子どもの頃、トマトは大好きでした。ちょっと塩をかけてそのまま食べるとトマトの独特の香りと味が口一杯に広がって、なんだか元気をもらえる感じがしました。その頃トマトは八百屋さんや小さな商店の軒先にかごに入って売られていました。ちょっと早くて緑っぽいものでもしっかり味があって青い味がしました。
その後いつ頃からでしょう。大型のスーパーがぽつぽつ現れた頃からでしょうか。60年代後半から70年代にかけてトマトはだんだん味が無くなって美味しくない野菜になりました。酸味はあって、多少の香りはあるものの、あの昔の味を知っているととても同じ野菜とは思えず、どうしたんだろう、と思っていました。
その頃から水耕栽培などの言葉もちらほら聞こえてくるようになって、何となく水耕栽培で美味しくなくなっちゃったのか、と思っていました。
海外にいた頃も某国産のトマトが輸入されるようになってトマトが美味しくなくなった、という声もあって、それは水耕栽培だからだ、ハウス栽培だからだ、との話しでした。
しかし、それは流通にかかる時間のため、また完熟では痛みやすいので青い未熟果のときに収穫してしまうことが原因だったようです。そのため完熟してから収穫して流通させても痛まない堅い果実をめざして開発されたのが「桃太郎」という品種だったそうです。なるほど。
「桃太郎開発物語」というHP(タキイ種苗)によりますと、なんとこれは桃色品種だったそうです。え〜だから赤くないはず。
調べてみますと、日本で生食用に栽培されているトマトのほとんどが桃色品種だとか。かねがね何で日本のトマトは赤くなくて変な桃色なんだろう、と不満に思っていたんですが、わざわざ桃色の品種を開発して栽培していたとは。。。なんで。。。??
そのHPによると
「赤色のトマトは加工用だというイメージがあり、消費者に避けられてしまうのです。」
とのことでした。それってどういう消費者? 開発の始まりは60年代後半とのことですが、その頃の消費者はそんな感覚だったんでしょうか? すごい違和感。。。
開発、栽培に励まれてきた方には大変申し訳ないのですが、私はこの桃色にとても不満でした。。長らく。。
トマトの鮮烈な赤さは食卓に置いたときに何とも言えない力を感じさせるものです。私はどうして日本のトマトはこんな曖昧な色なんだろう、土地が合っていないのか、などと思っていました。味の変化もさることながら、この曖昧な色のためもあって、滅多に生食はしないようになりました。
そこでもっぱらトマトは調理に使うようになったのですが、それでも桃色トマトは曖昧な色のトマトソースにしかなりませんので、缶詰かピューレを使っていました。生食目的でトマトを買うときは高いですがフルーツトマトかミニトマトを使っていました。でもフルーツトマトはお高いですからたまーにでした。
とはいえ最近はもの凄い色のバリエーションがあって、ミニトマトにいたってはパレットのようなコーナーを見かけたりします。並べるだけで楽しい感じで食卓の彩りとしてはいいかもしれません。
大きなトマトでも赤いものが出てきています。野菜で鮮烈な赤を持つものは唐辛子と赤ピーマンくらい。あ、どちらもナス科ですね。ともかくお弁当にしても生のトマトを入れる気にはなりませんから、卵ととじにするなどして入れますが、彩りに一役買ってくれます。
サラダにするにしてもミニトマトより使い勝手がいいのでたまに買います。調理に使っても色合い、味、ともにいい感じです。
ところで味の変化について、品種の変遷も大きな要因だろうと思いましたが、最近出まわっている味の濃いフルーツトマトは品種に関係なく、栽培方法によるもの、とのことでびっくり。
もう一つびっくりしたのは未熟果にはトマチンなるアルカロイド配糖体があって毒性があること。知りませんでした。ナス科の植物らしい毒性ですね。
原産地アンデスの方は毒性が低いものを選別されて行ったのでしょう。
トマト、奥が深いです。