演劇ワークショップの連載は今回で終了。
本来、演劇の稽古は本番に向けてそのネタを未公開=秘密裏に進めることが前提となる。
本番を見てのお楽しみ!・・・という訳だ。
ワークショップは言わば、演劇の運動だと位置づけることができる。
潜在的に「タレント志向」は近年、高まってきたのではないだろうか、と演劇の現場から思うようになった。
舞台人の量の減少化からは反比例するが、メジャーへの憧れは市民社会の中では確実に増大している。
お茶の間から見えてくる芸能は豊かさのシンボルのようにも錯覚するようになった。
演劇界はどうだろうか。・・・ワークショップに参加して頂くことで豊かさの基準をメジャーとは違うところで体験してもらいたい。
これが「ワークショップ」を運動と位置づける動機である。
公開型の実験室である。
以下、テキストを公開する。
■
劇団夢桟敷企画
演劇ワークショップ
(第1回)
「薔薇色ノ怪物」(丸尾末広)より
2009年4月29日(水)
午後6時~9時(3時間で短編劇を作る/演じる)
会場:熊本市中央公民館3F(和茶室)
【タイムスケジュール】
18:00-18:15 簡単な自己紹介
二人一組になってお互いに名乗りながら
ピストルで撃つ側、撃たれる側の関係を作る。
演技する。条件は幸せそうに!
18:15-18:30 読む。・・・配役など役割の分担。
18:30-19:30 パートを分ける。(1)~(4)・・・見る・演じる。部分を作る。
19:30-19:40 休憩
19:40-20:30 音を入れながらの通し。ダンスと歌が加わる。(作り方の公開/劇団員のみ)
20:30-20:40 休憩
20:40-21:00 短編劇の発表
21:00-21:30 感想会、後片付け
☆
ここは病院である。・・・
(1)
ミチロー「6月8日。その日が来ました。」
カリガリ「ミチロー君、この日から君は永遠に抜けることはできない。」
ミチロー「そう言えば、昨日も6月8日だったのです。」
カリガリ「そう、その前の日も、その前の日も・・・、ずーと、その日だ。」
ミチロー「先生。ぼくはいつも同じ夢を見ています。」
カリガリ「6月8日から時間が止まったままになっている。」
ミチロー「どうなってしまったのでしょうか。」
カリガリ「心配することはない。私にもミチロー君の夢は見えている。」
ミチロー「医学の進歩です。・・・まさか、ここに立っているカリガリ博士はマボロシではないでしょうか。」
カリガリ「そのまさかです。・・・私は君のマボロシということだ。」
ミチロー「マボロシ?」
カリガリ「君の見ているものは全てマボロシ。」
ミチロー「先生は同じことを何度も言います。」
カリガリ「そうだよ。君はとても重い病気にかかっている。そう簡単には抜け出せない危険な状態だから、同じことを繰り返す夢をみるばかり・・・。」
ミチロー「ぼくは死んでいるのですか、生きているのですか。」
カリガリ「生きているから夢をみることができる。」
ミチロー「死んでしまったら夢も見れない。」
カリガリ「そうだよ。いつも同じ会話をしているから、私の言うべき台詞を君が語るようになった。」
ミチロー「死んでしまったら夢もみれない。・・・これはぼくの台詞じゃなかったのですか。」
カリガリ「それは私の台詞だった。」
(1)の出演者に戻る。
ミチロー「6月8日、これもぼくの台詞ではないのですか。」
カリガリ「それは他人の出来事です。君の6月8日ではない。」
ミチロー「ぼくは他人の夢を見ているのでしょうか。」
カリガリ「ミチロー君、君は生まれ変わろうとしているのです。」
ミチロー「ぼくは他人に生まれ変われるのですか。」
