山形屋歯科 坂上医院

山形屋歯科坂上医院のブログ

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おばあちゃんの笑顔(その2)

2012年03月25日 10時36分00秒 | 歯科コラム
今年の初めに82歳のおばあちゃんがお一人で来院されました。

お話を聞いてみると下の入れ歯を作ってほしいとの事。

早速お口の中を拝見すると、上に総入れ歯が入っているだけで、下の歯は1本もないのに入れ歯が見当たりません。
不思議に思ってお話を聞いてみました。

おばあちゃんの話によると、下のはぐきが極端にやせているために入れ歯がいつもお口の中で動き回り痛くてかめなかったという事でした。
何件もの歯医者さんに行って入れ歯をつくってもらったのですが、はぐきがやせているために、どの歯医者さんでも安定する入れ歯が作れないと言われたそうです。

さらに、最近ではご主人の介護の都合でなかなか歯医者さんにも行けず、そのうちに下の入れ歯はどこかにいってしまい、もう3ヶ月くらい上の入れ歯だけで食事をしていたそうです。

『口ん中でゴソゴソいごき回って、煩悩のなか歯やったで、ねごなってもかまわんで、上の入れ歯だけ飾りでいれちょっと。』と平然とおっしゃいます。

確かに下のはぐきは極端にやせており、入れ歯をつくることが大変であるのは事実でしたが、特別に難症例という訳ではありません。

『上の入れ歯だけでどんな食事を食べていたのだろう。』と不思議に思いましたが、やはり不自由なのは明らかです。

そこで、おばあちゃんに入れ歯作りを丁寧に説明して、最終的に先に御紹介致しました『下顎吸着シリコン裏装入れ歯』を作る事にしました。

作成に1ヶ月以上かかりましたが、先日無事に入れ歯が出来上がりました。

入れ歯を装着するために来院された日、出来上がった『下顎吸着シリコン裏装入れ歯』をおばあちゃんのお口の中に入れてみました。

しばらくお話をしたあと、 『新しい入れ歯はいけなあんべですか?』と聞いてみると、

『こん入れ歯なら噛めそうな気がする!』とのお言葉。

それではと、このおばあちゃんの前に『おせんべい』『ピーナッツ』と『ポッキー』の3品を並べてみました。

このおばあちゃんは、もう4ヶ月以上『噛む』という動作をしていません。
そのため、噛むための筋肉が弱っている事が予想されました。

総入れ歯で上手に噛むためには、食べ物を左右の奥歯の上に載せて、両方の奥歯で同時に噛む練習をする事が大切です。

まず、おせんべいを小さく割って、左右の奥歯の上に載せて

『両方の奥歯でいっどきに根性をいれっせえ噛んみゃんせ。』
とお話しすると、恐る恐る噛み始めました。

何度か力を入れて噛んでいると、そのうち『バリッ!バリッ!』とおせんべいを噛み砕く心地よい音が聞こえてきました。

『よか音がすっですね。せんべいを食べたのは何年ぶりですか。』
『もう忘れた。』
『おせんベいはおいしかな?』
『おいしか!』

内心『しめた!』と思いながら、今度はピーナッツを2粒手に取って、おばあちゃんのお口の中に無理やり入れて、
『両方の奥歯で力を入れっせえ、噛んでみゃんせ。』と言ってみました。

おばあちゃんはさすがに驚いた顔をしていましたが、素直に噛み始めました。
しばらくモゴモゴしていましたが、そのうち『カリッ!カリッ!』とピーナッツを噛み割る音が聞こえてきました。

『よし、これで大丈夫!』と確信が持てましたので、今度は『ポッキー』を手渡して、自分で食べてもらうようにお話しました。

案の定、『ポッキー』をバリバリと噛み始めました。2本目を手渡すとほどなく完食。

確かに入れ歯作りに当たっては、気をつかい苦労して作り上げましたが、おばあちゃんが美味しそうな顔をしてポッキーを食べる姿を見ていると、苦労もいっぺんに吹き飛んでしまいます。

これで、このおばあちゃんは色々な食べ物を美味しく食べることが出来る事でしょう。

入れ歯での噛みかたやお手入れについて説明して治療を終えた時、おばあちゃんが、

『まさか、ピーナッツを噛んがなっとは思わんじゃった。』
と言って、満面に微笑みを浮かべてくれました。

『この笑顔を見るために、自分は歯医者をやっているんだ。本当によかった。』

久しぶりにおばあちゃんの笑顔から元気を分けてもらいました。

今後も、このおばあちゃんのような笑顔を、できるだけ沢山見たいと感じ、入れ歯作りに対するさらなるファイトが湧いてくるのを感じた一日でした。











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おばあちゃんの笑顔

2010年12月02日 10時41分34秒 | 歯科コラム
入れ歯で苦労されている皆さんは、ほとんどが下の総入れ歯が合わない、痛
いという状態で苦労されている事と思います。

