矢嶋武弘の部屋

日一日の命

昔の“テレビ新局”づくり

2019年09月18日 03時14分45秒 | フジテレビ関係

〈以下の記事を復刻します。〉

サラリーマンとしてFテレビにいた時、最もやりがいがあったのは地方のテレビ新局づくりである。いつも失敗談ばかりしているので、たまには自慢話もいいだろう(笑)。しかし、これは本当の自慢ではなく、思いがけないことが幸いした話だ。やや専門的になるので、難しい話がいやな人とはここでお別れしよう。
私は「小選挙区制」というのが嫌いで、今でもその思いは変わらない。できれば中選挙区制に戻して欲しいのだが、実はその「小選挙区制」が新局づくりに絶大な効果を挙げたという話である。
以前、高知県は衆議院選挙も全県一区で、自民党は複数の代議士を擁立していた。ここでは分かりやすくA代議士とB代議士としておこう。AとBは互いに支持基盤が違って、争いを繰り広げていた。中選挙区制の場合はそれが当たり前だったのである。
ちょうどその頃、高知県にテレビ新局づくりの話が持ち上がった。地方にテレビ局ができるというのは、大都市との格差是正や雇用の促進などでたいへん結構なことである。このため、幾つかのグループが新局開設の申請を旧郵政省に提出した。当時の電波行政は「郵政省」が行なっていたのである(今は総務省が担当している)。
ところが、A代議士とB代議士を推す地元の経済界は真っ二つに分裂、選挙と同じように争いを繰り広げ、なかなか“一本化”ができない状況だった。一本化できなければ強力な申請グループになれず、郵政省の電波管理局もゴーサインが出しにくいのである。
その頃、私はFテレビ(東京キー局)の電波企画部にいたが、高知県では強力な申請グループに一本化できず、新局なんか出来っこないとタカをくくっていた。キー局にいると、地方のテレビ事情などあまり気にならないのだ。
ところが、ある時、高知のA代議士とB代議士の支持グループが合体し、電波管理局に“一本化”の申請を行なったと聞いてびっくりした。これまで犬猿の仲だったAとBのグループがなぜ合体したのか? すると、小選挙区制が導入されて、AとBは互いに仲良くならざるを得なくなったという。
つまり、Aの選挙区ではBの支持者の協力が必要となり、逆にBの選挙区ではAの支持者の支援が必要になったのだ。同じ自民党だから、今度はAとBは協力し合っていこうというのだ。だからAとBのグループは合体し、強力な申請団体になったのである。
この話を聞いて、私は小選挙区制の効用かと苦笑いした。以後 状況は一変し、郵政省の対応も積極的になる。細かい話は省略するが、私も消極派からいっぺんに“積極派”に変身した。もう一つ、たまたま山形県の新局づくりの話も持ち上がったが、私はサラリーマン生活で最も充実した日々を送ることになる。高知と山形には何度行ったか数えきれない。
余談だが、テレビでA・B両代議士の活躍ぶりを見ると、つい新局づくりの頃を思い出す。小選挙区制には今でも疑問を持っているが、それが思わぬ効果を挙げたとはなんとも皮肉な話だ。


コメント (5)   この記事についてブログを書く
« 全てが“必然”である | トップ | 国会議員こそ“シロアリ”では... »
最近の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
確かにそうではあるが… (keitan)
2014-02-12 09:58:40
 小選挙区制度が自民党内の競争をなくして『お友達党』になってしまったのは確かに小選挙区制度の弊害ではあるでしょう。
 然しそれは自民党が小選挙区制にどう対応するかの問題であり、自民党の勝手な事情な訳です。選挙制度は自民党(と共産党)にとって都合の良いように決まる(ゲリマンダー選挙制度な)訳ではありません。
 小選挙区制度が民主党にとって都合の良いように決められたのではないのはこれまでに圧勝したことも大敗したこともある、それなりに伸びたこともあるのに明らかです。

 然しながら、そこにて高知県の新局が出来たのは現在のフジテレビの頽廃に繋がったかも知れないので喜んでばかりもいられないかも知れません。自民党内の政策論争を一本化により丸め込み、現在の国家社会主義的政党(とそれを支持するテレビ局)になる伏線となっているのかも知れません。
 私のウェブサイト(ブログよりリンク)にも語りましたが、犯罪とは雖もフジテレビの買収を図ったホリエモンに対するみっともない非難は見苦しいものでした。

 とは雖も新しく局が立ち上がるのはめでたくも喜ばしいことには違いありません。一本化しないとフルスペックの放送局は出来ないのかも知れませんが高知県などならばそれこそ『フジテレビが映るだけ』の局でも良いのではないかと思います。
小選挙区制度 (矢嶋武弘)
2014-02-12 16:33:10
小選挙区制については、決して良いとは思っていません。いろいろ議論のあるところですが、もっと民意を反映させるような制度に改めるべきです。
新局が出来たこととフジテレビの退廃(?)とかいうことは関係ないですね。貴方が言うように、新局そのものは地元にとって良いことだと考えています。
平成新局やローカル局はあまり評判がよくない (匿名希望)
2018-11-17 18:49:22
平成新局のおかげで東京の人気番組が見られる地域が多くできたのはよかったですが、ローカル局なかんずく平成新局は独自番組作りの能力があまり高くないみたいで、地方の人に聞くと「全部キー局の番組だけ流してくれればいい。」という声もよく聞きますね
テレビの存在意義と多様化 (矢嶋武弘)
2018-11-18 06:34:08
隠居である私は、最近のテレビ事情のことがよく分かりません。したがって、思いつくままに書きます。
「テレビ新局づくり」の頃と今とでは、30年以上の開きがあるのでまったく時代背景が違いますね。
今はデジタル化、多チャンネル化が進んで当時とまったく違います。 それに動画サイト(you tubeなど)やスマホなどの発達で、映像世界の環境は大きく変わりました。
地方も県単位のテレビ局の他に、市町村単位で映像を流しているではありませんか。映像環境はまったく変わりました。
これを映像の多様化と言うのでしょうか。テレビの存在意義も多様化していると思います。
したがって、隠居の私は最近のテレビ事情のことがよく分かりません。教えてもらいたいぐらいです。
言ってみれば、地方のテレビ局はキー局の「支局」みたいになっているのでしょう。
映像の多様化の中で、テレビ局自体がどう生き残るのか、それが一番の問題だと思います。
おそらく現在のテレビ局経営者は、そのことで頭が一杯でしょう。
以上、思いつくままに書きましたが、何か妙案などがあれば教えてもらいたいものです。 乱筆乱文で失礼しました。
訂正 (矢嶋武弘)
2018-11-18 06:37:48
「テレビ新局づくり」の頃と今とでは、30年以上の開きがあると書きましたが、これは『20年以上』の間違いです。
訂正してお詫びします。

コメントを投稿

フジテレビ関係」カテゴリの最新記事