希美は、これまでどんな人生を送ってきたのであろう。
背中には、鞭で打たれた傷の他、無数の切り傷や火傷の跡があった。
足の裏には、火傷と刺し傷があった。
目は虚で表情はなく、言葉はおろか声を発する事も全くない子であった。
泣きもせず、笑いもしなかった。
そんな希美を、智子は寝ても覚めてもひたすら抱きしめ続けた。
希美を拾って一月もした頃…
『お…母さん…』
『お…父さん…』
不意に目覚めた希美は、智子と和幸の顔を交互に見つめてながら、初めての声を発した。
『美香ちゃん!』
智子が思わず声を上げると…
『お…母さん…お…母さん…』
智子の顔をジッと見つめてニッコリ笑った。
そして、何を思ったのか、智子の胸に手を入れて弄りだした。
『まあ…おっぱい?』
智子が言うと…
『おっぱい…おっぱい…』
希美はまた、智子の胸を更に弄った。
『おっぱい、欲しいの?』
『うん。』
智子が胸を出してやると、希美は乳などでもしない乳首を嬉しそうに吸い始めた。
『カズちゃん、この子…』
智子が思わず和幸に目を向けると、和幸は満面の笑みを浮かべて大きく頷いて見せた。
『この子は、私の子…カズちゃんとの私の子…』
十歳だが、中身は三歳だと言われた。
智子には生まれたての乳飲み子に見えた。
年齢は十歳しか違わないが、紛れもなく和幸との子供だと思った。
『希美ちゃん…希美ちゃん…希美ちゃん…』
『希美ちゃんに会いたい…』
『希美ちゃんともう一度暮らしたい…拾里で過ごした、あの小屋で…』
その希美も、記憶を辿れば、あと三月しか生きられない筈であった。
しかし…
『拾里に…帰れない…』
智子は、玖玻璃の言葉に絶句した。
『そう。貴方達は今、この世に生きていない事になってるの。生きている事を知られてはいけないのよ。』
『カズちゃんと希美ちゃんにも?』
『そう、誰にも…』
『どうして…ですか?』
『ごめんなさい。今は、話せないわ。ただ、一つ言える事は、あなた達が生きている事が知れたら、大勢の命が失われると言う事…』
『大勢の?』
『そう。せっかく生き延びる事ができた命も、これから生き延びる事ができるかも知れない命も全て…』
玖玻璃はそう言うと、智子を抱きしめて自身も涙を流し続けていた。
『トモ母さん、元気になるまでの辛抱なのよ。身体を完全に治して、元気になった頃、私達、またみんなに会えるの。サナ姉ちゃんだって、タカ兄ちゃんや亜美姉ちゃん達に会いたいの必死に我慢してるの。お願い、わかって…わかってね。』
美香もまた、やはり涙を流して言いながら、智子の手を握り締め続けた。
『それじゃあ、遅いのよ…だって…だって…希美ちゃんは…希美ちゃんは…』
声を上げて泣き噦る智子も、やがて、仮に誰の許可を得られても、会いになど行けない現実を知った。
和幸と過ごした拾里まで、屋敷からは一山越えなければ行けなかった。
しかも、今は拾里から更に一山越えた社で暮らしていると言う。
今の自分の身体では、とても歩いて行ける距離ではなかった。
智子は、希美と会うのを諦めざるを得なかった。
同時に…
だったら、自分が助かった事に、生きていた事に何の意味があるのだろう…
和幸と過ごした数ヶ月の間、二人の短い愛の証とも言える娘に会えないなら…
和幸との娘が逝ってしまった後、仮に再び和幸に会えたとして…
何の意味があるのだろう…
希美がいなくなってしまったら、自分にはもう何もない…
和幸の為に子供を産む事ができないのだ…
子供を産むだけじゃない…
全身切り刻まれてボロボロになった自分は、一生、まともな身体には戻れない…
寝たり起きたりを繰り返しながら、死ぬまで他人の世話になって生きてゆかねばならないのだ…
それに…
今の和幸には、菜穂がいる。
恐らく、再び会いに行ったその時には、和幸は菜穂と夫婦になり、ひょっとしたら子供ができているのかも知れない…
それでも、和幸は暖かく受け入れてくれるだろう…
菜穂も優しく迎え入れてくれるだろう…
いや…
菜穂は、何も言わず身を引くかも知れない…
『トモちゃん、僕も拾里に連れてってくれないか…』
余命いくばくもないと知り、一人寂しく拾里に立とうとした時…
和幸はそう言って、智子を後ろから抱きしめた。
優しく笑いかけるその目から、止め処なく涙を溢れさせていた。
『カズちゃん、でも…でも…私…』
智子はそれ以上言葉を発する事が出来ず、ただ首を振り続けていた。
美香が死んだとされた直後、和幸と別れた。
別れを切り出したのは智子の方であった。
和幸は、美香が死んだとされた直後から、最早、智子への想いを隠す事はなくなった。
『僕はトモちゃんが好きだ!もう、誰に隠す事も偽る事もしない!』
眞吾宮司の前で、堂々と公言して見せたのである。
そして、眞吾宮司の前で智子を抱きしめ、唇を重ねたのである。
『カズちゃん…』
『トモちゃん、ごめんね。これまでずっと寂しい思い、辛い思いをさせてきてごめんね。
でも…
美香ちゃんが死んだ今、もう何も怖い物なんてないさ。これからは君への想いを隠さない!偽らない!ずっと一緒だ!』
怒りと嫉妬に駆られた眞吾宮司の迫害が、以前にも苛烈さを増した事は言うまでもなかった。
智子にとって、そんな事は何でもなかった。
自分のせいで美香を死なせた。
その事を思えば、自分への罰などこんなものでは済まされないような気がした。
むしろ、今度は和幸も一緒に苛烈な迫害を受けるようになった事に胸を痛めた。
言葉に尽くせぬ凌辱と暴行…
眞吾宮司は、敢えて榮太郎に和幸を虐げさせた。
眞吾宮司の寵愛を奪われたで嫉妬に狂っていた榮太郎に、和幸を虐め抜かせた。
『カズちゃん!』
榮太郎率いる小川組神漏兵達に暴行され、傷だらけの和幸を見兼ねて駆け寄ろうとした時…
『美香を死なせておきながら、恋人ごっこか?この石女め…』
眞吾宮司は、智子の髪を掴んで耳元に囁いた。
『お願い…私はどうなっても良いの…カズちゃんを…カズちゃんだけは…』
『なーに、心配する事はないさ。そんなに好き同士なら、ずーっと一緒にいられるようにしてやるさ。』
『えっ?』
『おまえを異国に売り飛ばす事に決めたよ、子を産めない女は、乳を出し卵を産む牛や鶏より役立たずじゃからな。その時、和幸も一緒に売り飛ばしてやろう。』
『やめて!カズちゃんだけは…カズちゃんだけは…』
泣き噦って取りすがる智子に…
『黒兎が売りに出されるとき、どうされるか知ってるか?』
美唯二郎が追い討ちをかけるように嘲笑って言った。
『男のイチモツを切り取られるんだぞ、コイツでな。』
智子は、美唯二郎が懐から錆びて刃の欠けた剃刀を取り出して見せつけられると蒼白になった。
『痛い何てもんじゃない。大概、切り落とされ、売り飛ばされる時には気が狂っているさ。』
『お願い!やめて!お願い!何でもします!どんな事にも従います!だから…だから…』
智子が一段と声を上げて泣き叫ぶと…
『おまえも酷い女じゃな。美香を死なせた上に、惚れ狂った男まで、男でなくさせるんじゃからからな。』
『仕方ありませんよ、宮司様。こいつは石女、女じゃないのですから…』
『そうじゃった、そうじゃった。』
眞吾宮司と美唯二郎はそう言って、甲高い声を上げて笑い出した。
智子は、和幸と別れる決意をした。
『私、最初からあんたのこと何か何とも思ってなかったわ!ただ、物欲しそうにして哀れだから抱かれてやっただけよ!』
そう言って…
『そうか…わかったよ。』
和幸は、静かにそう答えると優しく笑いかけて言った。
『同情からでも良い…今まで、僕を支えてくれてありがとう。』
程なく、眞吾宮司をはじめとする鱶見本社の神職者達が一斉に疾走した。
そのうち二人は、山林の中で遺体で発見された。
木に吊るされ、足の裏をとろ火で炙られながら、長い時間かけて殺されていたと言う。
噂では、本土総社の手の者に暗殺されたと囁かれていた。
兼ねてより、眞吾宮司の残忍な扱いで多くの白兎達を死なせ、石女にしていた事が問題視されていた。
神領の神職者達の職務は、白兎の少女達を孕ませ子を産ませる事である。それが出来ぬ宮司は罷免され、まして何人も石女にしたとあっては身分剥奪されてもおかしくはなかった。
眞吾宮司がそうならなかったのは、三諸島…それも十握島の総大宮司家の者だからであった。
しかし、神領に対する重大な背反が発覚し、密かに消されたのではないかと言われていたが…
真相は闇の中であった。
智子は、何となく和幸が絡んでいるのではないかと感じていた。
特に根拠はないが、和幸と結ばれてから、彼の胸の内が色々わかるようになっていた。
優しげに見えて、実は激しいものを胸に秘めてる事…
怒りと悲しみ…
やるせなさ…
正義に燃える熱い思い…
眞吾宮司に、女のように身体を開きながら、いつかはと言う熱い思い…
和幸が眞吾宮司達を…
智子は心の何処かで思いながら、口に出しては言わなかった。
自分自身の本当の思いと共に何も語らぬまま、新たな宮司が赴任した後も、和幸とは距離を置き続けた。
新たな宮司は、前の宮司と全く違う人物であった。
新たな宮司の元で、社も社領も前と一変された。
時同じくして、新たに白兎として引き取られた菜穂と、和幸は新たな恋を始めた。
智子との事があってから、ずっと塞ぎがちだった和幸を心配していた兎神子の仲間達は、皆でこの恋を祝福した。
智子も、遠くから祝福して見守っていた。
やがて、かつて和幸と智子が恋仲であったことは、忘れられようとしているかに見えた。
そもそも、誰からも距離をおく智子自身の存在が、忘れられたかに思われた。
少なくとも、智子はそう感じていた。
そして…
智子の子袋に悪性腫瘍が見つかった。
子袋だけではなく、既に全身に転移していた。
拾里行きが決まった。
智子は、誰からも忘れられたまま、一人旅立とうと思っていた。
しかし、和幸は忘れてはいなかった。
菜穂との恋を深めながらも、片時も智子を忘れた事はなかった。
ずっと、智子を思い続けていた。
兎神子の仲間達も同じであった。
和幸と菜穂との恋は恋…
それとは別に、いつかは智子との関係が戻る事を願っていた。
『トモちゃん、カズちゃんも連れてっておやりよ。』
和幸のすぐ後から追いついてきた由香里が、智子の肩をポンと叩いて言った。
『そうだ…カズを連れて行ってやれ…』
更に秀行が言い…
『一緒に行け!』
『一緒に行くのよ!』
『一緒に行くんだ!』
『一緒に行くでごじゃる~!』
『一緒に行くポニョ~!』
政樹が…
雪絵が…
龍也が…
朱理が…
茜が…
他の兎神子の仲間達みんなが、智子を囲んで和幸と行く事を勧めた。
『私…そんな…そんな資格ない…だって…だって…私、カズちゃんに…』
智子がそう言って泣き出すと…
『忘れたのかい?君はいつだったか、僕にこう言ったね。誰に何を言われても良い、何をされても良い。僕の事が好きなのだと…
僕も同じだ。君の心が、もう僕になくても良い。君が僕を何とも思ってなくても、大嫌いでもかまわない。僕はトモちゃんが好きだ。大好きだ。トモちゃんの側にいられるなら、それだけで良い。』
『それじゃあ、ナッちゃんは?ナッちゃんの事はどうするの?』
すると、菜穂は何も言わず側により、智子の手を取り和幸の手を握らせた。
『ナッちゃん…』
『私からもお願い。カズ兄ちゃんを側に置いてあげて。カズ兄ちゃんが本当に好きなのは、トモ姉ちゃんよ。』
それだけ言うと、菜穂は二人の側を駆け離れて行き…
『カズ兄ちゃん、トモ姉ちゃんに優しくしてあげてね。幸せにしてあげてね。』
そう言って、満面の笑顔で手を振り、二人を見送り続けたのである。
拾里での日々…
小さな小屋を建て、和幸の為に食事を作り、着物を縫い、洗濯に掃除をし…
二人で岩戸屋敷に暮らす病人や障害を負った人々の世話をし続けた日々…
近所で自活する病人や障害を負った人々の手伝いもして…
とても静かで…
とても穏やかで…
山に囲まれ、何もない小さな里に、振り向けば和幸の優しい笑顔だけが、いつも眩しく輝いていた。
あの時…
美香を殺したのは自分だと思っていた。
美香を殺した自分に、幸せになる事、笑顔になる事を禁じていた。
自分は、笑ってはいけないのだと思い続けていた。
その自分が、いつの間にか笑っていた。
気づけば、満面の笑みを浮かべる自分に当惑してもいた。
そして、希美と出会った。
『チャンチャラカチャンチャン、チャンチャラカチャンチャン…チャンチャラカチャンチャン、チャンチャラカチャンチャン…』
和幸の腕に抱かれ、産まれて初めて目にする盆踊りに目を輝かせる希美の笑顔が、何度も脳裏を掠めてゆく。
身体が弱く、少し歩いただけで熱を出す希美は、自分で立って、踊りに混じる事は出来なかった。
それでも、皆が踊るのを前に、伴奏を口ずさみながら、楽しそうに手を動かし踊る仕草を続けていた。
『美香ちゃん、楽しい?』
智子が聞くと…
『あっぴ…あっぴ…』
希美は答える代わりに、自分が着ている法被と智子が着ている法被の襟裾を交互に握りながら、ニコニコ笑っていた。
『うんうん、美香ちゃん、法被よく似合ってるわ。可愛いわ。』
『お母さん、あっぴ……あっぴ…かーいー…』
『まあ、お母さんの法被も褒めてくれるの?』
『お母さん、あっぴ…あっぴ…かーいー』
『ありがとう。今度の収穫祭の時には、シゲさんの借り物でなくて、お母さんが縫った法被を着せてあげるね。』
智子がそう言うと…
『あっぴ…あっぴ…』
希美は一層嬉しそうな笑みを満面に浮かべて…
『チャンチャラカチャンチャン…チャンチャラカチャン…』
また、伴奏を口ずさみながら、和幸の腕の中で踊る仕草をし始めた。
『希美ちゃん…収穫祭を見ることできたのかな…
私の縫った法被、着る事できたのかな…
私の娘…
カズちゃんと私の愛の証…』
その愛の証は、もう直ぐこの世から消えてゆく。
自分を母と慕い、自分と和幸だけを頼りに生きていた小さな命は、もうすぐ消えてゆく。
自分の知らない所で…
自分が未だ此処にこうして生きてる事も知らぬままに、消えてゆく…
生き返らなければ良かった…
生き返らなければ、常世の国で希美を待つ事ができたのに…
智子は更に涙を溢れさせ、いつしか嗚咽を漏らしていた。
すると…
『トモちゃん、一緒に保育所に来て貰えないかな?』
伊織は、不意に何か思いついたように言った。
『保育所…赤ちゃん達のところ?』
智子が涙を拭いながら、首を傾げて伊織の方を向くと…
『何、これも治療の一つだよ。』
伊織はニッコリ笑いながら、智子に半纏を着せ、軽々と抱き上げた。

