(少し前の観劇)『ロマンサー・夜明け峠篇/モダンスイマーズ』

2012年04月01日 23時50分10秒 | エンタメのかけら

もう観たのは、一か月ほど前のことだ。

観た直後、疑問が湧いたのだ。

なぜ、今、この物語なんだ?

舞台は開拓時代の北海道、
人食い熊が現れ村人を食い殺し、
その熊を退治するためにマタギが雇われて・・・。

ひどく大雑把にいうと、そんな物語だ。

なぜ、今、そんな特殊な設定の新作をやるのか。
それがずっと引っかかっていた。

先日、出演者だった友人に話を聞いて、疑問が解けた。

根底にあったのは、昨年の東日本大震災だった。

ちょうど公演中に、彼らは大地震に襲われた。
おかげで1ステージ休演という事態になってしまった。
さらに計画停電のため、いつ舞台が休演になるかわからない、
そんな状況を強いられたという。

この異常事態を経験して、
作家は自然の脅威あるいは自然に対する無力さを描きたい、
そう思ったのだそうだ。

しかし、震災をそのまま描きたくはない。

そこであの物語だ。
人間の手には負えない自然が、
人食い熊に象徴されたのだろう。

ちなみに人食い熊の話は、
実際にあった話だそうだ。
その事実を元に物語を作り上げた。

当日配られた、ごあいさつの類にもそんなことは書いてなかった。
(僕が見落としただけかもしれないが)

あえて書かないのが彼らの美学か。

物語を紡ぐ人間は、
自分が受けた衝撃をストレートに物語にするのではなく、
その要素を抽出し、別の形で描くことの妙を、
今回、作劇の背景を聞き、あらためて芝居の内容を思い出し、
しみじみ痛感した。
 
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