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欧州の難民問題はシリア強奪を欧米が諦めれば解決出来る

2015-11-04 13:12:18 | 資料

ヨーロッパはなぜロシアのシリア政策を支持する必要があるのか

2015年11月 4日 マスコミに載らない海外記事

Finian CUNNINGHAM
2015年11月1日 | 00:00
Strategic Cultural Foundation

ロシアは単純かつ簡潔に述べた。もし難民危機を解決したいのであれば、ヨーロッパはシリア紛争を終わらせる必要があると。統合的な解決は、外国に支援された政権転覆を狙う秘密戦争を打ち負かす、主権を有するシリア政府を尊重することを意味している。

これは、自らの政治的将来を決定するシリア国民の権利を尊重することを意味する。そして、またシリアのバッシャール・アル・アサド大統領を打倒するというワシントン、ロンドンとパリの違法な狙いを、ヨーロッパが拒否することを意味する。要するに、ヨーロッパが、シリアに対する政策で、ロシアと組むことを意味している。

ウラジーミル・プーチン大統領は、モスクワに、ドイツのジグマール・ガブリエル副首相を迎え入れた際、シリアに対するロシアの立場を繰り返した。まるでモスクワ発言の重要性を強調するかのように、今週、欧州連合諸国間の関係で縫い目がほつれるような新たな展開をみせた。

未曾有の難民の人数を巡るEUバルカン諸国間の緊張は、緊密な文化的結びつきがある二大筋金入りEU加盟国であるドイツとオーストリアを反目させるほどにまで悪化した。国境を越えて流入する難民を規制するため、国境沿いに塀を作ることを予定している二番目のEU加盟国となったことを、オーストリアが発表した後に最近の口論がおきた。

ドイツのトーマス・デメジエール内相は、オーストリアの最近の動きを、“常軌を逸した行動”だと呼んで激しく攻撃した。ベルリンは、ドイツが引き受けるよう、オーストリアは、国境で“夕暮れの難民投棄”をしているとまで非難した。一方、ウィーンは、メルケル首相が、“門戸開放政策”で移民の流れを奨励しているとかみついた。

これは、主な根源がシリアにおける四年間の戦争に由来する移民である難民危機に起因するEU内部における関係悪化のもう一つの兆候だ。フランスの新聞ル・フィガロは、国境に塀を設置するというオーストリアの決定を、EU圏内での人々の自由な移動を保障する根本的な協定“シェンゲン協定を脅かす”ものだとして、強烈に非難した。

オーストリアの動きは、国境の塀を構築し、機動隊や軍の要員を配備するというハンガリー、スロベニア、クロアチアとブルガリアの決定に続くものだ。難民に対する高圧的な警備戦術の報道は、ブリュッセルで大きなろうばいを引き起こした。ドイツのドイチェ・ヴェレ新聞は今月始め、彼の反移民政策と受け取られるものに対して“忍び寄る独裁制”を監督していると、ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相を非難する記事を載せた。

欧州委員会大統領ジャン=クロード・ユンケルは、そのような手段はEUの精神に反すると言って、難民を締め出す劇的な傾向を非難した。ヨーロッパの縫い目はほころびつつあるというのが、暗黙の了解だ。

一方ドイツ国内で、メルケルの与党キリスト教民主同盟は、有権者が余りに緩い難民受け入れ政策と認識するものを巡り、圧力を受けている。バイエルン、ハンブルクとドレスデンで反移民抗議行動が行われた。しかも激怒しているのは極右ペギーダだけではない。

世論調査では、中道派のドイツ人の間でさえ、ドイツにやってくる外国人の急増を巡り、不安が増大していることが分かっている。ある世論調査では、ドイツ人のわずか三分の一しかメルケルの亡命希望者への“門戸開放”政策を支持していないことが判明した。今年ドイツは、800,000人の新たな亡命希望者を処理すると報じられている。数値は150万人にのぼる可能性がある。一方イギリスとフランスは、それぞれ20,000人、30,000人という比較的取るに足りない人数を受け入れると発表した。しかも、こうした僅かな人数でさえ、UKIPと国民戦線のような反EU政党に選挙上の弾薬をたっぷり与えることになっている。

この観点から見れば、ヨーロッパは、シリア危機に対する解決を見いだす必要があるというロシアの忠告は極めて重要だ。もしシリア紛争が荒れ狂い続ければ、ヨーロッパを圧迫している難民の人数は増大し続け、それはやがてEU加盟国内の、実にとげとげしいいさかいや分裂を確実に招く。シリア紛争と、付随する難民危機が、文字通り、ヨーロッパを引き裂き、EU圏の存在そのものを危うくするという警告は誇張ではない。

難民に対する高圧的な警備や官僚の敵意は確かに遺憾ではあるが、同時に、未曾有の難民流入に直面する“最前線”のEU諸国における不満にも理由はある。比較的少ない人口と弱体な経済からして、スロベニアのように、わずか200万人しか国民がいない国々が、戸口に絶望的な人々が突然急増したのを、歓迎されざる難題と思うのは無理もない。

ハンガリーのオルバン首相も、トルコは安全な国なのに、一体なぜそれほど多数の難民が、領土を通過してヨーロッパに向かうのを、アンカラ政府によって許されるのだろうかという妥当な指摘をした。

しかも、歴史的人数の難民の源泉であるシリア紛争で、大半のヨーロッパ諸国は、その発生に全く関与していない。

イギリスとフランスは、十分な証拠によって、アサド大統領を打倒するためのシリアでの紛争を醸成し、油を注いでいると非難されている。ロンドンもパリも、中東における根気強い覇権の野望のため、ワシントンが率いる政権転覆計画を追求する上で。2013年に、元フランス外務大臣ローラン・デュマが、2009年、イギリス当局から秘密裏に、アサド政権打倒の秘密計画を持ちかけられたことを明らかにしたことを想起されたい。それは、欧米マスコミが組織的にウソをついてきた“民主主義志向の反乱”という装いの下、シリアで外国が支援する反乱が勃発する、少なくとも二年前のことだ。

過激派傭兵によって遂行されている欧米、アラブ諸国と、トルコが支援するシリアにおける秘密戦争の残忍な現実が、覆い隠すには余りにはっきりしてしまったため、“民主主義志向の抗議行動”という説明は雲散霧消した。

ワシントン、ロンドン、パリや地域同盟諸国が今週ウィーンでのシリア“和平交渉”で、ロシアやイランと共に集まったが、欧米諸国が政権転覆の狙いを放棄した兆しはない。

アメリカのジョン・ケリー国務長官と、イギリスの相手方フィリップ・ハモンドは、アサドは“退任すべきだ”という傲慢な要求から、放棄される権力の移行過程へと軟化したように見える。しかし狙いは依然として政権転覆だ。一方、フランスは、アサドの即時退任を要求し続けている。フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、ウィーンでの交渉前に“アサド退陣の明確な線表”を要求した。

だから、ワシントンとそのヨーロッパの同盟諸国がシリア危機の“解決”について語る際、彼らが意図しているのは、彼らが長年抱き続けてきたシリア政権打倒計画という最終結果を実現させることだ。これでは紛争の平和的解決を見いだす確約にはならない。更なる政治的手段による紛争の追求だ。しかも、これはシリアの国権に対する言語道断の侵害であることを指摘しなければならない。

アメリカが率いる狙いで確実なのは、シリアにおける紛争を荒れ狂い続け、難民の人数は増大し続けるだろうことだ。今週国連は人道支援が緊急に必要なシリア人の人数を1350万人に改めた。全国民の半分をはるかに上回る。更に一体何百万人が悲惨な人々に仲間入りするのだろう? 更に一体どれほど多くの人々が最終的にヨーロッパに向かうだろう?

ヨーロッパの運命は、その手が既にシリア人の血にまみれている二つのアメリカ追従国家、イギリスとフランスにまかせるべきではない。ヨーロッパの国々にとって、自らが招いたわけではない難民危機という結果を背負い込まされるのは受け入れ難い。

シリア紛争の解決には、ワシントンと同盟国が国際法を順守し、即座に彼らの不法な政権転覆計画と、シリア国内で、彼らの戦争の犬たちの吠え声を止める必要がある。それは難民危機に対する全体的解決でもある。国際法の順守。実に単純ではないか?