カリガリ「そうですよ。何度も6月8日をみることで君は他人にすり替わる。」
(3)
ミチロー「すると、ぼくは何も出来ない能無しで臆病者で、みんなから相手にもされなかった負け犬のような人生から立ち直れるのですか。」
カリガリ「そうですよ。君には薔薇色の人生が待っている。」
ミチロー「薔薇色の・・・」
カリガリ「さぁ、目を開けてごらんなさい。君の目の前に薔薇色の夢が広がる。」
ミチロー「なんて眩い闇だ!」
ゲストによる口合わせ。集団で息を合わせる。
(4)+アルファー/
「君は人を殺したくなる。
私たちは君の夢の中に住み着く邪悪な天使たち。
暗黒の天使舞踏団。
さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。
ここは古き良き時代の見世物小屋だ。
御代は見てのお楽しみ!」
「眠り男、目覚めよ。
お前は 余の言葉のままに動く
余はお前であり お前は余である。
さぁ行け!そして殺すのだ。」
☆
催眠術の場面にダンスを加える。(踊りの組み立てを公開する。)
同時に「殺す側」「殺される側」のアクション。
死んだ筈の人間たちが起き上がり、
看護師「さぁ、ちっとも痛くありませんよ。」
医者「あなたは病気なのです。」
少女椿「病気?何の病気?」
医者「こころ、です。」
少女椿「うそ、うそ、私は病気なんかじゃないわ。先生の方こそおかしいのよ。」
医者「ほう、…わたしのどこがおかしいのです。」
少女椿「だって、変な妄想をしていたでしょう。」
医者「変な妄想をしていたのはあなたです。」
☆
繰り返す殺人場面。
ミチローたち「6月8日。その日が来ました。」
カリガリたち「君の見ているものは全てマボロシ。」
ミチローたち「なんて眩い闇だ!」
看護師「さぁ、ちっとも痛くありませんよ。」
医者「あなたは病気なのです。」
少女椿「病気?何の病気?」
全員「夢から覚めない病気です。」
少女椿「さぁ、もういっぺん!」
繰り返す。スピードアップする。言語が見えなくなる。ストップモーションでエンド。
■
通常の「物語」には「起・承・転・結」の構造を用いるが、今回の短編劇では
ローリング方を用いる。ラストらしくなるとオープニングに戻る。
その部分の回転速度を高める。
エンドレスとして、印象と残像をインパクトに代えていく方法を体験する。
本来、演劇の稽古は本番に向けてそのネタを未公開=秘密裏に進めることが前提となる。
本番を見てのお楽しみ!・・・という訳だ。
ワークショップは言わば、演劇の運動だと位置づけることができる。
潜在的に「タレント志向」は近年、高まってきたのではないだろうか、と演劇の現場から思うようになった。
舞台人の量の減少化からは反比例するが、メジャーへの憧れは市民社会の中では確実に増大している。
お茶の間から見えてくる芸能は豊かさのシンボルのようにも錯覚するようになった。
演劇界はどうだろうか。・・・ワークショップに参加して頂くことで豊かさの基準をメジャーとは違うところで体験してもらいたい。
これが「ワークショップ」を運動と位置づける動機である。
公開型の実験室である。
以下、テキストを公開する。
■
劇団夢桟敷企画
演劇ワークショップ
(第1回)
「薔薇色ノ怪物」(丸尾末広)より
2009年4月29日(水)
午後6時~9時(3時間で短編劇を作る/演じる)
会場:熊本市中央公民館3F(和茶室)
【タイムスケジュール】
18:00-18:15 簡単な自己紹介
二人一組になってお互いに名乗りながら
ピストルで撃つ側、撃たれる側の関係を作る。
演技する。条件は幸せそうに!
