無知の知

ほたるぶくろの日記

静観する習慣

2011-08-13 09:15:24 | 日記
猪瀬直樹さんの『黒船の世紀ーガイアツと日米未来戦記ー』を読んでいました。太平洋戦争へ突入していく「戦前」の雰囲気が数人のキーパーソンを丁寧に追いかけることで多角的、立体的にあらわされています。それは軍人(海軍)、政治家、小説家、日本人、アメリカ人、イギリス人とさまざまな立場の人々です。一見とても接点があるようには思えないこれらの人々が実は影響を与え合い、あるいは実際に会っていたりすることが後半で明かされます。この構築の巧みさは素晴らしいものです。また多くの事実、データを積み重ね、ごく自然に結論が見えるような著述であり、強引さがありません。科学論文のようにも思えるほどです。猪瀬さんの世界へ向かう姿勢が真摯なものであると感じられます。ごく個人的なある思いを強引に展開するような著述はありません。東京都の「言葉の力」再生プロジェクトをすすめる方らしいですね。

猪瀬さんの著書やブログなどを読みながらいつもおもうのは、感情に引きずられるまえに、データを集めることの必要性です。ずいぶん以前に一瞬怒りが込み上げてもその衝動に身を任せず『90秒待つこと』を書いたとおもいますが、それと同じことだとおもいます。情緒的に決心や決意を形成するのではなく、知能をもってこの世へやって来たヒトらしく、自分なりにデータ、様々な考え方を拾い集めていくことが望ましいのではないでしょうか。

ときに判断をせかされることもあるかもしれません。でもそういう時はカンナガラ。常日頃、世間を静観する習慣をつけていれば、知らぬ間に多くの多角的情報が蓄積していることでしょうから。