ロシアとイランは、シリアの国権は尊重されるべきだと主張して、この解決を明確かつ説得力をもって述べている。この政策で、ロシアとイランを支援し、ワシントン、ロンドンとパリという犯罪的政権転覆枢軸と縁を切って指導力を示すのは、ドイツや他の好戦的でないEU諸国次第だ。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2015/11/01/why-europe-needs-back-russia-syria-policy.html

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-2965.html

サウジアラビア、カタール、クウェートやアラブ首長国連邦等の湾岸アラブ諸国のシリア難民受け入れはゼロだ。

4年前、シリアの経済改革を要求して行われた“数百人”の抗議行動が、一体なぜ、恐ろしい宗派内戦へと悪化し、過激主義を煽り立て、現在、世界を悩ませ、世界で二番目に大きな難民危機を生み出しているのだろう?

マスコミは、シリアのバシャール・アサド大統領の樽爆弾を非難し、政治評論家達は更なる対ISIS空爆と、より厳しい対シリア経済制裁を呼びかけ、危機が始まって4年目なのに、大半の人々は、この戦争が、一体どのようにして始まったのか全く知らない。

この“内戦”は、宗教を巡るものではない

シリアへの外国の介入は、シリアでの反乱開始の数年前に始まった。ウイキリークスは、内戦を引き起こして、シリア政府を打倒するというアメリカの計画と、こうした命令を、テル・アビブから直接受けていることを明らかにするアメリカ国務省の2006年の漏洩電報を公表した。この漏洩は、サウジアラビア、トルコや、カタールや、エジプトの様な国々とのアメリカの協力関係同盟が、スンニ派と、シーア派の分裂を利用して、シリアを分割し、イランとヒズボラを弱体化する為、シリアを不安定化させるのに、宗派心を利用するためであることを暴露している。イスラエルも、ゴラン高原占領を拡張する石油採掘を増加する為、この危機を利用しようとしていることが明らかにされた。

BBCや、AP通信等の主要マスコミによれば、シリアで行われたとされる抗議行動は、わずか数百人の人々によるものだったが、更なるウイキリークスが公開した電報が、2011年3月という早い時期に、こうした抗議行動そのものを引き起こす為の、シリア国内でのCIAの関与を明らかにした。

抗議行動は、わずか数カ月後に、CIAとつながる何百もの武装抗議行動参加者と化し、デモが拡大し、シリア人でない武装反政府集団がシリアに押し寄せ、シリア全土を政府の厳しい弾圧が覆う中、アメリカ合州国、イギリス、フランス、カタール、サウジアラビアやトルコが、反政府派を組織し、武器を与え、資金供給して、自由シリア軍を形成する好機に飛びついたことが明らかになった。(わずか数カ月前、ウイキリークスが、サウジアラビアの諜報情報を公開し、2012年以来、トルコ、カタールとサウジアラビアが、シリア政府を打ち倒すべく、反政府派に武器を与え、資金を提供するのに協力して動いていたことをあきらかにした。)

“ヨーロッパに向けて、パイプラインを、東から西へ、イランとイラクから、シリアの地中海沿岸で通すか、あるいは、 カタールと、サウジアラビアから、シリアとトルコ経由という、より北回り経路にするかを巡って、戦いがおこなわれている。こう着状態のナブッコ・パイプライン、実際、南ガス回廊丸ごとが、アゼルバイジャンの埋蔵量しか裏付けがないため、ヨーロッパへのロシアの供給には決して拮抗できないことを悟り、サウス・ストリーム建設を阻止する為、欧米はペルシャ湾からの資源で置き換える必要にせまられていた。シリアはこの連鎖における主要リンクであり、イランとロシア寄りの傾向がある。そこで、欧米の首都で、シリア政権は倒して変える必要があると決定されたのだ。

石油、ガスと、パイプラインが問題なのだ!

実際、ヨーロッパのガス市場が、ロシアの巨大ガス企業、ガスプロムの人質に取られてしまうのではという懸念の中、ロシア、アメリカと欧州連合の間の緊張が高まった。ロシアから離れ、ヨーロッパのエネルギー供給を多様化するには、提案された、イラン-イラク-シリア ガス・パイプラインは、不可欠なのだ。

トルコは、ガスプロムの二番目に大きな顧客だ。トルコのエネルギー安全保障構造丸ごと、ロシアとイランからのガスに依存しているのだ。更に、トルコは、ロシア、カスピ海-中央アジア、イラクや、イランの石油、さらにはガスの、ヨーロッパへの輸出における戦略的分岐点になるという、オスマン帝国風な野望を抱いている。

2013年8月、ガーディアンは、こう報じた。

“アサドは、ヨーロッパ市場への供給目的で、重要なことに、ロシアを回避しながら、イランのサウスパース・ガス田と隣接しているカタールのノース・フィールドから、サウジアラビア、ヨルダン、シリアを経由し、トルコへ向かう、カタールと、トルコが提案したパイプラインの協定に署名することを拒否した。アサドの論理は、‘ヨーロッパへの天然ガスの最大供給国である [彼の同盟]ロシアの権益を守るため’だった”。

http://www.theguardian.com/environment/earth-insight/2013/aug/30/syria-chemical-attack-war-intervention-oil-gas-energy-pipelines

シリアが、自国のエネルギー戦略において極めて重要な部分であるのを理解しているトルコは、このイラン・パイプライン案は改め、 究極的に、トルコや湾岸アラブ諸国のガス供給支配の追求を満足させる、カタール-トルコ・パイプライン提案に協力するよう、シリアのバッシャール・アサド大統領説得を試みた。しかし、アサドが、トルコの提案を拒否した後、トルコと同盟諸国は、シリア“内戦”の主要計画立案者となった。

https://www.youtube.com/watch?v=G1p_tFnKqMA

現在進行中の戦略の多くは、さかのぼって、アメリカ軍が資金を提供している2008年のRAND報告書“長い戦争という未来を明らかにする”の中で記述されていた。

http://www.rand.org/content/dam/rand/pubs/monographs/2008/RAND_MG738.pdf

アメリカ、フランス、イギリス、カタール、サウジアラビアと、トルコ - 別名、新“シリアの友人”連合が、公式に、ガス・パイプラインへの署名をアサドが拒否した後、2011年から2012年の間、シリアのバッシャール・アサド大統領打倒を、公式に呼びかけ、シリアを、人道的危機に押しやるいわゆる“穏健”反政府派に与えるべく資金と武器が、シリアに流入した。反政府集団は、あれやこれやの連中を組織したもので、その多くは外人戦士で、多くがアルカイダと同盟していた。

シリアは宗教的に多様なので、いわゆる“シリアの友”は、アサド打倒の為の“分割して統治”戦略の公式として宗派心を煽った。アメリカが支援する“穏健”反政府派による、アラウィー派が、スンニ派が多数派の国家を支配しているという主張が、スンニ派解放の主張となった。

この戦争は、大衆には、スンニ派-シーア派紛争として売り込まれているが、ISISや、 シリアのアルカイダ分派、アル・ヌスラ戦線等のいわゆるスンニ派集団や、“穏健派” 自由シリア軍までもが、無差別に、シリアのスンニ派、シーア派、キリスト教徒やユダヤ人を標的にしている。同時に、正に同じ諸外国が、国中をおおっている多数派のシーア派による民主主義推進抗議行動に対する暴力的弾圧で、スンニ派だと主張しているバハレーン政府を支援し、武器まで与えている。

シリア政府軍自身、80パーセント以上がスンニ派で、本当の狙いの動機は、政治的なものであって、宗教的なものではないことを示している。

これに加え、アサド一家は、大半のシーア派が、この二つは無関係であることに同意しているのに、マスコミが、シーア派とひとまとめにしているイスラム教の宗派、アラウィー派だ。更に、アサド一家は、非宗教的で、非宗教国家を支配しているとされている。アラウィー派を、シーア派として見なすのは、紛争の為に宗派的枠組みを押しつける一つの方法に過ぎない。それが、シリア-イラン同盟が実際は経済関係なのに、宗教に基づくものだという前提を許容してしまう。

この枠組みは,イランが、イラク、シリアとレバノンに広げているとされるシーア派の影響力から自らを解放する為のスンニ派革命として、入念に仕立てられたシリア紛争だ。

だが、真実は、シリアのスンニ派社会は分裂しており、多くの人々が、自由シリア軍、ISISやアルカイダ等の集団に加わる為にくらがえした。また先に述べた通り、80パーセント以上のアサド軍兵士はスンニ派である。

◆米露、シリア空爆の衝突回避策で合意

2015年10月21日 BBC News

ロシアがシリアに投入した戦力

ロシアと米国は20日、シリアで過激派勢力「イスラム国」(IS)に対して行う空爆で、両国軍機の衝突を回避する措置に合意した。

米国防総省のピーター・クック報道官は、ロシアの要請で合意文書は公表しないとしたが、両国の連絡方法や、地上にホットラインを設置することが決まったと述べた。ただし、空爆対象に関する情報は交換しないという。

クック報道官はさらに、今回の合意で両国軍機が「安全な」距離を保つことが保障されるとしたが、具体的な距離が設定されたかどうかは明らかにしなかった。

ロシア国防省のアナトリー・アントノフ次官は、合意文書には「米国とロシアの軍機の事故を防ぐための、多くのルールや規制が含まれる」と述べた。

ロシアは先月30日からシリアでの空爆を開始している。米国は先週、両国の軍機が目視できる距離(15~30キロメートル)まで接近したことがあったと発表した。

合意をまとめるまでに3週間かかっており、内容も限定的だ。空爆そのものや空爆対象について調整はせず、軍事情報も交換しない。ただ単に軍機が接近しすぎないようにするのを目指している。

発表文書では、合意には操縦士としてのプロフェッショナルな行動の要請や、交信につかう具体的な無線周波数、地上での通信線が盛り込まれた。地上での連絡はバックアップとして想定されている。

合意はシリア領空内のみを対象としており、トルコが懸念するロシア軍機によるトルコ領空の侵犯については触れていない。しかし、米国主導の有志連合とロシアの軍機が衝突するリスクを軽減している。双方が合意を守ればの話だが。

(英語記事:US and Russia sign deal to avoid Syria air incidents)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151021-34589879-bbc-int

◆唯我独尊の米国には見えないロシアの乾坤一擲
シリア空爆と国連演説、プーチン大統領のしたたかな戦略

2015.10.22(木) W.C. JB PRESS

ニューヨークの国連本部で開かれた潘基文事務総長主催の昼食会合で、乾杯するウラジーミル・プーチン露大統領(右)とバラク・オバマ米大統領(左、2015年9月28日撮影)〔AFPBB News〕

 シリアの反政府勢力に対して、ロシアが空からの攻撃を始めてから3週間が経った。

 この攻撃開始に当たって米国へ仁義を切るために9月28日にニューヨークで行われた米露首脳会談の終了後、わずか一昼夜余の間に憲法に従う上院の対外軍事行動承認と、それに続くウラジーミル・プーチン大統領の爆撃指令を完了させ、9月30日には作戦が開始されている。

 ロシアはシリアへ、それまでに攻撃機50機以上、要員2000人前後をシリア政府の要請に基づく形で送り込んでいたとされる。

 この陣容による攻撃開始後の成果について、ロシア国防省は10月16日までの1週間だけで、攻撃機が394回出撃し、IS(イスラム国家)を称する占領者たちの通信・野戦施設ほか350カ所近くを破壊した、と発表している。

周到な準備を進めていたロシア

 カーネギー国際平和財団モスクワ・センターのドミトリー・トレーニン所長によれば、ロシアがシリアへの直接介入に向かって舵を切ったのは、9カ月前の今年の始めだった。

 その時点ではまだ方向性の決定であり、実際にやるか否かはその条件が整い次第、であったのだろう。その方針の下で、米国も含めた対IS国際統一戦線結成が第1案、これが達成されない場合に第2案のロシア単独での攻撃開始、という筋書きが組まれていったものと思われる。

 どちらの案でもロシアの空爆実施が含まれ、これには大統領府長官のセルゲイ・イワノフ氏と国家安全保障会議のニコライ・パトルシェフ議長が関わった、と別のロシアの事情通は述べている。

 以下、諸報道によりその後の経緯を見ると、米国をはじめとする国々のバッシャール・アル=アサド大統領即時退陣の主張を何とか押しとどめ(見返りにロシアとイランも、彼の再選は認めないという点で譲歩)、その一方で軍事行動への準備も進めていった。

 アサド政権の命脈が尽きたのではないか、との見方が広まりつつあった6月に、イランの革命防衛隊とレバノンのヒズボラがシリアでの戦力を増強し、その後これに呼応するかのようにシリアのラタキアでロシアの空軍基地増強も進められたようだ。

 7月末にはプーチン大統領の10年ぶりとなる国連総会出席が関係先に通告され(その時点で多くの外交筋は、ウクライナ問題で精々いつもの対米批判をやるだけなのでは、と予想したのみ)、外交専門誌編集長のフョードル・ルキヤノフ氏は、遅くとも8月までには空爆実施具体案が準備され、それに対して米国がどう出るかをロシアは窺い、その結果、互いに干渉しない、という合意がなされたのだろう、とメディアに述べている。

 確かに、9月28日のバラク・オバマ大統領の対プーチン会談までには、米国も徐々にではあるがロシアの対IS攻撃開始を容認する方向に傾いていたようだ。

 ジョン・ケリー国務長官はアサド退陣時期については交渉の余地ありと発言し始め、アシュトン・カーター国防長官も3月の就任以来、初めてロシアのセルゲイ・ショイグ国防相とシリア問題での電話会談を行っている。

 ロシアの描く筋書きは、遅くとも来年3月までにアサド政権の勢力を回復させ(人口が集中する地域と重要都市のアレッポを確保すれば十分で、国土の大部分を占める過疎地は当座の目標外)、反政府側(少なくともISは除く)との和平交渉に持ち込ませることに置かれている。

 その成否は、地上軍投入は行わないという前提のロシア軍の援助の下で、どこまでシリア政府軍が自力で失地回復を行うかにかかる、とされる。

米国の主張

 だが、9月28日の首脳会談を経て上述のようにロシアが即座に行動を起こし始めると、ロシアの攻撃対象がISではなく、米国やトルコ、湾岸諸国などが支援する「自由シリア軍」他の反政府勢力になっている、と米国は強く批判し始め、これに英仏独とサウジアラビア、カタール、トルコも同調する(ロシアはこれを否定したが、この点ではどうも分がよくない)。

 首脳会談へオバマ大統領がどのような姿勢で臨み、爆撃開始を通告するプーチン大統領に対して何と答えたのかは定かではないが、IS殲滅では合意できても、アサド政権をどれだけ延命させるかでは見解が一致していなかったのかもしれない。

 あるいは、米国側内部でプーチン大統領の動きに我慢ならんという面々が後になって突き上げたのだろうか。その真相がどうであれ、表に出ている動きだけで見れば、米露間の対立は深刻化の様相を呈し始めた。

 米側は次のように主張している。

●これまでに20万人以上の国民を殺戮したアサドを、欧米のみならずシリア国民の大多数や周辺国ももはや支持しておらず、彼に今後も国をまとめることなどできるはずがない。

●IS以外の反政府派の勢力を削いだりすれば、それだけISを拡大させ、ISへの転向者や結果として難民の数をさらに増やすだけとなる。

●アサド政権を助けようとするロシアの介入は、これまでの米国とその仲間による対ISへの攻撃とは趣旨が異なり、従ってシリア問題の政治決着と早期終結を困難なものにしてしまう。

 オバマ大統領は例によって、プーチン大統領への個人攻撃の形で、ロシアはこれまでの自分の戦略ではシリアを維持できないという、しょせんは弱い立場から首を突っ込んできたに過ぎず、こうした動きは必ず失敗する、とこき下ろす。

 米国は、ロシアに対抗する形でシリア内のクルド人勢力2万人ほかの反アサド派への武器供与を開始する。そして、ロシアが提案した反IS統一戦線結成への協力を拒み、この問題を協議しようとロシアが持ちかけたドミトリー・メドベージェフ首相を団長とする訪米団の受け入れも拒絶する。

 だがプーチン大統領は怯む気配を見せない。彼の基本的な立場は、日本で大して注目されなかったものの、9月28日の国連総会で行われたその演説に示されている。

 この演説については、すでに何人かの識者が触れておられるので(1、2)、本稿では詳細を避けるが、総会の演壇から、「アフガニスタン、イラク、リビア、そしてシリア、といった具合に、どれ一つまともな結果が出せていないではないか、『民主主義』革命の輸出でどれだけ多くの国を悲惨な状態に追いやったのかを、君たちはまだ分かっていないのか」と彼は欧米に詰め寄っている。2007年来の彼の持論となる、米国の一極支配思想への痛烈な批判である。

プーチンに差をつけられたオバマ

 そのうえでシリア問題を解決する道筋として、難民問題も発生地での正統政権の支配力を確立せねば止められるべくもない、として、これまでのアサド政権を相手にしないという欧米の手法が大きな誤りであったと指摘、そして今必要なのは、シリア内で正統政権を維持しつつ、ISなどのテロ集団へ国際的な統一戦線結成で対抗することである、と提言する。

