けぶる稜線

ひいらぎのとげが語る

”死神” は不景気のどん底

2018-11-04 07:39:04 | 日記


招待状を出した覚えもないし、かといって、借金取りとか市役所からの滞納金強奪人でもない。黙って部屋の隅に座ったり立ったり、勝手にドアを開け閉めして出たり入ったりしている。大きな音をたてるとか部屋中を散らかすなどはないのだが、目障りなことこの上もない。それでも、長年やってきた習慣で、お客さんだからと座布団を出している。

部屋の隅で彼のやっていることは一つの事だけだ。トルストイも描写している草刈用の大きな鎌の刃を研いでいるだけ。何処に行くにもこの鎌を持っている。でも、この世の空気に長く晒しておくと錆びて切れ味が悪くなるらしく、頻繁に研いでいる。一回の来訪で目的を達せられればそんなことをすることはないのだが、如何せん、彼を待たせっぱなしだからだろう。
 
彼の名前は、ない。通称、「死神」という集団名で呼ばれている。しきたりとして出した座布団の座り心地がよくないらしい。あっちを見たり、こっちを見たり、大あくびをしたりしている。別室で待つ原稿取りみたいだ。やることがないらしく、家中の物を見ているようだが金目のものに興味があるという風でもない。というか、彼にとっては、そんなものは一文にもならないのだから。彼らにとって大切なものは、さっさと命令された首を取ってくることだけだ。
 
死神連中が仕事にあぶれているらしいということは聞いていた。次々と新薬が出てくるし、画期的な治療方法が普及するし、それにも増して致命的なのは、もう直ぐ刈り入れだと思う肉体が集団検診やら定期検診やらで早期発見され弱ってくれないことだ。ヒトスジシマカが大奮闘していたが、他の奴らは何をしているのだ。無駄飯食い達め!
 
死神集団も少子化のあおりを受けて段々と老いぼれ集団となっている。だから、人間同様、余り長いこと座ったり待ったりしていると疲れるのだ。最近の人間どもは、痛くも痒くもないのに腰をシャンとして病院へ行く。何たることよ。これでは、死神集団の失業者が増えるばかりではないか。あまり増えすぎると、死神国家の福祉関連財源を探し出すのに苦労するのだ。こっちは健全財政なんだから。おお~い、人間達よ、俺たちの懐事情も察してくれ。昨日も今日も、死神は大きな鎌を背負ってあっちへこっちへとさ迷い歩いている。




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