*画像は韓国出身女優のハラさんです。記事のイメージとして載せました。

 
コメント

戯歌

2020年05月03日 08時13分00秒 | 紅兎〜青鳥編


「男だっ~たら ~
一つにかける~
かけてもつれた 謎をとく~」
厨房の台所で、次郎吉が素っ頓狂な声で歌い出すと、洗い場を手伝う平次は、側でニコニコ笑って聞き入る琴絵と反して不機嫌であった。
「誰がよんだか~
誰がよんだか~
銭形平次~
花のお江戸は 八百八棟~
今日も決めての~
今日も決めての~
銭が~とぶ~」
一番歌い終え、琴絵が満面の笑みで手をパチパチ鳴らすと、次郎吉はニィッと笑って、また見事な包丁捌きで魚を捌き出した。
そしてまた…
「やぼな十手は~
みせたくないが~
みせてききたい こともある~」
次郎吉が得意満面の顔で歌い出すと~
「やめろ!やめろ!その歌はもうやめだー!!!」
平次が溜まりかねたように、怒鳴り声を張り上げた。
ただでさえ、養生所を出てから平次は機嫌が悪い。
事もあろうに、ドブと次郎吉が彼の目の前で智子を口説くような真似をして見せたからだ。
平次にとって、智子に指一本触れる事は万死に値する程許し難い事であった。何故なら、智子は和幸の大切な人だからだ。
平次は、和幸に憧れていた。
忍び術でも拳術でも学べば数日で達人の域を越し、歌舞音曲に秀で、萬の書物を一晩で読破して諳んじる。
文武両道…
その上、女と見紛う程美しい顔立ちをしている。
男として欲しいものを全て兼ね備えていながら、一つもおごる事なく、誰にでも優しげな笑みを傾ける。
平次は、自分には何一つ持ち合わせていないものを持つ彼のような男になりたいと願っていた。
その和幸が大切にするもの、愛するものは、命を百回捨てても良いほど掛け替えのないものであった。
それを、事もあろうに品格のかけらもない、ゴロツキのような男二人が智子を狙って恋の最当てをしている。
『貴様達には、仙さんがお似合いだぜ!』
その仙に、養生所を出るや否や何故か平次も捕まった。
『ちょいと、平ちゃんや。洗い場を手伝ってくんないか?』
『えっ!俺が?』
『今日は、辰ちゃんがみーんな保育所にかっさらっちまったんで、人足らないんだよ。』
『いや、俺は…』
平次は、ドブと次郎吉とは肌が合わず、仙が頗る苦手なのだ。
何とか逃げ出したかったのだが…
『コトちゃんや、この前、包丁の捌き方を習いたがってたね。』
『はい!』
声をかけられ、琴絵は忽ち目を輝かせた。
平次とは逆に、琴絵は料理でも裁縫でも何でも上手い仙に憧れていた。
『そうそう!コトちゃんが、北の楽園とやらの着物が好きだって言うから、あたい、仕立ててやったんだよ。』
『まあ!』
『後で、髪も北の楽園風に結ってあげるよ。』
『ありがとう!』
そこへ…
『調理場に来たらな、俺っちの刺身を食わせてやるぜ。今日釣った魚の一番うめえ所だけを切り取ってな。』
『おいらの肝吸いも振る舞ってやらあ。』
次郎吉とドブが、愛想よく言ったのが決め手になった。
琴絵は、いろんな男の子の遊びを教えてくれるドブと次郎吉の事も大好きなのだ。
『おいらの肝吸いと次郎吉の刺身とどっちが美味えか判定してくれ!』
『勿論、俺っちの刺身にきまってらあ!こいつは、釣りも下手なら、料理はド下手何てもんじゃねえ。』
『何だと!よっしゃー!コトちゃんの肥えた舌でおいらの料理の腕前を証明してやらあ!そいでよ、おいらが勝ったら、コトちゃんはおいらの嫁さんだあ!』
『なーに言ってやがる!コトちゃんが俺っちの嫁さんになる事は…』
二人が此処まで言うと、すかさず仙が二人の耳を引っ張り上げ…
『アッ!イタタターーーーーッ!!!』
『イッテェーーーーーーー!!!!』
『良いかい、コトちゃん。この二人はあたいのもんだからね。いくら良い男だからって、手出したら承知しないよう!』
悲鳴を上げる二人の間から、琴絵をギロッと睨み据えながら言った。
『はーい。承知してまーす。』
琴絵がクスクス笑いながら答えると…
『そうだよね。コトちゃんには、平ちゃんって言う素敵な人がいるんだもんね。他の男何か目えないわよね。
ささ…
あたいさ、北の楽園の料理も少し調べてみたんだよ。』
『まあ!』
『食べてみたいかい?』
『うん!』
『よしよし、後でこしらえてやるよ。すっごく辛いんだよー。』
と、言うわけで…
平次は来たくもない仙の牛耳る厨房に、琴絵が釣られるままに連れて来られてしまったのである。
その上、次郎吉は聞こえよがしに、この歌である。
平次は、この歌が大嫌いであった。
屋敷で誰かが歌い出すと、露骨に不機嫌になるのだ。
「どうして?素敵な歌じゃない。私、この歌大好き。だって、平次兄ちゃんの歌ですもの。」
何を怒ってるのかわからないという風に、不思議そうに首を傾げる琴絵は逆に頗る上機嫌であった。
調理場に来て早々、可愛いチマチョゴリを着せて貰い、髪型も北の楽園と呼ばれる異国風に結い上げて貰ったからである。
その上、たった今、キムチとチャンジャと言う、北の楽園で食されていると言う漬物も食べさせて貰っていた。
「そーだよなー。これ、良い歌だよなー。ドブの作詞作曲なんだぜ。」
次郎吉は、平次が不機嫌な理由を百も承知で、いかにも理解できない、信じ難いと言う風に琴絵に言うと…
「まあ!そうでしたの!」
「そうさあ。こいつ、釣りもド下手なら料理もからっきしだけどよ、粋な歌を作るのだけはうめーんだ。
平次の歌もなかなかなもんだろ?」
「うん!」
「もっと歌って欲しいか?」
「うん!」
琴絵が大きく頷くと、次郎吉はまたも素っ頓狂な声を出して歌い出した。
「悪い奴らにゃ~
悪い奴らにゃ~
先手をとるが~
恋のいろはは見当つかぬ~
とんだことさと~
とんだことさと~
にが笑い~」
平次はプイッとそっぽを向くと、苦笑いどころかぶんむくれになり、他の調理場を手伝っていた者達は一切に爆笑した。
朧山裏手の奥深く、隠里の入り口に構えられた玖玻璃の屋敷を、人は江戸屋敷と呼ぶ。
当初は、小石川の辺りに建てられた事から、小石川屋敷と呼ばれていたが、程なく今の名称で呼ばれるようになった。
そう呼ばれるようになったのは、特に大きな意味はない。
川沿いに建てられた、隠里の入り口となる屋敷…くらいの意味である。
玖玻璃自身は、屋敷の名称に拘りがなく、単に屋敷と呼んでいた。
隠里の人々や屋敷の住人達も、大概、単に屋敷と呼んでいる。
屋敷を名称で呼ぶのは、主に目明組の少年達である。
中でもドブがこの名を気に入っていた。
山奥深くに建てられた見るも絢爛豪華な花の江戸屋敷…
山を降り谷間住人の子供達と遊んでは、そう嘯いて大袈裟に話して聞かせるのが大好きなのであった。
ある日。
ドブが余りに江戸屋敷の話をド派手に聞かせるので、目を丸くして聞き入る谷間の子供達は、実際に屋敷がどれだけ大きいのか尋ねた。
すると…
『江戸屋敷がどんなにでっけえかって?そりゃあよう、おめえ、谷間の村一つまるまる入える程よ。』
と、答えて、谷間の子供達の度肝を抜かせた。
それに気をよくしたドブは、更に大風呂敷を広げ出し…
『何たって、屋敷の中にまたまたでっけえ屋敷がずらりと建ちならんでな、どれもこれも、それはそれは綺麗だの何のって…
その屋敷の数たるや、聞いて驚け叫けよ!
何と八百八棟もあるんだぜ!』
一方…
平次は、生真面目一本、嘘が大嫌いな男である。
側で聞いていて我慢ならず…
『おい!ドブ!変な嘘を教えるな!』
と、頭から湯気出して怒ったが…
『そうそう、花のお江戸は八百八棟だぜ!』
と、次郎吉が言い…
『でもって、平次が毎日、銭飛ばして遊んでらあ!
今日も決めての、今日も決めての、銭が飛ぶってなー!』
ますます、平次が怒るのを面白がって、他の目明組の少年達や屋敷の子供達も囃子たてて爆笑した。
すると、何を思ったのか…
『男だったら ~
一つにかける~
かけて~もつれた~謎をとく~
誰がよんだか ~
誰がよんだか~
銭形平次~』
と、ドブが突然歌い出したのが、この歌だったのである。
以来、ドブの歌が屋敷でも谷間でも大好評となり、事ある毎に…
特に、嫌がる平次の顔を見ては、声を上げて歌い出すようになったのである。
しかし、今日は…
次郎吉は、琴絵には愛想良く笑って歌い聞かせながら、目線は心配そうにドブに向けていた。
「ドブッ!ほら、ドブッてば!」
次郎吉の捌く魚を、手早く次々に調理してゆきながら怒鳴りつける仙の声も上の空…
卓上に並べる筈の碗と皿を抱えたまま、ぼんやり養生所の方を見つめていた。
勿論、次郎吉にはその理由がわかっていた。
智子の事が気になっての事…
その思いは、次郎吉もおなじであった。
二人は、昏睡状態で担ぎ込まれて来た時から、智子に一目惚れであった。
平次達、鱶背本社の目明達から話には聞いていたが、実際どんな少女なのか、二人は全く知らなかった。
ただ、何処か憂に満ちた顔で眠る智子を見ていると、胸の奥底が熱くなり、抱きしめてやりたい衝動に駆られたのだ。
呑舟と伊織が五刻に及ぶ手術をしている間中、二人は井戸の冷水を浴び続けて成功を祈願し続けた。
その甲斐あってか、命を救う事は不可能、半ば生態実験に近い感覚で行われた五十数箇所に転移した悪性腫瘍は無事全て摘出。
半月後には、意識も戻った。
身体も少しずつ回復し、多少は歩けるようにもなった。
しかし…
身体の方は回復しているのに、顔は見る度にやつれているのが気になった。
聞けば、悪性腫瘍の大元は子袋にできていたと言う。
真っ先に摘出されたのも子袋で、子供を産む事はできなくなってしまったと言う。
だから、何だと言うのだろう…
子供を産めないくらい、どうって事ないではないか…
自分で産み出し育てる事が出来なくとも、此処にいれば多くの子供達の喜びや励みになれる。
みんな、智子の事が大好きなのだ…
何より…
二人は、智子の事は知らなかったが、和幸の事はよく知っている。
名家の生まれと言われても信じてしまいそうな程、気品があって美しい男…
何でもできて、何でも知っていて…
聞けば、周恩来と言う異国の王様みたいな人に息子にならないかと誘われたとも聞く。
だのに、一つも偉ぶる事がなく、いつも親しく言葉を交わし、聞けば何で教えてくれる男であった。
その彼が、智子と言う女性をどれ程愛していたか…
多くを語って聞かされた事はなかったが、たまに智子の話題が上ったときの彼の顔と話し方を見れば、愛情の深さはよくわかった。
風の噂だが…
智子が死んだとされた時…
あの和幸が酒に溺れ、酔ったまま何処かへ去り、長い事行方知れずになったとも聞く。
子供なんてできなくて良い…
何もできなくても…
寝たきりでも…
『おまえが生きていると知れたら、和幸がどんなに喜ぶ事だろう。和幸の為に生きてやってくれ…』
二人は、智子の顔を見ては、いつも喉元まで同じ言葉が出かかっていた。
『それに…それに…』
次郎吉は二番も歌い終え、手を叩いて喜ぶ琴絵に満面の懐っこい笑みを浮かべて後ろを向くと…
『トモちゃん、ドブの奴もな…おめえに惚れてるんだぞ。』
心の中で智子に呟いた。
次郎吉は、ドブを弟のように思っていた。
黒兎時代…
泣き虫で、いつもいじめられて泣いているドブを庇っていたのは次郎吉であった。
ドブは、次郎吉に懐き、日がな一日後を追い回していた。
こいつを守ってやれるのは、自分だけだと思っていた。
それが、目明組に入り武術を仕込まれるや、ドブの方が瞬く間に腕を上げ、次郎吉を圧倒するようになった。
いつの頃からか、ドブが次郎吉を守るようになった。
それでも、兄のように慕い、懐く事に何も変わらなかった。
戦闘の場ではドブが次郎吉を守ったが、日常ではやはり兄貴として次郎吉がドブを見守り続けていた。
そのドブが恋をした。
それも、二人が心底憧れた男の女にである。
仕方ない…
何故なら、自分だって惚れてしまったのだ。
高嶺の花とはこの事だろう。
和幸と言う男を知る女が、自分達になど振り向く筈がない。
どんなに惚れたって、実るわけがない。
それでも…
『俺は良い…俺の事なんか、何も思ってくれなくて良い…』
ただ…
ただ…
智子が死ねばドブも死ぬ。
ドブとはそう言う男だ…
その事だけは、知って欲しい…
次郎吉は、また一つ大きな溜息をつくと、唇を噛んで包丁を握る手を留めた。
すると…
「お兄ちゃん…」
仙は、そっと次郎吉の肩に腕を回し…
「お仙…」
振り向く次郎吉に、饅頭に目と鼻と口をつけたような顔いっぱいに笑みを浮かべて大きく頷いて見せた。
そして…
「やいっ!ドブッ!」
「痛てててててーっ!!!」
ドブは、不意に頬を抓りあげられ声を上げた。
「全く!いつになったら、皿と腕を並べてくれるのさ!」
仙は言いながら、ドブのもう片方の頬も抓りあげた。
「うわっ!お仙!やめろ!やめてくれ!痛え!痛え!痛えぇーーーーっ!!!」
悲鳴を上げるドブを、仙は頬を抓り上げて空高く持ち上げたかと思うと、不意にその手を離してドスンと床に落とした。
尻餅をついたドブは、顔も腹も饅頭のような巨体の仙を見上げる。
こうして見上げると、女と言うより岩山のようである。
「ドブ、そんなにトモちゃんの事が気になるのかい?」
ドブは答える代わりに大きく溜息をついて項垂れた。
「あたいもだよ。」
仙がオタフクとオカメを足して二で割ったような顔を何度も頷かせて言うと、ドブは意外そうな目で見返した。
「きっと、想像もつかないくらいの地獄を見て生きて来たんだろうね、可哀想に…」
仙はそう言うと、忽ち目を潤ませた。
元来、涙腺は弱いらしい。
「でも、大丈夫さ。あの子は一度死んで、もう一度生まれ変わる事ができたんだもの。
それに…
おまえさんみたいに良い男がさ、こーんなに大事だって思ってるんだ、元気になれない筈ないさね。」
「お仙…」
「さあ、早く碗と皿を並べておくれ。でもって、盛り付けが終わったら、あたいのこしらえた鯉こく、おまえさんが持っていっておやりよ。」
仙が何度も肩を叩いて言うと、ドブは大きく頷いて碗と皿を並べ始めた。
「それじゃあ、おまえ達。あたいはちょいと離れるから、此処を任せるよ。」
「任せるって…」
「お仙姉さん、どちらに…」
仙は、一度調理が始まれば片時も離れる事がない。
まして、命より大事な鍋がもうすぐ煮え上がろうとしている。
此処に来て三年、ひたすら仙と厨房を共にしてきた伝七と信五は、信じられないと言う風に目を合わせた。
「何処って…それを女に聞くのかい?ちょいともよおしちまってね…」
「成る程、クソですかい。」
と、横から口を出してきたのは、やはり、此処に来たからずっと厨房を共にしてきた佐七であった。
平次は仙が大の苦手であったが、同じ鱶背本社出身の目明三人は、琴絵と同様、仙に懐いていたのである。
「仙さんのクソなら、さぞかしどデカい…」
「バカッ!」
「うわっ!痛え!」
仙は思い切り佐七の頭をなぐりつけると、そそくさを厨房をでて廊下の影に隠れて懐のものを取り出した。
それは、真っ二つに折れた櫛と簪であった。
此処に担ぎ込まれたドブと次郎吉が、全身に銃弾を受けて虫の息の中、大事に抱きしめていたのが、これであった。
やはり、満身創痍で担ぎ込まれた新三郎と言う男から、それは仙の為に軽い財布を逆さに振って買った物だと聞かされた。
オカメだのオタフクだのと悪態ついては、追い回す仙から逃げ回っていて筈の二人が、こっそり彼女の為にこんなものを買っていたのだ。
『ドブ、お兄ちゃん…』
仙は、折れた櫛と簪をグッと抱きしめると、さっきまでドブが目線を向けていた方角を見つめた。
あの子達が恋をしている。
子供だとばかり思っていたあの子達が…
智子を…
あの子達が一途に思いを寄せてる子を…
元気にしてやりたい…
何もなくても…
何もできなくても良いではないか…
命と言う宝があれば、他に何もいらないではないか…
生きている事に価値がある…
ただ、生きている事そのものに大きな意味がある…
「仙…」
不意に声をかけられ、仙が振り向くと、玖玻璃が満面の笑みを傾けて立っていた。
「これはこれは、大奥様…」
仙が思わず畏って平伏すと…
「もう。何度言えばわかって貰えるの?大はいらないって言ってるでしょう。」
「でも…」
「そうね。江戸屋敷の大奥様…ドブが、私を女王か女神のように崇めてつけた大仰な呼び名ですものね…仙には、大切な呼び名でしたね。」
「あ…いえ、そんな…」
玖玻璃は、岩山のように巨体な仙が身を小さく縮こめて頬を赤くすると、クスクス笑い出した。
「智子の事、心配してくれているのね。ありがとう。」
仙は、答える代わりに唇を噛みしめ、また涙ぐんだ。
「大丈夫よ。智子は大丈夫…」
「でも、大奥様…あの子…あの子…」
「生きる事に意味を感じなくなってしまっている。自分が産まれて来た事、存在する事そのものを無意味なものに思ってしまっている。いいえ、忌まわしい事に思ってしまってるのかな?」
「不憫でなりません…女だから…あの子の気持ちがわかるから…それに…」
「ドブと次郎吉が、産まれて初めて愛した子だから…」
玖玻璃が言うと、仙は小さく頷いて見せた。
「智子は幸せな子。皆に大切に思われ、愛されている。その事を実感できたなら、きっと、本当に元気になれるでしょう。今は、その時の訪れを信じて、静かにあの子を見守っていてあげましょう。」
仙がまた、折れた櫛と簪を抱きしめて涙ぐむと、玖玻璃は優しげな笑みを満面に浮かべて、その太く大きな肩を抱きしめてやった。
*画像は韓国出身女優のハラさんです。記事のイメージとして載せました。
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青鳥