 この演説の内容は、かなりメリハリが効いたものになっている。それを、プーチン演説に先立って行われたオバマ演説と比較すれば、シリアをはじめとする中東で現実に何が起こっているのかという認識力の面で、オバマ大統領はプーチン大統領に少なからず差をつけられてしまっているようでもある(プーチンはこの演説が行われている時に漸くニューヨークに到着したばかりで、直接これを聞いていない)。

 傍若無人に独り善がりの思想を力ずくで振り撒き、その結果の始末も自分でできていない――。

 なるほど、これまでイラクでもシリアでも米国は支持する側の軍の養成に失敗し、最近はアフガニスタンからの撤退政策も失敗に終わっている。どれもこれも、オバマ政権が結末をつけられずにいる課題として残ってしまった。

 そうなった理由を、オバマ大統領の中途半端な政策が中東での米国の存在感低下を生んだ結果に求める声もあるが、さらにその政策の根底まで突き詰めてみれば、欧米流の民主主義が世界の地域・民族を超えての至高の価値観とならねばならないと信じ込む米国の普遍主義思考に行き着く。

 その政策は、いわば信仰に発しているようなもので、これに敵への恐怖感(ヒラリー・クリントン氏は、恐怖ではなく事実に基づき議論をしよう、と論じる)が加わると歯止めも効かなくなる。

 しかし、それは世界各地域での特殊性への知見や注意をかき消すことで、現実にそぐわない発想や政策を結果として生んでしまう。

 例えば、シリアには過激な反体制派のISと穏健な反体制派とがあり、後者を援護してアサド政権を打倒すべきと米国は主張するが、そもそも反体制派(クルド、アルカイダ系組織、元シリア軍兵士等の「自由シリア軍」、IS、など)を綺麗に過激と穏健に分けることなど不可能以外の何物でもない、とロシアは指摘する(中東の専門家にも同様の見解が多い)。

 であれば、穏健派に供与したはずの武器が、いつ過激派の手に移ってもおかしくはない。○○派と称される面々が存在していても、次の瞬間に彼らは××派に衣替えしているかもしれない。それが現実であり、そもそも米が主張する「自由シリア軍」なるものすらが本当に存在するのかも疑わしい、と露側は論じる。

 こうした点について、米側も西側のメディアもこれまでまともな反論なり説明なりを行ってきているようには見えない。正邪の二元論では解きようもない連立方程式だからだろう。ISと戦っている限り、タリバンや9.11の犯人とされるアルカイダは米国の味方になるのか?

ソ連の失敗になぜ学ばないのか?

 かつてソ連はアフガニスタンで失敗したが、相手を共産主義と言うプリズムを通してしか見ずに舐め切ったことがその敗因だったとすれば、米国は今、民主主義という容器に相手の身体的特徴などお構いなしに無理矢理にでも押し込めようとして同類の過ちを犯している――。 プーチンにはそう見えるのだろう。

 総会の演説で彼は欧米に向かって、「なぜソ連が犯した誤りを学ぼうとしないのか」とすら言ってのけている。

 旧ソ連圏に「民主主義」革命の輸出を持ち込んでくることは、ロシアにとっても迷惑極まりない。しかし、プーチン大統領の対応を見ると、米国のやり方のナイーブさや無知に呆れて愛想を尽かしていることからの嫌悪感(あるいは侮蔑感)の方がむしろ強いのでは、とすら思える。

 対する米国は、ロシアの空爆開始直後の一斉批判に続く二の矢が継げていないようだ。それまでロシアを俎上に載せて批判した問題点の事実関係も、何やら曖昧になってきてしまっている。

 メドベージェフ首相の訪米団受け入れ拒否も、そのまともな理由が説明されていない。ロシアのメディアが評するように、今どうロシアに(ひいては中東問題に)対応すればよいのかが即座には分からずにいるようでもある。

 加えて、ロシアがイラン、イラク、シリアとの対IS共同戦線を結成したこと、特にイラクがこれに加わったことが米国には大きな衝撃だっただろう。これまで投入してきた膨大な人的・金銭的資源はいったいどこへ消えてしまったのか。

 イラクは米国の支援不足に十分過ぎるほど失望していたと言われる。その理由は西側のメディアが書くような強腰の軍事介入へのオバマの不作為だけではなく、中東情勢をどう扱ったらいいのかという点でのあまりに大きな米国の知見不足だったのではないだろうか。

 プーチン大統領の対米批判はそれとして、ロシアが今回の空爆参入に踏み切った直接的な動機や理由について、西側でも露側でも様々な解釈がメディアに登場する。

●アサド政権の救済と中東でわずかに残された自国の勢力圏・軍事基地の確保
●ウクライナ問題から関係者の目を自国のイメージアップによって逸らすこと
●国内の政権支持つなぎ止め
●CIS諸国・ロシアへのIS浸透阻止
●シリアをリビアの二の舞にしないことでロシアの世界での存在感を誇示

ロシアを見誤る米国

 米国では、これらのどの要素が主役なのか、そして、プーチン大統領が勝負に勝っているのかで、外交分析評価が分裂しているらしいが、実際にはどれも間違いではあるまい。

 これらのどれ一つをとってもロシアが考えていないはずはないし、そのいくつかが直接介入を現実的な検討課題に押し上げていったということなのだろう。

 そして、これらを満たしながらさらに先をプーチン大統領は見ているのではなかろうか。彼が狙うのは、ここで対米攻勢をかけて米の譲歩を引き出し、ウクライナ問題で始まった対ロシア経済制裁の解除や来るべき時代の露米関係への道筋確保、それにロシアの安全保障に関わる米国との合意(MD配置阻止や中東政策での共同歩調)といった大きな目標にあるように思える。

 皮肉なことに、オバマ大統領が弱腰で米外交を駄目にした、といった論が米国内で強まれば、それだけ余計にそれを打ち消すべく、次期米政権は恐らく対露強硬策を志向せざるを得なくなる。ネオコンの理論家たちも、再度表舞台に出るべく蠢動し始めたようだ。

 米国の新政権とさらに8年間も対立を余儀なくされるような状況を避けるためにも、強硬策には出て来ないと見られるオバマ政権を相手に一刻も早く話をつけてしまわねばならない。

 その米国と対ロシア、対中東政策で必ずしも歩調が揃っているわけでもない欧州は、ギリシャ問題の小康状態で一息つけるかと思いきや、怒涛の如き難民問題、さらにはVW(フォルクスワーゲン)の不祥事というオマケまでついてしまい、その体力も意思統一もヨレヨレの状態に瀕している。

 今なら、欧州を自分のペースに巻き込む可能性あり、とロシアは踏むだろう。

 急がねばならない理由はそれだけではない。空爆開始はロシアにとって相応のリスクも伴っている。

 まずは先立つもので、巡航ミサイルの投入は米国に戦闘能力で負けてはいないということを示す点で見栄えは良いものの、大変にお金がかかる。政府予算の緊縮に狂奔する財務省を押し倒して、2016年度政府予算で軍事費は唯一増額(Rb.1650億)項目となった。第一副首相のイーゴリ・シュヴァロフ氏は、これはシリア問題への介入とは関係ない、などと述べるが、それを信じる向きはいないだろう。

 IEA(国際エネルギー機関)や世銀は原油価格が2016年も低調に推移するだろうと予測しており、ロシア政府の台所は火の車に近づいている。どう転んでも長期戦に対応できる余力があるようには見えない。 

国内にスンニ派を多く抱えるロシアの事情

 戦闘が想定外に長引けば、国内での厭戦気分も高まるかもしれない。空爆に今は国民の7割近くが賛成していても、万一地上軍の派兵などに至れば、アフガン出兵の苦い記憶が呼び起されて、国民は簡単にはついて来なくなるだろう。

 特に2000万人とも言われるロシア内のイスラム(ほとんどがスンニ派)がこれからどう反応して動くのかも要警戒事項となる。露紙によれば、彼らはアサドがISよりマシなどとは全く見ていない。

 そのアサドを援護するということは、基本的には世のスンニ派を敵に回すことになるのだから、そのスンニの中のISという不良分子退治、という筋書きで辻褄合わせができる時間内で物事を処理しなければならない。

 クルドが絡んで複雑化するトルコとの関係をはじめとして、イスラエルやサウジアラビア、湾岸諸国と同時に関係を維持・強化するには、ビスマルクなみの業が必要とされるだろう。

 そして、最も重要なのは、米国をともかくはロシアとの協議のテーブルに着かせるという目的達成のために、間違ってもシリアを舞台とする米国との代理戦争にのめり込まないことである。

