今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

臨床心理士への最初の壁

2012年02月12日 | お仕事
年度末繁忙期は次々と仕事を片づけてくしかない。
今日は、休日なのに早起きして、大学院の入試をこなした。
答案の採点をして、各人面接をして、最後に受験者の合否案を皆で検討した。

臨床心理士養成の大学院なので、毎年志願者は多い。
なにしろ臨床心理領域の大学院に入ることが最初の壁だから。
でも受験者の傾向について気になる点がある。
この領域の院入試に合格できない人は、以下のいずれかあるいは両方が該当すると思ってよい。

まず、まがりなりにも心理学の専門課程に入ろうというわけだから、付け焼き刃的な勉強で受かるわけない。
万一、ヤマが当たって偶然に受かったとしても、研究の実技経験がないとまず修士論文は書けない。
心理学の勉強が足りない人が目につく。
なにしろ、学部の心理学の授業の成績が…、専門家になろうという人の成績ではない人がいる。
受験料を無駄にしないために、きちんと勉強してから受けた方がいい。

次に、自分自身に心理的問題を抱えた人は、そりゃ臨床心理学に興味を持つだろうが、
臨床心理士とは、そういう人をケアする側であって、自分自身にケアが必要なレベルではまったく勤まらない。
ある人が心に問題をかかえて、心理相談の門をたたいたら、受け持つ人が自分以上に問題をかかえた人だった、
というのは笑い話でしか通用しない。
こういう適性がない人は面接で見抜かれる。

私自身、学部時代に臨床心理学に強く惹かれたが、
それは自分の心が救われたいからであって、
そんな自分が他人を救うなんてできないことを自覚していたから、
臨床心理学へ進むことはあきらめて、
普通にきちんと社会生活している人の心を知り、それを学べば、
少なくとも表面的には社会に適応できるだろうと期待して、社会心理学を選んだのだ。
私のような人は社会心理学をお勧めする。

「臨床心理士になりたい」という気持ちだけでは、決してなれない。
専門家への道はそんな甘くはないのである。

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6 コメント

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疑問を感じました (優朗)
2012-08-11 17:26:23
はじめまして。記事のなかで、次の文書が気になりコメントをさせていただきました。

>ある人が心に問題をかかえて、心理相談の門をたたいたら、受け持つ人が自分以上に問題をかかえた人だった、というのは笑い話でしか通用しない。
>こういう適性がない人は面接で見抜かれる。

うちにいたCPはまさに問題を抱えており、業務に支障が出ていましたので、最近はこういう人でもとれる資格になってしまったのだなあと思っていました。院の面接をした方が、当人の適正を見抜く力がなかったのかもしれませんね。臨床心理士試験の面接官の方も、同じく。
皮肉になってしまい、申し訳ないです。(もちろん、別の大学院出の人でしたよ!)

私が接する心理士の方のいく人かは、心理士だから悩む、という言葉を好んで使います。恋愛にしろ、配偶者との関係ににしろ、誰にでも悩みを引き起こす事柄であるのに、心理士グループの方は「違う」のだと一線を引いているように聞こえます。
こころに対する線引きをしない、そして、バランスの取れた臨床心理士の方をたくさん育ててください。
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Unknown (山根)
2012-08-12 09:55:28
優朗さん、コメントありがとうございます。
臨床心理士は資格として魅力的なようで、”臨床家”に向かない人でも取ろうとします。
ただ人よりちょっと詳しいレベルで、専門家気取りになってしまうのはいただけません。
心理学をやっている人全般に言える”いやらしさ”なんですけど…。
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臨床心理士に向かない人 (haku)
2013-05-04 02:15:57
でも、臨床心理士になる人は自分の問題や悩みがあるからこそ、共感があるのだと思います。
自分の問題を自覚し、コントロールできるようにするのが、大学院での訓練期間であり、この世界でやっていくのに一生の課題かなと思うのです。
 だから、臨床心理士に向かない人と向けない人は違うのでは?
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Unknown (山根)
2013-05-04 08:35:21
hakuさん、自分がかかえる問題は、心の専門家になろうとするあらゆる人の動機そのもので、私もその一人です。
そういう”一般論”レベルでない、自身がまずケアを要する深刻な問題をかかえた人が、臨床心理士になろうとすることを記事にしたのです(院の2年間で何とかなるレベルでなく、またその間に実習としてケースをもたねばならない)。
hakuさんが許容するレベルの心理士に優朗さんが接した感じですね。
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Unknown (KK)
2013-09-18 19:46:28
はじめまして。拝見しましたが
ものすごく共感できます。
「愛知」の名前を冠するNPO職員として
被災地支援に行ったのですが
最初は愛想良くしていても、自分が相手より優位になったりスケジュールがきつくなると徐々に人格障害的な
側面があらわれた心理士(自分の立場を守りたいために初めて来た心理士に仕事を
教えない・ヒステリックになじる・帰す等)もおり、
挙げ句の果てには被災者の悪口(あいつが死ねば良かった)まで言い出して
これは心理士に関して誤ったイメージを持たれるのではないかと思いました。
関係ないボランティアさんも「面接官は何を見ているの?」と真顔でおっしゃっていました。

案の定、前職も後輩をいびりクビになっていたようです。
こういったとき、臨床心理士協会に報告したほうが良いのでしょうかね^^;
自分も以前はあこがれがありましたが、こういった人でもなれる仕事なんだと冷めた目で見るようになりました。
占い師といっしょなんだなあって
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Unknown (山根)
2013-09-18 22:04:11
KKさん、臨床心理士を育成する側の者として、とても耳に痛い話です。
心理士はとりわけ技術的専門家としての自負心が異常に強いかもしれません(これは劣等感や社会的不安の裏返しともとれますが)。そもそも心理学を専攻する段階で、自分だけが人間の心を分っているようなイヤミな人間になりがちです。
もちろん、そうでない、根っからの臨床向きの人もいます。ということは専門の勉強以前の人柄の問題ですね。そういう人こそ心理士になってほしいということは、やはり自分で自分の適性を判断する客観性が必要ということです。私が諦めたように。
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