2020年05月03日 05時43分00秒 | 紅兎〜青鳥編


「おい!哺乳瓶はまだか!哺乳瓶!哺乳瓶を暖めるのに一体どんだけ時間かけりゃー気が済むんだ!赤子達が餓死するぞ!」
「哺乳瓶!哺乳瓶!哺乳瓶ーーーー!!!」
「哺乳瓶が足りねーーーーー!!!!」
保育所は、その日も朝から戦場状態であった。
いや、一人の男が、戦場にしてしまってるのかも知れない。
三年前…
何処からとなく、主水が大勢の負傷した少年達を隠里に担ぎ込んできた。
自らを目明組と名乗る彼等は、社の黒兎であったと言う。
黒兎と言えば、元々は、白兎と呼ばれる少女達に種付けを仕込む為の練習台として囲われた少年達である。それが、いつの頃からか、白兎達同様に男色を好む社領の男達の相手をするようになっていた。
当然、色事には長けていても、日常生活の仕事は殆どできない者が多い。
玖玻璃は、彼等の傷が癒えたら、赤子を教えるように一から教えなくてはならないなと思っていた。
ところが、彼等は何処でどんな生き方をしてきたのであろう…
掃除に洗濯、調理に大工仕事、何でも器用にこなして、すぐに隠里の戦力となった。
傷が癒えて回復すると、早々に屋敷を出て自活を始め、他の里人達と共に野良仕事をする者もいれば、山菜積みを生業とする者もいる。
鍛冶場や工房で働く者もいるかと思えば、山林に分け入り林業に勤しむ者もいる。
皆、一から教えるどころか、むしろ、その日から陣頭指揮をとり、何某かの病気や障害を抱える里人達を支える存在になっていた。
そして…
屋敷に残り、子供や病人、成人に達しても自活できない重度の病人や障害者達の世話をする世話人達の陣頭指揮をとっているのが、辰三であった。
辰三は、かねてより刻限に喧しい事から時刻の辰と呼ばれ、また、猪突猛進なところから、すっ飛びの辰三とも呼ばれていた。
その彼が、屋敷の世話人達の指揮を取り始めるや…
調理に洗濯、介護や育児何でもこなすのは結構なのだが…
刻限に喧しいどころか、住人達にも世話人達にも凄まじい鬼教官振りを発揮して、今では時刻の辰ではなく、地獄の辰と呼ばれるようになっていた。
この日も、腹を空かせて泣き止まぬ赤子達に、哺乳瓶両手にてきぱき授乳させながら、哺乳瓶を温めてる世話人達に怒鳴り散らしていた。
「おいっ!哺乳瓶!哺乳瓶!哺乳瓶!グスッ!ノロマッ!マヌケッ!さっさと、哺乳瓶持ってこーーーーーいっ!!!!!!次郎長、大政、小政が腹空かせて泣いてるじゃねーかーーーーっ!!!」
辰三はまた、声を張り上げ泣き出す三人の赤子の側で怒鳴り声をあげていた。
側では、何を怒られたのか、赤子達の世話を手伝う子供達三人が、メソメソと泣いている。
すると…
「はいっ!哺乳瓶だよ!」
何処からとなくヤケ糞な声と同時に、熱湯ミルクの詰め込まれた哺乳瓶が飛んできて、辰三の頭に直撃した。
「やいっ!てめえっ!何しやがる!」
辰三が頭を抱えて振り向くと…
「ほら、もう一つ哺乳瓶!」
また、熱湯ミルクの詰め込まれた哺乳瓶が、辰三の眉間に直撃した。
「うわっ!痛え!」
辰三が思わず頭を抱えると…
「ったく!さっきから黙ってりゃー、図に乗りやがって!!!!」
鍋で哺乳瓶を温めていた少女が躄って詰め寄りながら、堪忍袋の尾が切れたように食って掛かってきた。
「こっちだってね!必死に急いでやってんだよ!それを何だってんだ!一人威張り散らしやがって!だったら、辰三兄ちゃん一人でやれってーの!!!!」
少女はまた喚き散らすと、今度は鍋に入っている哺乳瓶五本、纏めて辰三の頭目掛けて投げつけた。
「うわっ!春ちゃん、やりやがっな!」
今度は、辰三が春に怒鳴りつけようとすると…
「春ちゃんの言う通りよ!全く、辰三兄ちゃんは、どうしてこう毎日毎日みんなを怒鳴るの!」
側で赤子のオシメを替えていた、襷掛けの少女が辰三に食って掛かった。
すると…
「いや、あの、その…」
辰三は、それまでの剣幕と打って変わって口を噤んで怯みだした。
どうも、この少女には弱いらしい…
「全く…闇雲に怒鳴れば良いってもんじゃないでしょう。辰三兄ちゃんが、こんな人だと思わなかったわ!昔は優しいお兄ちゃんだったのに…」
襷掛けの少女はそう言うと…
「あの…でもな、次郎長、大政、小政の奴、さっきから腹空かせて泣きっぱなしだからな…早くミルク飲ませてやらないと…」
辰三は、しどろもどろし始め…
「違うわ!次郎長ちゃん、大政ちゃん、小政ちゃん、お腹空かせて泣いてるんじゃない!辰三兄ちゃんが、忠治君、円蔵君、文蔵君を怒鳴る声に驚いて泣いたのよ!」
春と呼ばれた少女が、更に詰め寄るように躄って詰め寄った。
側では、さっきから泣いている三人の赤子達と三人の幼い子供達が、一層声を上げ出した。
すると…
「怒りん坊さんは、だーれだ。」
何処かまの抜けた声がすると同時に、赤子達も幼い子供達もぴたりと泣き止んだ。
「よしよし、良い子良い子。もう、怖くないから大丈夫よ。」
声の主がそう言って赤子達を交互に抱き上げると、赤子達は忽ちケラケラと笑い出した。
赤子は三人とも生まれながらに盲目である。声の主の顔を見る事はできないが、独特の話し方と温もりで、すぐに誰なのかを見抜いたようである。
辰三に怒鳴られて泣いていた三人の幼い子供達は、手振り身振りで、何かを必死に訴えている。彼等は、耳が聞こえず喋れないのだ。
「うんうん、忠治君も円蔵君も文蔵君も、一生懸命、赤ちゃん達にミルクあげていたのね。偉い偉い。」
赤子達を交互に抱いた少女がそう言って、今度は幼い子供達を交互に撫でてやると、幼い子供達も赤子達同様、笑い出した。
少女には、ほんの少し言葉をかけてやったり、触れてやるだけで相手を笑顔にさせる何かがあるらしい…
「早苗さん!」
振り向く辰三もまた、忽ち目尻を下げて恵比寿顔になった。
「辰三さん、あんまり怒りん坊さんになったら駄目よ。私、怒りん坊さんの辰三さんより、優しい辰三さんが好き。本当は、辰三さん、とーっても優しいんですものね。」
早苗がそう言ってニコッと笑いかけると…
「いや、まあ…えへへへ…」
辰三は、更に目尻を下げ、鼻の下まで伸ばして、一緒に笑い出した。
それを見て…
「まあ!辰三兄ちゃんったらまた!」
襷掛けの少女は、ムッと眉を顰めるや、辰三の尻っぺたを思い切り抓りあげた。
「うわっ!痛え!」
辰三が思わず声をあげると、それまでピリピリしていた空気が一変し、周囲にいる者達はクスクス笑い出した。
ただ、春だけはまだ怒り冷めやらぬようで、頬を膨らませて辰三を睨み据えている。
「あらあら、春ちゃんも、もう怒らない怒らない。」
早苗が、春の前に蹲み込んで言うと…
「私、もう嫌!辰三兄ちゃん何か大っ嫌い!此処出て行く!明日から、屋敷の外で一人で暮らす!」
春はそっぽ向いて言った。
「おいおい、一人で暮らすって、おまえ…」
忽ち辰三が慌て出すと…
「なーに?私だって、もう十三歳よ!立派な大人よ!一人で立派にやって行けるんですからね!」
「いや、あのその…でも、おまえは、その…」
「あーっ!私が歩けないから、一人でやって行けないと思ってるのね!馬鹿にしてるのね!」
春はまた、食ってかかるように言った。
そこへ…
「春ちゃん、私も一緒に暮らして良い?」
襷掛けの少女も、追い討ちをかけるように言った。
「おい、花ちゃん!まさか、冗談だろう!」
今度は、辰三は本当に顔色変えて慌て出した。
「本当よ。どーせ、辰三兄ちゃんは私なんかより早苗さんの方が好きみたいですからね。
ね、春ちゃん、一緒に暮らさない?」
「良いわよ。お花姉ちゃんも、こんな怒りん坊さんとはさっさと別れて、私と一緒に楽しくやりましょう。」
「そーしましょ、そーしましょ。と、言うわけなので、辰三兄ちゃん、早苗さんとお幸せに!」
「おーい!花ちゃん、待ってくれよ!おーい!悪かったよ!俺が悪かったから、もう勘弁してくれよ!」
辰三は、花と春が二人揃って本気で出て行く素振りを見せると、いよいよ顔面蒼白になった。
早苗は、そんな三人のやりとりを唇に人差し指当ててどうしたものかなと見続けた後…
「花ちゃん、春ちゃん、もうそのくらいで、辰三兄ちゃんを許してあげて。」
本当に部屋を出ようとする花と春に、ニッコリ笑って言った。
「辰三さんの事、そんなに怒ったら可哀想。だって、辰三さんはまだ子供じゃない。」
すると…
「えっ?子供…」
「辰三兄ちゃんが?」
「何だって?」
春、花、辰三が、揃ってあんぐり口を開けてポカンとするや…
「そーっかー。辰三兄ちゃん、まだ子供だったんだー。」
いつの間にやって来たのか、赤子の次郎吉、大政、小政を交互に抱き上げながら、美香がクスクス笑って言った。
「辰三兄ちゃん、まだ子供なんでちゅってー。それじゃあ、許ちてあげないとねー。」
美香に交互に抱き上げられた赤子達も、それを聞いてケラケラ笑い出し…
「そりゃーねえだろう!俺がまだ子供って…俺、早苗さんより歳上じゃねえかー!おーい!」
辰三が慌てふためくや…
「そっか、そっか…辰三兄ちゃん、早苗さんに子供扱いか…可哀想に、おーよちよち。それじゃあ、許ちてあげまちょーねー。」
花がそう言って、辰三の側に戻って頭を撫で撫でしてやるのを合図に、周囲からどっと爆笑の渦が巻き起こった。
「ところで、トモ姉ちゃんは?」
一頻りの騒ぎが治ると、春はまた哺乳瓶を温めながら、早苗に尋ねた。
「トモ姉ちゃんねー」
早苗は、暖まった哺乳瓶を適温に冷まして、赤子の口に含ませてやりながら口を噤んで俯いた。
「やっぱりまだ…」
春も、そう呟くと、また哺乳瓶を温めながら俯いた。
智子の気持ち、春にはよくわかっていた。
春の楽しみは、大好きな右門に御結びを握る事であった。
自分の握った御結びを、大口開けて頬張る右門の顔を見る事…
日頃、むっつり黙り込んで殆ど人と話さない事から、むっつり右門も呼ばれている彼が…
『うまい!春ちゃんの御結びが一番うまい!』
満面の笑みで、一言だけそう発するのを聞くのが一番の楽しみであった。
素兎だった春は、右門が暗殺し、中国の間者とすり替えた宮司の社の素兎であった。
右門は、春が素兎から解放されると、娘として引き取り育てる事にした。
春は、右門を父親として慕うのではなく、幼いながらに恋していた。
何があったのか、一度も結婚も恋もした事がないと言う右門の為に、素敵な女性になりたいと思っていた。
大人になったら右門の嫁さんになる。
右門の嫁さんになって、彼が大好きな御結びみたいな顔した赤子を沢山産む…
それが、春の夢であった。
しかし…
神漏兵の銃撃で瀕死の重傷を負っていた所を隠里に運ばれ、一命を取り留めた。
目を開ければ、共に担ぎ込まれた伝六と千代が手を握って見つめていた。
聞けば、右門も火盗組の平蔵なる者に救われ、別の場所で匿われて療養していると言う。
今は諸事情あって合わせる事ができないが、大人になるまでには会えるようになると言われた。
嬉しかった。
いつかまた、右門に会えるのだ。
大人になったら右門に会える。
その時には親子ではなく、男と女として会いたい。
娘としてではなく、女として愛して欲しい。
そして、結婚して彼の子を…
しかし、その夢を無残に打ち砕く現実を知った。
春は、子供が産めない身体になっていた。
七つの時から、日に何十人もの男達に凌辱され続けてきた。
乱暴に小さな脚を広げられ、倍もある身体でのしかかられ、股関節を痛めつけられまともに歩けなくなった。
陰部の筋肉をボロボロにされ、始終垂れ流し状態にもなった。
それでも、自分と同じ状況で捨てられ、先に右門に拾われていた千代は、伝六と恋仲になっていて、幼いながらにいつか夫婦になろうと約束を交わしていた。
自分も、こんな身体でも、いつかは女として右門に愛される人となろうと思っていた。
なれると、伝六と千代も励まし、応援してくれていた。
こんな身体でも、いつか女として右門に愛される大人になりたい。結婚したい。子供を産みたい。
春の夢であった。
しかし…
七つの時から絶え間なく凌辱される日々は、春の小袋を無残に破裂させていたのだ。
同時に、生理が始まるはるか前に小袋を破壊された春は、大人の女の身体にもなれないと言う。
乳房が膨らむ事もなければ、女らしい身体になる事もない。
背丈も一生、子供の時のままだろうと言われた。
銃撃で吹き飛ばされた時、ぼろぼろの股関節が微塵に砕けた時の激痛を思い出した。
ここに担ぎ込まれ、全身麻酔で眠らされるまで、何昼夜も続いた地獄の激痛の中…
一層、死んでしまいたいと何度思ったか知らなかった。
『お願い!殺して!殺して!痛いよー!痛いよー!』
泣き叫ぶ春の手を、隣でやはり瀕死の千代が握り…
『右門さんと結婚するんでしょ、右門さんの赤ちゃん産むんでしょう。』
か細い声をかけてくるのを聞き、必死に生きたのだ。
だのに…
『嘘つき!千代姉ちゃんの嘘つき!伝六兄ちゃんの嘘つき!私、子供を産めないんじゃない!大人にもなれないんじゃない!二人とも、それ、ずっと前から知ってたんじゃない!だのに…だのに…私を騙して…二人とも大っ嫌い!』
春は、兄姉と慕っていた伝六と千代と二度と口をきかなくなった。
一緒に暮らそうと言う二人の誘いもむげに断り、一人屋敷に残った。
『何で助けたのよ…私なんか何で助けたのよ…あの時、何で死なせてくれなかったのよ…』
春は、一人部屋に篭って泣き続けた。
そんなある日…
『そんなに死にてえのか?』
不意に部屋を尋ねるなり、そう言ってきたのは辰三であった。
『うん。』
春が涙目で頷くと…
『なら、俺が殺してやろう。』
『本当?』
『ああ、本当だ。ある者にとって、生きる事それ自体が地獄な奴もいる。そいつが死を望んだからと言って、誰にも責める資格はねえ。
俺が一思いに殺してやる。眠るように、死んだ事にも気づかぬように、楽に死なせてやる。』
辰三が、満面の笑みで答えて言った。
いつも怒鳴り散らし、怒った顔しか見せた事がない彼からは信じられない優しい笑顔であった。
『ありがとう。』
春もまた、ここに来て初めての、満面の笑みを返した。
すると…
『ただ、死ぬ前に一度だけ、付き合って欲しい所がある。来てくれるか?』
辰三はそう言うと、春に背中を差し出した。
『うん。』
頷く春は、言われるままに辰三に背負われると、ある部屋に連れてこられた。
そこは、屋敷内にある八棟の建物のうち、養命舎と呼ばれる所であった。
そこには、屋敷に引き取られた子供達のうち、成人に達しても一人で暮らせない重度の病人や障害者達が暮らしていた。
多くの者達は、まともに自分で歩く事も、物を食べる事もできない者達であった。
殆ど一日を床の中で過ごし、箱車に乗せられ誰かに連れ出して貰わなかれば、外に出歩く事も出来なかった。
そんな彼等が、世話人達の乗せる箱車の中で、外の景色眺め、野に咲く花を愛でながら、満面の笑みを浮かべていた。
辰三は、春を背負って、そんな人々の中を無言で歩き続けた。
ふと見ると、まともに起き上がる事の出来ない少女を、若い女が、寝台のような箱車に乗せて、子守歌を歌いながら庭を歩いていた。
時折見つめ合う二人の笑顔は至福の笑みを交わしていた。
すると、一匹の蝿が、少女の方に飛んできた。
女は思わず蝿を叩き落とそうとすると、少女は突然泣き出した。
『殺あ…ないで…かあい…そうだよ…かあい…そうだよ…殺あ…ないで…殺あ…ないで…』
女は大きく頷き、満面の笑みで少女を抱きしめると…
『良い子、良い子…何て優しい子…産まれてきてくれてありがとう、生きていてくれてありがとう。』
と言いながら、何度も何度も頬擦りを続けた。
春が何となくぼんやり二人を見つめてると…
『清美さんは、元白兎だ。』
辰三は不意に呟くように言った。
『十歳の時、やはり黒兎だった実の兄英五郎様との種付けを強いられて産んだのがあの子…裕美さんだ。
英五郎様は、殺されそうになった裕美さんを連れて社を投げ出し、主水様に救われ忍となった。
清美さんは、英五郎様も裕美さんも殺されたと聞かされた時、死のうとした。だが、主水様が密かに二人とも生きてる事を伝えて、また、生きようと考えなおした。
面白半分に兄との種付けを強いる社の暮らしがどんなものか、言わなくてもおまえにはわかるだろう。
それでも、清美さんは必死に生きた。二十歳で兎を解かれたら、娘と暮らせる日を楽しみにな。』
春は、辰三の話す言葉を聞きながら、尚も愛しげに少女を抱きしめる女の姿をジッと見つめ続けた。
『清美さんにとって、裕美さんは青い鳥だ。この世で唯一幸せを齎してくれる青い鳥。青い鳥がいたから、生きる事ができたんだ。
右門さんにとっては、おまえがそうなんじゃないのか?』
『えっ…』
辰三は、思わず声を上げる春を背中から下ろすと、暫しその目をジッと見つめた後…
『右門さん、平蔵様に救われて早々、自害されようとしていたそうだ。目明組…紅兎達を革命に巻き込んでしまった責任を感じたな。だが、おまえが生きてる事を知って、思いとどまられたそうだ。
いつか、おまえと会い、共に暮らす日を楽しみに、もう一度生きる事を決められたそうだ。』
そう言って、また普段の彼からは想像つかない優しい笑みを満面に浮かべて、春の頬をそっと撫でた。
『おまえが死ねば、右門さんも死ぬだろう。』
『右門さんが…』
『そうだ。おまえは、右門さんの青い鳥だ。おまえが生きてるから、右門さんも生きて行ける。右門さんにとって、おまえは唯一人幸せを齎す青い鳥だ。それでも死にたいか?死にたいなら、俺が殺してやる。』
「何をぼんやり考えてるんだ?」
「えっ?」
春は、不意に声をかけられた方に振り向くと、またプイッとそっぽを向いた。
まだ、辰三に腹を立てているのがおさまってないようだ。
「智子さんも青い鳥だ。」
辰三もまた、皆の前では素直にならないのか、或いは春とはそう言う関係なのか、不貞腐れたように背を向けて言った。
「トモ姉ちゃんも…青い鳥…」
「人は皆、青い鳥だ。ただ、生きているだけで誰かを支え、幸せにする。だから、生きている事そのものに価値がある。
智子さんも、いつかその事に気づくだろう。おまえが、そうであったようにな。」
その時…
庭先でヨチヨチ歩きの幼児達と遊んでやっていた金太郎と結路が、何に気づいたのか首を持ち上げて満面の笑みを浮かべた。
「あ…あれ…あれ…」
聾唖の金太郎は、漸く発する事のでき始めた声を振り絞り…
「ねえ!見て見て!」
結路は、鼻をクンクン鳴らしてその匂いを嗅ぎながら、見えぬ目を皆の方に向けて指を指し示した。
次の刹那…
「わあっ!」
「まあっ!」
早苗と美香が思わず声を上げて、満面明るい笑みを溢し出すと…
「江戸女王様だあ!江戸女王様だあ!」
そこに居合わせた子供達は、一斉に歓喜の声を上げた。

