後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

利根川の鮎料理、坂東簗の店仕舞いーある地方文化の終焉ー

2015年06月17日 | 日記・エッセイ・コラム
毎年、6月になると利根川上流の坂東簗から今年も7月1日から9月30日まで営業を致しますのでお越しくださいと案内状が来ます。
それが今年の手紙は店仕舞いの挨拶状でした。何十年も家族とともに楽しんできたところが無くなるのです。しばし寂寞感にとらわれます。
これはある地方文化の終焉です。簗で鮎を捕り、見晴らしの良い川岸で鮎料理を楽しむのは、その地方の食文化です。時代が変わればその文化も終焉するのです。
坂東簗の発祥は江戸時代末期です。戦争の影響で一旦閉鎖されましたが、昭和29年に利根川の別名「坂東太郎」の名を冠して再び営業を始めました。そこは関東地方では有名な鮎料理の簗でした。
鮎を食べていると夏草の茂る利根川の広い川原が見渡せて、その向こうには榛名山や伊香保の山並みが見えるのです。その風情ある情景が忘れられません。
この坂東簗が営業を止める理由はいろいろな事情があるのでしょうが、何と言っても近年、鮎そのものが不味くなり客足が途絶えがちなったためです。
美味しい鮎は果物のスイカのような高貴な香りがして、食べると適度に油ものっていて意外に芳醇な味がするのです。
その香りと味は鮎が川石に生えている苔を食べているからだと言われています。そのスイカのような香りのする苔が川の生態変化で無くなってしまったと言われています。
そして安価な養殖鮎がスーパーに並んでいます。坂東簗でも釣り師が持ち込む天然鮎を使っていたようですが、その天然鮎が不味くなってはどうしようもなかったのでしょう。数が足りなくて養殖物を使っていたのかもしれません。
私の家内が鮎が特に好きだったので毎年のように坂東簗に通いました。娘夫婦、息子夫婦孫と一緒に楽しんだものでした。しかしここ数年は鮎の味が不味くなる一方で、客の数も減ってきました。

ある時、店のなかを見物してまわりました。料理場の外の廊下に古い写真が沢山飾ってあります。明治、大正時代に前橋の金持ちが人力車で乗り付けています。それには芸者さんの乗った人力車も続いているのです。栄枯盛衰は世のならいという言葉を思い出します。
鮎料理の衰退は、鮎が不味くなっただけが原因ではありません。街々に美味しい手軽なレストランや寿司の店が展開し、イタリアンでも中華でも何でも簡単に楽しめるようになったのも一つの大きな原因になっているのです。人々の食の好みが鮎や鯉などの川魚料理だけでなく、多様になったためなのです。
さて、そこで新ためて全国の鮎の簗場を調べてみました。そうしたら末尾に付けたように数は多くありませんが、まだ営業している簗場があったのです。
このほかに鮎ではなく、アカハラやハヤなどの川魚を取って川原で焼いて供している簗場もあるようですが詳細は分かりませんでした。
坂東簗も店仕舞いしますので、その写真を掲載し、群馬県地方の一つの食文化の記録を残したいと思います。

関越道路の渋川インターを出て、前橋方向に戻り利根川を渡るとすぐにこの坂東簗があります。

店の玄関を入ると直ぐに左手に広い焼き場があり、菅笠をかぶった職人たちが汗を流して熱心に数多くの鮎を焼いています。
鮎料理はこの塩焼きだけでなく、味噌焼き、鮎の甘露煮、鮎のフライ、鮎のうるか、鮎のお澄まし、鮎ごはんなどが出ます。

客席に座ると上の写真のように木を組んだ簗が見え、その向こうに利根川と榛名山が広がっています。

鮎料理を注文すると、料理が来るまでしばらく時間がありますので、上の写真のような簗に降りて行き、しばし水流を眺めます。簗の先端には時々、鮎の小さなものやハヤが上がってきます。拾って備え付けの木箱に入れて生かしておきます。子供が自由に持ち帰って良いのです。

簗から上がってきると上のような塩焼きが来ます。熱いうちに中骨を抜いて食べます。

上の写真は家内が鮎を食べているところです。昔、幼少の頃、多摩川の天然鮎を沢山食べたことを思い出すそうです。
それはそれとして、このように利根川で取れた鮎を川風に吹かれながら食べる風習はもう無くなってしまうのです。夏の風物詩が一つなくなり、淋しくなります。

今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人)
===参考資料================
全国の鮎の簗場:http://www.yana215.com/entry11.html を調べると簗の名前、営業期間、地図などが出てきます。
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九州のヤナ
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2 コメント

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残念です (toboketaG)
2015-06-17 17:07:21
坂東簗は私がいつも走るサイクリング道路の近くにあります。高崎にも簗瀬簗というのが烏川にありましたがしばらく前に閉鎖。上流に行くと旧赤城村にありましたが、最近はやっているのでしょうか?これで群馬県を流れる利根川水系の簗は碓氷川の磯部温泉簗だけになってしまいました。しかし天然鮎ではないようです。
数年前に旅の途中で寄った新潟県堀の内を流れるの魚野川の簗は素晴らしかった。簗に打ち上げられる鮎を子供たちが夢中で捕っていました。(小千谷市の手前)
最近の利根川 (toboketaG)
2015-06-17 17:30:34
最近の利根川の様子をお知らせします。
鮎は冷水病とかで殆どいなくなり、この時期アユ釣り師のさおが重なりあうような時もありましたが、15年ほど前から次第に釣れなくなり、今は殆ど釣り師の姿を見かけません。
秋口になるとサクラマスの遡上があるようで、長い竿やリールで川に入る姿を群馬県庁裏あたりで見かけます。知り合いの話だと殆ど釣れないがかかるとかなりの大物の場合があるということです。したがって釣りの対象としての利根川は殆ど消えてしまったといっていいでしょう。
治水は大切なことですが、ダムに貯えられた下層の冷えた水を放流することで水温が下がってしまっているという説明を沼田あたりのおとりアユの取扱店が話していました。これも10年前のこと。
利根川の役目は農業用水と東京都民への水の供給となってしまいました。でも渋川より上流に行けば木々の緑に彩られた崖を縫って流れる風景は素敵です。
なお私の知識ではアカハラとハヤは同じ魚だと思います。産卵期になるとハヤの腹部は赤く変色します。
正式名称はウグイですが高崎あたりではクキと呼んでいます。

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