無知の知

ほたるぶくろの日記

極めて無責任な主張

2014-04-17 22:56:59 | 生命科学

昨日のS氏の会見を視聴しました。仕事の一環なので、仕事場で視聴していました。彼の主張は大きく次のようなものであったと理解しています。

1)自分は「実験結果が完全に出揃い」一度論文投稿をして却下されたものを「T先生の依頼を受けて」論理を組み立て直し、書き直し、Nature誌に採用してもらえるよう整えただけである。

2)STAP細胞はES細胞を混入させてできたものではない。Oct4-GFP発現細胞の現れる過程はタイムラプスで観察した。また、ES細胞とは大きさが異なる、胎盤を作るなど、相違点がある。

3)STAP幹細胞の生成に関しては仮説に戻ったと考えており、論文は撤回するべきである。

それぞれの主張に関して、簡単に感想を述べますと、

1)に関しては、責任転嫁といわれても仕方がない言い訳であって、会見で述べるべきではなかった。責任者とは責任を取る、と宣言しているものである以上、責任を軽くしようなどという主張は一切認められない。

2)に関しては、ご自分でも実験をされていたということを示し、やはり実験段階にも関与していたということを明らかにしています。したがって、1)の主張とは矛盾します。それはさておき、ここで述べられていることから、少なくともストレスをかけた後、Oct4-GFPが発現する細胞集団が出てくることは事実であるようです。

しかし、これがMuse細胞など、もともとあった休眠状態の幹細胞が増殖を開始し、コロニーをつくり観察可能なほどに増加した可能性を否定できません。さらにこの細胞からできた幹細胞が胎盤を形成したからES細胞ではない、という主張は間違いです。ES細胞はたとえブラストシストに注入しても胎盤形成に寄与します。したがって、全能性試験の際にES細胞が混入された可能性は否定できません。

さらに、論文の最も重要な主張であったT細胞レセプターゲノム遺伝子の組換え現象に関してはまったく言及がありませんでした。この点こそ、もっとも疑惑がもたれている点なのです。ここに関する説明がない限り、どのような会見があっても無意味です。

3)に関しては大変妥当な判断だと思います。O氏とV氏を説得し、Nature誌に取り消しされる前に、ご自分達で撤回して頂きたい。

以上が今回のS氏会見についての感想です。

現在、もっとも好意的な現象の解釈としては、「幼いマウスの免疫系細胞集団の中には全能性をもったMuse細胞が存在し、それらが選択され増殖したものをSTAP幹細胞として同定した」というものでしょう。この仮説を覆す反証を示さない限り、STAP現象を証明したと主張することはできません。理研の皆様、また検証実験に関わっておられる方々におかれましては、この点を心に留め、注意深い検証をお願いしたいと思います。

日本の発生生物学の威信をかけ、臨んで頂きたい。