 こうした制約条件の中での作戦遂行である。

 オバマ氏のプーチン批判に同調する西側メディアの論調は、効果を得るためにロシアは長期戦に突入せざるを得なくなる、 結局は地上戦にも踏み切ることになる、それは米国と同じ誤りを犯すことでありソ連のアフガンの二の舞にもなる、どうせ失敗するに決まっている――とこぞって冷ややかである。

 だが、ブルッキングス研究所のリリア・シェフツォヴァ氏は、ソ連崩壊時も、エリツイン政権の結果についても、そしてリセットの行方についても、20年にわたって西側はロシアを理解し損ねてきた、と指摘する。今度も多くの論者の見解がその憂き目に遭うのかもしれない。

 ロシアは、米軍が2万人殺しても同じ数の兵士が流入してくるというISを独力で根絶するといった目標は、初めから持ってはいないだろう。中東を舞台に自ら軍事・政治の大冒険をやれるほどその中東を知り尽くしているとは思っていないし、イラクのISにまで攻撃を加える体制にもないはずである。

 何とか体裁の整ったシリア政府の再興(その結果でアサド大統領が退陣してもやむなし)と関係者の和平交渉に持ち込めれば(そして米国のこれまでの政策が誤っていたことを満天下に晒せれば)、それでことは成就するのである。

 換言すれば、民主主義の実現という米国の目標を批判はしても、それに代わる、来るべき中東社会のあるべき姿のロシア独自の像を持ち合わせているのかといえば、恐らくノーだろう。彼らにそれを求めても、返ってくる答えは「Inshallah(インシャ・アラー=すべてアラーの思し召し)」だけかもしれない。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45051



シリア強奪に失敗したオバマの企てた謀略が次々と暴露される

2015-11-03 10:12:06 | 資料

アメリカは、シリアに侵略の損害賠償をするべきではないだろうか

2015年11月 2日  マスコミに載らない海外記事

Eric Zuesse
Global Research
2015年10月31日

10月30日、金曜日、アメリカのバラク・オバマ大統領は、シリアはアメリカの国家安全保障に対するいかなる脅威でもなく、いかなる国も侵略していないのに、アメリカ特殊部隊兵士50人を、シリア領土に派兵するつもりだと発表した。実際、シリアは、アメリカ合州国やヨーロッパにも脅威となっているイスラム聖戦士に対して戦っているのだ。

アメリカは、シリアの選挙で選ばれた、欧米同盟国の世論調査でさえ、いまでも大多数のシリア国民に支持されていることを示している大統領を打倒するため、シリア(最初は爆撃で、そして現在は、最初の軍隊によって)を侵略している。 2012年、アル-ヌスラ(シリアのアルカイダ)に資金提供しているアメリカ同盟国のカタール政権が、シリアを調査すべく、世論調査会社を雇った際に判明したのは、55%のシリア国民が、アサドにそのまま大統領でいて欲しいと考えていることだった。更に、2015年9月18日に私が報じた通り、“世論調査では、シリア人は圧倒的にISISはアメリカのせいだと考えていることを示しており”こうした最近の世論調査はギャラップとつながっているイギリス企業によるものだ。

ロシアは、アメリカと対照的に、シリアを全く侵略してはおらず、選挙で選ばれた政権から、侵略をしているイスラム聖戦士や、アメリカ爆撃機に対する防衛戦争を、支援するよう要請されたのだ。そして、ロシアは現在要求された支援を行っている。

シリアを侵略し、世論調査では、いまだ大多数のシリア・スンナ派にさえ支持されているシリアのシーア派大統領を打倒しようとしているスンナ派勢力を支援する、一体どのような権利をアメリカは持っているのだろう? 私は皆無だと思う。結果的に、シリア政府は、アメリカ合州国から損害賠償を要求すべきではあるまいか? そういう要求は一体いつ出されるのだろう? そういう要求は一体どのような出されるのだろう? アメリカ爆撃による、シリア・インフラの損害は既に莫大だ。

アメリカは‘民主主義’を支持していると主張するが、実際は、全体主義でも、神権政治でも、王政でさえない、アサド政権を打倒しようとしている、二つの独裁的な全体主義神権王政と同盟している。もっとも、もし彼の父親が作った政党が、シリアの指導者になるよう彼を選ばなかったら、現在の指導者(バッシャール・アル・アサド)は権力の座についていなかっただろう。しかし、それは、絶対君主制で、支配権が、もっぱら聖職者に依存している、サウジアラビアやカタールとは、決して同じものではない。ところがアメリカは、反アサドで、この両国と同盟しているのだ。

アメリカは、もちろん、サウジアラビアのサウド王家、カタールのサーニー王家というスンナ派の諸王家が、シリアにもスンナ派政権を据えつけ、シリアをカタール(あるいはサーニー家)のガスと、サウジアラビア(具体的には、サルマン王)の石油がEUへ流れるパイプライン経路にするのを支援している。アメリカ合州国がこれを望んでいるのは、アメリカ政府が、ロシアの(非常に人気のある)ウラジーミル・プーチン大統領を大統領の座から無理やり追い出そうとしているからで、それを実現するため、ロシア経済の息の根を止めようとしているのだ。ロシアのヨーロッパへの石油とガス輸出を止めるのは、この戦略の重要な一環だ。

アメリカの狙いは、ロシアがそれで同盟国を失うことになる、破綻したシリア国家だ。そこで、10月13日、ブランドン・ターバヴィルは、“ロシアがISISを爆撃するなか、アメリカはシリアの民間発電所を爆撃”という見出しの記事を書いた。アメリカは、シリアを破壊しようとしている。ロシアはシリアを救おうとしている。そこで、ロシアはISISや他の聖戦士を爆撃しているが、アメリカはシリアのインフラを爆撃している。国を一つにまとめるためのインフラがなければ、破綻国家だが、それが、アメリカの目標だ。

アメリカは、これが狙いだとは発表していない。そうではなく、アメリカは単に、バッシャール・アル“アサド・シリア大統領は辞任すべきだ”あるいは“バッシャール・アサド抜きの新政府”を作るべく“アサド大統領が辞任すべき時は来た”と言うばかりだ。これは、ジョージ・W・ブッシュの“イラクでの政権転覆”というしつこい要求と同じだ。様々な国の指導者を置き換え、こういうことをしていると主張しても、ナチスがニュルンベルクで絞首刑になった戦争犯罪、侵略戦争ではないにせよ、武力侵略という国際犯罪にならない権利を、一体誰がアメリカに与えたのだろう?

一体どういう権限で、アメリカはこうしたことを行っているのだろう? 国際刑事裁判所は、一体なぜ公式に(大いに公式に)これを調査しようとしないのだろう?

掲載するようお送りしたのに、そのどれも掲載されなかった、私のニュース報道や解説を受け取ったアメリカのニュース編集者(100人以上だ)の一人でも、是非とも、各自のニュース報道で、公にこの疑問に答えていただけないだろうか? 私はここで各編集者の方々に問いたい。もしもアメリカが、こういうことをする権利を有しているとお考えであれば、公開で、一体なぜなのかをご説明いただけるだろうか?

あるいは、もし説明頂けないのであれは、読者なり視聴者なりの方々に、この疑問をお考え頂けるよう、この疑問を呈しているこの記事を是非掲載してもらえるだろうか?

