さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【読書録】大学の先生と学ぶ はじめての歴史総合

2024-08-20 23:12:59 | 読書録

北村 厚/KADOKAWA

日本史・世界史にとらわれず、横断的に近現代史を学べる科目として誕生したらしい「歴史総合」。今に繋がる問題を扱うからとても実践的で面白い科目だと思う。ということで、最近の学生は「歴史総合」+日本史とか「歴史総合」+世界史という形で学ぶことになるのだろうか。

日本史と世界史どっちかしか学ばないなんてナンセンス。両方深く学ぶべきだし、自分もそうしてきた・・しかし時間は有限となると、まずは現在の諸問題に繋がる近現代史に絞った学科を作る・・ということにならざるを得ないのだろうね。実際、私も高校の世界史の授業は第一次世界大戦から始まり、もう40年以上前のことでありながら、1回目の授業の先生の声音や板書のイメージまではっきりと覚えている。

そういう意味では私自身も歴史総合に近い学び方をしたのかもしれない。ただただ古代から授業をやっていると近現代史は時間切れで寸詰まり・・なんてことになりそうだが、そういう問題も回避できる。ただ、私がそもそも歴史が大好きになった切っ掛けは古代史へのロマンや英雄物語的なものへの憧れから始まっていることを考えると、歴史総合というのは生々しすぎて、ロマンだの英雄だのといった要素がまるでない。元々歴史が好きな人は興味深く学ぶだろうが、歴史が嫌いな人が、歴史総合をきっかけに歴史好きになるという展開はありうるんだろうか・・という一抹の心配はある。

さて、現役の高校生にとって「歴史総合」という科目がどう・・という話は置いといて、すでに日本史も世界史もある程度頭に入っている大人が、頭を整理するために読むのには大変面白いと思う。

「覚える歴史」ではなく「考える歴史」というが、「考える」前提としてある程度「覚えている」ことが前提にはなるが、それを覚えることに意義を見出せれば覚えるという取捨選択のできる大人の学び直しには最適と思われる。

そうね・・例えば大正デモクラシー・・普通選挙法(25歳以上のすべての男子に選挙権)と、治安維持法は同じ年(1925年)に成立していることをどう考えるか・・なんて学生時代は気づきもしなかったねぇ。デモクラシーという呼び名に惑わされて大正時代を民主的な良い時代という先入観で見がちであったのは間違っていたなぁ。相当に不穏な時代であった・・ということだろう。ドイツのワイマール憲法下でヒトラー政権が誕生したように、日本も形こそ違え同じような道を歩んでしまったのだ。既存の政権による舵取りがうまく行っていない時、人は極端に走りやすい。今に繋がる問題として、我々がずっと気をつけていかなければならないことである。

最近とかく美化されがちな、日本による植民地支配の話も、実態はどうであったか踏み込んで書かれている。植民地として支配されるとはこういうことなのだ・・ということを改めて考え、かつてそういう関係にあった国々との関係はどういう歩みで現代に至っているのかということを国別に考えなおす良い切っ掛けになる本でもあった。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする