人間とは、そのようなものだ。

インド中部マディヤ・プラデーシュ州の村で、ヒョウに幼い我が子をさらわれた母親が、後を追いかけて奪い返す出来事があった。インドにもヒョウがいるのだと思ったが、いるのだ。しかも、人間のそばにいるらしい。母親の子供に対する勇気は哺乳類共通のものだ。この母親も森の中に突進し、ヒョウにつかまっている子供を助け出した。子供を失ったヒョウは母親に向かう。母親は手にした棒で、応戦する。そのとき、騒ぎを聞きつけた村人たちが駆け付け、ヒョウは森の中に逃げ去ったという。私だったらどうするか。ヒョウと私の一対一の戦いだったら、私はどうしたら逃げることができるかと考えるだろう。だが、そこにヒョウにつかまった子供、例え、それが自分の子供でなくても、子供がいたら、私はヒョウと戦うだろう。人間とはたぶん、そんなものだろう。昔、踏切に足を取られて、立ち往生していた老人に、電車が近づくことも忘れ、助けに向かい、命を落とした青年がいた。人間とは、そのようなものだ。（くちなし亭、2021.12.06）

Y-FP Office Japan トップページ