無知の知

ほたるぶくろの日記

幹細胞 最近の話題その1

2017-09-21 11:09:43 | 生命科学

2014年以来、『幹細胞』という言葉が一気に広まった感があります。それ以前の「かんさいぼう」とは専ら『肝細胞』だったと思います。広まった経緯はあまり感心しないものでしたが、混沌とした謎の多い展開であったため、多くの方が興味をもたれました。今でも過去記事の中で某細胞について書いた記事はよく読まれているようです。

その後某細胞についてはどうなっているのか。 今の時点で、以下の2点については確定的と言えます。

1)学問的には某現象、某細胞の存在は今もって確認されていない。

2)2014年の件の論文のデータは誤りであった。論文の取り下げは妥当。

そのような状況の中、日本での特許出願が暫定拒絶されていた某出願(理研は権利を放棄しておりブリガム・アンド・ウィメンズ病院(ハーバード大)の単独出願)について、ハーバード大から9月7日にクレーム補正と意見書が提出されました。

このクレーム補正はある程度事実に基づく範囲に主張を変化させたものとはいえ、もはやStimulus-Triggered Acquisition of Pluripotencyとは別ものの特許出願となっています。詳細はこちらこちらの記事にありますが、「多能性細胞」であることを放棄し、「Oct4を発現する細胞を含有する細胞塊」を生成する方法に関する特許出願となっているからです。

Oct4は多能性幹細胞やES細胞など万能性幹細胞では非常に高濃度に発現しています。しかし、逆は成り立たちません。Oct4高発現は必要条件です。しかし、必要条件である限り、多能性細胞が出現する際には必ず起こる現象でもあるわけで、万が一、真に多能性細胞が出現する条件を「付加的に」見つけた際、この特許が邪魔をして、その方法での特許出願は認められないことにはなります。

それが吉と出るか凶と出るか。今はどちらともわかりません。

ただ、最近はiPS細胞に限らずES細胞や他の中間的な幹細胞(多能性幹細胞)に関する話題も多く、特に脂肪組織や臍帯血からの幹細胞による治療成果なども報告されています。臨床研究も進んでいるようですし、特に神経系、心筋のダメージを修復することも期待できそうです。某細胞の社会的価値も今はそれほど高くないでしょう。