 大阪に平賀先生という入れ歯作りのベテランの先生がいらっしゃいます。
 私は、この平賀先生の発表された下の総入れ歯を安定・吸着させるテクニック
を学びました。

 1ヵ月程前、入れ歯が合わないという悩みで当院を82歳のおばあちゃんが受診さ
れました。離島から娘さんに付き添われての来院です。

 なんだか、顔色も良くなく、元気が無いなと感じました。

 良く拝見させていただくと、10年以上前に作ったという入れ歯を使っておら
れ、入れ歯がお口の中で踊っているような状態でした。

 うまくお話しが出来ず、お医者さんからは『言語障害が起こっている。』と言
われていたそうです。

 娘さんの話では、ここ10年程まともな食事が食べられない状態だったそうで
す。

 下のはぐきは極端にやせ細り、また、残されたはぐきの表面もデコボコしてい
て、通常の総入れ歯ではほとんど対応が出来ない状態でした。

 そこで、一計を案じ、平賀先生の『下顎吸着義歯』のテクニックを応用し、内
側にに生体用シリコーンを張り付けた総入れ歯を設計し、技工所さんにも全面的
にご協力を頂いて、この『下顎吸着生体用シリコーン裏装総入れ歯』なるものを
作成致しました。

 この技術は、過去当院で、何回も利用して総入れ歯を作成し、全ての患者さん
に満足して頂いているテクニックです。

 総入れ歯の装着当日、丁寧に噛みあわせの調整を行ったあと、いきなり『草加
せんべい』を食べて頂きました。

 当のおばあちゃんは、びっくりしていた様子でしたが、恐る恐る噛みはじめま
した。

 『ちゃんと噛める。どっこも痛くない。』

 10年以上、まともな食事をしたことのなかったおばあちゃんが、草加せんべ
いを『バリバリ』という心地よい音と共に美味しそうに味わってくれました。

 昨日、入れ歯に少し当たりが出て、痛い部分があるとの事で、娘さんと一緒に
当院に入れ歯の調整にいらっしゃいました。

 まず、おばあちゃんを見てびっくりしたのは、入れ歯を作っている頃と比べて
若々しくなって、顔色もとても良いのです。

 入れ歯の調整を終えた後、娘さんを交えておばあちゃんの様子を伺いました。

 おばあちゃん曰く、
  『なんでも噛める。』
 娘さんの話では、他の家族とほとんど同じ食事が出来るようになったとの事で
した。

 私が一番嬉しかったのは、お医者さんから言語障害があると言われていたおば
あちゃんが良く話をしてくれた事でした。

 生き生きとした表情で、日常生活の事、デイケアサービスに行った時の食事を
全部残さず食べられるようになった事、今まで話がしづらかったが最近ではちゃ
んと話が出来るようになった事をお話しして下さいました。

 おばあちゃんは決して言語障害があった訳ではなかったのです。

 ただ、入れ歯が合わずにうまくお話しできなかっただけの事だったのです。

 このおばあちゃん、実はお話し好きで、明るい性格の女性だったんですね。

 自分が苦労して設計を行い、出来上がった入れ歯に満足して頂けた事より、お
ばあちゃんの元気一杯の笑顔とかん高い笑い声、たわいもないおしゃべりから、
私は沢山の元気を分けてもらい、感無量のひと時でした。

 こんな時、『自分は歯医者になって良かった。』としみじみと思います。

 さて、この次は、どんな入れ歯の悩みをもった患者さんがいらっしゃるのでし
ょうか。

 入れ歯作りが終わったとき、また、今回のように患者さんから元気を分けても
らえるような仕事をしたいと、今から張り切っています。
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インプラントするなら

2010年10月20日 09時36分59秒 | 歯科コラム
最近、皆様の間にインプラントという歯科治療が浸透してきたようですね。

さて、このインプラントとは良い治療なのでしょうか?

