今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

飯坂温泉

2012年03月17日 | 温泉

福島市の奥座敷である飯坂(いいざか)温泉って、名前だけは知っていて、
イメージ的には、観光地というより団体宴会向きの歓楽地という印象をもっていた。
なので、静かな温泉旅の対象にはならないと思っていた。

ただ、折角福島市に行くのだがら、駅前のビジネスホテルよりは近くの温泉がベターだと思い、
ネットで宿を探してみたら、意外にも飯坂温泉に素朴な宿が散見し、
しかも一人客OKの所はビジネスホテル並の価格で2食・源泉つきとお得感抜群。
アプローチも福島駅から私鉄で直行するので、時間は多少かかるが不便でない(駅前にコンビニもある)。

実際、飯坂温泉自体が、欲望を発散する旧来型の歓楽地から、
文化的で健全な温泉地に生まれ変わろうとしていたようだ。
そのポイントとなるのが、外湯めぐり(写真はその1つ鯖湖湯)。
飯坂の温泉自体は無色透明な単純泉なのだが、
それぞれの外湯で微妙に効能が異なるらしい。

それとここの特徴は、60℃の源泉をそのまま湯舟に流すので、”熱い”こと(浴槽内で47℃)。
そのような外湯が10箇所ほど(街中には7箇所)あり、
宿の内湯に加えて、それらを楽しむことができる。

もともと外湯(共同浴場)は、地元の人用なのだが、
観光客も受入れられるように整備した(加水してある”ぬる湯”を増設)。
関東の人間にとっては外湯巡りを楽しめる温泉地て珍しい
(草津とあと無理すれば箱根くらいか)。
外湯は、朝6時から夜10時までだいたい200円で入れ、それぞれ週一で定休日がある。
飯坂温泉の特徴である”湯の熱さ”に最初は閉口するが(水を足さないと入れない)、
外湯で観光客が熱がっていると、地元の人がホースで水を足してくれ、
それをきっかけに会話がはずむ。

泊まった「入舟」という旅館は、「仙気の湯」近くの閑静な宅地街にある。
建物は古く、従業員もいないので、室内にトイレ・洗面所はあるものの、
実質的には”民宿”と思った方がいい。
ただ風呂は源泉掛け流しで24時間入れるし、
宿代のわりに料理が充実しているのもうれしい。
地元(中通り)の家庭料理である「イカニンジン」を初めて味わった。

飯坂温泉の空間線量は0.3μSv/hほどで福島市より低い。
震度は6弱だったといい、倒壊した家はなかったらしい(明治建築の旅館も無事)。
旧堀切邸の土蔵が壊れ(修復)、灯篭は倒れたままっだった。
盛岡から観光に来ている人もいた。

外湯で耳に入った地元の人の話では、米は山形から購入しているという。
正直私も、福島土産として生野菜には手が出なかった
(土産としてもらった側が困惑するだろうから)。
結局、買ったのは漬物と地酒。
飯坂温泉の一番の土産は「ラジウム卵」という温泉卵なのだが…

あと、帰りの電車内で読むために、地元住民の立場での原発本を読みたかったので、
福島駅の書店で『裸のフクシマ』(たくきよりみつ著 講談社)を買った。
著者(前にデジカメの本を読んだ)は川内村で生活し続けており、
マスコミには流れない県内の人々の感情や行動が記されている。
たとえば、20km圏内の所よりも避難先の郡山の方が線量が高い矛盾など、
住民への理不尽な政策が具体的に述べられている。

急いで帰京する用事はないので、福島から郡山まであえて在来線を使い、
郡山から新幹線に乗った。