とこのへや

とこの雑貨と、とこのお洒落着。とこは樺太に住んでいたことがあります。とこの嫁の体験談、日記、備忘など。

生きているか

2018-12-13 09:44:54 | 丘の上(認知症・入院)

会うのがかなり久しぶりになった。 姑 とこ に会うため、病院を訪れたのだ。

ここのところ、ギプスで松葉杖だった私は急な坂道をのぼるその病院へは
足手まといになるため、夫がひとりで、母を見舞っていた。

ただ、行った日には夫はとても疲れてしまうらしく、
もともと高かった血圧の値も150台とより高くなり、
へんな汗が出たり、寝つきが悪かったりと調子がよくない。
私も松葉杖ながら、車を出してもらい(今時のカーシェアリングで)入院先へと
訪れたことがあったが、かえって夫の負担になるのだった。

思い起こせば、1年前だった。12月の初旬、怯えているというか、
不安が強いというか、様子がおかしいので、
簡単な荷物を持ってうちへ来てもらった。
しかし、迷惑をかけてすまないと思うのか、夜中になると
ドアを開けて外へ出て、走って逃げて行ってしまう。
寒い中、裸足で外へ行ってしまうことと、
夜中のことなので、息子である夫の感情も不安定になってしまう。
年明け早々、サービス付き高齢者住宅へ入所してもらうことに。

施設はまだ新しい建物で、スタッフも丁寧な対応と思う。
本人も見学当初「こんなところに入れればねぇ」と言っていたのだが、
1月、2月と施設から「食事を召し上がらず心配です」との連絡が継続的にあった。

レビー小体型の認知症との診断がついていたので、診察、薬の処方も受けた。
けれども「みんな私に出て行ってほしいと思っている」「このお水には何か入っている」という妄想が強く出て、3月には脱水症状で高熱を発し、入院。
夫は状況に応じて、いろいろと動かざるを得ず、成年後見人の資格を取り、それまで とこ が住んでいたアパートを解約し、荷物を処分した。
相当な労力だったと思う。夫は体重が10キロほど減った。

入所先や入院先では、とこ は私の顔を見ると、孫の心配をし、
私についてもちゃんと食べてるかとか、会社でいじめられてないかとか
「○○(孫の名)はどうしてる?」「貴女は大丈夫?」と尋ねてきた。
自らのことは、「私は今日ここを出ようと思ってるの」といい、
「でもお金を払えないからね…」などということが多かった。

入院したばかりの時は、「夜、大きな猫が来る」「イノシシがくる、痛いの…」とか、
「?」と思うような言動が多く私たちは動揺する。
「今日の夜お祭りがあって」というので、楽しい話かと思ったら、
「目玉をえぐられる」という恐ろしいお祭りだった。
たぶん、本人には、いろいろ見え、聞こえるのだ。

入所の時から、夫には挨拶のように、
「あら、あなた生きてたの」と目を丸くしていうのが常。
嫁の私には遠慮があると思われるが、しかし食べることについては、
いくら勧めても「食べたくないのよ」ときっぱり。
アイスは食べてくれると施設の人も言っていたのに、
それすら「何か入ってるの」と気持ち悪く感じている様子だった。
水も飲まず、アイスも食べなくなって入院にいたるわけだが。

さて、この病院では、早く点滴を外し、退院するためには食べないと、と言われたことが効いて、
パンなら食べるという状態だ。私が久しぶりに訪れたその日、ちょうどパンを手でちぎって口へ運んでいるところだった。

気難しい表情ながら、せっせと小さく小さくちぎったパンを口に運んでいる。
少し前まではムース食だったが、きざみ食へバージョンアップしていた。
ムース食は工業製品らしく、食べてみた夫は美味しくなかったと
顔をしかめて話していたものだ。

そばへ近寄ると、ふと顔を上げて私を見ると、
とても「信じられない」といった表情で、また、疑うような目に変わり、
言葉も出ない様子。
「私(名前)よ」というと、暗い声で「死んだって聞いてた」と答えた。

…やっぱり、久しぶりすぎて、死んでたかー。

心配かけてごめんね、というと、しばらく「死んだって…」と繰りかえしていたが、
「不幸な人生だったわね」と心底やさしい、いたわりの言葉をかけてくれた。
死んでるんだ、私。

そして、少し前に夫から伝え聞いていた、私が病院を訪れて「トイレに行かせて」と言っているのに、病院の人にダメだと言われて、中に入れてもらえなかったという話。実際には私は会社への復帰を優先し、病院へはしばらく行っていないのだが。
「あれは、貴女じゃなかったの? 網のところに居たでしょ」と尋ねられる。
(網、に夫が反応してちょっと笑う)
「会社も辞めさせられちゃったんでしょ?」弱弱しく、可哀想だと憐れむ とこ。

ほんと、ごめんね、長らく来られなくて。
とこ の、点滴で冷たい液体が流れ込んで冷えてしまった手を握って、
話しているうちに目を閉じてしまった。
きざみ食は夫が味見していたが、下げてもらう時に
看護師さんが「こんなに食べたんですね!」と嬉しそうに言うので、
やんわり否定することに。
ノートに「また来るね」と私の名前を記して、帰ることにした。

もう少し近い場所に移ってもらったほうが、いいのかもと思っていたけれど、
環境を変えてしまうのは酷かもしれない。


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