米中貿易戦争が激化している。それも私が当初想定していた以上のスピードで、しかも、グローバルにである。その行き先は中国の孤立化である。トランプ大統領の胸の内を忖度する評論家の説明はこうである。「アメリカかは貿易ルールの改定を中国側に求めているのではない。資本主義のルールを求めているのである。アメリカ側の怒りは対米貿易で儲けた金を中国は何に使っているのかと言えば、南シナ海、インド洋、パキスタン、イラン、アフリカ、一帯一路政策など、アメリカの権益を侵すものばかりである。だから、トランプ大統領は表面的には貿易の不均衡是正を訴えて、行動を起こしたが、すぐにEUとは和解し、ロシアのプーチン大統領との会談では、中国寄りの姿勢を警告し、日本とは元々、信頼関係があるので、気がつけば、中国の孤立が鮮明になったと言うのである。アメリカの姿勢は中国が独自の統制経済を続けるのであれば、自国の中で勝手にやってくれと言うものである。このアメリカ政府の行動は中国企業にも向けられる。４月、中国ＺＴＥが米国の対イラン・北朝鮮制裁に絡む合意に違反したとして米企業からの部品調達を７年間禁止と言う処分を受ける。ＺＴＥはその後、１０億ドルの罰金や４億ドルの預託金の支払いなどで合意したが、同社はその後、罰金支払いが重しとなり、上期に過去最悪となる７０億～９０億元の赤字を計上する見通しとなった。制裁は今月初旬に解除されたが、アメリカ議会がその解除を無効にする法令を通している。こうした動きはこれまで、世界で活発に投資活動をしてきた中国複合企業の海航集団（ＨＮＡグループ）にも影響を与える。このＨＮＡはドイツ銀行の筆頭株主である。ＨＮＡによるドイツ銀行株の投げ売りが起こるのではないかと懸念され、ドイツ銀行株は暴落している。前述の評論家の説のように、完全に中国の孤立化が鮮明になれば、中国の取る打開戦術の中には戦争も含まれる。その時には北朝鮮の核も利用されるはずである。(2018.08.06)