この記事は、事実上、全てのアメリカ報道機関に送付されている。いずれかが掲載してくれるか、あるいは、彼らが一体なぜアメリカのシリア侵略を支持するのかを説明してくれるかどうか、見ようではないか。

調査ジャーナリスト、歴史研究者のEric Zuesseは、新刊「彼らは全然違う: 民主党対 共和党の経済実績、1910-2010」および「キリストの腹話術師:キリスト教を生み出したイベント」と「封建主義、ファシズム、リバタリアニズムと経済学」の著者

本記事の最初の発表元はGlobal Research

記事原文のurl:http://www.globalresearch.ca/shouldnt-the-u-s-compensate-syria-for-invading/5485716

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-1a3c.html

◆オバマのシリア強奪が生み出す難民たち

http://blog.goo.ne.jp/yamanooyaji0220/e/47fc645e7f170eee472e254093ce97bc

シリアの内戦は宗教を巡る戦いではない。

シリアへの外国の介入は、シリアでの反乱開始の数年前に始まった。ウイキリークスは、内戦を引き起こして、シリア政府を打倒するというアメリカの計画と、こうした命令を、テル・アビブから直接受けていることを明らかにするアメリカ国務省の2006年の漏洩電報を公表した。この漏洩は、サウジアラビア、トルコや、カタールや、エジプトの様な国々とのアメリカの協力関係同盟が、スンニ派と、シーア派の分裂を利用して、シリアを分割し、イランとヒズボラを弱体化する為、シリアを不安定化させるのに、宗派心を利用するためであることを暴露している。イスラエルも、ゴラン高原占領を拡張する石油採掘を増加する為、この危機を利用しようとしていることが明らかにされた。

2012年シリア人でないCIAとつながる何百もの武装反政府集団がシリアに押し寄せ、シリア全土を、アメリカ合州国、イギリス、フランス、カタール、サウジアラビアやトルコが、反政府派を組織し、武器を与え、資金供給して、自由シリア軍を形成する好機に飛びついたことが明らかになった。(わずか数カ月前、ウイキリークスが、サウジアラビアの諜報情報を公開し、2012年以来、トルコ、カタールとサウジアラビアが、シリア政府を打ち倒すべく、反政府派に武器を与え、資金を提供するのに協力して動いていたことをあきらかにした。)

◆深刻化する米欧の亀裂

2015年10月14日  岡崎研究所 WEDGE Infinity

9月8日付の米フォーリン・アフェアーズ誌のサイトで、米サウス・カロライナ大学のKonrad H. Jarausch教授が、近年の米欧間には齟齬が累積しているので、関係緊密化への努力が必要である、と説いています。

 すなわち、米欧間は一見、うまくいっているように見える。相互の観光客、留学生は多いし、貿易額も伸びている。しかしその陰で、米欧は相互に欲求不満を感じている。西欧はオバマ政権のパフォーマンスに不満であり、米国は西欧諸国の動きの鈍さに苛立っている。これらの不満は、この数十年にわたって累積されてきたものである。

 現下の摩擦要因としては、TTIP交渉が停滞していること、米諜報機関が西欧諸国指導者を盗聴していたこと、他方米国には西欧諸国がギリシャ救済に吝嗇すぎるように見えることなど、そしてより基本的には、オバマ政権がアジア、アフリカの方を重視する姿勢を示したこと、米国社会の多民族化が進行して西欧に祖先を持つ者の比率が減少したこと、一方西欧の方では保護者面をする米国を煙たがっていることがある。

 西欧諸国がシリアやウクライナについて、軍事介入より政治的な解決を好むことも、米欧間の齟齬の一因である。また移民社会の米国は個人主義を前面に出すのに対して、西欧は社会保障を重視することも、齟齬の一因である。米国での銃砲の横溢や囚人の数の多さ、そして格差の大きさも西欧人の反感を買う。

 米国は「9.11」のテロ事件以降、PATRIOT法を採択して個人の権利を一部制限する動きに出ているが、西欧ではナチズムや共産主義の悪夢から生じたプライバシーを守ろうとする意識が強く、インターネットでの「忘れられる権利」を提唱したりしている。

 しかし、米欧は世界最大の経済関係を有する他、双方とも勤勉さや所有権保護という価値観を共有する。米欧の協力は、ウクライナ問題、プーチンの攻勢への対処、地球温暖化問題、イランの核兵器開発防止、そして移民問題の解決などにおいて、重要な意味を持っている。

 今や米欧間対話を活発化させるべき時である。双方の有識者は、21世紀の人権とはどのようなものであるべきか、自国民の人権だけでなく他国の人間の人権まで気にかけなければいけないのか等、議論すべきである。また、米国における欧州研究、欧州における米国研究は促進されなければならない。

 米欧は利害と価値観を共有している。双方は、協力して、世界の諸問題を解決しなければならない。双方の未来はその努力にかかっている、と述べています。

出 典:Konrad H. Jarausch ‘The Divisions that Damage the U.S.–EU Relationship’(Foreign Affairs, September 8, 2015)
https://www.foreignaffairs.com/articles/united-states/2015-09-08/continental-drift

* * *

 普段、日本人はあまり意識しませんが、緊密な米欧関係は、世界の安全、繁栄、そして近代的価値観の維持のために最も重要な要素です。来年のG7首脳会議の議長国として、日本は、理念を固めておく必要があり、この論文は頭の整理に有用です。

 米欧同盟(NATO)は、欧州における米軍のプレゼンスを通じて、欧州の安全保障を担ってきました。米欧同盟はまた、産業革命後の近代文明・価値観を体現するものでもあります。そして、米欧同盟が瓦解すれば、米国の超大国としての立場は失われ、世界の政治・経済体制は戦前と同様の流動的状態に陥るでしょう。

 冷戦が終結し、ソ連が崩壊し、ドイツが再統一したことで、欧州の「へそ」とも称し得るドイツには、選択の余地が出てきました。在独米軍に撤退を求め、ロシア、中国と関係を深めて地域覇権を確立することも可能になってきたからです。メルケル政権は「NATO、EUの一員としてのドイツ」という立場を堅持していますが。

 他方、米国もNATOの決定はコンセンサスを要することに業を煮やし、アジアと同様、二国間ベースの安保取決めをバルト諸国、中東欧諸国と結び始めています。これら諸国にとっては、ロシアが未だ安全保障上の脅威だからです。

 日本にとっては、米欧関係が瓦解して米国が孤立し、世界の体制が流動化するより、米欧結束が維持され、グローバルなルールが保持されている方が利益にかないます。自由、民主主義、市場経済などの近代の価値観も、日本の社会に適合したものだと思います。

 米欧関係はすぐどうこうという状態にはありませんが、来年のG7首脳会議では先進国経済の底堅さを確認するとともに、この論文の言う「21世紀の人権」について意識の摺り合わせを行い、それによって日米欧の結束を固めることができれば、日本外交にとって得点となるでしょう。途上国の人権向上については、「民主派」に資金援助をするよりも、経済開発を助けることでその国の中産階級の比率を増加させるのが王道でしょう。日本のこれまでのODA・直接投資は、いくつかの国でまさにそのような効果を生んできました。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5447

◆Times:シリアを救えるチャンスは米国よりロシアに大きい

2015年10月19日  Sputnik 日本

ロシアはシリアのアサド大統領を支援することにより、シリア紛争に終止符を打ち、難民の流れを止めることが出来るかもしれない。ワシントンタイムズの社説にそう記された。

同紙には次のようにある。
オバマ大統領が欧州諸国首脳とともに手をこまねいて、緊張した眼差しで状況を注視している一方、プーチン大統領は、アサド大統領支援を通じて、状況を変え、紛争に終止符を打ち、シリア人も自国にとどまるようになるかも知れない。
ロシアはシリア作戦を開始し、米国の不決断によって形成された中東における政治的空白を補填する固い決意を示した。ロシアの行動は、多数のシリア難民に過激派が紛れているかもしれない、との恐れに基づくものだ。シリアとロシアの距離はシリアとドイツの距離の半分だ。

なぜ米国はロシアと協力してテロと戦わないのか
© SPUTNIK/ ALEXEY NIKOLSKY

なぜ米国はロシアと協力してテロと戦わないのか
自国の国益に対する冷たい打算を根拠に行動するプーチン氏がシリア紛争に終止符を打つというのは現代のパラドックスである。これは、局外にとどまったままロシアが中東の尻拭いを買って出たことを不承不承首肯するだけの米国の「平和な大統領」の理解を超えることだ。
米紙は以上のように記した。

http://jp.sputniknews.com/politics/20151019/1049496.html

◆アフガニスタンの泥沼にはまり込んだオバマ大統領
出口の見えない辛い旅路

2015.10.20  Financial Times   JB PRESS
(2015年10月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

アフガニスタンの首都カブールで撮影された治安部隊〔AFPBB News〕

 故リチャード・ホルブルック氏によると、バラク・オバマ大統領はアフガニスタンについて議論する際にベトナム戦争に言及することを一切禁じた。オバマ氏の「アフパック*1」特別代表として2010年に仕事中に倒れて死去したホルブルック氏は、米HBOの感動的なドキュメンタリー番組「ザ・ディプロマット」で墓場から戻ってくる。

 来月の初公開は、時折あるタイミングの皮肉だ。ホルブルック氏は、オバマ氏が決めたアフガニスタンへの期限付き米軍増派はうまくいかないと明言していた。

 国を安定させるには、米軍駐留の期間が短すぎ、部隊が手を広げすぎることになる、というのがその理由だった。ホワイトハウスはホルブルック氏を排斥した。

 ところが先週、オバマ氏は暗黙のうちにホルブルック氏の主張を認めた。米軍はオバマ氏の大統領の任期が終わった後もアフガニスタンに残ることになった。これがどこで終わるのかは誰にも分からない。