残念ながら当院ではインプラント治療を行っておりません。

それはインプラント治療があまり良くない治療だと考えているからではありません。

私のホームページ内で述べましたように、長期的な視野に立って考えると自分には責任を持って治療を行う自信が無いという事と、インプラント手術の際の滅菌環境を確保出来ないというふたつの理由からです。

私はインプラント推進派で、インプラント治療を希望される患者さんには、私より腕の良い立派な先生をご紹介することにしています。その方が患者さんにとって、色々な意味で良いと考えるからです。

さて、『インプラント治療』はどんな歯科医院で受けたら良いでしょう。

私は、個人的にインプラント治療を受けるのなら、総入れ歯・部分入れ歯を作製するのを得意としている先生に手術してもらうのが一番だと考えています。

当院には、しばしばインプラント治療がうまくゆかなかった患者さんが、なんとかならないかと来院されます。

何故、インプラント治療がうまくゆかなかったのかという原因を探ってみると、ほとんどのケースといっても過言ではないくらい『噛みあわせ』がうまく構築されていないのです。

私は大学を卒業して以来、噛みあわせという課題に常に向き合って診療を行ってきました。

たとえば、入れ歯でうまく噛めないのでインプラントならうまくゆくのではないかと考えてインプラント治療を受けたとします。

インプラント治療終了時には、あたかも大成功で良く噛めるようになったと感じると思います。

しかし、噛みあわせが適切な状態で設定されていないと、やがてインプラントは哀れな姿になってゆきます。

インプラントは直接顎の骨の中に埋め込む為、治療直後は噛みあわせの良しあしとは関係なく、ちゃんと噛めるようになります。

しかし、時間が経つにつれて、インプラントに負担がかかり過ぎて、やがてさまざまな不都合が生まれます。

この詳細については、私のホームページに詳しく述べておきましたので興味のある方はご覧下さい。

一方、『入れ歯でうまく噛めないのでインプラントならうまくゆくのではないかと考えて』という同じ理由で、入れ歯作製の上手な先生の歯科医院を受診したら、まず、何故現在使用している入れ歯が噛みにくいのかという原因を追及すると思います。

まず、入れ歯とはぐきがぴったり合っているかを診査して、もし適合が悪くなっている場合には、入れ歯の内側に新たに材料を追加して、はぐきにぴったり合うようにします。

次に、入れ歯の噛みあわせを診査して、入れ歯の噛み合わせる面にプラスチックを追加したり、削ったりして適切な噛み合わせになるように調整を繰り返します。

そうして、この入れ歯の調整が終了して、入れ歯できちんと噛めるようになった状態が、その患者さんの適切な噛み合わせ(上顎と下顎の適切な位置関係)が完成した状態になります。

この状態で、インプラント手術を受けて、適切な噛み合わせで修復物を作成してもらえば、長持ちする良いインプラント治療が行えます。このような状態でインプラント治療を受けることが出来れば最高ですね。

但し、使用中の入れ歯の調整を繰り返し、きちんと噛めるようになった患者さんが、わざわざインプラント治療を受けたいと考えるかどうかは、はなはだ疑問が残りますが。





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スマイルデンチャーと地頭鶏

2010年10月18日 17時21分04秒 | 歯科コラム
昨日(10月17日)に宮崎へ行ってきました。

新規にスマイルデンチャーを扱いたいとお考えの歯科医の先生方に、作製のテクニックや調整の勘所をお話してきました。

ご存じの通り『スマイルデンチャー』には金属のバネがありません。

そのため、入れ歯を使用している事を人に気づかれることのない、審美性に優れた入れ歯です。

講演の内容は別として、参加された先生方の真剣な視線を浴びながら、久しぶりに良い意味での緊張の中で、私の持っている拙いお話をさせていただきました。

晴れの気持ち良い行楽日和にも係らず、ビルの一室にお集まり頂いて、熱心に私の話を聞いて下さる先生方を見ていると、『やがて、今日お集まりの先生の中からスマイルデンチャーのベテランの先生が生まれ、多くの患者さんが、より気持ちの良い状態で入れ歯を使えるようになるんだろうなぁ。』と感じ、とてもすがすがしい気持ちで帰路につきました。

折角宮崎に行ったので、何か名物を味わいたいと考え、『地頭鶏(じとっこ)』を食べました。

なかなか上品な味わいの焼き鳥でしたよ。

講演の前でしたので、一緒にビールを味わえなかったのが残念でしたが、焼き鳥のお好きな方には、是非味わって頂きたい宮崎の特産品だと思います。
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『恩送り』をするということ

2010年10月15日 15時36分08秒 | 歯科コラム
今日は、皆さんに素晴らしいお話をご紹介したいと思います。

『毎日が楽しくなる17の物語』(志賀内泰弘著 PHP研究所)
の一節です。                                         
 

大手通信企業に勤める方のお話です。

 大学2年生の春休み、ふらっとヨーロッパに一人旅をしました。
 イギリス、フランスを経て、南へ下りスペインに入った晴の話です。
そこは本当に太陽のような国で、周りの人・空気 - 何もかもが温かく、人々の好意にただ甘えながら楽しく旅を続けていました。

