東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

おそどまさこ,『障害者の地球旅行案内』,晶文社,1996

2010-09-09 21:10:41 | 実用ガイド・虚用ガイド
地球は狭いわよ、と言っていたおそどまさこさんも、年齢不明だがおそらく60歳を過ぎているだろう。本書執筆時点で50歳くらいだろうか?(注;前項の『地球女ひとり旅ガイド』に生年が書いてあった。1949年うまれだ。)

本書は肢体障害、視覚聴覚障害、内臓障害などを持つ人のための海外旅行案内である。
具体的な工夫、事前の準備、援助組織の詳細は各自よんでみてください。

わたしは、とくべつ○○障害と名前がつくような障害はない者であるので、そういう者からみた感想を少々述べる。

基本は、他人の善意ではなく、金銭で解決すること。つまり、それなりの代価を払うこと。シビアな意見であるが当然だろう。

最初のバリアーは、パスポートを取るなど役所関係の障害。それに周囲の反対を押しきる覚悟。

電動車椅子などさまざまなハイテク機器を活用する。本書は15年近く前の本なので現在はもっといろいろな機器が開発されているのだろう。ICレコーダーも携帯電話もほとんど普及していない時代の話である。

こうしてみると、いわゆる障害者といわゆる健常者の違いがどんどん小さくなっていっているように見える。電子機器や衛生用品をたくさんつめこんで旅行するスタイルも普通になったし、車椅子や杖を使って移動する人も普通になった。

一方で、本書の内容は他人事ではないなあ、と思うところも多い。
内臓障害、手術後の排泄の不便など、これからわが身にふりかかりそうなこともある。
結局、さまざまな瑣末な不便や身体の不調が海外旅行のバリアになるのだろうな。

おそどまさこ,『地球は狭いわよ 女のひとり旅講座』,トラベルブティック747出版局,1976

2010-09-09 21:10:17 | 実用ガイド・虚用ガイド
古本(ネット利用)で安く買えた。ちなみに、元の定価980円、初版5000部。
初めて現物を見る。

驚いた部分はいろいろあるが、まず書き下ろしではないこと。文化出版局の雑誌『Amica』に1974年9月号から1976年7月号まで連載された記事をもとにしている。
その『Amica』という雑誌も知らないが、ネットで検索したところによれば、やはりファッション中心の雑誌である。海外旅行の記事もあるが、それほど現実的な話ではないんではないかなあ。(未確認)

内容は準備偏として渡航手続・やすい飛行機の探し方・インフォメーションの収集・海外での周遊券・持ち物・トラブル対策。
目的地の情報としては、ニューヨーク・サンフランシスコ・ロサンジェルス・ホンコン・バンコク・バリ島・オーストラリア・ニュージーランド・ニューカレドニア。
ヨーロッパが無いのは著者が実際に旅行した時期から離れすぎていて最新の情報が載せられないからという理由である。収録地域の取材は雑誌掲載の前ぐらいで、本書刊行の1~2年まえ。

宿泊は長期宿泊のアパートメント、YMCA・YWCA、ユースホステルの紹介が多い。現在と違い、どうせ行くなら長期滞在ということだろうか。
「アダルト・スクール」(移民のための成人学校みたいなもの)入学体験記もあり。信じられないが無料だったそうだ。
そのほか、オノ・ヨーコ会見記、マリファナについて、レズビアンバー、ピアスをしてみました、などなど時代を感じるコラムも収録。

しかし、もっと時代を感じさせるのは、

追記
最近、新聞で、「エチオピア、バングラデシュ以外の海外渡航に種痘の予防接種は必要なくなる」とか、「海外旅行に持ち出すことが出来るドル限度額は1500ドルから3000ドルにかわる」とか、ニュースが流れていますが、6月18日現在、まだ確実ではありませんので、今後、出発される方は、直接、日本銀行、検疫所に問い合わせて下さい。


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さて、本書は現実の旅行ガイドとして役に立つのかどうか、わたしには判断不能である。
今読むとあたりまえの部分が多いし、肝心の安い航空券の入手など、どうもよくわからない。著者の使った航空券の期限がどのくらいか、FIXなのかOPENなのかもわからない。

各国の在京観光局が紹介されているが、どの程度の情報が得られるのか。地図は日本で入手可能なのか。
予算もわからない。親から1000ドル(30万円)ぐらいどーんと小遣いをもらえるくらいの女性を想定しているのだろうか。ちなみに、かなりの大企業でも20歳代の月給は10万円ぐらいの時代である。

現在の手取り足取りの親切すぎるガイドブックと比べるのは難癖だと承知のうえで言うと、空港から市内への移動のしかた、公共バスの乗り方など、もう少しくわしく書いてもらわないと、空港に着いたとたんにウロウロしてパニックってことにならないのだろうか。

旅行に必要な英語の文例や単語の案内もあるが、booking とか available? なんて重要な単語が載ってないんだよね。
著者自身はかなり自由に動けるタイプの人だろうが、本書を読んで羽田出発から目的地空港の外に出るまでイメージできる読者はいないと思う。

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実用的な知識はともかく、都市の案内もひじょうに忙しいのである。

しかし、はたしてマカオは団体旅行でなくては見てまわれないものでしょうか?九龍のスターフェリーの前、スターハウスの15階にあるマカオ・ツーリスト・インフォメーション・ビュローの職員ジョセフ氏も、「マカオは小さな街です。歩いたって正味2時間あれば回れますよ。」と言います。とにかくマカオはこじんまりとしていて、車などに乗るとアッという間に終わってしまうのでポルトガル情緒を味わうこともできません。香港からマカオ行きのツアーに参加したいというと、140ドル(8400円)以上とられてしまいます。2時間で歩けるところを、なにも高い費用を出して、車に乗ることはないでしょう。もしひとり旅でマカオへ行くとすれば、かかる費用をざっと計算してみても、水中翼船が往復40ドル、昼食代が5ドル、ビザ代が25ドル、雑費が10ドルとして計80ドル(4800円)で、つまり5000円足らずで納得いくまで、マカオをまわることができるのです。マカオには市内バスが走っていますし(30セント)、タクシーや人力車が絶えず流していますから、利用してもいいでしょう。

と、いうように、せっかくのひとり旅なのに、ツアー客並の駆け足旅行を書いている。ちなにみ、マカオを2時間で歩くのは不可能だし、一日ではぜんぜん納得いくまでマカオを回ることはできないと思う。

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別に本書だけではないが、現在のガイドブックにまで続く不思議な内容がある。

まず、日本食が欲しくなるから準備するという記述。これがほんとに不思議だ。著者の年齢ならわからないでもないが、みそ汁やお茶や梅干がそんなに欲しくなるものなんだろうか。
家庭でも毎日みそ汁やお茶を飲んでいる日本人ってそんなに多いのか?

最近は荷物検査が厳しくなって、ナイフは預け入れ荷物に入れなくてはならないという記述が多い。本書でも持ち物の中にナイフがある。しかし、旅行中にナイフが必要?安宿でも高級ホテルでも包丁ぐらい借りられるだろうし……。