備忘録

学習備忘録

詐害行為取り消し権

2010-04-22 19:28:50 | 民法
詐害行為取消権
メモ
☆☆☆☆思考の順序



①責任財産の範囲はどこまでかを確定(担保物権により把握されている価値を控除する)

②取消の効果として、現物返還の原則をどこまで貫徹すべきかを考える
o
要件
要件事実

・債権者にとって自己の債権を保全する必要があること(債務者の無資力)

・財産権を目的とする法律行為を債務者がおこなったこと

・その法律行為が債権者を害する行為であること

・詐害行為前に被保全債権が存在していたこと
詐害行為前に被保全債権が存在していたこと(判例)∵詐害行為後に発生した債権の債権者は、減少した一般財産を引き当てとして取引に入っているから
その法律行為が債権者を害する行為であること
内容
抗弁
受益者又は転得者がその法律行為が債権者を害することを知っていたこと
資力が回復したこと(資力回復の抗弁)
論点
論点:多重債務者の一部債権者に対する弁済が詐害行為となるか



原則としてならない

(∵債務者も弁済の義務を負うから拒絶できない)

↓ただし

債権者が一債権者と通謀し、他の債権者を害する意思をもって弁済したような場合には詐害行為となる(判例)
論点:「債権者を害する…行為」か否かをどのように判断すべきか



相関関係説=行為の客観的性質、行為の主観的要素、債務者がとった手段の相当性を総合的に考慮して、当該行為が正当な処分権行使と言えるかどうかを評価する(判例)
論点: 多重債務者の一部債権者に対する代物弁済が詐害行為となるか



原則として詐害行為となる

∵他の債権者から配当の機会を奪う可能性が高まる(判例)(※客観的性質)
論点:適正価格での不動産の売却が詐害行為となるか



原則として詐害行為になる

∵不動産を費消しやすい金銭に替えることは、共同担保の実質的効力を削減させることになる(※客観的性質)

↓ただし

「有用の資」に充てるための売却は詐害行為にならない(※主観的要素)

ex.生活費、教育費に充てるため、経営破綻を免れるため
論点:一部債権者のための物的担保や人的担保の設定が詐害行為となるか



残余の財産では他の債権者に十分な弁済が出来なくなるにもかかわらず、一部債権者のために物的担保を設定することは、詐害行為に当たる

∵共同担保を減少させる(判例)

↓一方

残余の財産では他の債権者に十分な弁済が出来なくなるにもかかわらず、他人の債務を担保するために連帯保証を新たに負担した時は、詐害行為となる

∵連帯保証である以上、他の債務者に資産があっても履行義務を免れない
論点:被告のもとに元物が存在していない時は価額賠償によるほかないとして、被告のもとに現物が存在している場合にも取消債権者が価格での賠償を求めることができるか



現物返還が可能な場合には、できるだけその方法によるべきである

∵詐害行為取消権の目的は逸出財産の回復・共同担保の保全という建前を守るためには、事実上の優先弁済を認めるケースの拡大を可及的に防ぐ必要がある(判例)
論点:被保全債権発生後にされた対抗要件具備行為は取り消しうるか



取り消せない(判例、登記移転と債権譲渡通知について)

↓∵

①物権、債権移転行為と、それらについての対抗要件具備行為は別の行為

②詐害行為取消権行使の対象となるのは、財産の減少を目的とする行為そのものである

③権利移転は対抗要件具備によって生じるわけではない
詐害行為取消権の行使
メモ
債務者の財産の中で担保物権が設定されているものは、責任財産の対象とならない

∵この物の担保価値は、担保権者によって優先的に把握されているから

(潮見256p)
事実上の優先弁済効は、相対的取消説とは矛盾するにも関わらず採用されていることに注意。

すなわち、相対的効力を貫徹すれば、受益者から対象を受領した債権者と債務者との関係では、取消の効力が及んでいないのだから、債務者が債権者に対して不当利得返還請求権(ないし物権的返還請求権)を有することにはならない。にもかかわらず、これらが認められている。
行使の相手方
論点:受益者が善意で、転得者が悪意の場合、債権者は悪意転得者を相手にして詐害行為取消権を行使できるか



できる(判例)∵相対効によって善意受益者が害されることがないから
o
判例理論まとめ

①取消権を行使できる範囲は、債権者の有する債権額にとどまる

②受益者に対する自己への直接支払い請求を認める(∵実効性確保)
論点:受益者が債務者に対する債権者でもある場合に、受益者は、債権額に応じたの按分額に応じた請求権を超える部分について債権者に対する支払いを拒めるか(百選Ⅱ19)



拒めない

∵これを認めると、いちはやく自己の債権につき弁済を受けた受益者を保護し、総債権者の利益を無視することになる

※とはいっても、訴え提起した債権者については、支払いを受けた部分について債務者と相殺でき、事実上の優先弁済を受けることからすると、今度は訴え提起した債権者のみが有利になることになる
論点:逸出財産が不可分物であり、この価値が被保全債権額を上回る場合、取消できるのは全部か、一部か



全部である(判例)
メモ

・債権者代位権と違い、転用は許されない

民事訴訟法

2010-04-22 19:27:43 | 民事訴訟法
論点:「請求の基礎に変更がない」の意義

↓この点

この要件は、原告が従来の裁判資料を利用する便宜を、被告の応訴の負担を重くしない範囲で認める趣旨である

↓とすれば

①新旧両請求の利益関係が社会生活上共通であり

②旧請求を巡る裁判資料の継続利用が可能であること

をさすと解すべき(事例215p)

↓そして

被告が変更に同意した場合、又は被告の否認陳述に依拠して訴えの変更を申し立てた場合には、請求の基礎の同一性がなくても訴えの変更は認められると解すべき

∵被告の利益保護が本条の趣旨

固有必要的共同訴訟
メモ
共有者の関わる訴訟が固有必要的共同訴訟となるか通常共同訴訟になるかのまとめ

(共有持分権と共有権いずれの権利に基づく主張するのかという視点をもって考える。)

a共有者が原告

①共有権に関する訴訟

・共有権確認と共有権に基づく移転登記手続き請求は、固有必要的共同訴訟となる

∵(後者について)共有者の1人に過ぎない原告名義に全部の移転登記を命ずるのは実体関係を反映しない

・共有権に基づく妨害排除請求・引渡請求

→保存行為として単独行使可能

②共有持分権に関する訴訟

→共有持分権確認・返還請求・妨害排除請求・抹消登記手続き請求は単独行使可能。

共有持分権に基づく移転登記手続請求だけは、固有必要的共同訴訟となる。

b共有者が被告

→不動産の共有名義の所有権移転登記の抹消登記手続請求だけは固有必要的共同訴訟、あとはだいたい単独行使可。
固有必要的共同訴訟ではなく個別提起が可能であると主張する場合の理由付けは、

①不可分債務である

②保存行為である

という主張を頭に入れておくべき