 1カ月が経過し、もう旅も終わりという頃、その出来事は起きました。

アルハンブラ宮殿で有名なグラナダという街に深夜到着のバスで降り立った時、それまでの好天気と春の陽気はどこへやら、4月なのにひどく冷たい嵐のような暴風雨に見舞われました。
 
 帰国も間近との安堵から、ほとんどの荷物は日本へ送ってしまった後で、傘や防寒具やガイドブックさえも持っていませんでした。

人気もなく、方向もわからず、最初に着いたホテルも入り口が閉まっていて、誰も出てきてくれる気配がありません。

 体は冷えてくるし、暗く冷たい夜の恐怖感や自分の甘さに泣けてくるし、かなりパニック状態になっていました。

 時間がどれくらい経過したかも全く覚えていません。
 ふと気づくと、目の前にかなり年老いたおばあさんが立っており、心配そうな目で何かしゃべりかけてきました。

ところが、何を話しているかさっぱりわかりません。

 情けないことに自分はただ泣いているだけ。すると、そのおばあさんが僕の手をとって歩き出しました。

今となってはどこをどう歩いたのかも覚えていません。

 連れていかれたのは、ひどく狭い古びた民家で、小さな部屋に家族6人で暮らしていました。

当時のスペインの失業率は25~30%近かったと思いますし、相当に貧しいご家族ではなかったかと思います。

 警戒心の強い自分ですが、疲れと共に、なんだかそこに流れている空気に安堵して泥のように眠りました。

 翌朝目を覚ますと、家族が皆、心配そうに覗きこんでいました。照れて笑うと、子供たちが恥ずかしそうに笑い返してきました。皆のとても澄んだ睦が印象的でした。

 すぐにおばあさんがスープとパンを持ってきてくれて、皆で分け合って食べだしました。夢中で食べた後で、おばあさんが食べていないことに気づきました。

 自分が詫びると、くしゃくしゃの顔をさらにくしやっとしながら何か話しました。「いいんですよ」と言ってくれている気がしました。

ひょっとして自分は、今日食べるものにも困っている家族から大切な食事を奪ったのではないか、そう思うとどんどん恥ずかしくなり、居たたまれなくなってきました。

 そして、「もう出発しなければ」と言って、逃げるようにその場を離れようとしました。

靴をはき、振り返っておばあさんの睦を見た瞬間、自分でもびっくりするような大声で、
「ムーチャス・グラシアスー・」
と叫んで家を飛び出していました。

 落ち着いたら、また涙がでてきました。名前も住所も聞いておらず、お礼のしようもありません。

20歳にもなってまともな行動ではないでしょう。

その時は胸がいっぱいで、歩きながら心の中で何度も何度も感謝を繰り返しました。
考えてみれば、薄汚れた格好をしたヒゲだらけの謎の東洋人に対して、精一杯のものを与えてくれたのだと思います。
助けてもらわなかったらどうなっていたのか。

情けない話ながら、心の底から誰かに感謝した、初めての経験だったと思います。


 さて、このスペインのおばあさんの事です。

おばあさんは、間違いなく、何かのお礼を求めて一晩の宿と朝食をご馳走してくれたわけではありません。
見返りを求めない行為。
それは奉仕の心です。
 先の友人は、このおばあさんにお返しがしたくても、今ではその場所さえわかりません。

でも、他の人に恩を送ることはできます。彼は、イベントがあると司会や裏方の仕事をして手伝ってくれます。
まさしく、ボランティア精神の豊かな人です。

 人からの好意は素直に受ける、そして、それを恩送りしていくことで誰もが住みやすい社会になることでしょう。

「恩送りしてゆくということ」

素晴らしい事ですね。


私は、自分が苦しいとき、困った時には素直に人に助けてもらいます。

そして、自分が『恩』を感じたら、その人に『恩返し』をする努力をします。

しかし、なかなかそんな機会に巡り合えない事もしばしばです。

そんな時には、自分の受けた恩を、自分の専門である歯科医療を通して、当院を受診して下さった患者さんに『恩送り』してあげれば、それで良いのではないかと私は感じています。

それにつけても、私は、どれだけの恩送りをすれば良いのでしょう。

恐らく、これから一生かけても返す事の出来ない恩を受けてきました。

私に与えられた使命は、この『恩送り』を出来る限り続けてゆく事だと考えて、日々生活をしています。


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