*画像は韓国出身女優のハラさんです。記事のイメージとして載せました。


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初恋

2020年05月03日 04時50分00秒 | 紅兎〜青鳥編




「平次、コトちゃん。」
平次と琴絵は、伊織に目配せされると軽く一礼して去り…
「トモ母さん、また後でね…」
美香もまた、伊織に無言で目配せされると、その場を去って行った。
「それじゃあ、トモちゃん。」
伊織にうながされると、智子は無言で頷き、着物を脱いで仰向けに身を横たえた。
呑舟は、厳しい眼差しで智子の全身に手を当て、丹念に触診を始めた。
彼は、その人の身体に触れただけで、あらゆる病状がわかり、その見立てに狂いはないと言う。
少なくとも彼を知る者の中で、数十年に亘って診断を誤ったのも、治療を失敗したのも見た者はいない。
智子は、また天井に目を移した。
顔から始まり首筋の辺りを這っていた手の感触が、ゆっくりと胸元まで移動する。
脈の動き、内臓の働き、血の流れ…
自らの施した神業とも言える手術の経過を、注意深く観察しているのである。
智子は、老医師に身体中触れられる事も、二人の男に裸体を見られる事も、今更恥ずかしいとは思わない。
これまで、何百何千と言う男達に弄ばれ、猥雑な視線を浴びせられてきたか知れないのだ。
むしろ…
自分が生きてる事がまだ信じられず、この身体は誰か別人のもののような感覚にとらわれていた。
子袋にできたと言う悪性腫瘍は、全身に転移しており、手の施しようはないと思われていた。
本当なら、もう死んでいる筈であった。
それを、百合の報告を逐一受けていた呑舟と伊織は、必死に治療法を探り出し、智子を隠里に移して手術を行った。
半ば実験であった。
智子を治すと言うより、生きた人間の腑分けを目当てとしていたと言う方が正しかったかも知れない。
しかし、凡そ五刻に亘る手術に、智子は奇跡的に耐え抜いた。
その人を見れば、一目で身長体重を見抜く伊織の全身麻酔術が功を奏したのだとも言われている。
全身五十数箇所に及ぶ悪性腫瘍を尽く切除し、半月近く昏睡状態だった後、奇跡的に息を吹き返した。
呑舟の手が、小さな乳房に辿り着いた。
本当なら、この手術で失われていてもおかしく無かった乳房である。
生きているのが奇跡なら、この乳房が原型を残してるのも奇跡であった。
しかし…
「アッ…」
呑舟の指先が乳首に触れた時、思わず声を上げる智子は、生きてる奇跡とは別の事に思いを巡らせた。
『どうじゃ、智子。こうして思い人に見られながら抱かれるのも、なかなかなもんじゃろう。』
神漏兵達に凌辱される智子の顔を覗き込み、気色悪い笑みを浮かべる眞吾宮司の顔が脳裏を過ぎる。
『オーッ!オーッ!オーッ!』
榮太郎の三つ下の弟、椎三郎(しいさぶろう)が智子の上で獣じみた喘ぎ声をあげた。
色白華奢な二人の兄に比べ、ガタイの大きい椎三郎の太長いイチモツが激しく股間を抉る。
『アッ…アッ…アーーーーーッ!!!!』
その日も既に何十回貫かれたか知れぬソコは、白濁したものと血に塗れていた。
赤剥けになったソコの内側は、激しく擦られ続けて火に焼かれたように熱い。
まるで、焼鏝を突き刺し掻き回されているようだ。
『アァァーッ!アァァーッ!アァァーッ!』
智子は、神漏兵達に抑えられた手足を突っ張らさせ、腰を大きく浮かせながら、激しく首を振り立てて呻き続けた。
『オォォーッ!オォォォーッ!オォォォォーーーーッ!!!』
椎三郎は、智子の苦悶に歪む顔と呻き声に益々興奮したのか、股間を貫くモノを更に怒張させ、一層激しく腰を動かした。
もう何刻続けられているのだろう…
あと何刻続けられるのだろう…
椎三郎が五度目の絶頂を終えて漸く智子の股間から離れると、合間も置かずに、また別の神漏兵が股間のソコを抉り始めた。
『イギッ!イギッ!イギーーーッ!!!』
神経に釘を打ちつけるような激痛…
追い討ちをかけるように、未だイチモツの怒張おさまらぬ椎三郎が、今度は肛門を抉り始めた。
『ウゥゥゥーーーーッ!!!!』
智子はまた身を捩り首を振り立てて呻きをあげた。
しかし…
今更それを苦痛とは感じない…
四つの時から絶え間なく弄り回され…
七つの時から男のイチモツに抉られ続けている…
身を引き裂く激痛も慢性化すれば苦痛でなくなる…
ただの感覚でしかなくなるのだ。
むしろ智子の心を苛むのは…
『フフフフ…』
『クククク…』
榮太郎と一つ下の弟である美唯二郎(びいじろう)が、智子の乳房を乱暴に鷲掴み乳首を執拗に舐め回しながら、一点を見つめて猥雑な笑い声をあげた。
『フフフフ…』
『クククク…』
『フフフフ…』
『クククク…』
智子に群がる他の神漏兵達も、智子の足指をしゃぶり、全身を舐め回し、手に自分のイチモツを握らせながら、同じ方角を見つめて、共に猥雑な笑い声を上げた。
その視線の先には、犬のように四つん這いにされた和幸の姿があった。
『ほーれほれ、和幸や、しっかり見てやれよ。智子がたっぷり可愛がられて悦ぶ様を見ながら、おまえも存分に楽しむんだぞ。』
眞吾は和幸の顔を智子の方に向けて言いながら、イチモツを肛門に捻り込んでいた。
『グッ…グッ…グーッ…』
苦悶に満ちた目で智子を見つめながら、和幸は震える程両拳を握りしめ呻き声を上げている。
智子は思わず和幸から目を背けた。
すると…
『おまえもしっかり見ろ。おまえの惚れぬいた男が悦ぶ様をな。』
榮太郎は、智子の髪を鷲津噛むと、更に肛門を激しく抉られる和幸の方に顔を向けさせた。
『何、目を瞑ってるんだ!しっかり開けて見ろ!』
今度は美唯二郎が、智子の乳首を捻り上げながらどやしつけた。
『アァァーッ!』
恋…
暖かな温もりが恋だと言うなら…
安らぎが恋だと言うなら…
最初からそうだったのだと今は思う。
出会って早々、裸の懐に抱いて眠った時から恋をしていたのだ。
ただ、気づいていなかった。
いや、知らなかったのだ。
気付いたのは、温もりがときめきとなった瞬間…
知ったのは、激しい胸の痛みから…
そして、肌を重ね合うようになり確信となった。
和幸は、最初にお結びを持ってきてくれた日を境に、毎日食べ物を持ってきてくれるようになった。
最初は、お結びであったり、焼き芋であったり、実に素朴な食べ物から始まった。
その度に、和幸は智子に『綺麗だよ。誰よりも…』と言う言葉を告げて、恥ずかしそうに後ろを向いた。
智子は、食べ物より和幸の言葉が嬉しかった。
お腹より胸の中が暖かいものでいっぱいになった。
貰った食べ物は、食べるのがもったいなくてなかなか食べられなかった。
竹皮に包まれたお結びや焼き芋そのものが、和幸の言葉と笑顔に思えた。
食べてしまえば、それは消えてなくなる気がした。
それで…
『ねえ、見て。これ、カズちゃんに貰ったの…』
満面の笑みで言う智子は、和幸に貰ったものも殆ど仲間の兎神子達に食べさせてしまっていた。
優しさと温もりは…
独り占めする事で消えてなくなり…
分かち合う事で増える気がしていたから…
すると…
『トモちゃん、お願いがあるんだ。』
和幸は、その日も竹皮の包みを手渡すと神妙な顔をして言った。
『お願い?』
『僕、君の食べる顔が見たい。』
そう言って竹皮を開けると、その日はお結びではなくお餅が入っていた。それも、甘い餡子のついた餅である。
『あの…でも、その…』
『大丈夫、みんなにもちゃんとあげているから…』
和幸がそう言うと…
『本当だよ、トモちゃん。』
そう言って、同じ餅を美味しそうに頬張っていたのは、由香里であった。
『僕も…貰った…』
続けて喉から搾り出す声を出して行ったのは秀行であった。
『俺も貰った。』
『私も貰ったわ。』
雪絵と政樹も貰った餅を見せて言った。
亜美と早苗と茜も貰った餅を嬉しそうに見せた。
『一緒に食べよう。』
最後に満面の笑みを浮かべて言ったのは、その日も一人全裸を晒し続けていた美香であった。
由香里が大きく頷くと、そこにいた兎神子達は皆、一斉に相槌を打って見せた。
『さあ、食べて。美味しいよ。』
和幸が、自身も同じ餅を頰張りながらもう一度促すと…
『うん。』
智子も、漸く大きく頷いて餡子餅を頬張った。
美味しい餅であった。
この世にこんな美味しいものがあったのかと思った。
『どお?美味しい?』
『うん!美味しい!』
智子が言うと…
『良かった!』
和幸は少女のような顔いっぱいに嬉しそうな笑みを浮かべて見せた。
他の兎神子達も一斉に笑った。
ただ…
ずっと他の兎神子達にばかり食べさせて、自分では何も食べようとしない智子に胸を痛めていた由香里だけは…
『良かったね…本当に良かったね…』
そう言ってメソメソ泣き出していた。
そして…
『トモちゃん、綺麗だよ。食べて笑うトモちゃんの笑顔、最高に綺麗だよ。』
和幸はまた、あの言葉を智子に贈った。
その日から、和幸と智子が並んで食べる姿を見るのが、兎神子達の一つの楽しみになった。
それが高じて、皆で和幸が手に入れてきたものを食べるのが楽しみになった。
いつも重い空気が漂っていた兎神子達の部屋に、初めて明るい笑いが溢れるようになった瞬間であった。
ところで…
智子には二つ不思議な事があった。
和幸の持ち込む食べ物は、日に日に高価なものになった。
玉子焼き、昆布巻き、団子に練り切り、饅頭…
そんなもの、何処から持ち込んで来るのか…
どう見ても、由香里のように盗みを働いて持ってきたとは思えない。
それと…
日に日に持ち込む食べ物が高価になるにつれ、和幸が異様に美しくなるのも不思議だった。
元々、少女のように美しい少年であったが…
何処か妖しい艶っぽさが加わるようになった。
それと、時折、白兎の少女達を観察しては、彼女達…厳密には女の仕草や物言いを真似たり練習する様子も見られた。
彼が女性的な気質の人間でない事は知っている。
むしろ、種付け相手に男娼をさせられ始めた頃、毎日隠れて吐いていた彼は、誰よりも中身は男であった。
何をしてるのだろうと思った。
しかし、すぐに理由がわかった。
ある日…
男色の眞吾宮司に自らしなだれかかり、媚を売る和幸の姿を目撃した。
そればかりではない。
和幸は、自分から進んで着物を脱ぎ、脚を開き、眞吾宮司の怒張したものを咥える真似もしていた。
要するに、眞吾宮司の愛人になっていたのである。
智子は激しい胸の痛みを覚えた。
何か大切なものが胸の中で微塵に砕けてしまったような胸の痛みを覚えた。
和幸には、何も言わなかった。
目撃してしまった事、何も話さない事に決めた。
いつも通りに和幸の持ち込むものを皆と食べ、皆と笑い、そして肩を寄せ合って眠り続けた。
何も気付いていない振りをする事にした。
忘れる事にした。
忘れるようにした。
結局、忘れられなかった。
いつも、眞吾宮司に自ら身体を開き嬌声を上げる和幸の姿が脳裏を離れなかった。
そして、遂に堪えきれずにこっそり泣き出した。
誰にも知られぬよう、一人で隠れて泣いた。
少なくとも自分ではそのつもりであった。
しかし、見られていた。
『どうしたの?』
それも、一番見られたくない人に見られていた。
『カズちゃん…』
『また、榮太郎達に酷い目に遭わされたのか?宮司様に酷い事をさせられたのか?』
智子は何も答えず、ただ強く唇を噛みしめ、涙を流し続けた。
和幸もそれ以上何も聞かず…
『そうだったんだね…』
一言呟き大きな溜息をついた。
そして…
『トモちゃん、ごめん。』
『えっ?』
『嫌なものを見せてしまったね。本当にごめん…』
和幸は徐に後ろを向くと、それだけ言って無言になった。
智子に見られていた事を知ったからである。
しばし、沈黙が続いた。
和幸は両拳を握りしめ、肩を震わせていた。
『ううん…カズちゃんは悪くない。』
漸く沈黙を破った智子は、そう言うと後ろから和幸を抱きしめた。
『私こそ、ごめん。カズちゃんの気持ち、何も知らないで、本当にごめん…』
『僕の事…嫌いにならないで、くれるかな…』
和幸も漸く口を開いて言うと…
『カズちゃん、こっち向いてくれる?』
言われるままに振り向く和幸の顔を、智子はジッと見上げた。
和幸の目が涙に濡れていた。
『しゃがんで…』
智子は、また言われるままに和幸がしゃがむが早いか、思い切り唇を重ねた。
『トモちゃん…』
和幸が驚き目を向くと、智子は更に強く和幸の肩を抱いて唇を重ねた。
智子の舌が、和幸の口の中に入り込む。
二人の舌が絡み合うと、和幸も優しく智子を抱き返した。
言葉はなかった。
ごく自然に、智子は和幸に身を任せた。
和幸も、ごく当たり前に智子と肌を重ねた。
二人の着物が滑るように地に落ち、二人の顕な肌を月明かりが照らし出した。
重ねる唇の中で二人の唇が絡み合い、互いの口腔内を隅々まで味わい尽くすように探り合う。
甘い味がした。
和幸に貰った、どんな菓子よりも甘かった。
いつまでも味わい続けたかった。
しかし、二人の身体が次の事を欲していた。
和幸のモノが少しずつ膨らみを帯びると、智子のソコがしっとりと濡れている。
濡れる…
初めてのような気がする。
男達の流し込む生臭い欲望の塊以外で濡れたのは…
和幸は、重ねた唇を離すと、智子の首筋からゆっくりと舌先を這わせてゆく。
味わうようにゆっくり丹念に舐め回しながら、手は智子の殆ど膨らみのない乳房を揉み出した。
『アァ…アン…アン…アン…』
智子は赤子が甘えるような声をあげた。
声をあげると言うより、自然と漏れたと言うべきか…
『カズちゃん…もっと…もっと…ソコ…ソコ…』
和幸の舌先が、それまで優しく摘む指先で転がしていた乳首に達した時…
智子もまた、和幸の身体を舐め弄りながら、強請るように求めた。
『トモちゃんも…』
そう言って和幸が舌先と手の動きを止める事なく智子の目を見つめると、智子も和幸の目を見返し、二人はニッコリ笑った。
暖かかった。
人肌がこんなにも暖かいものだとは思わなかった。
互いに乳首を舐め、咥え、吸い合いながら、手は次第次第に相手の下腹部に向かってゆく。
時がゆっくりと流れてゆく。
いや、既に止まっていたのかも知れない。
『アンッ!』
