のり巻き のりのり

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夢千代日記

2016年02月09日 | つれづれ日記
演劇鑑賞会に行きました。 「夢千代日記」 早坂 暁 原作


吉永小百合さんの映画や舞台が有名です。前進座の役者も素晴らしい演技を見せてくれました。
中央のいちばん見やすい席だったのでラッキーでした。

舞台は餘部鉄橋の麓にある温泉街。そこで置屋「はるや」の女将をしている夢千代をめぐる人間模様を描いています。
一見華やかな芸者の世界に身を置いているものの、夢千代は胎内被爆者。

水商売の人は、被爆者であることを隠すところ、夢千代は、そのことを照明してもらうために広島に向かう。

戦争中子どもを捨てたことがある女、他人の子を我が子として育てる女、旅役者と駆け落ちした女、置屋「はるや」の女たちはそれぞれの事情を抱えながらも、心を寄せ合って懸命に生きている。

湯の街でけなげに生きていく女性たちの姿が胸を打つ。

夢千代自身が原爆症になっているにもかかわらず、記憶喪失の男を助けたり、周りの人々を優しさで包んだり、生きることへ強い願いを伝えているのです。

内容的にも一番初めに吉永小百合さんが演じたのは、なるほどと思いました。
前進座の夢千代、今村文子さんも、吉永小百合さんに負けず劣らず気品があり、舞台にぴったりの方でした。


私の曾祖父曾祖母は戦前「置屋」をしていたらしい。祖父母の時代も戦前は「置屋」「口入れ屋」、花街が焼けてしまったので戦後は「料理屋」へと転向したという。

祖父母の時代、何人かを養女として籍に入れ、実子も含め12人もの子どもを抱えていたというから驚きである。
宮尾登美子の小説の世界のようです。

そのことを知ったのは、ごく最近であり、父からは一度も聞いたことがありません。
長男だった父は、なぜかそんな世界とは全くかけ離れた堅いお役人になりました。

娘たちに知られたくなかったのでしょうか。
それでも、ときおり訪ねてくる親戚の叔母さんの中には、もと芸者さんらしき人がいました。

私は、子ども心にわけもなく反発心をもち、避けてろくすっぽあいさつもせずにいたので、きっとかわいげのない子だと思われていたでしょう。

でも、今は時代がどんな人をつくったのかが分かるようになり、それぞれの職業の大変さを少しは推し量ることができるようになりました。

曾祖父曾祖母、祖父祖母の時代にも、「夢千代日記」に出てきたような、けなげに生きる女たちが近くにいたのでしょうか。
今となっては聞くすべもありません。