中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

櫻正宗(吟醸)

2015-04-11 22:24:04 | お酒の話(県外)
 山形でも桜が咲き始めています。

 日本人が桜を愛するのは、桜がすぐに散ってしまうからだ、とドナルド・キーンが言ったそうです。…確かにそうかも知れません。そして、花見には酒がつきものです。「さけなくて(酒無くて)、何の花実が咲くものか」という言い回しがあります。私の大好きなフレーズでございます。


 ところで日本の「酒」といえば、三島由紀夫の問題作「憂国」でもあるように、飲んで楽しむだけでなく「清めの酒」としての役割が大切です。

 今生の別れに、または兄弟の契りに。酌み交わす酒は、料理酒のような適当なものはでは良くないわけですが、では、どんな酒が適しているのか?淡麗辛口か濃厚旨口か…。

 正解は、どちらでもないと思います。

 未練を断ち切って、心を研ぎ澄ますような味…切れ味と同時に重みがあり、桜が散るごとく後にはサッパリ何も残らない。


 さて、灘の銘酒を頂きました。神戸の「櫻正宗」です。まさに由緒ある「日本の辛口」。

 私の好みから言うと、もう少し柔らかくて透明感のある甘みを備えた酒が好きですが、この「櫻正宗」は日本酒の「清めの機能」をくっきりと主張するような酒でした。日本的な美意識がこもっている。その名の通り、桜に通じるものがあります。

 …ざっくりえぐって、スパッと消える。芯が通っていながら、後腐れのない味。桜の散り方を思わせる、潔さを感じます。


 「日本酒は灘」と言われますが、東北の方が旨いのに…とずっと思っておりました。しかしそれは、味のことではなく、「日本の酒のあり方」のような伝統的精神論を含んだもののようです。

 「櫻」を冠した銘酒に、日本の美意識を教わったような気がします。日本の春を堪能しました。

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