ベトナム戦争との類似点

 ベトナム戦争との対比は大げさかもしれない。1968年のベトナム戦争のピーク時には、米国は50万人以上の兵士をベトナムに配備していた。一方、アフガニスタンには現在9万8000人の米兵が駐留しており、オバマ氏はほぼ来年いっぱい、この水準を維持する構えだ。ベトナムで6万人近い米兵が命を落としたのに対し、アフガニスタンでの死者数はこれまでで2500人足らずだ。

 だが、厄介な類似点もある。サイゴンでは、カブールと同様、米国はゲリラ戦を繰り広げる一途な敵を相手に、成果を出せない文民政権を支えるのに苦労した。アシュラフ・ガニ大統領率いるアフガニスタン政府は、前任のハーミド・カルザイ氏の政府ほど腐敗していないかもしれないし、腐敗の度合いでは、サイゴンで米国が支援した歴代指導者よりはるかにましかもしれない。

 だが、いまだに、言及に値するようなアフガニスタン空軍は存在しない。一方、米国が訓練を施したアフガニスタン軍では、相変わらず任務放棄が多発している。誰もタリバンを訓練していないのに、タリバンはアフガン全土で領土を奪還し続けている。

*1=AfPakはアフガニスタンとパキスタンを合わせた造語。米国の外交政策関係者の間で使われ、両国を1つの作戦区域として指す言葉

 それ以上に重要なのは、オバマ氏の新計画に確かな終盤戦のプランがないことだ。この頭痛の種は、オバマ氏の後継者に受け継がれることになる。ベトナムとの類似点が最も著しいのは、ここだ。

 ホルブルック氏がキャリアのスタートを切ったのは、南ベトナムだった。

 押しの強い若手外交官だった同氏が上司らに言い続けたように、米国は、何千人もの人命喪失は国益によって正当化されないということを理解するのを拒んだ。

 外国勢力、特にソ連と中国がベトコンの反乱を煽るのを食い止めない限り、米国は負ける、と同氏は主張した。

 同じことがアフガニスタンにも当てはまる。パキスタンを正真正銘のパートナーに変える計画がなければ、それが書かれた紙より価値のあるアフガン戦略は存在しない。ホルブルック氏は、自分の仕事は両国を含んでおり、アフパックには均等に重点が置かれなければならないと主張した。オバマ氏は15日の演説で、アフガニスタンを28回引き合いに出した。これに対し、パキスタンに言及したのは2度だった。

アフガニスタンは新たなシリアと化すのか

 では、この最新のアフガン計画はなぜ、過去の計画より大きなインパクトを与えるのか。与えない、というのがその答えだ。最新の計画はそもそも、そのように意図されていない。オバマ氏の部分的な方針転換は、14年間の米軍駐留のひどく脆い成果を支えることを目指している。大統領の決断は、米軍の司令官、特にアフガニスタン駐留米軍トップのジョン・キャンベル司令官の圧力を受けたものだった。

 キャンベル司令官は今月米議会で、タリバンが支配領土を拡張していると述べた。

 また、アフガニスタンで急速にフランチャイズ組織を広めている「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」を撃退するために、イランが今、タリバンに資金を供給していることを示す証拠もある。そうなると、イランは味方なのか、敵なのか。これは答えるのが難しい問題だ。

 それが何であれ、アフガニスタンは新たなシリアと化す恐れがある。ただし、1つ異なる点は、ここに地上部隊を派遣しているのが、ウラジーミル・プーチン大統領のロシアではなく米国だということだ。

3つの教訓

 アフガニスタンはオバマ大統領に厳しい教訓をいくつか与えた。1つ目は、アフガニスタンは米国の政治的な思惑に一切配慮しないということだ。オバマ氏は、アフガニスタンとイラクでの戦争を終わらせるという公約に基づいて政権の座を手に入れた。米軍の兵士は全員帰国すると約束していた。先週、大統領はこの公約を撤回し、勇気を見せた。オバマ氏が退任する時、アフガン、イラク両国に数千人の米兵がいることになる。

 イラク、アフガン両政府の脆さ、および双方を脅かすイスラム過激派の強さを考えると、次期大統領もオバマ氏の約束を果たすことはないだろう。

 オバマ氏の大統領在任期間はむしろ、イスラム主義との世代的闘争における――善意から出たとはいえ――混乱した小休止として記憶される可能性が高い。

 第2に、アフガニスタンは大部分において、問題の症状にすぎない。パキスタンは、それよりはるかに大きな問題だ。オバマ氏は今週、パキスタンのナワズ・シャリフ首相と会談する。パキスタンは相変わらず複雑怪奇だ。一方では、パキスタンは自らが生み出したタリバンというフランケンシュタインの犠牲者と化した。昨年のペシャワルの軍営学校に対する野蛮な襲撃事件が1つの転換点となった。

 その一方で、シャリフ氏の率いる文民政権は依然、パキスタン軍の掌中にあり、その軍部はシャリフ氏の場当たり的な実績に苛立ちを募らせている。パキスタン軍はまだ国家内国家だ。パキスタンの軍部は、国内ではイスラム主義勢力にあまり寛容ではないかもしれないが、アフガニスタンではいまだに「戦略的縦深性」に固執している。

 パキスタン軍がアフガニスタンのタリバンへの支援をやめたと考える人は誰もいない。オバマ氏には、パキスタン情勢を変える計画がない。そんな計画は誰も持っていない。その間にも、パキスタンは核兵器の生産を増強している。これが1面のニュースになっていないということ自体、気がかりなことだ。

 第3に、ホルブルック氏の歴史的な対比は筋が通っている。ベトナム戦争の教訓は今日的な意味を持っている。2001年以降のアフガニスタンから得られる教訓も同様だ。「どんなことも可能に思えた、タリバンが去った後の黄金期に、米国は我々がここで何をしているのか説明しなかった」。ホルブルック氏は映画の中でこう語る。

 米政府はまだこれをはっきり説明していない。米軍が引き続き、決断を主導している。タリバンは勢力圏を拡大している。そして米国の指導者たちは依然、自分たちがコントロールする力をほとんど持たない出来事に翻弄されているのだ。

By Edward Luce
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45034

◆米国が、友好国へのスパイを止めるはずがなかった!?

2015-10-25 世界のメディア・ニュース

AFPは2015年10月25日に、ドイツのニュース週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)は2015年10月24日に、NSA(National Security Agency/米国家安全保障局)が関与した新たなスパイ活動が行われていた疑いがあるとして、ドイツ連邦検察庁が捜査を開始したと伝えた。

http://time-az.com/main/detail/52868

シュピーゲルによると、捜査対象は「諜報活動」に関してこれまで知られていなかった複数の人物で、「レジン(Regin)」と呼ばれるスパイ・ウイルスに感染していたとされ、ドイツ首相府高官の個人用ノートパソコンが捜査の焦点になっていると報告している。

気の小さな米国が、むやみやたらに盗聴し、スパイをすることを止めるなどと考えていなかった。
とくに、スパイで経済復興していた米国が、スパイを止めたら、第2の平成経済大恐慌が起こる。

レジンは「トロイの木馬(Trojan Horse)」タイプのマルウエア(悪意のあるソフトウエア)で、昨年高官のノートパソコンで発見された。
これを使用すると、コンピュータに入力された全てのデータを監視し、感染させた当事者にデータを転送できるようになるという。

http://blog.goo.ne.jp/jiten4u/e/da22d21dcea865d5fdd5f48b6532c5db

◆TPP、大筋合意でも実効されない可能性大 大国・米国の自己都合

2015.10.27   小倉正行  Business Journal

 10月5日まで会期を延長したTPP閣僚会合(米国アトランタ)は、難題のバイオ医薬品のデータ保護期間や乳製品、自動車の原産地規則について合意が得られたとして、大筋合意の記者会見を行って終了した。
 今回の大筋合意によりTPP交渉は基本的には終了し、舞台は米国政府による米国議会への通告3カ月後の、早くても1月20日以降に予定される加盟12カ国による正式調印と、各国の議会承認手続きに移ることになる。
 TPPは条約なので、基本的には、加盟国のすべての議会で承認されて初めて発効することになる。ただし、議会承認国の合計GDPが加盟国全体の85%を上回った場合は、その時点で発効するとの規定が盛り込まれており、日米含めて6カ国で承認されれば成立するという異例の条約となっている。逆にいえば、GDPが1国のみで15%を超えている米国と日本のどちらかで承認がなされなければ、TPPは発効しないことになる。