和幸の手が股間に達した時、智子は和幸の乳首から口を離して思わず声をあげた。
『濡れているね、良かった。』
『良かった?』
智子が首を傾げると…
『うん。此処が濡れると、しても痛くない。むしろ気持ち良いってみんな言うから…』
和幸はニコッと笑って言った。
『みんなって…他の子達ともしたの?』
智子は忽ち表情を曇らせた。
自分にだけではないのか…
それまで幸せいっぱいだった気持ちが、急に切なさに変わった。
『したよ、種付けの稽古で…』
和幸もまた寂しげに表情を曇らせて言うと…
『そうよね、此処は社なんだもんね…』
智子は何と馬鹿な事を言ったのだろうと、我ながらおかしくなってクスクス笑い出した。
しかし、そのおかしさはすぐに寂しさに変わった。
『私だって、いっぱいしたもん。お稽古で…種付けで…それから…』
言いながら智子が次第に涙ぐむと、和幸は智子の唇に指を当てて大きく首を振った。
『うん。』
智子は涙を拭って頷いた後…
『あっ…』
それまで和幸が自分のソコを優しく撫で回すのに合わせながら、丹念に揉み扱いていたモノに目を止めて満面の笑みを浮かべた。
『カズちゃんのココ、大きくなってるね…』
『うん。』
『何だか可愛い。』
『あー、それ言われても余り嬉しくない…』
『そう言うカズちゃんの顔はもっと可愛い…』
和幸が少しむくれると、智子はクスクス笑い出した。
つられて和幸も笑い出した。
『トモちゃん、そろそろ…』
『うん。』
和幸は再び唇を重ね合うのを合図に、ゆっくり優しく智子を寝かせた。
『カズちゃん、来て!』
智子は言いながら、徐に脚を広げた。
不思議と始まる前のいつもの恐怖はなかった。
むしろ、しっとり濡れたソコがムズムズと疼き出し、早く来て欲しいと思った。
『トモちゃん、行くよ。』
和幸は言うなり、慣れた手つきで自分のモノの先端をソコに当てて、ゆっくり静かに中に挿れた。
『アンッ!アンッ!アンッ!アァァァァン!』
和幸が腰を動かすのに合わせて、先にも増して赤子が甘えるような声をあげた。
いつもみたいに痛くなかった。
むしろ心地よかった。
中で和幸のモノが動く度にくすぐったいような心地よさと全身の火照りが増して行った。
今にして思えば、何故あんなに毎日添い寝していたのに、あの日まで肌を重ねてなかったのか不思議に思う。
そうする事で、何かが壊れてしまうような気がしたからかも知れない。
本当は、最初から互いを求め合っていた。
でも…
余りにも醜いものを幼い頃から見過ぎた二人…
そうする事で、何か美しいと信じていたものが崩れ去る気がして怖かったのかも知れない。
それが…
あの日、いざ初めて抱き合ってみれば何も壊れも崩れもしなかった。
むしろ、一層何かが育まれるような気がし始めた。
大切な何か…
掛け替えのない何か…
和幸と初めて一つになった時、既に智子を抱いた男の数も抱かれた回数も三桁を遥かに越していた。
それでも、男と肌を重ねて交わり一つになる時、心地よいと感じたのは和幸が初めてであった。
本当に心地良かった。
何より幸福であった。
殊に…
『カズちゃん、暖かい。』
『僕もだよ。』
ソコの中いっぱいに和幸の子種が放たれ溢れ返った時、暖かな至福が全身に広がり頭の中が真っ白になった。
二人抱き合う夜の時間が待ち遠しかった。
短い夜。
束の間、和幸と肌を重ねる時間が待っている。
和幸と交わり一つになる時間が待っている。
和幸は、何度も何度も智子の中に子種を放った。
智子の中が、和幸の子種に満たされる度に至福の思いは大きくなっていった。
それは、他の男達の放つ生臭い欲望の塊ではない。
暖かな愛の結晶に思われた。
もっと満たされたい…
和幸の愛の結晶に満たされたい…
それを思えば、日に二桁の男達に凌辱される長い一日も何でもなくやり過ごせる気がした。
神職者達の非道な仕打ちもやり過ごす事ができた。
和幸の愛の結晶に満たされてゆくうち、智子はまた新たな思いを抱くようになった。
『赤ちゃん、できるかな?』
『赤ちゃん?』
『うん。カズちゃんの赤ちゃん…』
『産みたいのか?』
『うん。』
『どうせ…一月経てば何処かの家にやられ、二度と会う事は許されないんだぞ…』
『うん。』
『もし、不具や病持ちなら、君の目の前で殺された挙句、君にも酷い仕置きが待ってるんだぞ。』
『うん。』
それでも、産みたいと思った。
和幸の赤子を産み、一月だけでも良いから、和幸と二人で存分に抱きしめたい。
その楽しみを思えば、どんなに過酷で辛い事、ありとあらゆる不幸が訪れても怖くないと思われた。
しかし、それも思いもかけず終わりが訪れた。
突然、和幸が別れを切り出してきたのである。
『何で!私、何をしたの?何か酷い事言ったの?ねえ、教えて!謝るから!どんな事でもするから!お願い!教えて!』
和幸の足元に泣いて取りすがる智子に…
『トモちゃんは何もしてないし、言ってもいないさ…』
和幸は震える声で答えて言った。
『それじゃあ、どうして…』
『簡単な話だよ。僕に、最初から気持ちなんてなかっただけの話さ…』
『そんな…嘘よ…そんなの嘘よ…お願い、嘘だって言って…お願い…』
『嘘じゃない…ただ、君の身体が欲しかっただけ…他の男達と同じにね…』
『嫌よ!嫌っ!嫌っ!カズちゃん…お願い、嘘だって言って!ねえ、嘘だって…でないと、生きて行けない…私、カズちゃん無しで生きて行けない!』
いつまでも足元に泣き崩れる智子に、和幸は一瞬何かを言いかけたが、固く目を瞑り、両拳を握りしめると…
『さようなら…』
それだけ言って、向こうでにやけて待つ眞吾宮司の元に去って行った。
それから、智子は何日も泣いて暮らし続けた。
朝から晩まで、目を泣き腫らし、ものも食べず、ただでさえ小さく細い智子が、更に小さく細くなってゆくようであった。
『死のうかな…』
智子は、いつの頃からか、そればかり考えるようになった。
結局、この世に良い事など何もないのだ…
産まれた時から死ぬまで、ただ、誰かの欲望の吐口になる為だけに生きて行かねばならないのなら…
『お母さんに会いたい…』
子守唄の声しか覚えてない母親が無性に懐かしくなった。
何処か哀しみを帯びた優しい声で歌ってくれた母親は、どんな人なのだろう…
頭の中で思う事は、母の事ばかりになった。
『お母さんに会いたい…会いたいよう…お母さん…お母さん…お母さん…』
そして、遂に社裏手に流れる川に身を投げようと思いたったとき…
『トモちゃん…』
不意に声をかけてくる秀行が、後ろを見るように促した。
見れば、和幸がジッとこちらを見つめている。
目には涙を浮かべていた。
『カズちゃん!』
智子が駆け寄ろうとすると、和幸は急ぎ後ろを向いて立ち去って行った。
『トモちゃん…おまえが死ねば…カズも死ぬ。』
『えっ?どう言う事?』
智子が秀行に問い返すと…
『トモちゃん!此処で何してるの!』
顔色変えた由香里が飛び出すや、智子を強く抱きしめていた。
『ユカ姉ちゃん…私…私…』
『良いのよ、良いのよ…もう何も言わないで…可哀想に…可哀想に…』
それから、由香里が事の真相を話して聞かせてくれた。
引き取った頃から和幸に懸想していた眞吾宮司は、和幸が自ら擦り寄って来ると、溺愛して常に側に置くようになった。
これに、榮太郎が激しく嫉妬した。
それまで、眞吾宮司の寵愛を一身に受けていたのは彼であった。
しかし、和幸を側に置き出すと榮太郎を冷たく邪険にし、遠ざけるようになった。
その逆恨みを和幸にぶつける事は出来なかった。
和幸を嫉妬で虐めぬけば、眞吾宮司の寵愛を取り戻すどこらか、永遠に捨て去られてしまう事はわかっている。
そこで、狙いを和幸が親しくする白兎の少女達に定めた。
榮太郎は、和幸が誰か白兎の少女達と親しくするのを見つけては、逐一、眞吾宮司に告げ口した。
最初に狙いを定めたのは、素兎の美香であった。
それで、美香は徹底的に虐め抜かれるようになった。
これを境に、他の白兎の少女達も和幸と親しくしては告げ口され、虐め抜かれるようになった。
最後に、榮太郎は智子に狙いを定めた。
和幸と智子の関係は、榮太郎に告げ口されるまでもなく、最初から社で知らぬ者はなかった。
そこで、和幸を苦しめる為に智子に目をつける榮太郎と、和幸との仲で智子に嫉妬する眞吾宮司は、久しぶりに結ばれた。
和幸に懸想する余り、榮太郎に冷たく接するようになった眞吾宮司は、歪んだ憎悪で結ばれる事で、再び寄りを戻す形になった。
二人は、智子にありとあらゆる苦痛を与えるような苛めを練り始めた。死ぬよりも苦しく、それでいて決して死ねないような凄惨な仕打ちを練ろうとした。
そうする事で、榮太郎は和幸を苦しめ、眞吾宮司は智子への嫉妬を晴らそうとしていたのである。
和幸はそれを知り、智子と別れる決意をした。
自ら眞吾宮司の愛人となり、自ら身体を開いたのは、愛する智子に、兎神子の仲間達に、少しでも何か食べる物を手に入れたい為であった。
その事で、智子を巻き込み、非道な仕打ちを受けさせるなら、別れた方が良いと考えたのである。
『そうだったんだ…カズちゃん、そうだったんだ…』
智子は、再び暖かいものが胸いっぱいに広がるのを感じた。
この世に本当の幸せはあるんだ…
生きていて本当に良かったと思える事があるんだ…
その幸せをくれたのは和幸だ…
ならば、自分も和幸に与えたい…
本当の幸せ…
本当の喜びを…
『カズちゃん!』
意を決した智子は、眞吾宮司に擦り寄り身を任せる和幸の姿を見出すと、その前に身を乗り出して行った。
『おやおや、智子じゃないか、何をしに来たんだい?』
眞吾宮司がこれ見よがしに和幸を弄びながらにやけて言うと…
『決まってるではありませんか。四つの時から実の父親に抱かれて悦んでいた、根っからの淫乱…自分を捨てた男が楽しむ姿を見にやって来たのでしょう。アソコを疼かせながらね。』
榮太郎も舌舐めずりして言った。
『そうかい、そうかい。それなら、たっぷり見ておゆき。存分に捨てた男の楽しむ姿を見せてやるから、たーんとアソコを濡らして帰るんだよ。』
智子は、奇妙な声で高笑いする、眞吾宮司の声も榮太郎の声も耳に入ってなどいなかった。
ただ、その目線は和幸を見つめていた。
和幸もまた、智子の目を見返した。
二人の目線が真っ直ぐに向き合うと、意を決したように大きく頷いて…
『カズちゃん、好きよ。私、カズちゃんが大好き…』
智子は満面の笑みを浮かべながら、徐に帯を解き、着物を脱いで全裸になって見せた。
そして…
『私、誰に何を言われても構わない!何をされたって良いの!私はカズちゃんが好き!愛してるわ!』
そう言うなり、智子は両手を広げて駆け出していた。
『駄目だ!此処に来ては…』
慌てて立ち上がり声をあげようとする和幸の唇を、智子の唇が塞いだ。
『トモ…ちゃん…』
和幸が何とか唇を離すと…
『良いの…カズちゃん、私の事を何とも思ってなくても…ただ、身体が欲しいだけでも良いの…』
智子は、和幸が何か言うより先に更に強く抱きついて言った。
『カズちゃんが好き…大好き…だから…欲しくなったら、また私を抱いて…』
すると…
『そーかい、そーかい、なーるほど…そう言う事なのかい。』
眞吾宮司はにんまり笑って言うと、榮太郎に何やら合図を送った。
榮太郎もまた、にんまり笑い返すや…
『智子、こっちに来い!』
和幸から智子を引き剥がし、その場に押し倒した。
『何をされても良いだと?何て淫乱な奴…望み通りしてやろうじゃないか…』
帯を解き着物を脱ぎながらゆっくり近づく榮太郎に、智子は抗おうとはしなかった。
ただ、和幸に劣らぬ異様に美しい榮太郎の顔を、真っ直ぐ睨み据えていた。
その眼差しは、どんな仕打ちをされても、和幸への思いは決して揺らぐものかと言っていた。
『トモちゃん…』
思わず駆け寄ろうとする和幸を、眞吾宮司が押さえつけた。
『おまえ、智子に何の感情などない、慕っているのはワシ一人じゃと言っておったよな。』
『宮司様…』
『それとも、あれは全部、嘘じゃったと言うのか?本当は、やっぱりこいつの気を引く餌を強請る為に、ワシに近寄った…そう言う事なのか?』
嫉妬に顔を歪ます眞吾宮司に一瞥されて言われると、和幸は唇を噛み両拳を握り締めて押し黙った。
『みんな、出て来い!』
全裸になった榮太郎が、尚も無言で睨み据える智子を抑えつけて声を上げると、周囲からばらばと神漏兵達が姿を現し着物を脱ぎ出した。
『さあ、惚れ狂った男の見てる前で、たっぷり可愛がってやるぞ。』
榮太郎が智子の脚を乱暴に押し拡げてのし掛かるや、神漏兵達も一斉に智子の小さな身体に殺到して行った。
漸く長い凌辱から解放された時、夜は白々明けようとしていた。
智子は血と精に塗れた股間を押さえたまま、蹲っていた。
脱ぎ捨てた着物を拾いに行く処か、立ち上がる力も残されていなかった。
和幸に思いは伝わったのであろうか…
これで良かったのだろうか…
かえって和幸を傷つけてしまったのだろうか…
他に思いつかなかった…
何があっても変わらぬ思いを伝える方法…
他に思いつかなかった…
『ウーッ!』
何とか立ち上がろうとし、再び股間に走る激痛に呻き声を上げて倒れ込んだ時…
『僕も大好きだよ…』
懐かしい声と共に、智子の肩に着物が掛けられた。
振り向くと、しゃがむ和幸が静かに立ち上がって背中を見せた。
『トモちゃんの事、愛してる…初めて出会った時から、今も、これからも、永遠に…』
そう言って、再び眞吾宮司の元へ去ろうとする背中は、泣いているように見えた。
『カズ…ちゃ…ウーッ!』
後を追おうとして再び股間に走る激痛に蹲ると…
『追うな…』
智子は秀行の大きな手に後ろから抱えられた。
『でも…でも…』
『気持ちなら…充分伝わった。今度は…おまえが…カズの気持ちを…わかってやれ…』
秀行がそう言って智子を抱き上げると…
「カズちゃん…」
智子がその名を口にして、一条の涙を零した時…
「また会えるぞ。」
伊織が、そっと智子の手を握って言いながら、助け起こして肩に着物を掛けた。
「身体が回復した頃には、また和幸に会えるようにもなる。」
智子は、肩に掛けられた着物を着ると、何も答えず胸裾をギュッと握りしめた。
*画像は韓国出身女優のハラさんです。記事のイメージとして載せました。