18:15-18:30 読む。・・・配役など役割の分担。
18:30-19:30 パートを分ける。(1)~(4)・・・見る・演じる。部分を作る。
19:30-19:40 休憩
19:40-20:30 音を入れながらの通し。ダンスと歌が加わる。(作り方の公開/劇団員のみ)
20:30-20:40 休憩
20:40-21:00 短編劇の発表
21:00-21:30 感想会、後片付け
☆
ここは病院である。・・・
(1)
ミチロー「6月8日。その日が来ました。」
カリガリ「ミチロー君、この日から君は永遠に抜けることはできない。」
ミチロー「そう言えば、昨日も6月8日だったのです。」
カリガリ「そう、その前の日も、その前の日も・・・、ずーと、その日だ。」
ミチロー「先生。ぼくはいつも同じ夢を見ています。」
カリガリ「6月8日から時間が止まったままになっている。」
ミチロー「どうなってしまったのでしょうか。」
カリガリ「心配することはない。私にもミチロー君の夢は見えている。」
ミチロー「医学の進歩です。・・・まさか、ここに立っているカリガリ博士はマボロシではないでしょうか。」
カリガリ「そのまさかです。・・・私は君のマボロシということだ。」
ミチロー「マボロシ?」
カリガリ「君の見ているものは全てマボロシ。」
ミチロー「先生は同じことを何度も言います。」
カリガリ「そうだよ。君はとても重い病気にかかっている。そう簡単には抜け出せない危険な状態だから、同じことを繰り返す夢をみるばかり・・・。」
ミチロー「ぼくは死んでいるのですか、生きているのですか。」
カリガリ「生きているから夢をみることができる。」
ミチロー「死んでしまったら夢も見れない。」
カリガリ「そうだよ。いつも同じ会話をしているから、私の言うべき台詞を君が語るようになった。」
ミチロー「死んでしまったら夢もみれない。・・・これはぼくの台詞じゃなかったのですか。」
カリガリ「それは私の台詞だった。」
(1)の出演者に戻る。
ミチロー「6月8日、これもぼくの台詞ではないのですか。」
カリガリ「それは他人の出来事です。君の6月8日ではない。」
ミチロー「ぼくは他人の夢を見ているのでしょうか。」
カリガリ「ミチロー君、君は生まれ変わろうとしているのです。」
ミチロー「ぼくは他人に生まれ変われるのですか。」
カリガリ「そうですよ。何度も6月8日をみることで君は他人にすり替わる。」
(3)
ミチロー「すると、ぼくは何も出来ない能無しで臆病者で、みんなから相手にもされなかった負け犬のような人生から立ち直れるのですか。」
カリガリ「そうですよ。君には薔薇色の人生が待っている。」
ミチロー「薔薇色の・・・」
カリガリ「さぁ、目を開けてごらんなさい。君の目の前に薔薇色の夢が広がる。」
ミチロー「なんて眩い闇だ!」
ゲストによる口合わせ。集団で息を合わせる。
(4)+アルファー/
「君は人を殺したくなる。
私たちは君の夢の中に住み着く邪悪な天使たち。
暗黒の天使舞踏団。
さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。
ここは古き良き時代の見世物小屋だ。
御代は見てのお楽しみ!」
「眠り男、目覚めよ。
お前は 余の言葉のままに動く
余はお前であり お前は余である。
さぁ行け!そして殺すのだ。」
☆
催眠術の場面にダンスを加える。(踊りの組み立てを公開する。)
同時に「殺す側」「殺される側」のアクション。
死んだ筈の人間たちが起き上がり、
看護師「さぁ、ちっとも痛くありませんよ。」
医者「あなたは病気なのです。」
少女椿「病気?何の病気?」
医者「こころ、です。」
少女椿「うそ、うそ、私は病気なんかじゃないわ。先生の方こそおかしいのよ。」
医者「ほう、…わたしのどこがおかしいのです。」
少女椿「だって、変な妄想をしていたでしょう。」
医者「変な妄想をしていたのはあなたです。」
☆
繰り返す殺人場面。
ミチローたち「6月8日。その日が来ました。」
カリガリたち「君の見ているものは全てマボロシ。」
ミチローたち「なんて眩い闇だ!」
看護師「さぁ、ちっとも痛くありませんよ。」
医者「あなたは病気なのです。」
少女椿「病気?何の病気?」
全員「夢から覚めない病気です。」
少女椿「さぁ、もういっぺん!」
繰り返す。スピードアップする。言語が見えなくなる。ストップモーションでエンド。
■
通常の「物語」には「起・承・転・結」の構造を用いるが、今回の短編劇では
ローリング方を用いる。ラストらしくなるとオープニングに戻る。
その部分の回転速度を高める。
エンドレスとして、印象と残像をインパクトに代えていく方法を体験する。
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