山川草一郎ブログ

保守系無党派・山川草一郎の時事評論です。主に日本外交論、二大政党制論、メディア論などを扱ってます。

「誇り高き隣人」とどう付き合うか

2003年12月15日 | 日本の外交
「日本人旅行客がホテルで集団買春」「日本人学生が中国人を侮辱する寸劇を演じたことに、大規模な抗議デモ」―。

これらは最近、中国発のニュースとして日本国内のメディアを騒がした一例である。こうしたニュースに接し、我々日本人はどう反応したらよいのだろうか。ある人は「日本人であることが恥ずかしい」と眉をひそめ、ある人は「意図的に日本人を攻撃しようとする反日プロパガンダだ」と反発するかも知れない。

ここで考えてほしいことは、こうした中国発のニュースにはいつも背景があり、そこにこそ中国人という「誇り高き隣人」とうまく付き合うコツが隠されている、ということである。

善悪は別にして、日本人男性の買春旅行などは珍しくも何ともない話である。にもかかわらず、このケースがことさら騒がれたのは何故か。満州事変の記念日が近かったことが国民感情を刺激したという報道もあるが、どうも後付けの理屈に聞こえる。

また、日本人留学生の騒ぎにしても、よく聞けば全裸で踊ったわけでもなく、ティーシャツの上に赤い下着を付け、背中に「見ちゃいやよ」と書いた紙を貼って踊っただけというのが真相のよう。文化や体制の違いこそあれ、それを「見よ!これが中国人だ」と書いて踊ったかのように誤解するには、かなりの想像力が必要ではないだろうか。

実はこれらの報道の直前、九州・福岡での一家殺人事件の容疑者として中国人就学生のグループが浮上した、と大々的に報じられた。一昔前ならこのような報道は中国では黙殺されたのだろうが、改革解放の恩恵で大衆紙を中心に派手に報じられ、「中国人の恥」などと大きな反響を呼んだのだ。

中国は確かに大国だが、経済的にはまだまだ発展途上国である。往々にして、発展途上国は先進国に対して劣等感を抱きつつも、対等な関係を装いたがるものだ。

つまり、日本人買春事件も、留学生騒動も、すべては中国人就学生による残忍な殺人事件と、そのセンセーショナルな報道に対する「反動」だったと考えるべきだろう。

このような行動は、先進国同士の関係では考えられない。日本国内で米国人が性犯罪を犯したとして、それに呼応して米国内で「日本人も買春をやっているではないか」といった報道が出ることは、常識的には考えられない。

しかし、ときに中国との関係ではそうした常識を超えた「反動」が起きることがある。そうやって、彼ら(特に大学に通うようなエリート候補の層)は、傷づいたプライドを癒し、精神的に日本との「対等」な関係を維持しようとするのだ。

といって、何もそうした行動様式を非難するつもりはない。ただ、「中国人とはそういうものだ」ということを頭の片隅で理解していないと、彼らとはうまく付き合えないのではないか、ということが言いたいのだ。

ODAの支援を受けている国家が有人宇宙飛行を実現し、その国をODAで支援している国家が人工衛星の打ち上げさえままならないというご時世である。

日本人の中に「中国は大国のくせに、大人げない」といった誤解が生まれ、そのことがひいては両国関係を悪化させるとしたら、それは日本自身にとってデメリットのほうが多いことだろう。

日常社会同様、隣人との付き合い方は、ある種の「あきらめ」をもって臨むのが肝心だ。とりわけ、お隣さんが豪邸に住んでいながら借金持ちで、そのくせ見栄っ張りな性格である場合は…。(了)


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