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源義経黄金伝説■第14回★旅装の僧が、目の前の風景荒錆びた様子で噴煙をあげている富士山に嘆息する。背後には東大寺闇法師。

2020年07月22日 | 源義経黄金伝説
G源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと
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源義経黄金伝説■第14回★旅装の僧が、目の前の風景荒錆びた様子で噴煙をあげている富士山に嘆息する。背後には東大寺闇法師。
 
 

源義経黄金伝説■第14回★

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

 

 

 

広野から見えるその山は、荒錆びた様子で噴煙をあげている。富士山である。

「おうおう、何か今の時代を表わしているような…」

 

 一人の旅装の僧が、目の前の風景に嘆息をしている。心のうちから言葉が吹き出していた。その歌を書き留めている。詩想が頭の中を襲っている。

 

湧き上がる溢れんばかりの想い。僧は、もとは武士だったのか屈強な体つきである。

 勢い立ち噴煙を上げているは富士の山。富士は活火山である。

 

『風になびく 富士のけぶりの空に 消えて行方も知らぬ 我が思いかな』

 

「我が老いの身、平泉まで持つかどうか。いや、持たせねばのう」

 

 老人は、過去を思いやり、ひとりごちた。

 

 豪奢な建物。金色に輝く社寺。

 

物珍しそうに見る若き日の自分の姿が思い起こされて来た。

 

あの仏教国の見事さよ。心が晴れ晴れするようであっ

た。みちのくの黄金都市、平泉のことである。

 

「平泉だ、平泉に着きさえすれば。藤原秀衡ひでひら殿に会える。それに、美しき仏教王国にも辿り着ける」

 

僧は、自らの計画をもう一度思い起こし、反芻し始めた。

 

 平泉にある束稲山たばしねやま、その桜の花、花の嵐を思い起こしている。

青い空の所々が、薄紅色に染まったように見える。

その彩は、絢爛たる仏教絵巻そのものの平泉に似合っている。

 

それに比べると都市まちとしては鎌倉は武骨である。

 

「麗しき平泉か、、そうは思わぬか、な、重蔵じゅうぞう殿」言葉を後ろに投げている。

 

後ろの草茂みにいつの間にか、黒い影が人の形を採っている。

 

東大寺闇法師、重蔵(じゅうぞうである。

 

西行さいぎょう様はこの風景を何度もご覧に」

 

「そうよなあ、、吾が佐藤家はこの坂東の地にねづいておるからな」

 

西行ー佐藤家は藤原北家、そして俵藤太をその祖先とする。平将門の乱を鎮めた藤原秀郷ひでさとである。

 

「重蔵殿、まだ後ろが気にかかられるか。はっつ、気にされるな。結縁衆けちえんしゅうの方々だ。ふう、鬼一法眼きいちほうがん殿が、良いというのに後詰めにつけてくだされた」

 

一息。

 

「さてさて、重蔵殿、鎌倉に入る前、いささか、準備が必要だ、御手伝いいただけるかな」

 

しっかりとした足取りで、西行は歩きはじめた。

 

続く2016改訂

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