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恋鯉

2020年04月29日 22時28分00秒 | 紅兎〜青鳥編


「智子さん、お加減如何ですか?」
不意に部屋を訪ねて来たのは、元目明組の平次であった。
後ろからは、美香と同様、元素兎であり、今や平次と婚約を交わしている琴絵が恥ずかしそうに顔を覗かせていた。
「お陰様で…琴ちゃんもすっかり元気になって来たようね。」
「はい。食欲もでて来て、憩い小屋まででしたら、かなり長い時間外も出歩けるようになってきましたよ。春先には、屋敷の外にも出かけられそうです。」
「そう、それは良かったわ。」
「やっぱり、平次兄ちゃんの愛の力かしら。平次兄ちゃん、コトちゃんが此処に来てから、片時も離れないで世話をやいていたものねー。」
智子の膝の上から美香が言うと、平次と琴絵は揃って顔を真っ赤に俯いた。
「ほーら、美香ちゃん、二人をかまわないの。」
智子が後ろから抱きしめ、頬擦りしながら言うと…
「だって…食事の世話からお下の世話まで、一日中、良い人に面倒見て貰えて、コトちゃんいーなーって、思ってだんだもん。」
美香は、クスクスと笑い出した。
「それで、でしてね…」
平次は、まだ二人に冷やかしの言葉を浴びせようとする美香を遮るように、指先で頭を掻きながら口を開いた。
「こいつ、最近になって、保育所の手伝いをしたいなんて事も言い出しましてね。」
「まあまあ、凄いじゃない。コトちゃん、偉いのね。」
「そんな…私、此処に来て世話になりっぱなしだから…」
「でも、保育所は大変よ。何たって、今や辰三さんがすっかり取り仕切っていて、いつも厳しくみんなに目を光らせてますからね。」
「チッ、辰三か…」
平次は、智子が辰三の名を口にした途端、舌打ちして眉をしかめた。
「平次さん、どうしたの?辰三さんと何かありましたの?」
「どうもこうもありませんよ。辰三の奴、朝から晩まで、偉そうに怒鳴り散らしやがって…
昔から、刻限に煩くて、時刻の辰って呼ばれていましたがね、今じゃー時刻の辰じゃなくて、地獄の辰って呼ばれてます…」
「平次兄ちゃん、昨日も一日中、辰三兄ちゃんに怒鳴られてたもんねー。オムツのたたみ方が下手だ、洗うのが遅い、こんなシワだらけにしたら、赤ちゃんのお尻を痛めちゃうってね…」
美香がまた、横から口出してクスクス笑うと、平次はまた眉を潜めて俯いた。
そこへ…
「そいつはおめえがドジだからいけねえのよー。」
がらっぱちな声を上げながら、ドブが威勢良く入ってきた。
「よー、トーモちゃーん。今日もべっぴんだねー、暫く見ねえ間に、また顔色良く元気そーになって来たじゃねーかー。」
「ありがとう、ドブさんも元気そうね。」
智子がニッコリ笑って言うと、ドブも懐っこい笑みを満面に浮かべて、平次を押し除けるように、どっかり正面にあぐらをかいた。
「おいっ、ドブッ!行儀悪いぞ!」
平次が後ろからどやしつけるのもかまわず…
「えへっ。トモちゃん、おいら、おめえにとびっきりの土産を持ってきてやったぜー。」
「まあ!私に?」
「そうさー。まあ、こいつを見て、驚け喚けよ!」
ドブは、唐突に腰の魚籠を前に突き出し、中のものを引っ張り出した。
それを見て…
「まあ!」
「すっごーい!」
智子と美香は同時に声を上げて目を丸くした。
それは、一尺五寸あろうかと思われる見事な鯉であった。
「だろーっ!だろーっ!だろーっ!トモちゃんに恋(コイ)するオイラが、この鯉(コイ)を、ドドーンって釣って来てやったわけよなのよーーー!
コイツを食えばよー、血色も良くなって、益々べっぴんになるってわけよー。
でもってなー、元気になったらよー。」
と、ドブはここぞとばかりに智子の隣に座り、その肩を抱いて…
「なあ、年が明けたら、おいらの嫁さんになってくれよ。なあ…」
懐っこい笑みを満面に浮かべて言った。
「ドブ!いい加減にしろ!」
先程から、ドブの後ろで苦飯噛み潰したような顔をしていた平次は、遂に溜まりかねたように、怒鳴り声を張り上げた。
「何だよ平次、何むくれてやがるんだよ…」
「ドブ!貴様、何遍言ったらわかるんだ!智子さんにはな、和幸さんと言う立派な人がいるんだよ!貴様何かがどうこうできる人じゃーないんだ!」
「そんなー、固え事言わなくても良いじゃねーかよ。ほら、な、な、なー、おめえにもコイツを食わせてやるからよー。」
と、今度は、平次の後ろでクスクス笑っている琴絵の側に行き…
「おめえも、コイツ食いてえだろう。」
「うん!」
「よしよし、良い子だ良い子だ。コイツをたらふく食って、元気つけて、来年には、おいらはトモちゃんと、おめえは平次と祝言だ!」
大きく頷く琴絵の頭を、くしゃくしゃに撫で回した。
その時…
「なーにが、たらふく食って祝言だ?それ釣ったの、俺だろうが。」
ドブ同様、釣竿担ぎ、魚籠を腰につけた次郎吉が、呆れ顔で入ってきた。
「ゲッ!次郎吉…」
ドブが思わず口をへし曲げて座り込むと…
「ったく…いくら釣り下手で餌を全部食い逃げされたからって…俺の鯉を横取りして、その鯉で俺のトモちゃんまで掻っ攫おうってのはねえだろう。」
漸くドブに奪われた席に戻りかけた平次を、今度は次郎吉が押しのけて、そこにどっかり座り込んで、腰の魚籠を智子の前に差し出した。
「さあ、トモちゃん。今日こそは、コイツを腹一杯食って、良い返事を聞かせてくれるよな。」
「わっ!凄い!」
側では、美香が魚籠の中身を見て声を上げた。
中には、二尺近いフナの他、タナゴ、ワカサギ、カワムツ、などなど…いく種類もの獲物がぎっしり詰まっていた。
「トモちゃん、俺とドブとどっち取る?勿論、俺だよな。」
智子は、愛想良く笑いながらも、困ったなと言うように首を傾げると。
「おいっ!そいつはねえだろう、そいつは!トモちゃんは、ついさっき、はっきり返事してくれたんだぜ!春先には、おいらと祝言あげるってな!」
ドブが後ろから次郎吉につかみかかり…
「貴様達、良い加減にしないと、俺、本当に怒るぞ!」
と、平次が更に声を張り上げた。
すると…
「ウォッホン!」
大きな咳払いが一つ聞こえると同時に、それまでの騒ぎが嘘のように、皆鎮まり返った。
白髪に見事な白髭を蓄えた呑舟と伊織が、ムッツリ中に入ってきたからである。
相変わらず一声も発する事なく、さりげなく美香が側を離れる智子の前に座って診察を始める傍…
「おまえ達、さっきから病人の部屋で何騒いでいる。」
伊織が、厳しい一瞥を傾けながら物静かに言った。
「いや、何をって…なー」
「ちと見舞いにと言うか、何と言うか…」
忽ち萎縮し並んで正座するドブと次郎吉は、助けを求めるように平次の方を見ると…
「フンッ!」
平次は思い切り鼻を鳴らして、そっぽ向いて見せた。
「まあ、良い。ドブ、次郎吉、おまえ達には、お仙さんが用があるそうだ。」
伊織が大きく溜息をつきながら言うと…
「ゲーーーッ!!!」
「お仙!」
ドブと次郎吉は、忽ち顔面蒼白になった。
縦に五尺七寸、横に二尺八寸はあろうかと思われる、オカメとオタフクを足して二で割ったような巨体の女が、腕を組んで睨み付けていたからである。
「おまえさん!お兄ちゃん!何此処で油売ってるんだい!」
「あ…いや、それはその…」
「何と言うか…その…」
「なあ…」
「おい、平次…何とか言ってやってくれ…」
ドブと次郎吉がしどろもどと助け舟を求めると、平次はまたもや、プイッとそっぽを向いてしまった。
そうこうしてるうち…
「ウワッ!」
「イテテテテーッ!!!」
仙はドブと次郎吉の耳を引っ張り上げて立ち上がらせた。
「さあ、おまえ達!さっさと調理場にお戻り!」
「へいっ!」
「へいっ!」
「全く!晩飯のおかず釣りに行ったきり、何刻待たせりゃ気が済むんだい!ほら!グズグスするんじゃないよ!」
「へーいっ!」
「へーいっ!」
ドブと次郎吉は、仙に思い切り尻を打たれると、そのまま蜘蛛の子を散らすようにその場を去って行った。
「トモちゃんや…」
二人の姿が見えなくなると打って変わり、仙は饅頭に目と鼻と口をつけたような顔いっぱいに笑みを浮かべ…
「後で、美味しい鯉こくをたくさんこしらえてあげるからね。いっぱい食べて、早く元気におなり。」
智子の側に行き、優しく頬を撫でて言った。
「はい、お仙姉さん。ありがとうございます。」
「うんうん…あ、でも…」
智子に何度も相槌を打った後、仙は不意にギロッと睨みつけ…
「良いかい、うちの人とお兄ちゃんに手を出すんじゃないよ。二人ともあたいのものなんだならね。手を出したら承知しないからね。」
念を押すように言った。
「はーい、わかってます。」
智子がクスクス笑って頷くと…
「そーかい、そーかい。やっぱり、トモちゃんはお利口さんだ。とにかく、今夜も美味しいものをいっぱいこしらえてやるから、楽しみにしておくれ。」
仙もまた、満面の笑みを浮かべて、智子をもう一度撫で回して去って行った。
*画像は韓国出身女優のハラさんです。記事のイメージとして載せました。

