無知の知

ほたるぶくろの日記

ES細胞について

2014-04-13 17:35:40 | 生命科学

前置きをもうひとつしておきたいと思います。朝日新聞の記事に次のような一節がありました。

「これに対し、笹井氏は「他の万能細胞を混ぜても、一つの塊にならない。実験をやったことのない人の机上の考えだ」と反論。ES細胞からつくれない組織がSTAP細胞ではつくれたことなどをあげ、「ES細胞では説明のできないことが多すぎる」「STAPが存在しないなら、私たちが再立証に力を入れることはない」と指摘した。ただ、小保方氏の会見や笹井氏とのやり取りでは、STAP細胞が存在するかどうか具体的な証拠は示されていない。」

とのS氏の談話が出ていました。

彼の反論はかなり意味が不明です。

1)「他の万能細胞を混ぜても、一つの塊にならない。」

2)「ES細胞からつくれない組織がSTAP細胞ではつくれた」

1)についてですが、全く意味が不明です。ある細胞が全能性を持つかどうかの検証実験では、分化の過程で、最終的に全能性を発揮する細胞が存在することが重要なのです。それは一つでもよい。混在していればそれでよいのです。彼がいいたいのは若山先生がブラストシストにインジェクションする際、細胞塊としていれないとマウスができないといわれていた、その細胞塊のことを言っているのかと思います。しかし、インジェクションの直前に混ぜたのでなければ、ES細胞は増殖してその細胞のみの細胞塊を作るでしょう。それをインジェクションしてマウスができたのではないのでしょうか?

2)についてですが、このES細胞からつくれない組織というのは何でしょうか。胎盤だとしたらそれは間違いです。ESは胎盤の形成にも寄与します。だからこそテトラプロイドの胚盤胞をつくってその中にES細胞を注入し、胎盤はそのテトラプロイドから形成され、胎児はES細胞のみから形成されるようにして初めて生まれる、という実験がなされてきたのです。ある遺伝子異常を持つと胎盤形成がうまくいかないため生まれてこない、というケースがあったからです。もう一度繰り返しますが、ES細胞は胎盤の形成に寄与します。これは周知の事実です。

 

間違った知識を流布することはあってはなりません。発生学者としてありえない発言です。他の方の議論を机上の空論と断罪する前にご自分の経験と知識を深めて頂きたいと思います。


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