東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

『エマニエル夫人』,1974,フランス映画

2008-12-07 22:31:30 | フィクション・ファンタジー
〈熱帯の豊穣に包まれ、官能に目覚める美貌の人妻〉なんて謳い文句で公開されたソフト・ポルノ(ソフト・ポルノってどういう意味かなんて訊かないでくれ、たいした意味はない)。
わたしは公開当時にみたが(←あほか)、つまんない映画だなあ、という漠然とした感想しかもたなかった。

しかし、わたしは知らなかったが、当時の東南アジアに関心をもつ人々の間では、傍若無人に振舞うヨーロッパ人、それに憧れる日本人、という文脈で、そうとうな批判があったようだ。
東南アジアを官能に萌える白人男女の背景としかみない植民地主義的映画、野蛮で従順な現地人という見方、などなど批判の的はいろいろあった。

しかし、わたしを含め当時のほとんどの日本の観客は、この映画が東南アジアのタイで撮影された、ということすら意識しなかった。
IMDBのサイトによれば、ロケはインド洋のセイシェル島とタイのバンコク、チェンマイで行われたそうだ。(セイシェルの場面なんてまったく記憶にないのだが。)
考えてみれば、1974年、まだ米軍のR&Rの保養施設ぐらいしかなかったタイに注目し、おしゃれ(死語!)でハイソ(これも死語)なリゾート地として描いた先駆的な映画であったわけだ。なんせ、ウタパオ航空基地から北ベトナムへ爆撃機が飛んでいた時代から間もない頃なのである。

その後、タイは全世界から観光客・リゾート客が押し寄せる第一級の観光国になった。売買春観光が過度に強調されるけれども、大半はカップルや家族連れでのんびり滞在し、ヨーロッパ並のインフラが整った快適な旅行地として楽しんでいる。
この映画で描かれたような、緑豊かで、従順な召使いがいて、ちょっと危ない要素もオマケにつく、というタイプのバカンスを楽しみたい方にも最適。
そういう意味でタイの観光開発を予見したような作品。

というものの、以上の記事はすべて記憶に頼って書いている。いくらなんでも、あのつまらない映画を再見する意欲はない。(だいたい主演のシルビア・クリステルって、わたしの好みじゃないんだよな。)
ネット上で、『エマニエル夫人』がリメイクされる、という情報があるのだが、やっぱりタイを舞台にするのでしょうか?エマニエル・ブームが起こり、タイの観光産業が活性化することを願う。

今年の正月休みは、キャンセルが相次いで、航空券が取りやすいかもしれないから、エマニエルごっこなど、いかがでしょうか?もっとも、テレビや新聞の報道とはまったく逆に、これはチャンスだ、と予約しているバカンス客が世界中にいっぱいいると思う。


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