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子供

2020年04月29日 19時37分00秒 | 紅兎〜青鳥編


お母さんか…
智子は、自分の倍の背丈になっても未だにそう呼びかける五歳年下の美香を抱き、子守唄を歌い続けながら、人知れぬもの寂しさを覚えた。
『此処は…』
半年前…
拾里で永い眠りについたかに思われた智子は、目覚めると見知らぬ部屋に寝かされていた。
小綺麗ではあるが、実に簡素な部屋。
和幸と過ごした小屋の木の香りの代わりに、何処からとなく薬草の香りがする。
しかし、岩戸館の部屋とも違っていた。
ゆっくり目を開けると、最初に映り込んできたのは、白髪に見事な口と顎髭を蓄えた老人であった。
『呑舟…先生…』
智子が信じられないものでも見るように呟くと、老人は深々と頷いて見せた。
岩戸館で何度か見かけた顔。
彼は呑舟と言う、百合に医術を教えたと言う医師であった。
百合が素兎だった頃から知っていると言う彼は、正確な年齢を知る者はいないが、かなりの高齢である筈であった。
寡黙で、殆ど口を開く所を見た者がないところから、吽(うん)の呑舟とも呼ばれていた。
『此処は?』
その日もまた、智子の問いに呑舟は何も答えようとせず…
『屋敷の養生所だよ。』
代わりに答えたのは、呑舟の側に控えていた若い医師、竹脇村の伊織であった。
『養生所って…極楽?それとも、地獄?』
自分は死んだ…
そう思い込んでいる智子は、虚な眼差しを向けて、ぼんやりと尋ねた。
『今いる場所を極楽にするも、地獄にするも、それは君の心次第。一つ言える事、それは、君は生きていると言う事だよ。万に一つ…いや、億に一つの奇跡で助かったんだ。』
伊織が爽やかな笑みを湛えて言うと、智子は忽ち表情を暗くした。
『どうした?生きてる事が嬉しくないのか?』
伊織が智子の思わぬ反応に首を傾げると…
『数え切れない程の地獄を見てきた者にとって、生き延びてしまう事は、時に苦しみでしかないと言う事もあるのよ。』
何処からともなく、優しげな女の声が、智子に代わって答えて言った。
『これはこれは、奥方様…』
声の主が中に入ると、呑舟と伊織は深々と平伏した。
呑舟に比べれば、父と娘程若いであろうか…
それでも、髪に白いものが混じった女は、二人に軽く頷くと、真っ直ぐ智子の側に座った。
智子もまた、二人の医師に習って起き上がり平伏そうとしたが、身体が動かなかった。
『良いの良いの…そのまそのまま。』
玖玻璃は、尚も起き上がろうとする智子を制すると…
『それでもね、どんなに苦しくても、生きていれば、時に良かったと思える事もあるものなのよ。』
そう言って、上品な笑みを湛えて見せた。
『私は…私には、その資格がありません…』
智子は、忽ち目にいっぱいの涙を溢れさせると、言葉を詰まらせながら答えて言った。
『資格がない?』
『はい…私には、幸せになる資格が…』
『可哀想に…本当に、辛い思いをしてきたのね。』
玖玻璃は、一層涙を溢れさせて嗚咽する智子の肩を撫でながら言うと、何度も頷いて見せた。
『そうそう…貴方にどうしても会わせたい子達がいるの。』
『私に?』
智子が小首を傾げると…
『さあ、お入りなさいな。』
玖玻璃は大きく頷いて、誰にともなく呼びかけた。
次の瞬間…
『美香ちゃん!サナちゃん!』
智子は、思わず目を見開いて声を上げた。
『智子母さん!』
『トモ姉ちゃん!』
とうの昔に死んだ筈の少女達が、泣きながら部屋に飛び込み、智子の傍にしがみついて来たからである。
何故生きているのか…
何故助かったのか…
目覚めて数日の間、それを疑問に思う事も考える事もなく、ただ、夢でも見てるようにぼんやりしていた。
『希美ちゃん!』
漸く意識がはっきりし出した時、智子は思わずその名を口にして起き上がろうとした。
自分を母と呼んだ少女…
和幸と拾里で暮らしていた時、全裸で山林に捨てられていたのを拾った子だ。
あの時、智子は彼女を美香と呼んでいた。
呼ぶと言うより、彼女を美香だと思い込んでいた。
死んだ美香が、帰ってきたのだと思い込んでいた。
そして、せっかく帰ってきたのに、一年も待たず逝ってしまうと聞かされ胸を痛めた。
何処でどんな目に遭わされてきたのだろうか…
全く言葉を話さず、匙の使い方も箸の使い方も知らず、ものを食べる時は、手掴みどころか碗に顔を突っ込んでいた。
此処に来て、偶然にも希美が素兎として囲われていた社出身の辰三と花に出会い、犬のように扱われていたと聞かされ、あの時以上の胸の痛みを覚えた。
その希美が、唯一口にした言葉が、お父さんとお母さんであった。
山林から拾って介抱し、漸く目覚めても、暫くの間は何を見ても、どんなに声をかけても、何も反応を示さなかった。
ただ、重湯を飲ませれば、機械的に口を動かすだけであった。
漸く、幾らか動く力が出てきた頃。
粥の碗を見るなり…
『エサ…エサ…』
と、口走って碗に顔を突っ込もうとするのを見て、智子は涙を溢れさせた。
それから、少しずつ碗の持ち方、匙の使い方を教えてゆき、いつも何かに怯えている希美を、片時も離さず抱いて過ごした。
そうして、ある日。
目を覚ました希美は、智子の顔を見るなり…
『お母さん…』
と、声を発してニコッと笑ったのである。
お母さん…
何て暖かい響なのだろう…
幼い者にそう呼ばれると…
何とも言えぬ幸福と一生分の喜びがいっぺんに訪れたような気持ちになる。
全身、優しい温もりに包まれたような気持ちになる。
もしこれが、本当に自分の胎内から現れた子にそう呼ばれたら、どんな気持ちになるだろう。
この腕に抱き、この乳房から乳を吸った子に、ある日突然、そう呼ばれた時の気持ちは…
子を産み乳を呑ませる…
かつて…
そんな事、夢にも考えた事はなかった。
乳首は赤子が吸う所ではなく、男達が貪る所だと思っていた。
赤子が出てくる所は、男達の欲望を便所のように垂れ流す所だと思っていた。
そうして、産み落とされた子は、一月すれば取り上げられてしまう。
社で子を産む兎達の姿を見ても、ただ、胸が痛むばかりであり、自分も産みたいなどと全く思わなかった。
思い始めたのは十二の時…
和幸と初めて結ばれた日の事であった。
和幸と唇を重ね、乳房を揉まれ、乳首を吸われ…
和幸の子種が智子の中に解き放たれた時…
下腹部から全身に暖かな安らぎと幸福が広がる中で、子供が欲しいと切に願うようになった。
たった一月で引き離され、二度と会えぬ赤子…
その一月の間、和幸と寄り添い全身全霊で赤子に愛情を注ぐ…
何処の家に引き取られ、どのような人生を送るかはわからない。
それでも…
きっと何処かで幸福に生きてくれるであろう事を願いなが、和幸と生きてゆく…
それが、何も望みのない人生の中で、智子の抱く細やかな夢であった。
しかし…
その夢は微塵に砕かれた。
ある日。
智子は、数多の男達の相手をさせられている最中、出血が止まらなくなった。
擦れたり裂けたりの傷による出血ではなかった。
子袋が破けての出血であった。
その時…
余りにも幼い頃から凌辱され、痛めつけられた子袋は、既に使い物になくなっていた事を知った。
背丈が七歳で止まり、生理がなく、身体に女性らしい変化が殆どないのもその為だと言う事も知った。
とっくに諦めていた筈であった。
赤子を産むなど…
自分の子を腕に抱くなど…
それが、此処で目覚め、隠里に預けられた赤子達や、幼い子供達と暮らすようになってから…
兎を解かれ、此処に預けた子供と再会する母親の姿を見た時…
子供が欲しいと切望するようになった。
赤子を産んでみたいと切望するようになった。
目が見えなくても、耳が聞こえなくても良い…
手足が萎えていても…
よしんば、一生寝たきりであっても…
自分の中から産まれてきた命を、この腕に抱いてみたい。
自分の中から出てきた子に、小さな唇で乳を吸われる時、どんなに気持ち良いんだろう…
勿論、父親は和幸だ…
自分が産む子の父親は、和幸以外に考えられない。
和幸と愛し合い、和幸に抱かれ、和幸との間に産まれた子を、この腕に抱く。
一月経っても誰にも奪われはしない。
一年先も、二年先も、十年先も、ずっと側にいて何処にも行かない子…
大人になるまで、和幸と二人で育て、その子が誰かと一緒になってまた子を産むのを見る。
どんなに幸せだろう…
子供…
子供…
子供…
でも…
それは叶わぬ夢…
一生叶わぬ夢…
『生きていれば、何かしら良かったと思える事もあるものなのよ。』
死んだと思っていた美香と早苗に会った時は、確かにその通りだと思った。
生き延びたからこそ、こうしてまた二人に巡り会う事ができた。
先日、早苗が殺される筈だった熊の命を救ったと聞いた時…
もし、早苗が生きていなかったら、あの熊の命もなかったのだと思えば、生きるとは何と素晴らしい事だろうと思った。
此処に連れられて来た頃、子袋がボロボロで子供を産む事は不可能だと思われていた美香が、後数年治療と静養を続ければ、子供を産める身体になる。
そう聞かされた時も、生きる事それ自体に価値があると思った。
生きていればこそ、また新しい命を繋ぐ事ができる。
それも、何人もの新しい命を繋ぎ、その命が更に新たな命へと繋がってゆけるのだ。
生きていたから…
生きていればこそ…
しかし、それも生きて何かを為せればの話である。
自分には、子供を産もうにも子袋がもうない。
『お…母さん…お…母さん…』
出会った時、殆ど表情がなかった希美が、初めて見せた笑顔が脳裏を過ぎる。
『おっぱい…おっぱい…』
殆ど膨らみのない智子の胸を弄る小さな手…
『おっぱい、欲しいの?』
『うん。』
智子が胸を出してやると、希美は乳などでもしない乳首を嬉しそうに吸い始めた。
希美は十歳だけど、中身は三歳だと聞かされた。
しかし、智子には三歳どころか乳飲み子に見えた。
乳首を吸う希美の唇の温もり…
乳首を転がす希美の舌先の温もり…
和幸のそれも心地良かったが、希美のそれはまた違っていた。
安らかだった…
この一瞬の為に生まれてきたような気がした。
『カズちゃんとの子…私とカズちゃんの赤ちゃん…』
智子は、尚も甘えるように自分の胸に顔を埋める美香の背中を撫でて子守唄を歌い続けながら、いつまでも希美の事を思い続けた。
画像は韓国出身女優の知英さんです。記事のイメージとして載せました。


