昨年9月定例会で取り上げた寡婦(夫)控除の「みなし適用」の問題。今回、改めてみなし適用を求めて質問しました。
未婚のひとり親(ほとんどが母子家庭)は、所得税法上の寡婦控除の適用が受けられません。そのため、離婚したひとり親と同じ所得水準であっても、税や保育料、公営住宅家賃でより重い負担が強いられます。法律上の婚姻歴があるかどうかで負担に大きな差を生じさせることに合理的理由を見出すことはできません。婚外子差別であるともいえます。
残念ながら、当局の答弁は前回と全く同じ内容で前進がありませんでした。税制は国において改正しなければなりませんが、保育料や公営住宅の入居資格・家賃は自治体の裁量=みなし適用で、負担軽減を図ることは可能です。
少数ながら、首都圏の自治体や政令市でみなし適用を導入しています。ぜひ先進自治体を見習ってもらいたいです。困っている住民に寄り添い、できることは積極的にやる姿勢を示してもらいたいです。それこそが、本物の「地方自治」です!
【一般質問】 寡婦(夫)控除の「みなし適用」について
寡婦控除は、所得税法で定める所得控除のひとつです。配偶者と死別もしくは離婚後、婚姻していない人などに対する経済支援のために設けられた制度です。扶養親族や所得金額など一定の条件を満たす場合に適用され、扶養する子どもがいる母子家庭の場合、27万円が控除され、控除前の所得が500万円以下なら35万円に増えます。
寡婦控除は一度でも婚姻歴があれば、その後未婚で子どもを産んでも適用されますが、婚姻歴がない未婚のひとり親家庭(ほとんどが母子家庭)に対しては適用されません。そのため、未婚のひとり親は、離婚・死別のひとり親と同じ所得水準であっても、高い所得税、住民税を支払っています。さらに、影響はそれだけにとどまりません。公営住宅入居資格や家賃、保育料は、課税所得をもとに算定されるため、負担が重くなっています。
母親と子ども1人で年収200万円程度のモデルケースで試算すると、未婚の母親は10数万円から20万円も余分に負担しなければなりません。
今日、さまざまな事情から母子家庭が増えています。2011年の厚生労働省の調査によると、母子家庭になった理由として、「未婚」が7.8%と2番目に多く「死別」(7.5%)を上回っています。また、2011年には約23,000人の婚外子(全体の約2.2%)が誕生しています。
母子家庭の家計は総じて苦しい状況にあります。母子家庭の母親の約8割が働いていますが、その半数はパート・アルバイトといった非正規雇用で、十分な収入が得られていないのが現状です。
子どものいる世帯の平均収入が約658万円であるのに対して、母子家庭の世帯収入は291万円と平均の44%しかありません。就労収入に限ると181万円と極めて低水準にあります。
母子家庭の中でも、未婚の母子家庭の就労収入が160万円と最も経済的に困窮しており、そこへの支援が喫緊の課題です。
児童扶養手当の受給状況で確認したところ、現在、江南市には800を超えるひとり親家庭があり、そのうち約50世帯が未婚のひとり親家庭(父子家庭1世帯含む)です。
ひとり親家庭支援のポイントは、仕事と子育てを両立できる環境を整えることにあります。
質問1
現在、未婚のひとり親家庭で保育園に子どもを通園させている世帯は何世帯ありますか。仮に寡婦控除をみなし適用した場合の影響額はいくらになりますか。
なお、市営住宅入居者で未婚のひとり親家庭が1世帯あることを申し上げておきます。
質問2
ひとり親家庭で家計が厳しい状況は同じなのに、婚姻歴の有無で負担に差をつけることに合理的理由を見出すことはできません。
昨年、民法の相続規定の婚外子差別が違憲とされ、民法が改正されました。婚姻の有無よりも子の立場を重視する流れができつつあり、早期に税制改正を行うべきです。
国の動きを待つ受け身の姿勢ではなく、自治体としてできることがあります。ひとり親家庭の経済的支援、子どもの貧困対策、少子化対策などの視点から、ぜひ寡婦控除のみなし適用を実施すべきと考えますが、見解を求めます。
≪メモ≫
○ 児童扶養手当受給世帯(江南市)
・ 2014年4月 800世帯(離婚700世帯 未婚50世帯 死別8世帯など)
・ 2013年8月 838世帯(離婚739世帯 未婚50世帯 死別9世帯など)
・ 2012年8月 822世帯(離婚747世帯 未婚52世帯 死別6世帯など)
○ 2011年現在、母子家庭は約124万世帯。2012年3月末現在、児童扶養手当の受給者は全国で約107万世帯。うち、未婚の母子世帯が88,624世帯、未婚の父子世帯が5,784世帯に上る。
○ 母子世帯になった理由(厚生労働省 2011年)
・ 離婚 80.8% 未婚 7.8% 死別 7.5% 行方不明 0.4% 遺棄 0.4%⇒死別よりも未婚の方が多い。
○ 母子世帯の母の年間就労収入(厚生労働省 2011年)
・ 平均年間就労収入 181万円
死別の母子世帯 256万円
離婚の母子世帯 176万円
未婚の母子世帯 160万円
・ 母子世帯の年間収入は子どものいる全世帯の平均所得の約4割に過ぎない。
・ 離婚した父親から養育費を受け取っているのは20%のみ。
○ 寡婦控除のみなし適用を実施している自治体(把握分)
・ 保育料………札幌市 仙台市 新潟市 千葉市 新宿区 豊島区 文京区 千代田区 八王子市 立川市 国立市 日の出町 蒲郡市 奈良市 岡山市 松山市 高知市 高松市 熊本市 那覇市