後藤和弘のブログ

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中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

薄幸の画家たち、山内龍雄と韓国の朴壽根のはなし

2017年08月07日 | 日記・エッセイ・コラム
今日は日本ではあまり有名ではないが日本と韓国の二人の幸薄かった画家をご紹介したいと思います。
山内龍雄氏(1950年ー2013年)と韓国の朴壽根氏(1914年~1965年)のことです。
二人の絵画には東洋的な無常感が漂い、何故か共通な基底があるようです。
それではは早速、山内龍雄氏の絵画を示します。

1番目の写真が山内龍雄氏の油彩画です。

2番目の写真は山内龍雄氏の絵画の個展の様子です。

3番目の写真は朴壽根氏が描いた韓国の農村の「洗濯場」(37×72cm)です。農村の小川で数人の農婦が洗濯している光景です。非常に単純化したフォルムにしみじみとした情感を漂わせています。

4番目の写真も朴壽根氏が好んで描いた韓国の農村風景です。

5番目の写真も朴壽根氏の絵です。1957年作の水彩画(24.5×30cm)です。彼はその場の大気を描いています。

この山内龍雄氏と韓国の朴壽根氏は貧しい生涯を送りながら自分の考える美を描き続けたのです。その篤い信念が現在も人々の心を打つのです。

6番目の写真は北海道で孤独を通した山内龍雄氏の家です。山内龍雄は家庭を持たず、生まれ育った北海道上尾幌の野原の一軒屋でただ一人生活し、絵を描いていたのです。集落から離れ、車で5分間は走らなければ人の気配がするところまで到達しません。その集落にしても店舗は一軒もないのです。「50メートル先の木の実がポツンと落ちる音が聞こえる」静寂の中に住んでいたのです。

7番目の写真は山内龍雄氏の写真です。北海道厚岸町上尾幌のアトリエにて。出典はhttp://www.yamauchitatsuo.net/ryakureki.html です。

8番目の写真は朴壽根氏と家族の写真です。1940年代、隣の家の娘であった金福順と結婚し、長女が幼かったころの朴壽根一家です。彼の後ろには多数の絵画作品が立てかけてあります。この写真に写っている朴壽根の顔は素朴です。

さて山内氏の作品を収集し、世界へ紹介し、藤沢市に山内龍雄芸術館を私財を投じて作ったのが須藤一實氏でした。神奈川県の藤沢に作ったのです。
一方、朴壽根氏の記念館は韓国にある朴壽根美術館です(https://ameblo.jp/panda-pongpong/entry-12109384865.html)。
彼は12歳の時、ミレーの「晩鐘」を見て、電撃を受け「私はミレーのような画家になる」と決心したのです。そしてそのミレーの精神を一生忘れずに描き続けたのです。
彼は貧しいキリスト教徒の家に生まれ、江原道の楊口で小学校を卒業したのです。学歴はそれだけでした。
それでも、その小学校には日本人の校長がいて、その校長先生が朴壽根の描く図画を絶賛し、画家になるように薦めたのです。
朴壽根の家は貧乏で、上級の学校へは行けません。そんな折に偶然目にしたミレーの「晩鐘」に感動を受け、日本人の校長先生の薦めに従う決心したのです。それは1926年のことでした。
日本の領有時代の当時、何の縁故も人脈も無かった彼には「鮮展=朝鮮美術展覧会」が唯一の作品発表の場でした。
最初に「春が来る」という水彩画が1932年に入選し、その後油絵も数回入選しました。
「鮮展」図録に掲載された彼の出品作は、農村の風景と女性たちの生活を主題にした作品が大多数で、戦後の韓国独立後の作品まで同じ作風で描かれているのです。
彼の絵画を見ると日本による領有も第二次大戦も朝鮮動乱も一切感じられません。
素朴で平和な人々の営みを静かに描いているだけです。しかし何か人生の哀歓が浮き上がってくるのです。

二人の画家の人生の軌跡をみると、心が静まります。嗚呼、こんなにもしみじみした人生があるのだと感じ入ります。
少し長くなったので終わります。あとは末尾の参考資料に記載します。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
===参考資料===================================
(1)山内龍雄芸術館、http://www.yamauchitatsuo.net/

(2)画家、山内龍雄の軌跡
1950年 北海道 厚岸町上尾幌に生まれる
1971年 初めて筆をとる
1984年 須藤一實と出会う
1988年 須藤との二人三脚が始まる。山内龍雄を紹介するための画廊 ギャラリー・タイム設立
    ギャラリー・タイム主催で初めての山内展を銀座で開催 以降、毎年開催
1990年 ギャラリー・タイムより「山内龍雄画集」発行
1992年 代表作「老賢者と少年」ができる

2007年 ギャラリー・タイムより「YAMAUCHI Tatsuo」画集を発行
    アートマークギャラリー(オーストリア・ウィーン)で山内龍雄展 開催
2008年 ミューワ美術館(オーストリア・グラーツ)で山内龍雄展 開催
    芸術家協会(ドイツ・インゴルスタット)で山内龍雄展 開催
2009年 学学文創志業大楼(台湾・台北)で山内龍雄展 開催
    ギャラリー・タイム 京橋2丁目に移転
2010年 芸術家協会(オーストリア・ザールフェルデン)で山内龍雄展 開催
2013年 釧路市内の自宅アトリエにて逝去

2016年 神奈川県藤沢市に山内龍雄芸術館開館

(3)孤高の画家、山内龍雄の孤独な私生活:
http://members2.jcom.home.ne.jp/myanagi/jcom_yamauchi_002.htm より転載。

(4)朴壽根の生涯:
http://jpn.gwd.go.kr/gw/jpn/sub03_02_02

(5)朴壽根生誕100周年記念展示会がソウル、仁寺洞のカナインサアートセンターで開催されました。2014年1月17日より3月16日までの約100日でした。展示作品は油絵90余点、水彩画とデッサンが30余点で合計120点以上展示されています。

(6)朴壽根氏の記念館は韓国にある朴壽根美術館です(https://ameblo.jp/panda-pongpong/entry-12109384865.html)。