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細腕

2020年04月29日 19時33分00秒 | 紅兎〜青鳥編


細い腕…
美香は、智子の優しく細い歌声に微睡ながら、自分を抱きしめる腕を見て思った。
頬を預ける小さな胸も、以前にも増して痩せ細り、骨と皮しかないのではないかと思われた。
『私は良いの。ほら、もうこんなに大きくなったから。美香ちゃんは、まだ小さいんだから、いっぱい食べて大きくならないとね。』
社にいた頃…
智子は、そう言っては、自分は殆ど食べないで、僅かに出された食べ物を、美香に差し出していた。
あの頃…
十二になっていた智子は既に成長が止まっていた。
背丈も、七歳だった美香とさほど変わらなかった。
聞けば、美香にだけでなく、他の兎達にも同じ事を言って、自分の食べ物を殆ど与えてしまっていたと言う。
由香里が、厨房に盗みに入るようになったきっかけの一つ…
それは、歳上の由香里にまで自分の食べ物を差し出そうとする智子に、腹一杯食べさせてやりたかった事であったとも聞いていた。
きっと、そのせいで大きくなれなかったのだ…
他の仲間達を大きくする為に、智子は小さな身体のまま、大人になってしまったのだ…
自分は、智子が大きくなれなかった分だけ大きくなれてしまったのだ…
そう思うと、涙がこみ上げてきそうになった。
「どうしたの?泣いたりして…」
「ううん…ただ、社にいた時の事を思い出してしまって…」
美香がしゃくり上げながら言うと…
「可哀想に…社では、辛い思いばかりしてきたものね…」
小首を傾げて美香の顔を見つめる智子もまた、涙ぐんで言った。
「本当、可哀想な子…不憫な子…」
美香は、そう言って抱きしめる細い腕を見て、また、涙を溢れさせた。
『ごめんね、智子母さん…』
一瞬、口から洩れそうになった言葉を、美香は急いで呑み込んだ。
その言葉を口にすれば、智子が益々泣き出してしまう事を知っていたからだ。
社にいた頃、智子は美香の為にどれほど涙を流した事だろう。
『美香、すまない…すまない…』
兎の皮剥…
美香が素兎にされる儀式の夜。
父は、いつまでも美香を抱きしめ泣き噦っていた。
『何ぐずぐずしてるんだ!早く脱がせろ!』
気色悪い笑みを湛えながら祝詞をあげる眞吾宮司の前で、神漏衆小川組頭の榮太郎が怒鳴りつけた。
美香の父は一層涙ぐみ、強く美香を抱きしめる。
『早く脱がせろと言ってるんだよ!』
榮太郎が更に声を荒げ、配下の神漏兵達が美香の父を激しく殴り、蹴飛ばした。
周囲からも、早くしろと怒号が飛び交っていた。
居並ぶ参列者達は、既に股間を膨らませて舌舐めずりをしている。
皆、新たな素兎を早く玩具にしたいのだ。
『お父さん。』
美香は、最初に父に、次に少し離れた所でずっと泣いている三人の妹を連れた母に笑いかけた。
『お父さん、私、大丈夫…泣かないよ。』
『美香…』
もう一度振り向き笑顔を傾ける美香を、思い切り抱きしめた父は、震える手で娘の帯に手をかけた。
皮剥の日、参列者の前で素兎となる少女の着物を剥ぐのは、少女の父や年長兄弟の役割であった。
母親と他の兄弟姉妹達は、最前列で儀式を見守る事になっている。
敢えて肉親家族達の手で着物を剥ぎ、彼らの前で行為をさせる事で未練を断つ為と言われてるが…
要するに、社や顔役達の逆鱗に触れた家族に対する制裁と見せしめの為に行われたのが始まりだとも言われている。
父は泣く泣く七歳の娘の帯を解き、一枚一枚ゆっくりと着物を剥ぎ取っていった。
やがて、夕焼けが美香の肌を露わに映し出した。
『ど…どうぞ…最初の参道をお通り下さい…』
父は、全裸となった娘を膝に抱いて思い切り脚を広げさせると、指先で陰部の縦線を広げて見せた。
時の総領主康弘が、縦一本に禿げ上がった頭を撫でながら、猥雑な笑みを浮かべて近づいてくる。
『ウグッ!』
康弘がソコに顔を近づけ、乱暴に指を入れて掻き回すと、美香は思わず顔を背けて呻き声を上げた。
『美香…』
美香の脚を抑える父の手が涙に震えている。
『おまえの娘、良い色してるな。』
康弘は涙ぐむ父に笑いかけて言うと…
『顔もなかなか可愛いではないか。』
康弘は美香の顎をもう片方の手の指先で掬い上げ、舐めるように眺め回しながら言った。
『イッ!イッ!イッ!』
幼い陰部を掻き回す康弘の指先の動きは更に激しさを増し、美香は首を剃らせて声を上げながら腰を浮かせた。
『美香!』
娘の痛々しい姿に目を真っ赤に泣きはらした父に…
『寝かせろ。』
康弘は冷徹に命じた。
『手をしっかり抑えとけよ。』
美香の父が、更に冷徹に命じられるままに地べたに寝かせた美香の両手を押さえつけると、康弘は褌を脱ぎ捨てて広げられた美香の股間に腰を落とした。
やがて…
『キャーーーーーーッ!!!!』
康弘が激しく腰を動かすと同時に、美香の絶叫が辺りにこだました。
数刻に亘る凌辱の時を終えた後…
もう一度、美香を抱き締めたい願う両親達は、神に捧げられた神聖な供物に触る事は許されないと冷徹に突っぱねられ、引き摺るように追い出された。
散々、美香を弄んだ参列者達も、用が済めばさっさと帰り…
眞吾宮司は刺激的な祭りを前に興奮を高め、和幸を弄ぶのに夢中である。
他の神職者達と顔役達は、その後、参集殿にて催される宴会へと消え…
神漏兵達は、その後更に暫しの間、美香を玩具にして去って行った。
美香は、その場に一人取り残された。
血と子種に塗れた股間を押さえる事も蹲る事も、身体を隠す行為として許されぬ美香は、仰向けに倒れ込んだまま身悶えし続けていた。
立ち上がるどころか、少しでも動けば股間に激痛が走った。
『お父さん…お母さん…痛いよ…痛いよ…』
儀式の間中…
泣く事も痛みを訴える事も許されなかった美香は、この時になって泣き出した。
二度と会う事の許されぬ父と母の名を口にしながら声を上げて泣き続けた。
『可哀想に…』
不意に声をかけられて振り向くと、そこには自分と余り歳が違わなそうに見える白兎の少女が立っていた。
あの後始まった宴席で、散々弄ばれたのであろう。
着ると言うより軽く着物を羽織っただけの少女は、美香の側によると、自分の来ていた着物を脱いで着せようとした。
美香の着物は、父の手で剥がれると同時に、火にくべて燃やされてしまったからだ。
『さあ、これ着て。寒いでしょう。』
すると…
『駄目だよ、トモちゃん!』
新たに現れた美しい黒兎の少年が、少女の手を留めた。
『この子は素兎だ!』
『素兎って…』
少女が目を丸くして少年に振り向くと、少年は素兎について手短に語って聞かせた。
始終、全裸でいなければならない事…
羞恥を訴え、身体を隠す事が許されない事…
着物を着るのは勿論、寒い夜に掛け物一枚かける事も、身体を隠す行為として禁じられている事…
求められれば、いつでも誰にでも際限なく身体を開かねばならない事…
『そんな…こんな小さな子が…そんな…』
少女は、そう絶句するとその場に泣き崩れてしまった。
それが、智子との出会いであった。
御贄倉の土間で、犬のように全裸で繋がれた美香は、来る日も来る日も絶え間なく男達の玩具にされた。
玩具にされるだけではない。
事ある毎に何か理由をつけられ、拷問にも等しい仕置きを受けた。
美香の泣き叫ぶ声を聞かぬ日はなかった。
涙も枯れ果てた美香は、振り向くと、いつもそこで一緒になく智子の姿を見出した。
智子は何もしてやれなかった。
何かすれば、それも美香が仕置きされる理由にされたからだ。
ただ、そんな美香の姿に涙を流す事しかできず、側でいつも一緒に泣いていたのだ。
同い年だと思っていた智子は、実は五つも年上の少女であった。
『お姉…ちゃん…』
息も絶え絶えな美香が、智子の方に顔を上げると…
『これ、美味しいよ。』
智子は、涙を拭って美香を抱き上げ、笑顔で食べ物を差し出した。
『でも、これ…』
社では、誰もが殆ど食べ物を与えられなかった。
敢えて絶えず空腹にさせられていた。
理由は、空腹でいる方が、男のイチモツを咥える時の吸い付きが良いからだと言う。
智子もまた、殆ど食べ物を与えられてない事は、幼くてもすぐにわかる。
美香は、なかなか食べられずにいると…
『ほら、お姉ちゃんはもうこんなに大きくなったわ。美香ちゃんは、まだ小さいんだから、いっぱい食べないと。』
そう言って、美香の手に自分の食べ物を全部持たせて食べさせたのである。
また…
美香が着物を着られないのならと…
『一緒に寝よう。』
僅かに与えられた眠りの時間…
『寒い夜はね、裸で抱き合って眠った方が暖かいの。』
智子は自分も全裸になって美香を抱き寄せた。
美香が、犬のように鎖に繋がれ連れ回されそうになるのを見つけると、智子は自分も全裸になって犬の真似をして見せた。
『そうか、智子は美香と同じ犬だったのか。』
『はい、私は犬でございます。どうか、どうか、美香ばかり可愛がらず、この私も可愛がって下さい。』
『よしよし、それなら犬らしく可愛がってやろうじゃないか。』
神職者達はそう言うと、智子の首も鎖に繋ぎ、四つ足で歩かせ外に連れ回した。
『ほら、町の連中がお前の芸を見たがってるぞ。三べん回って鳴いてみろ。』
『ちんちんだ、ちんちん。』
『それ、良い木を見つけてやったぞ。そろそろもよおしててきただろう?オシッコして見せろや。』
『ほらほら、もっと足あげて、足あげて、みんな集まってるんだ、ちゃーんと見えるように足あげて…』
智子は、連れ回される先々で、言われるままに必死で従って見せた。
少しでも、美香がされる事、させられる事を代わろうと…
代われないなら、せめて同じ目に遭わされようと、必死で理不尽な要求に従い続けた。
そしてまた…
全てが終わると、懐の中で泣き噦る美香を抱きしめ、共に涙を流し続けた。
いつもいつも…
美香が泣き出した時、振り向けばいつもそこに智子がいた。
そう…
美香の両親と兄達が死に、姉妹達が離散したと聞いた時も…
美香が皮剥を受け、素兎となった後…
美香が熱を出した、怪我をしたと言われては、莫大な治療費が、家族に請求された。
美香の日々の食費も、家族に請求された。
家族は、美香が少しでもまともな治療を受けさせて貰えるよう、ちゃんと食べさせて貰えるよう、死に物狂いで社に玉串を捧げ続けた。
両親と兄達は、自分達が殆ど物も食わず、休む間もなく働き続けた。
全ては、美香が社で少しでも良い扱いをして貰える事を願って…
その無理が祟り、美香の兄達が一人ずつ亡くなり、遂には父と母も亡くなった。
美香が素兎になって、二年もしないうちにである。
美香の妹達は、相次いで売られるように、別の摂社領や末社領で素兎にされたと聞かされた。
美香は、自分が素兎になる事で、家族が安泰に暮らせる…
それだけを心の支えとして生きてきた美香は、家族の死と離散を聞かされると、一晩中泣き続けた。
あの時も、智子はずっと美香をその腕に抱き、共に泣き続けたのである。
智子が、美香と共に流したのは涙だけでかった。
美香の拷問じみた仕置きが始まれば、代わりに自分が受けようとした。
『何だと?おまえが美香の代わりに仕置きされたいだと?』
『お願いです…どうか、どうか、私をこの子の代わりに…』
『よしよし、おまえも責めの味を覚えたと言うわけだな。』
『そんなに美香の仕置きが受けたいなら、そうしてやろう。その代わり、仕置き中、一声も上げるなよ。一声でもあげたら、その倍の仕置きを美香にしてやるからな。』
そうして始まる、凄惨な仕置きの最中…
智子は必死に歯を食い縛り、いつも一声も発する事なく、屈強な男でも泣き叫びそうな仕置きに耐え続けた。
タチの悪い種付け参拝達がやってくれば、飛んできてくれるのも智子であった。
あの日もまた…
十人もの男達が執拗に美香を嬲ろうとするのを見かけるや…
『ねえ、そんな小指も入りそうにない子とやっても面白くないでしょう。』
智子は飛ぶように駆けつけて、男達に着物の裾を広げて見せた。
『私と遊ばない?私の参道だったら、兄さん達を幾らでも通してあげられるよ。』
美香の手足を押さえつけ、のし掛かろうとする男の一人の手を、智子は慣れた手つきで自分の股間に導いて言うと…
『随分と濡れてるじゃねえか。』
男は忽ち股間を膨らませて舌舐めずりをしながら、智子の股間を乱暴に弄り回し始めた。
『参道の奥で、ご祭神様が兄さん達の参拝を待ちわびてるの。ねえ、早く来て。こんなに身体も熱ってきたわ。』
智子は、これまた慣れた手つきで、張り詰めた程そそり勃った男のモノを中から出して扱き出すと、他の男達にも流し目を送って笑いかけた。
『クククク…本当だ、コイツこんなに熱ってやがる。』
別の男の一人は、そう言いながら智子の着物を剥ぎ取って抱きつき…
『乳首もこんなに反応させやがって…』
また、別の男が美香を離れて、乱暴に智子の乳房を鷲掴み、乳首を舐め始め…
『そんなに、俺達が欲しいのか?』
『クククク…こんな小せえガキの癖に淫乱だな…』
『悪い子だ、お仕置きしてやらねえと…』
今や男達は、美香の事をすっかり忘れて智子の身体に殺到した。
智子にどれほど庇って貰った事だろう。
智子はどれ程自分自身を傷つけてきたのだろう。
それを思えば、美香はまた目頭が熱くなる。
『まあ!美香ちゃん、赤ちゃん産む事できるんだあ!』
『うん。呑舟先生と伊織先生がそう仰って下さったわ!』
『良かったわね!本当に良かった!』
『でも、小袋の傷が完治したわけじゃないから、まだまだ治療は必要だし、何より後数年は静養が必要だって…』
『当たり前よ!あんなに酷い目にあわされ続けてきたのですからね。でもよかった…美香ちゃん、大人になったら、好きな人の子供が産める…本当に良かった。
ねえ、やっぱりカズちゃんの赤ちゃん産みたい?カズちゃんと一緒に暮らしたい?』
『やだ、もう!智子母さんったら…』
『頑張って、身体治して大きくなって、カズちゃんに会おうね。こんなに美人にもなったし…カズちゃん、びっくりするわよ。』
先日…
屋敷の医師、呑舟と伊織の診察を受けた時も、このか細い腕で抱きしめてくれた智子…
しかし、その智子はどんなに治療を受けて回復しても、決して子供を産む事はできないのだ…
余りにも幼い頃から激しく弄り回され、抉られ続け、幼くして子袋はボロボロであった。
その上、悪性腫瘍に冒され、今は完全に切除されてしまっていたのである。
いつか、大好きな和幸と再会できても、拾里でまた一緒に暮らせる日が来たとしても…
愛する人の子供を産む事は決してできない…
それが、どんなに残酷で悲しい事であるか…
美香は、自身もとっくに子供を産む事なんて諦めていた…
目が見えず、耳が聞こえず、手足が萎えていても…
知恵が遅れていても…
頭にも身体にも、重度な障害を負って、一生寝たきりでも…
毎日、明るく元気に、泣いたり笑ったりする赤子達の姿を横目に見ながら、自分にはこの赤子を産む事はできないのだと諦め切っていた…
それができる…
後数年、しっかり治療と静養を続ければ、愛する人の子供を産める…
ここで、いつも泣いたり笑ったりしてるのと同じ、可愛い赤子を産む事ができる…
そう言われて、天にも登る思いをした今の美香ならばこそ、智子に下された運命の残酷さに胸を裂くような痛みを覚えた。
『ごめんね…本当にごめんね…』
また、美香は今にも溢れ出しそうな声を呑み込んだ。
全ては自分のせいなのだ…
美香の心にいつもと同じ思いが過り出す。
自分を庇おうとし続けたばかりに…
自分の代わりに傷つき続けたばかりに…
「智子母さん…」
「なあに?」
違う…
そうじゃない…
美香は、尚も優しく抱きしめる細い腕に頬擦りすると…
「ありがとう…」
胸の中を過ぎる何かを振り払うように、その言葉を口にした。
「えっ?ありがとうって…何で?」
「何でも…」
そう…
自分のせいで智子が一生消えない傷と不幸を負ったのではない…
智子のおかげで…
智子がいてくれたから…
本当なら地獄の責め苦の中で死んでいたであろう自分に、今の幸福があるのだ…
「ありがとう。智子母さん、大好き…」
美香は、自分を抱きしめる細い腕にもう一度頬擦りすると、智子にそう言ってニッコリ笑って見せた。
画像は韓国出身女優のハラさんです。記事のイメージとして載せました。

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歌声

2020年04月29日 19時24分00秒 | 紅兎〜青鳥編



「智子母さん。」
不意に、天井を眺め続ける智子の顔を、美香が覗き込み満面の笑みを傾けてきた。
「美香ちゃん、どうしたの?」
智子は、美香の頬をなでながら、ゆっくりと起き上がろうとした。
「サナちゃん達と赤ちゃん見に行ったんじゃないの?」
「うん、行ってきたよ。凄く可愛かった。みんな、今日もよく笑って、ミルク呑んで、元気にしてたわ。」
美香は、身動きとるのが辛そうな智子の背中を支えて助け起こしながら、明るく笑って言った。
小春日和のような笑顔…
社にいる時からそうだった。
いつも全裸で過ごさせられ、男達に目をつけられては、その場で弄ばれる地獄の日々…
股間をいつも血塗れにしていた彼女に、どうしてそんな笑顔ができるのだろう…
智子は、股間の手当てをし、弄んだ男達の性に塗れて臭いの染みつく身体を洗ってやりながら、いつも不思議に思っていた。
しかし、そんな疑問もやがて何処かに失せ、いつも無邪気に傾けてくる美香の笑顔に救いを見出すようになっていた。
「ねえ、お母さんも赤ちゃん見に行こう。」
「私も?」
「うん。部屋に閉じこもってばかりじゃ、いつまで経っても元気にならないわ。」
美香はまた、満面の笑みを傾けて智子の手を引っ張った。
「私は良い、此処にいる。」
「どおして?」
「歩くの辛いから…」
「そう…みんな、お母さんに会いたがってるのに…」
「私に?」
「うん。此処のチビちゃん達、みーんなお母さんの事大好きなのよ。チビちゃん達だけじゃない、目明組のお兄ちゃん達もね。」
「そうなの?」
「そうよ。みーんな、お母さんの事大好きで、誰が一番先に声をかけるか、話をするかで大喧嘩なのよ。」
「まあ!」
「特に、ドブ兄ちゃんと次郎吉兄ちゃん…あの二人に至っては、絶対自分がお嫁さんに貰うんだって、きかなくて、毎日、大喧嘩して、辰三兄ちゃんに怒鳴られてるわ。」
「わっ!それじゃあ、私、益々みんなの所に行けないわ!」
「どうして?」
「どうしてって…ほら、仙姉さんが…」
「あっ!そーかー!仙姉さんの事忘れてた!」
「どうりで…仙姉さんの私を見る目つきが、あんなに怖い理由がやっとわかったわ…
やっぱり、私は一生此処に閉じこもってる…でないと、仙姉さんに殺されてしまうもの…」
智子は、思わず😖←こう言う顔してブルルルと唇を鳴らした後、美香と顔を見合わせて、クスクス笑い出した。
ドブを良い人、次郎吉をお兄ちゃんと呼ぶ、二人より十以上も歳上の、オタフクのような仙の殺気だって睨みつける顔を思い出してしまったからである。
「それより、美香ちゃんこそ、こんな所に居ないで、みんなの所に行ってあげなさいな。でないとまた、辰三さんがチビちゃん達を怒鳴りつけて泣かせるから…」
「それなら、大丈夫。みんなの所には、ちゃーんとサナ姉ちゃんがいるから…」
「サナちゃん?」
「そう。辰三兄ちゃんはね、サナ姉ちゃんには弱いの。サナ姉ちゃんにほんの一言二言宥められると、すぐ大人しくなっちゃうんだから。」
「へえ!あの怒りん坊さんの辰三さんが、サナちゃんにはね…さすがは、サナちゃん。凶暴な熊や野犬、悪戯烏達も一瞬で手懐けてしまうだけの事はあるわね。」
智子が感心して言うと…
「そうじゃない、そうじゃない。」
美香は大きく首を振りながら…
「辰三兄ちゃん、サナ姉ちゃんに、ホ・の・字・なの。」
そう言って、ニッと笑って見せた。
「あらあら!それじゃあ、益々、美香ちゃんが行ってあげないと…後で、花ちゃんと大変な事になるじゃない。」
「良いのよ、それで…辰三兄ちゃん、いつも怒ってばかりなんですもの。少しは、花姉ちゃんにギュッと言う目に合わされた方が良いのよ。」
「まあ、酷い!」
智子がそう言ってクスクス笑いだすと、美香も一緒に笑いながら…
「それにね…私は、やっぱり此処が一番良いの。」
そう言って、今や大きくなってしまった自分の半分くらいになってしまった智子の懐に潜り込んでいった。
「美香ちゃん…」
「ねえ、お母さん。また、子守歌を歌ってくれない?」
不意に、美香が懐の中から智子の顔を見上げて甘えるように言うと…
「子守歌?」
智子は、一瞬小首を傾げて見せた。
「そう。昔、よく歌ってくれた、あの子守歌…」
「ああ、あの歌ね。」
「うん。」
美香が大きく頷いて見せると、智子は美香の頬を撫で、優しげな笑みを傾けながら、請われるままに歌い始めた。
子守唄…
四歳になるのを待たずに逝った母の記憶は殆どない。
あるのは泣き止まぬ智子に聞かせてくれた子守唄の声だけであった。
ひたすら父や父の酒代を稼ぐ為に貧民窟の男達に凌辱され続けてきた幼い日々…
微かに残る優しい思い出といえば、母の子守唄の声だけであった。
その声も、何処か哀しみを帯びている。
自分にもあのような仕打ちを続けた父が、母にどんな仕打ちをしたかも想像つく。
やはり、哀しみばかりのうちに人生を終えたのであろう。
その母が、決して明るい未来など約束されていない娘の為に歌ってくれた子守唄…
顔も覚えていない母が、どんな思いで自分に歌ってくれたのか…
何もしてやれない素兎だった美香を、和幸を抱いたのと同じ懐に抱いて歌い聞かせた時、智子は初めて知ったような気がした。
悲しかった…
切なかった…
いつも全裸でいる事を強いられ、何をされても泣き叫ぶ事も許されない美香に、子守唄を歌ってやる事しかできないのだ。
美香は、そんな智子にいつも笑いかけていた。
子守唄を歌い始めると…
『お母さんの声だ…優しい声…』
そう言って、いつも笑いかけていた。
そして…
『お母さんの匂い…』
美香はクンクン匂いを嗅ぎながら、智子の懐に顔を埋め…
『お母さん…お母さん…』
そう呟いて眠りについたのである。
「お母さん…お母さん…トモお母さん…」
十五になり、智子より遥かに背丈が伸びた美香が、今もあの時と同じように懐に顔を埋めて呟き始めた。
「美香ちゃん…」
智子は美香をそっと抱きしめ頬擦りすると、また子守唄を歌い始めた。
画像は韓国出身女優のハラさんです。記事のイメージとして載せました。
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