入院患者のコミュニケーションに関する研究
―病棟計画へ向けた一つの視点として―
福田泰基,岡本和彦,長澤泰
日本建築学会大会学術講演梗概集 (北海道)2004年8月
1.背景と目的
近年竣工された日本の病棟は、個室の割合が増加しており、さらに今後も「個室化」の傾向が強まることが予測される。プライバシー確保、病床回転率、感染症患者の取り扱いなどのメリットがあるが、一方で個室は淋しい、不安だというデメリットを指摘する意見もある。入院患者のコミュニケーションに着目し、今後の病棟計画の方向性を模索していくことが本研究の目的である。
2.研究の調査方法
入院患者対象のアンケート調査、対象施設は一般の3つの病院で実施(特殊なコミュニケーションが予測される小児科、婦人科、精神科以外の数病棟)
3.入院患者のコミュニケーションの実態
個室患者より多床室患者の方が「話をする相手がいる」と答えた人が多い。個室患者、多床室患者ともに「話自体したくない」と答えた人が最も多い、個室患者に交流がないのは病室よりも、患者個人のパーソナリティによるところが大きいと考えられる。
4.入院患者のコミュニケーションに関する「願望」
入院患者自身がコミュニケーションを図ることに対して、実際どう思っているのか、アンケート調査を行い、結果を「願望」の類型化した。
個室患者はタイプA「交流拒絶型」が最も多い。
多床室患者は個室患者とは異なり、タイプA,B,C,Dそれぞれに分かれた。
5.まとめ
個室化の中でコミュニケーションを望む患者にどう対応していくか、またコミュニケーションを望まない患者もいることは確かであり、患者自身の自主選択に委ねられるような病棟環境が望まれるのではないかと考えられる。
7.感想
病棟でコミュニケーションが必要なのか疑問、しかし長期入院患者には、病気に対する不安が和らぎ、コミュニケーションの場を多く設けることも大切ではないかと思った。
横井 玲伊