無知の知

ほたるぶくろの日記

線香について

2017-09-02 11:08:19 | 日記

浄土真宗では

「線香を折って横に寝かせて置く」

のが作法。ということになっていますが、今回「なんで〜?」と思ったので調べてみました。

すると、なんてことはない。大体「線香を立てる」ということ自体が日本では割合最近始まったとわかりました。

線香自体の歴史は古く、古代インド発祥のようです。細い竹ひごに香を練り付けて乾燥させたもので、香りを楽しむためとアーユールヴェーダ(インドの民間医療)で使われてきたもので、現代でも使われています。日本では今や花火の点火用に使われたりもしています。でも本来はお香。こちらは室町時代くらいに中国経由で日本にも伝来はしていたようです。それを真似て長崎や堺でも線香が作られたようですが、一般的に使われるようになったのは江戸時代くらいからのようです。

では線香がなかったときはどうしていたんでしょう?

いわゆるお焼香で使う抹香(細かいチップ状のお香)を使用していました。常香盤というものがあって、敷き詰めた灰に筋を描き、その溝に抹香を入れ、端に点火すると段々にお香が燃えて長時間お香が焚ける、というものです。延暦寺(注:天台宗、密教のひとつ)でもまだこれが使われているようですし、浄土真宗の本山や大きなお寺でも使われているようです。

浄土真宗ではこの延長で線香を寝かすようです。その際、普通の線香器では長い線香は入りきらない。それで線香器に入るように折ったまで、ということです。別に「折る」ことに意味があったわけではないので、横長の焼香に使う長方形の香炉ではそのまま寝かして置けばよいようです。

つまり「線香を折って横に寝かせて置く」のは、常香盤を模して、普通の器(多分庶民は茶碗などを香炉にした?)でなるべく長く香をくゆらせるための「方法」だったわけですね。

線香が出まわり始めた頃、多宗派は立てる方法を採用したが、浄土真宗は常香盤を模して「寝かせる」選択をした、ということらしいのです。だったら浄土真宗の仏具として長方形の仏具を作ればいいのに、と思うのですが、実はこれ、お通夜の際に使われるものとしては存在するのです。ただし、これはどうやら葬儀屋さんが寝ずの番をするのも大変でしょうし、ということでなるべく長くお香を焚けるよう、工夫されたものらしい。

それで最近それをそのまま仏壇で使われる方も多いようです。折らないでそのまま焚けますし、香りも長く続きますしね。便利です。

ところがそれを「間違い」「お通夜限定」という方もいたりして、厄介なことです。親鸞さんが生きていらしたら「いいじゃない、なんでも。長く香が焚けるんだから。折らなきゃいけない小さな香炉を使うよりいいでしょ。」と言われたに違いない。

キリスト教の特に正教会やカトリック教会でもお香を使うのですが、こちらでは乳香(ムクロジ目カンラン科ボスウェリア属の樹木から分泌される樹脂)を焚きます。鎖のついた振り香炉からモクモクと煙を出し、神父さんは祭壇でその香炉を振ります。

ともあれ、あの世への供養として煙と香りを供える、ということは古代から伝わる重要な点のようですね。

補足:もう少し調べると、常香盤への香のもり方もいろいろのようです。真ん中に長方形の溝を掘って、そこに抹香と香をもり、点火して8時間ほど保たせる(技らしいです)など、これは真言宗のお坊様のブログにありました。