米国議会

 なかでももっとも注視されているのが、米国議会で承認されるかどうかという点である。

 10月20日現在、米国政府から米国議会に対してTPP合意の通知はなく、TPP協定調印は前述のとおり来年1月20日以降となる。そのため、米国議会での審議開始は、協定調印から2カ月後の3月20日以降になる。

 米国議会は来年1月から始まるが、2月1日からは大統領選挙の予備選挙(アイオワ州党員集会)が始まり、3月1日がスーパーチューズデー、3月15日がオハイオ州、フロリダ州予備選挙と大統領予備選挙が最高潮に達し、その後も予備選挙は6月まで続き、7月18日〜21日の共和党全国党大会、7月25日からの民主党全国党大会での正副大統領候補決定と続くのである。

 また、大統領選挙と同時に、米国議会下院議員選挙(全員)と米国議会上院議員選挙(定数の3分の1改選)も同時に行われる。米国議会では、選挙期間中は休会となり、それは「レームダック会期」(Lame Duck Sessions of Congress)と呼ばれ、1980年代から現在に至るまで続いている。そのため、2月から始まる予備選挙から11月までの大統領選出まで、議会は開会されていても事実上の休会状態になるのが通例である。

 つまり、TPPは調印をしても米国議会での承認手続きが進行しない可能性が高い。仮に大統領選挙を無視して無理やり議会承認手続きに入ったとしても、今回のバイオ医薬品のデータ保護期間の問題については、米国医薬品多国籍企業は当初から保護期間12年を要求しており、今回の「実質8年」という合意内容に不満を持っている。これらの企業は議会に対して強い影響力を持っているだけに、議会の承認手続きが難航することが予想されている。

カナダでは早くも批准難航

 また、米国議会は今回のTPP交渉について、議会の一括承認手続きを定めているTPA法案を6月の上下両院で可決したが、それも賛否ギリギリで可決しただけでなく、議会が内容上問題があると判断したときは否認することができるという規定が盛り込まれたのである。それだけに、議会で否認されたならば、TPPは最大の推進国である米国が条約承認できないことになる。TPP承認が大統領選挙後になるか、否認されるか、いずれにせよTPPは発効できないまま推移する可能性があるのである。

 民主党の大統領候補を争っているクリントン元国務長官は、TPP反対を表明した。また、対する共和党も自由貿易推進政党であり、いずれの政党の大統領が選出されても、大筋合意のTPPをそのまま受け入れるかどうかも疑問である。
 
 10月19日投票のカナダ総選挙も、その結果はTPP大筋合意を受け入れたハーパー首相率いる与党保守党が敗北し、自由党との政権交代という事態になった。これで、カナダにおけるTPP批准も難航することが想定されている。
 TPPの前途には、暗雲が垂れ込めているのである。
(文=小倉正行/ライター)

http://biz-journal.jp/2015/10/post_12114.html

◆ISの最重要スポンサーは麻薬マフィア、しかし「金づる」は他にも

2015年11月01日  Sputnik 日本

テロ組織「イスラム国(IS)」による石油の密売を米国は阻止できていない。リア・ノーヴォスチの取材に応え、テロ組織の資金調達法に詳しいノートルダム大(インディアナ州)の法学教授ジミー・ギュルレ氏が述べた。

「先週、米国務省は、ISがいかにして闇市場に石油を販売しているかについての情報に対し、500万ドルの懸賞金をかけた。これすなわち、米国はISによるグローバル規模の石油売却・輸送がどうやって行われているのか、よく分かっていないということだ。仲介者の存在や、犯罪組織の暗躍が示唆されているが、具体的に誰が仲介役を担っているのかについては依然よく分かっていない」とギュルレ氏。

ISの「ドル箱」原油取引、米らの空爆でも被害なし

イラン紙「イラン・プレス」編集長エマド・アブシェナス氏は500万ドルの懸賞金を受け取るチャンスがあるかも知れない。スプートニクのインタビューに応えた中で、氏はISの石油売却先を明確に名指ししてみせた。

「ISの活動は世界的石油安の主因の一つである。テロ組織はトルコ、ヨルダンの闇ブローカーに国際標準の半額という安値で石油を販売している。トルコにはそうした石油を今度はイスラエルに転売する業者がいる。この3カ国の石油密売人らが石油を第3国に不法に売却する。しかし、ISによる石油密売が最も盛んに行なわれているのは、やはりトルコである」。

ISの石油密売ルートはトルコ領内、元CIA職員の判断

米国の専門家らによれば、ISは毎日5万バレルの石油を売却し、年間5億ドルの利益を上げている。
ISはさらに大きな、年間10億ドルという利益を、自らの支配領域における麻薬輸送の通行料という形で上げている。麻薬マフィアこそがISの最重要スポンサーなのだ。これはロシア麻薬流通監督庁長官ヴィクトル・イワノフ氏が、28日開かれた中央アジア麻薬取締4者会議で語ったことだ。支配領域における麻薬輸送の規模について、イラン紙「イラン・プレス」編集長エマド・アブシェナス氏は次のように述べた。

「ISの支配領域では、麻薬販売は日常茶飯事だ。またIS戦闘員は強い向精神薬を常用している。つい最近も嘆かわしい事件があった。レバノンでサウジアラビアの王子たちが逮捕された。IS戦闘員らに売却し、拡散させるために、カプトゴンと呼ばれる麻薬を密輸しようとしたのだ。ISが得られた資金で新たな犯罪を行っただろうことは疑いない」。

アブシェナス氏も指摘する通り、ISは国際法に違反する様々な手段で収入を得ようとしている。文化財の不法売却もそのひとつだ。

ユネスコによれば、シリアでは文化財の組織的強奪が行われている。博物館から文化財が持ち出され、闇市場に売却されているという。

ロシアによるシリアでの対「IS」空爆開始後 アフガンに戦闘員押し寄せる

「シリアの文化財の売却から得られる莫大な利益がイスラム過激派に流入している。彼らはその金で、武器や装備を買い、戦闘員に給料を支払っている」。「ロシア新聞」の取材に応え、ユネスコのイリーナ・ボコワ事務局長が述べた。ユネスコは今後もISによるシリア文化財の密売という問題に取り組む、とボコワ氏。
エマド・アブシェナス氏はスプートニクの取材に応え、組織の結成にあたってISがどこから資金を得ていたのかについて、次のように述べた。

「ISという組織はアルカイダの一部が分離独立するという形で形成された。また、イラク戦争の経験者や、フセイン時代のバース党支持者、さらにはフセイン政権陥落後に形成されたイラク反体制派内のスンニ派アラブ人もそこに加わっていた。従って、フセイン時代から蓄えられた一定の活動資金が、当初からこのグループにはあったのだ。ほかにも、アルカイダからの資金援助もあったし、さらには、ペルシャ湾岸の一部アラブ国家からの資金援助もあった」。

もっとも、ペルシャ湾岸諸国が今もISを直接的に支援しているかどうかは断言できない。湾岸諸国は国内不一致を来しており、指導者層も一枚岩ではないからだ。

IS誕生については米国も一定の役割を果たしていた、と言われる。一年前のことだが、トルコ誌「ラジカル」の取材に応じ、CIAの上級分析官グラム・フラー氏は、「何も米国がIS創設を企んだわけではないが、中東への介入とイラク戦争による不安定化がIS誕生の要因になった」と述べている。

パキスタンにもISを間接的に米国が支援しているとする声がある。今年のはじめ、パキスタンにおけるISの幹部とされるユザフ・アル・サラフィなる人物がラホールで逮捕された。「尋問でサラフィ氏は、米国経由の資金で青年のリクルートを行い、またシリアにおける軍事行動を行っていた、と述べた」と当時、パキスタン紙「ザ・エクスプレス・トリビューン」が匿名情報として報じた。その消息筋は、さらに、「米国はいつもISの活動を非難するが、自国から同組織へ資金が流れることを止めようとしない」と語った。

http://jp.sputniknews.com/opinion/20151101/1106167.html#ixzz3qHDJdeXt

誰が考えてもISISに石油の生産や精製が出来るわけがない。

中東の石油産業を支配してきたアメリカがその気になれば、ISISが石油を生産、精製、輸送、販売することは不可能に近い。ISISの販売を請け負っている会社はARAMCO、つまりSOCAL(スタンダード石油カリフォルニア)、テキサコ、スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー、ソコニー・バキューム(後のモービル)が出資している巨大企業だと言われ、トルコやイスラエルも輸送や販売に協力していると伝えられている。