ナショナリスト

安倍晋三が訪中(8日)訪韓(9日)。
中国との関係が日本にとって最も重要な外交であることは、「国益」の観点からも両国内の「市民の利益」の観点からも明らか。
韓国についても同様。
政治家としては(そういえば安倍晋三って政治家だったっけ)日中日韓関係の改善は急務であったはず。
無論北朝鮮の核実験問題と無関係ではないだろうが注目すべきはそこでの発言。
ゴーマニズム宣言のギャグ漫画家と大差なかった彼のこれまでの言動(6日の衆院予算委員会ではA級戦犯は「国内法的には戦争犯罪人ではない」などと意味不明の発言。ちなみに国内法に戦争犯罪人という概念は存在しない。当時の国内法に基づく犯罪人ではないという意味のないこと言いたかったのか?)とはちょっと違う気がする。
靖国問題につき「適切に対処」という言葉が直ちに方向転換を意味するものではないが、歴史認識についての「我が国がかつてアジア諸国の人々に対して多大な損害と苦痛を与え、傷跡を残したことに対する深い反省のうえに戦後60年の歩みがある」との発言や、中国側が批判した安倍氏の持論の「政経分離論」を修正したこと、就任後間もない訪問であるということなどをあわせて考えれば、タカ派のフラッグシップ的存在の言動としては明らかにトーンダウンと言えるだろう。

さて、今回のトーンダウンを分析する前にその改善が必要な日中日韓関係はなぜこうも悪化したのかをちょっと考えてみたい。
日本では中国が格差やイデオロギーと現実のギャップ等から自国民の目をそらすべく国内のナショナリズム(多義的だが国家主義・民族主義という意味で用いる)を煽っているということはよく言われる。
特に靖国問題などで日本国内から極めて多く聞かれる意見である。
この意見そのものを私は否定しない。というか事実そうだと思う。
しかし発言者の多くはそれが靖国問題の本質であるかのような論調であり,それははっきり言って誤りである。
靖国問題が中国への批判で解決するという短絡的かつ誤った見解は、つまるところ中国のナショナリズムへの反発でしかなく、その実は同種同等のナショナリズムである。
ここ数年の状態はこのナショナリズムの応酬であり,その状態で利益を得るのは国でも民でもなく両国内の為政者達である。
為政者達の主観や発言を無視して客観的に考えれば、両国の緊張は両国内での統治をやりやすくするという意味において、両国の為政者達を利する状況を作り出しているということに気づく。
日本人が最もナショナリズムを高揚させると思われる日朝関係についても、緊張により利益を得ているのは金正日のみならず日本のタカ派政治家でもある。
安倍(金)は金(安倍)に足を向けて寝られない。
このような為政者まるもうけ構造は世界中で見られるわけだが,特に強調したいのは日朝,日韓,そして日中についてである。
そしてこの状態は為政者が自身の利益を図った確信犯的行為によるものと考えるのが正解である。
彼らは毎日,報道や娯楽番組,著書を通じて意見を発表し続けてきたのだから。

ナショナリズムというものは覚醒剤のようなもので,興奮と集中力の向上(これが視野の偏狭につながる)という効果をもつ。
民意を高揚させ結束させて国家を一つの方向へ導きたい時、あるいは民意の視野を国外へ向けさせ国家への不満から目をそらさせ(ガス抜き)国家体制を維持したい場合には、為政者にとってすばらしい効果をみせる。
しかしその反面、使用を続ければ市民、国家のみならず為政者自身の身をも滅ぼす。
身を滅ぼすとは感じていてもあまりにも安易に民意を操作できるゆえ為政者はそれに依存してしまうことが多い。
しかし待っているのは破滅である。
日中の為政者達は破滅を予感したためか,あるいは核にビビッて敵の敵(=味方)と仲良く北朝鮮をシメようとしたのか,歩みよりを見せる。
ま,当然といえば当然。
だって日本(中国)との殺伐とした関係は,オイシいことばかりじゃなく,デメリットもある。為政者の利益と「国益」や「市民の利益」はイコールではないから政冷経熱とか突かれるし。
それに敵視の相手はなにも日本(中国)じゃなければいけないわけでもない。

哀れむべきは彼らにより作出された「にわかナショナリスト」である。
方向転換を図る為政者にとって彼らはフランケンシュタインの怪物である。
踊らされた方に原因がないわけではないが,ナショナリズムという麻薬に手をだした為政者達が批判を免れるわけではない。
ナショナリストがウケるのは不満の鬱積した社会のまとまりを求める風潮に原因があるとも言えるが、不満がナショナリズムに直結する必然性はなくこれも為政者達の行動が肯定されるものではない。不満とナショナリズムに親和性があるのは確かだが。
加えて報道機関が国家から独立している国においては,その火遊びに加わった報道機関の責任は重大である。
彼らは為政者を監視するために存在するのだから。
決して読者や視聴者にスリルと興奮を与え、視聴率や購買部数を上げるために存在しているわけではないのである。

いずれにせよ手前らでつけた火を消しにかかっているわけだが,フランケンはそう簡単に倒れるか。
身勝手な為政者の監視は当然として、にわかナショナリスト達の今後の動向にも要着目です。
コメント ( 1 ) | Trackback ( 6 )
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コメント
 
 
 
Unknown (山本)
2006-10-12 06:21:21
※「国内法的には戦争犯罪人ではない」という発言について明月さんトコの「反戦な家づくり」にコメントしてきたので、メモがわりに自分んトコにも同じコメントしてみました。





「国内法的に戦争犯罪人ではない」というのは日本語になっていない。

国内法に「戦争犯罪人」という概念はないから。



もし「国内法的に(通常の)犯罪人ではない」というのなら、そんなのあったりまえの話。

だって電車でオネェちゃんのケツ触ったとか、路上で人を一人刺したとか、人を一人殺したとかそういうレベルの話ではないのだから。



むしろ、人を殺してはいけないという通常の概念を、人を殺したら英雄であると逆転させたことへの道義的非難であるわけで。



概念の逆転は国家そのものによってなされているからこれを国内法で処罰するなんてそもそも無理。

国内法においては確かに罪刑法定主義(遡及処罰の禁止)が妥当する。

犯罪とはしばしば相対的なもので、前もって何が犯罪かを成文法で規定しなければ我々は安心して自由な行動ができず国民は国家の恣意的な行動を予測し萎縮してしまうから。

しかし戦争犯罪は国民が萎縮とかいうレベルの話ではない。

それに行為にかんがみれば戦争犯罪においては何が戦争犯罪かはほぼ絶対的。

それとも安倍は自分のじいちゃん達は良いことと悪いことの区別もつかないほどバカだったと言いたいのか。



いずれにせよこんなところで罪刑法定主義を持ち出すこと自体、自分が罪刑法定主義についてなんの理解もないということを暴露しているようなもの。

おそらく抜き打ちで趣旨と根拠と沿革と6つの派生原理言ってみろと言ったら「秘書と相談」とか言うんだろう。



ま、靖国参拝肯定派がA級戦犯の存在を否定する時によく聞かれる論理的でない論理なわけだが、こういう世迷言をあまりコピペしないほうがいいっすよ?安倍さん。

自分もバカだってことがばれますゆえ。



それに…わかってるんですかねぇ

自分の言ってることがナチス高官やミロシェビッチとかフセインと同レベルだってこと。
 
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